第1節 高齢者が安心して暮らせる環境の整備

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第9章 高齢者,障害者,外国人等が安心して暮らせる環境の整備

第1節 高齢者が安心して暮らせる環境の整備

1 高齢男女の就業促進,能力開発,社会参画促進のための支援

(1)定年の引上げ,継続雇用制度導入等による65歳までの雇用の確保等

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)では,平成25年4月から,65歳までの希望者全員の雇用が確保されるよう,継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止された。厚生労働省では,これに基づき,65歳までの定年の引上げ,継続雇用制度の導入等の高年齢者雇用確保措置が着実に実施されるよう,事業主への指導・支援に取り組んでいる。

(2)ジョブ・カードによる再就職支援の推進等

高年齢者等の再就職に資するため,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づく求職活動支援書の作成に当たっては,ジョブ・カードを活用することが可能となっており,厚生労働省では公共職業安定所等において積極的に周知している。

(3)シルバー人材センターの支援等

厚生労働省では,定年退職後等の高年齢者に対し,地域の日常生活に密着した臨時的かつ短期的又は軽易な就業を確保・提供するシルバー人材センターを通じて,高年齢者の多様なニーズに応じた就業の促進に努めている。

(4)学習機会の整備等

独立行政法人国民生活センターでは,消費者側の視点から注意点を簡潔にまとめたメールマガジン「見守り新鮮情報」を月2回程度,行政機関のほか,高齢者や高齢者を支援する民生委員や福祉関係者等に向けて配信している。

政府広報オンラインからは,インターネットテレビ(「私は大丈夫!そんなあなたを狙う特殊詐欺」等),ラジオ番組(「振り込め詐欺に騙されるな!」「原野商法の2次被害トラブルに注意!」「金融商品,うまい話には気を付けよう!」)を配信し,消費者への周知活動を行った。

文部科学省では,高齢者の地域参画に関する事例やノウハウを共有し,地域参画に意欲を持つ高齢者と活動の場を結びつける環境整備を促進するため,平成28年3月に東京都豊島区,文京区,大分県別府市,秋田県北秋田市において,高齢者施策に関わる担当者や団体関係者等の参画による「長寿社会における生涯学習政策フォーラム」を開催した。

(5)高齢男女の社会参画の促進

政府は,「高齢社会対策大綱」(平成24年9月閣議決定)に基づき,関係行政機関が連携・協力を図りつつ,施策の一層の推進を図っている。

内閣府では,年齢に捉われず,自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を,「高齢社会フォーラム」等を通じて広く紹介している。

文部科学省では,総合型地域スポーツクラブ等の育成を推進するとともに,いつまでも健康で活力に満ちた長寿社会を実現するため,運動・スポーツに無関心な層等に対して地方公共団体が行う取組へ支援することにより,スポーツを通じた健康増進を推進している。

厚生労働省では,地方公共団体における高齢者の生きがい・健康づくりの推進や老人クラブの活動への支援を行っているほか,「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」に対する支援を行っている。

また,雇用対策法(昭和41年法律第132号)において,労働者の募集・採用における年齢制限が原則として禁止されているところ,年齢にかかわりなく均等な機会が確保されるよう事業主への周知・指導等に取り組んでいる。

2 高齢男女の生活自立支援

厚生労働省では,社会福祉協議会が実施する高齢者の日常生活を支援する事業(日常生活自立支援事業)について,男女別のニーズへの配慮を含め,利用者ニーズに応じて地域包括支援センターや民生委員等とも連携し推進を図っている。

法務省では,判断能力の低下した高齢者等の権利を擁護するため,成年後見人等がその財産管理等を行う民法上の制度である成年後見制度の周知を図っている。

政府は,ハード・ソフト両面にわたる社会のバリアフリー・ユニバーサルデザインの推進に取り組んでいる(本章第2節2参照)。

3 良質な医療・介護基盤の構築等

(1)生活習慣病・介護予防対策の推進

厚生労働省では,平成25年度から「健康日本21(第二次)」を推進するなど,生活習慣病対策の一層の推進を図っている(第11章第1節1参照)。

介護保険制度については,高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう,医療,介護,介護予防,住まい,生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」を構築するため,地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)が平成26年6月から施行されている。

認知症施策については,「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」(平成27年1月厚生労働省公表)に基づき,認知症高齢者等にやさしい地域づくりを推進している。

(2)介護基盤の構築と安定的医療提供体制の整備

厚生労働省では,平成37年の高齢社会に対応できる医療提供体制を構築するため,27年度から都道府県が地域医療構想を策定しており,その実現のため,地域医療介護総合確保基金を活用し,病床の機能分化・連携の推進に向けた取組を行っている。

医師の確保・偏在については,医学部定員の増員を図るとともに,医師不足病院の医師確保の支援等を行う「地域医療支援センター」の取組を中心に,地域医療介護総合確保基金を活用して地域の実情に応じた取組を行っている。また,救急医療の充実を図るため,重篤な救急患者を24時間受け入れる救命救急センター等への財政支援を行っている。さらに,都道府県が策定している医療計画の実効性を高めるため,「医療計画作成支援データブック」の提供や,都道府県職員を対象とした研修の開催等の支援を行っている。

経済産業省では,高齢者や障害者等の自立を支援し,介護者の負担軽減を図るため,福祉機器開発のための実用化支援を行っている(II-9-1表参照)。

総務省では,医療・介護情報の連携基盤の全国展開に向け,在宅医療・介護を含む情報連携のモデル実証を行うなどの取組を推進している。

(3)介護サービスの質の確保等

厚生労働省では,高齢者が介護サービスを適切に選択し,利用できるよう,介護サービス事業者の運営基準の適切な運用を図るとともに,平成18年4月から「介護サービス情報の公表」制度により,都道府県が行う事業所調査,情報の公表等の総合的な支援を行っている。また,介護サービス事業者の参入促進,福祉用具の開発・普及等の施策を推進している。

(4)高齢者介護マンパワーの養成・確保対策の推進

厚生労働省では,介護福祉士,介護支援専門員及び訪問介護員について,養成研修や資質の向上のための研修等を推進するとともに,その内容の充実等を図っている。また,全国の主要なハローワークに設置された「福祉人材コーナー」等において,福祉分野のきめ細かな職業相談・職業紹介,求人者への助言,指導等を実施している。

都道府県に設置されている福祉人材センターにおいては,当該センターに配置された専門員が求人事業所と求職者間双方のニーズを的確に把握した上で,マッチングによる円滑な人材参入・定着支援,職業相談,職業紹介等を実施している。

介護労働者の雇用管理改善のため,平成27年5月,「介護雇用管理改善等計画」(平成27年厚生労働省告示第267号)を改正したほか,労働環境の改善に資する介護福祉機器や雇用管理制度等を導入する事業主への助成,介護労働安定センターによる雇用管理改善のための相談援助や実践力を備えた介護人材の育成を図るための介護労働講習を行っている。また,「魅力ある職場づくり」の必要性やメリットの啓発を行い,更には具体的な取組を促す事業を行った。