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コラム10 男性保育士が活躍している保育園~「保育園をめぐる課題,世の中の課題を解決するために取り組んで来たら,男性保育士が増えてきた」~

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コラム10

男性保育士が活躍している保育園~「保育園をめぐる課題,世の中の課題を解決するために取り組んで来たら,男性保育士が増えてきた」~


(社会福祉法人どろんこ会)

保育士には女性が多く,男性保育士は,少しずつ増えてきたとはいえ圧倒的に少数派である(平成27年国勢調査によると3%程度)。そうした中,東京都,埼玉県を中心に134か所(平成30(2018)年12月現在)の保育所等を運営する社会福祉法人どろんこ会は,積極的に男性保育士を採用し,保育士の10.5%,園長等の管理職の26.6%が男性となっている(平成30(2018)年9月現在)。

どろんこ会で男性保育士が増えてきた背景には,意識的に増やそうと取り組んできた側面と,保育士が長く働き続けることのできる職場になるように取り組んできた結果,男性保育士が増えてきたという側面がある。

意識的に増やそうと取り組んできたのは,約20年前に法人の理事長が初めて保育事業を立ち上げた時から,「保育園でも父親と母親がいるような環境にしたい」,「男性と女性がそれぞれ強みを活かしながら,苦手なところを補いながら助け合っている姿が世の中の自然な姿。小さな子どもたちが目にする保育園の風景も,なるべくそうあって欲しい」という想いを強く持ってきたためである。

また,「保育士という仕事を『飯が食える』,家族を養うことのできる仕事にしたい」という想いから,早いうちから労働環境や処遇の改善に取り組み,保育士のキャリアアップのために人事評価や給与体系を整備することにも力を入れてきた。我が国の現状では,男性は女性と比較して家庭内で経済的な役割が大きいケースが多いため,同法人に男性保育士が居たことで,スピード感を持って整備を進めなければならないということにもなった。そして,保育士が長く働き続けてキャリアパスを描くことが出来る職場になるように取り組んできた結果,さらに男性保育士が増えてきたという側面もある。

保育士のキャリアアップについては,所属する園で実施する研修,エリア単位で実施する研修など,学びの機会を多く設けているという特色がある。また,主体的な学びを大切にする観点から,保育士自身が研修内容を発案・企画する現場主体型研修を実施している。男性保育士の発案により,「川遊び」や「蛇つかみ」など思い切ったアイデアの遊びを保育に取り入れるための研修などが行われている。

男性保育士がいることで,保育の現場で,主観的・感情的判断と客観的・理性的判断とがバランスよく行われるようになった,また,「背中を見せて遊びこむ」という遊びのスタイルにより,子どもの体験がより豊かなものとなったとのこと。また,男性保育士がいることで,園児の父親を園運営に巻き込みやすくなった点も見逃せない。

多様性を強みにする職場という観点から,中途採用にも力を入れており,保育現場でキャリアを積んできた人だけでなく,元百貨店の店長の園長,サービス業での勤務経験のあるマネージャーなど,異業種の経験がある人も多く働いている。どろんこ会は,保育園に加えて,学童保育や発達支援センターなども運営する大規模な法人であり,人事評価や給与体系の整備やマネジメント,また法人の運営方針の決定においては,必ずしも保育の現場だけでは得られない知識や能力を必要とする。異業種での経験からこうした知識や能力を得てきた人々と保育現場でキャリアを積んできた人々とが知恵を出し合うことにより,保育サービスがより良いものとなり,ともすれば旧態依然ともいわれる保育の現場を変革する力になっていくのである。

園児と川遊びをする男性保育士の写真

園児と散歩をする男性保育士の写真

子育てをめぐる環境が変化する中,多様な価値観・経験を有した人々が作り上げる保育の現場は,将来,今よりずっと変化が早く複雑化・多様化する社会で生きていく子どもたちにとっても魅力のあるものとなると考えられる。

どろんこ会では「保育園をめぐる課題,世の中の課題を解決するために取り組んで来たら,結果として男性保育士が増えてきた」と受け止めている。この言葉は,様々な場面で男女共同参画を進める上でも当てはまることだろう。