第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

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第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

1 総合的な障害者施策の推進

障害の有無にかかわらず国民の誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を実現するため,政府は,平成25年9月に閣議決定した「障害者基本計画(第3次)」に基づき,障害者施策を総合的かつ計画的に推進している。

また,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)の平成28年4月の施行に向け,政府における施策の基本的な方向等を示す「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月閣議決定)に即して,各行政機関等の長は職員に向けた対応要領を,各主務大臣は事業分野ごとの対応指針を作成し,公表した。

さらに,前年に引き続き,全国10か所で「障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム」等を開催し,各地における取組の促進と気運の醸成を図った。

加えて,障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)の施行後3年(平成28年4月)を目途とした見直しに向けて,社会保障審議会障害者部会において,平成27年4月から同年12月にかけて計19回の審議を行い,今後の取組について報告書を取りまとめた。報告書に盛り込まれた事項のうち法律改正を要する事項に対応するため,障害福祉サービス及び障害児通所支援の拡充等を内容とする「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」を28年3月1日に閣議決定し,第190回国会に提出した。

内閣府では,「共生社会」の理念の普及を図るため,「障害者週間」(毎年12月3日から同月9日まで)を中心に,幅広い啓発・広報活動を行っている。平成27年度の「障害者週間」行事では,「障害者フォーラム2015」において,全国から募集した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の最優秀作品の内閣総理大臣表彰等を行うなど多様な事業を実施した。

平成26年1月に我が国が批准し,同年2月に発効した「障害者の権利に関する条約」では,特に,障害のある女性が複合的な差別に直面することがあるとの認識から,第6条「障害のある女子」が定められている。

2 障害者の自立を容易にするための環境整備

文部科学省では,障害のある児童生徒等に対する乳幼児期から成人期に至るまでの一貫した支援を行うため,早期からの教育相談・支援体制の構築,高等学校等における発達障害のある生徒へのキャリア教育の充実,発達障害の可能性のある児童生徒に対する支援に取り組むほか,障害の特性に応じた支援機器等教材の研究開発等を行っている。また,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の発達障害教育情報センターにおいて,発達障害に関する正しい理解や支援等に関する様々な教育情報等を,インターネットを通じて提供し,厚生労働省とも連携をしながら,必要なコンテンツ等の充実を図っている13

政府は,「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」(平成20年3月バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する関係閣僚会議決定)に基づき,障害者,高齢者,妊婦や子供連れの人を含む全ての男女が社会の活動に参加・参画し,社会の担い手として役割と責任を果たしつつ,自信と喜びを持って生活を送ることができるよう,ハード・ソフト両面にわたる社会のバリアフリー・ユニバーサルデザインの推進に取り組んでいる。

また,高齢者や障害者等の自立を支援し,介護者の負担軽減を図るため,福祉機器の開発のための実用化支援,情報バリアフリー環境の整備,高齢者等にやさしい住まいづくり,まちづくり,都市公園,公共交通機関,道路交通環境等高齢者や障害者等が自立しやすい社会基盤の整備を推進している。

さらに,「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(最終改正平成23年国家公安委員会,総務省,国土交通省告示第1号)や「交通政策基本計画」(平成27年2月閣議決定)等に基づき,関係省庁が,住まいづくり,まちづくり,都市公園,公共交通機関及び道路交通環境の整備を推進している(II-9-1表)。

II-9-1表 高齢者や障害者等の自立を容易にする社会基盤の整備別ウインドウで開きます
II-9-1表 高齢者や障害者等の自立を容易にする社会基盤の整備

13国立特別支援教育総合研究所発達障害教育情報センター http://icedd.nise.go.jp/

3 雇用・就労の促進

文部科学省では,障害のある子供が自立し社会参加するために必要な力を培うため,特別支援学校高等部等において職業教育に係る取組を推進している。

近年の障害者雇用状況は,雇用障害者数が12年連続で過去最高を更新するなど,着実に進展している。厚生労働省では,中小企業を中心に更なる障害者雇用の取組を推進するため,中小企業向けの就職面接会を実施するなど,中小企業に重点を置いた雇用率の達成に向けた指導を実施した。

また,精神障害等の多様な障害がある者については,ハローワークと福祉,教育,医療等の関係機関とが連携し,就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」を実施するとともに,求職者へのカウンセリング業務や企業への意識啓発を行う「精神障害者雇用トータルサポーター」をハローワークに配置するなど,障害特性に応じたきめ細かな支援を実施した。

さらに,福祉,教育から雇用への一層の促進に向けて,地域で就労と生活の両面の支援を一体的に行う「障害者就業・生活支援センター」を拡充するとともに(平成26年度325センター→27年度327センター),その機能強化を図るなど,雇用施策と福祉施策が一体となった取組を行った。