第5節 子供に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

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第5節 子供に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

政府では,「子供の性被害防止プラン」(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)(平成29年4月犯罪対策閣僚会議決定)に基づき,国民各層,民間事業者及び関係機関・団体と連携することはもとより,国際社会とも連携を図りつつ,国家公安委員会による総合調整の下,児童ポルノの製造や児童買春を始めとする子供の性被害の撲滅に向け,国民意識の向上のみならず,児童,児童の保護者,加害者,犯行に用いられるツールや場所等のそれぞれに着目した多角的かつ包括的な対策を総合的に推進する。

(子供に対する性的な暴力被害の防止,相談・支援等)

警察では,従来の検挙活動や防犯活動に加え,性犯罪等の前兆とみられる声掛け,つきまとい等の段階で行為者を特定し,検挙・警告等の措置を講じる活動(先制・予防的活動)を推進し,子供や女性を被害者とする性犯罪等の未然防止に努める。

また,各種活動を通じて児童虐待事案の早期把握に努め,児童の生命・身体を保護するとともに,性的虐待等の被害を受けた少年に対してその特性に配慮した継続的な支援を行う。

文部科学省では,児童虐待の防止のため,学校・教育委員会において,これまで発出した通知等に基づき,学校等から児童相談所等への定期的な情報提供や児童虐待の早期発見・早期対応,通告後の関係機関との連携等を一層促進する。

また,性犯罪被害者を含めて児童生徒等の相談等に適切に対応できるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を推進するなど,学校における相談体制の充実を支援する。

厚生労働省では,性的虐待による被害等を受けた児童に対する相談援助が適切に行われるよう,児童相談所の相談体制等の充実を支援する。

法務省では,少年鑑別所において,「法務少年支援センター」として,少年や保護者などの個人からの心理相談等に応じており,同センターにおいて,関係機関と連携し,児童虐待事案等の発見を含め,相談体制の充実に努める。

法務省の人権擁護機関では,若年層におけるコミュニケーションツールが電話やメール等からSNSへと変化している状況を踏まえ,令和元(2019)年8月から,愛知県在住の方を対象として,名古屋法務局においてLINEによる人権相談窓口を設置し,人権相談を実施している。令和2(2020)年度は,これに加えて,東京法務局においても東京都在住の方を対象として,LINEによる人権相談窓口を設置する予定である。

また,法務省,警察庁及び厚生労働省においては,被害児童が繰り返し事情を聞かれることによる二次被害を防止して心理的負担を軽減するとともに,記憶の汚染を防止して信用性の高い供述を確保するため,検察庁,警察及び児童相談所が連携し,被害児童の事情聴取に先立って協議を行い,関係機関の代表者が聴取を行う取組を推進し,引き続き,被害児童の事情聴取の場所・回数・方法等に配慮する。

(児童ポルノ対策の推進)

警察では,関係機関・団体と緊密な連携を図りながら,低年齢児童を狙ったグループによる悪質な事犯等に対する取締りを強化するほか,国内サイト管理者等に対する児童ポルノ画像等の削除依頼,被害児童に対する支援等,総合的な児童ポルノ対策を推進する。

また,SNSに起因する被害を抑止するため,スマートフォン等インターネット接続機器へのフィルタリングの普及促進を図るとともに,関係団体及び関係事業者に対してサービスの態様等に応じた自主的な対策の強化を働きかける。

総務省及び経済産業省では,関係省庁と連携の下,青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため,フィルタリングの普及促進やインターネットの適切な利用等に関する啓発活動等を行う。

(児童買春対策の推進)

警察では,引き続き,児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)等に基づき,児童買春の取締りを強化するとともに,被害児童に対する支援のほか,SNS上における児童の性被害につながるおそれのある不適切な書き込みに対して,広範囲に注意喚起を行い,被害を未然に防止する広報啓発活動等を推進する。

また,児童を組織的に支配し,SNS等を利用して児童買春の周旋を行う事犯や,児童の性に着目した形態の営業に従事させる事犯等の悪質性の高い事犯の実態把握と情報の分析,積極的な取締りや,被害児童に対する適切な支援等を推進する。

総務省では,性や暴力に関するインターネット上の有害な情報から青少年を保護するため,スマートフォン等のインターネット接続機器へのフィルタリングの普及促進を図る。

(広報啓発の推進)

内閣府では,青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)及び「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第4次)」(平成30年7月子ども・若者育成支援推進本部決定。以下「青少年インターネット環境整備基本計画(第4次)」という。)に基づき,青少年のインターネット利用におけるフィルタリングの普及や適切な利用を推進するため,関係省庁や民間団体等と連携して,リーフレットの公表・配布等により青少年及び保護者等に対する広報啓発活動を実施する。

警察では,児童ポルノや児童買春に関する情勢の深刻さや被害の未然防止の必要性等のほか,サイバー空間における犯罪被害から児童を守るため,出会い系サイト及びSNSに起因する児童の犯罪被害の実態やインターネットの危険性等に関しても広報啓発活動を推進する。

総務省では,インターネット,携帯電話等のメディアの特性に応じたメディア・リテラシーに関する教材等の普及を図る(第11章第4節参照)。

経済産業省では,引き続き関係者と連携して,セミナーの開催等を通じ,フィルタリング等に関する情報提供・普及啓発活動を行う。

また,教育委員会の研修等への講師派遣も実施する。