第1節 配偶者等からの暴力の実態

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第1節 配偶者等からの暴力の実態

(配偶者からの暴力についての被害経験)

内閣府「男女間における暴力に関する調査」(平成26年)によると,これまでに結婚したことのある人(2,673人)のうち,配偶者(事実婚や別居中の夫婦,元配偶者も含む。)から「身体に対する暴行」,「精神的な嫌がらせや恐怖を感じるような脅迫」,「生活費を渡さないなどの経済的圧迫」又は「性的な行為の強要」のいずれかについて「何度もあった」という者は女性9.7%,男性3.5%,「1,2度あった」という者は女性14.0%,男性13.1%となっており,1度でも受けたことがある者は女性23.7%,男性16.6%となっている(I-4-1図)。

I-4-1図 配偶者からの被害経験(男女別)別ウインドウで開きます
I-4-1図 配偶者からの被害経験(男女別)

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(配偶者間における暴力の被害者の多くは女性)

配偶者間における暴力の被害者は,多くの場合女性であることが明らかになっている24。平成26年に検挙した配偶者(内縁関係を含む。)間における殺人,傷害,暴行事件は5,807件であり,そのうち5,417件(93.3%)は女性が被害者となった事件である。

女性が被害者となった割合を犯種別に見ると,殺人は157件中92件(58.6%)とやや低くなっているが,傷害は2,697件中2,550件(94.5%),暴行は2,953件中2,775件(94.0%)と高い割合になっている(I-4-2図)。

I-4-2図 配偶者間(内縁を含む)における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者の男女別割合(検挙件数,平成26年)別ウインドウで開きます
I-4-2図 配偶者間(内縁を含む)における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者の男女別割合(検挙件数,平成26年)

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24数値については解決事件を除く。解決事件とは,刑法犯として認知され,既に統計に計上されている事件であって,これを捜査した結果,刑事責任無能力者の行為であること,基本事実がないことその他の理由により犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件をいう。

(増加傾向にある夫から妻への暴力の検挙件数)

配偶者間における犯罪のうち,女性が被害者であるものの検挙件数の推移を罪種別に見ると,平成26年は傷害が2,550件,暴行が2,775件と前年と比較して急増した25(I-4-3図)。

I-4-3図 夫から妻への犯罪の検挙状況別ウインドウで開きます
I-4-3図 夫から妻への犯罪の検挙状況

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25脚注24に同じ。

(夫からの暴力を理由とする婚姻関係事件数)

平成25年度の家庭裁判所における婚姻関係事件の既済総件数は6万6,824件となっており,そのうち妻からの申立て総数は4万8,479件,夫からの申立て総数は1万8,345件となっている。

妻からの申立ての動機は,「性格が合わない」(44.4%)に次いで「生活費を渡さない」(27.5%)が多く,さらに「精神的に虐待する」(24.9%),「暴力を振るう」(24.7%)等,夫からの暴力が大きな動機の一つとなっている(I-4-4図)。

I-4-4図 婚姻関係事件における申立ての動機別割合(平成25年度)別ウインドウで開きます
I-4-4図 婚姻関係事件における申立ての動機別割合(平成25年度)

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(配偶者暴力相談支援センター等への相談件数等)

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律26(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)では,都道府県における配偶者暴力相談支援センターの設置が義務(市町村は努力義務)とされている。

配偶者暴力相談支援センターの数は毎年度増加しており,平成27年3月現在,全国247か所(うち市区町村が設置する施設は74か所)が配偶者暴力相談支援センターとして,相談,カウンセリング,被害者やその同伴家族の一時保護,各種情報提供等を行っている。25年度に全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数は9万9,961件で,年々増加している(I-4-5図)。

平成26年の警察における配偶者からの暴力事案等認知件数は5万9,072件で,法施行後最多となっている(I-4-6図)。また,警察庁「平成26年中のストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等の対応状況について」によると,配偶者からの暴力事案等における検挙件数は6,992件で,刑法等の適用による検挙が6,875件,保護命令違反による検挙が120件である。

