第6節 女性の活躍による経済社会の活性化

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第6節 女性の活躍による経済社会の活性化

少子高齢化による労働力人口の減少が進む中で,日本の強い経済を取り戻すためには,女性の活躍推進が不可欠である。

こうした認識の下,平成25年4月,内閣総理大臣から経済界に対し,「『2020年30%』の政府目標の達成に向けて,全上場企業において積極的に役員・管理職に女性を登用する。まずは役員に一人は女性を登用する。」,「子どもが3歳になるまで育児休業や短時間勤務を取得したい男女が取得しやすいように職場環境を整備する。」の2点を要請した。

平成25年2月から開催された若者・女性活躍推進フォーラムでは,5月に議論を集約し,直面する課題と抜本的解決に向けた具体的方策を盛り込んだ「我が国の若者・女性の活躍推進のための提言」を取りまとめた。

「日本再興戦略」においては,これまで活かしきれていなかった我が国最大の潜在力である「女性の力」を最大限発揮できるよう,「出産・子育て等による離職の減少」,「指導的地域に占める女性の割合の増加」に向けた施策を盛り込んだ。

施策の1つ目の柱は,女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与等である。企業によるポジティブ・アクション等の取組を通じた女性の活躍促進や,仕事と子育て等の両立支援への取組は,中長期的には企業の持続的な成長を可能とし,企業価値を高めることにつながるが,成果が現れるまでには一定の時間を要するため,企業の自主的な取組を政策的に後押ししていく必要がある。このため,企業へのインセンティブ付与等として,ポジティブ・アクションに係る一定の研修プログラムを実施する事業主への新たな助成金制度を創設するほか,仕事と家庭の両立支援に積極的に取り組む企業に対する税制上の措置の活用等を図ることとしている。また,内閣府のホームページやコーポレート・ガバナンス報告書を通じた,企業における女性の活躍状況の「見える化(可視化)」の推進,女性の登用状況の「見える化」に優れ,登用の実績が上がった企業を対象とした総理表彰の創設,女性の社外役員候補者のデータベース化等に取り組むこととしている。

2つ目の柱は,女性のライフステージに対応した活躍支援である。働きたい女性が,仕事と子育てとの二者択一を迫られることなく働き続けることが可能となれば,「M字カーブ問題」の解消につながるだけではなく,仕事に必要となる知識やスキルの向上,キャリアの形成を図ることが可能となる。このため,育児休業給付の給付率を見直すほか,育児休業中や復職後の能力アップに向けて,キャリア形成促進助成金に「育休中・復職後等能力アップコース」を新設することとしている。併せて,次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号。以下「次世代法」という。)の延長・強化を図るとともに,「イクメン企業アワード」の創設など男性の家事・育児参画等を推進することとしている。このほか,企業ニーズに即した大学等における社会人・女性の学び直しの支援など再就職に向けた支援や,女性の起業・創業等地域需要を起こすビジネスへの支援を展開することとしている。

3つ目の柱は,男女が共に仕事と子育て・生活等を両立できる環境の整備である。ワーク・ライフ・バランスの推進に向けた雇用環境の整備として,長時間労働の抑制や多様で柔軟な働き方を促進するため,テレワーク普及に向けた新たなモデル確立の実証事業を実施するほか,労働時間法制の見直しについて,ワーク・ライフ・バランスや労働生産性の向上の観点から,労働政策審議会において総合的な議論を行うこととしている。また,子育てに係る社会基盤を整備するため,待機児童解消加速化プランを展開することとしている。

さらに,「成長戦略進化のための今後の検討方針」では,その最初に「「女性が輝く日本」の実現」が掲げられており,平成26年年央の成長戦略改訂に向けて政府一丸となって検討を進めている。具体的には,企業における女性登用の促進や男女がともに豊かな生活とキャリアアップを両立できる職場・社会づくり,女性の活躍を支える社会基盤整備について検討を進めている。また,女性が輝く社会の実現に向けたムーブメントとして,地域においても,情報発信・意見交換を積極的に行い,女性の活躍のためのプラットフォームの構築を支援することとされており,26年3月には輝く女性応援会議を開催した。

内閣府では,女性の活躍推進に向けた企業の取組を,投資家,就業希望者,消費者等から「見える」ようにし,当該企業が市場で評価されることを通じて,企業の自主的な取組が他の企業にも波及していくような好循環を実現するため,企業における女性の活躍状況の「見える化(可視化)」を推進している。具体的には,平成26年1月に「女性の活躍『見える化』サイト」9を開設し,上場企業のうち公表について了解があった1,150社( 全上場企業の32.4%)について,役員・管理職の女性比率や女性登用に関する目標のほか,男女別の勤続年数,新卒者の定着率,育休の取得者数・復職率,残業時間,年休取得率等13項目のデータを公表している。

9内閣府 女性の活躍「見える化」サイト http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/mierukasite.html

また,資本市場における女性の活躍状況の「見える化」(可視化)の取組として,平成25年4月に各金融商品取引所が実施した「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載要領改訂に合わせて,上場企業に対し,女性の活躍状況を積極的に開示するよう働きかけを行った。さらに,本改訂後の同報告書での役員への女性の登用状況等の記載について,開示状況の整理・把握,好事例の選定,諸外国制度の調査を実施した。その結果は,26年2月に開催した企業の役員や投資家等を対象としたシンポジウム「「女性の活躍」と非財務情報の開示~経営戦略としての取組に向けて~」等において公表し,上場企業に対して一層の開示促進を働きかけた。

厚生労働省では,個別企業に対し,ポジティブ・アクションの取組と併せ,企業の取組内容等を閲覧・検索できる「ポジティブ・アクション応援サイト」や自社の女性活躍推進についてサイト上で宣言できる「女性の活躍推進宣言コーナー」等各種コンテンツを備えた「ポジティブ・アクション情報ポータルサイト」を活用した女性の活躍状況の情報開示を働きかけるとともに,当該サイトによりポジティブ・アクションに関する総合的な情報提供を行っている。

経済産業省では,平成24年度から女性等の多様な人材をいかす経営に取り組む企業を表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」を開始し,二年目の25年度は,大企業25社,中小企業21社の計46社を選定した。ダイバーシティ企業の取組を発信し,積極的に取り組む企業の裾野の拡大を通じて,女性活躍推進の加速化を図っている。

また,この「ダイバーシティ経営企業100選」との相乗効果を狙い,女性活躍に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」の発表を東京証券取引所と共同で実施しており,二年目の25年度は,26社を選定した。