コラム7 働き方の工夫で広がる障害者の可能性

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コラム7

働き方の工夫で広がる障害者の可能性


都心のビルの一角にある小さなカフェ。インターネットで「穴場カフェ」との評判もあり,一日400人ほどの客で賑わうこの店は,店員11人のうち8人が障害者(うち女性は5人)である。

店を運営する第一生命チャレンジド株式会社(東京都北区)は,知的障害者や精神障害者を中心に150人(平成28年2月現在。うち女性は57人)の障害者を雇用する特例子会社である。約10年前の設立当初は,親会社から清掃と名刺印刷のみ受託していたが,仕事への「プロ意識」を大切にし,親会社の信頼を得ることで,より難易度の高い仕事へと業務を拡大してきた。受託業務は,障害者のための業務ではなく,あくまで親会社が必要としている業務にこだわる。現在は,親会社の社員だけでなく一般客にも開放された上記のカフェの運営や,個人情報を含む保険手続関係書類の発送,各種データの入力等も行う。

同社は高いレベルのサービスを実現するため,障害者の働き方に工夫を重ねてきた。最初は障害者と健常者の仕事を明確に分けていたが,障害者の仕事の習得のスピードが早く,次のステップに進むことが必要となった。そこで健常者が行っていたリーダー層の仕事を障害者に担わせるようにしたところ,仕事へのやる気や達成感,職場の一体感が高まり,仕事の正確性も向上した。障害者は,細分化した仕事の中から,できる仕事の範囲を自分のペースで少しずつ広げ,一連の作業を習得するとトレーナーとして仲間を育成する立場に昇格する。トレーナーの次はサブリーダー,その次はリーダーと,職位昇格は健常者と同様の制度下にある。労働時間も,フルタイム勤務が基本であるが,体調等により短時間勤務を認める等,個人の状況に合わせて無理のない時間で勤務を続けられるような体系を整えている。

同社によると,障害者のうち女性は,男性に比べて求職者が少ないという。しかし,より責任のある仕事や困難な仕事へのチャレンジを通じ,社会の担い手として活躍できる余地はまだ沢山ある。

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