I-4-5図 配偶者暴力相談支援センターへの相談件数別ウインドウで開きます
I-4-5図 配偶者暴力相談支援センターへの相談件数

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I-4-6図 警察における配偶者からの暴力事案等認知件数別ウインドウで開きます
I-4-6図 警察における配偶者からの暴力事案等認知件数

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26配偶者暴力防止法は,これまで3度の改正を経ており,第1次改正(平成16年12月施行)においては,被害者と同居する未成年の子への接近禁止命令も発令できることとされた。第2次改正(20年1月施行)においては,生命・身体に対する脅迫を受けた者についても,身体に対する暴力によりその生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には,保護命令を発することができることとなったほか,被害者への接近禁止命令の実効性を確保するため,接近禁止命令の発令されている間について,被害者の親族等への接近禁止命令も発することができることとされ,さらに,被害者への面会の要求や無言・夜間の電話等を禁止する電話等禁止命令も新設された。第3次改正(26年1月施行)では,生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係にある相手からの暴力及びその被害者についても法の適用対象となった。

(婦人相談所一時保護所(委託を含む)並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設への入所理由)

平成25年度の婦人相談所一時保護所(委託を含む。)への入所理由のうち「夫等の暴力」を挙げた者の割合は,71.3%となっている。婦人保護施設及び母子生活支援施設の入所理由を見ると,「夫等の暴力」を挙げた者の割合はそれぞれ43.2%,54.4%となっている。いずれの施設においても,「夫等の暴力」を理由とする入所が最も高い割合となっている(I-4-7図)。

I-4-7図 婦人相談所一時保護所(委託を含む)並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設への入所理由(平成25年度)別ウインドウで開きます
I-4-7図 婦人相談所一時保護所(委託を含む)並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設への入所理由(平成25年度)

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(シェルター設置状況)

シェルター(配偶者からの暴力等から逃れてきた女性のための一時避難所)として利用できる施設で法律に設置根拠があるものとしては,婦人相談所,婦人保護施設及び母子生活支援施設がある。婦人相談所は売春防止法(昭和31年法律第118号)に基づき,全国に49か所(平成26年4月1日現在),婦人保護施設は同じく売春防止法に基づき,全国に48か所(公営22か所,民営26か所(26年4月1日現在)),母子生活支援施設は児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づき,全国に247か所(公立118か所,私立129か所(26年10月1日現在))がそれぞれ設置されている。

このほかに,民間の団体等が自主的に運営している民間シェルターがあり,被害者の保護や自立支援をきめ細かく行うなど,配偶者からの暴力の被害者支援に関し,先駆的な取組を実施している。

(保護命令の申立て及び発令状況)

配偶者暴力防止法では,被害者の申立てにより,裁判所が加害者に対し接近禁止命令又は退去命令を発する保護命令の制度を創設し,この命令違反に対して刑事罰を科すこととしている。

最高裁判所によると,法施行(平成13年10月)後から26年12月末までに終局した保護命令事件3万5,094件のうち,申立書に配偶者暴力相談支援センターへの相談等の事実の記載のみがあったのは4,599件,警察への相談等の事実の記載のみがあったのは1万7,671件,双方への相談等の事実の記載があったのは1万2,063件となっている。また,申立書に宣誓供述書が添付されたのは631件となっている。

終了した事件のうち,保護命令が発令された件数は2万7,799件(79.2%),そのうち被害者に関する保護命令のみ発令されたのは1万1,653件(41.9%)となっている。また,被害者に関する保護命令に加えて,「子」及び「親族等」への接近禁止命令が同時に発令されたのは3,492件(12.6%),「子」への接近禁止命令が発令されたのは1万919件(39.3%),「親族等」への接近禁止命令が発令されたのは1,735件(6.2%)となっている(I-4-8表)。

法施行後平成26年12月末までの間に保護命令が発令された事件の平均審理期間は12.7日となっている。

I-4-8表 配偶者暴力に関する保護命令事件の処理状況等について別ウインドウで開きます
I-4-8表 配偶者暴力に関する保護命令事件の処理状況等について

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