第2節 非正規雇用における雇用環境の整備

本編 > 2 > 第5章 > 第2節 非正規雇用における雇用環境の整備

第2節 非正規雇用における雇用環境の整備

1 同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の取組の推進

(1)パートタイム労働法に基づく均等・均衡待遇の推進と事業主の取組への支援

厚生労働省では,パートタイム労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「パートタイム労働法」という。)に基づく是正指導や専門家による相談・援助のほか,事業主に対する職務分析・職務評価の導入支援や助成金の活用等により,正社員との均等・均衡待遇の確保,正社員転換の実現のための取組を推進している。

(2)有期契約労働者,派遣労働者の待遇の均衡等の検討

厚生労働省では,平成25年4月に全面施行された,有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に,労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みの導入等を内容とする,労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)の内容について周知・啓発を行った。

また,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)では,派遣労働者の賃金等の決定に当たり,同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮する旨の規定等が盛り込まれており,同法の趣旨や内容について周知・徹底を図っている。さらに,今後の労働者派遣制度の在り方については,平成26年1月に,労働政策審議会において,派遣労働者の均衡待遇の更なる推進を図る内容を含む建議がなされ,2月に労働者派遣法改正法の法律案要綱について答申が行われた。これらを踏まえ,労働者派遣事業を全て許可制とし事業の質の向上を図ることや,派遣期間制限を見直すこと,派遣労働者の均衡待遇やキャリアアップの推進を図る等の内容が盛り込まれた「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」を第186回国会に提出した。

2 公正な処遇が図られた多様な働き方の普及・促進

有期契約,パート,派遣労働者等の非正規雇用には,企業側の人材ニーズや労働者に様々な働き方の選択肢が提供されるなどの面もあるが,雇用が不安定,賃金が低い,能力開発機会が乏しいなどの課題がある。

厚生労働省では,非正規雇用の労働者の雇用の安定や処遇の改善を図るため,正規雇用への転換,人材育成,処遇改善など,企業内でのキャリアアップを支援するための総合的な対策として,「有期・短時間・派遣労働者等安定雇用実現プロジェクト」を実施した。具体的には,正規雇用転換,人材育成,処遇改善など非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進する事業主に対する包括的な助成措置としてキャリアアップ助成金を創設し,その活用の上で,配慮するよう努めることが望ましい事項をまとめた「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン~キャリアアップ促進のための助成措置の円滑な活用に向けて~」の周知等を,ハローワークが中心となって推進している。

また,「日本再興戦略」を受けて,職務等に着目した「多様な正社員」モデルの普及・促進を図るため,成功事例の収集,周知・啓発を行うとともに,平成25年9月より,「「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会」を立ち上げ,議論を行った。

3 パートタイム労働対策の総合的な推進

(1)パートタイム労働者の適正な労働条件の確保

厚生労働省では,パートタイム労働法に基づく是正指導や専門家による相談・援助等,正社員との均等・均衡待遇の確保,正社員転換の実現のための取組を推進している。さらに,平成19年のパートタイム労働法改正法附則に置かれた検討規定を踏まえ,労働政策審議会雇用均等分科会において今後のパートタイム労働対策の在り方について検討を行い,24年6月に建議がなされた。この建議に基づき,パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保や納得性を高めるための措置等の更なる充実を内容とする「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案」を第186回国会に提出した。同法案は,26年4月16日に可決・成立した。

(2)パートタイム労働者への年金制度の適用

現行の制度では,所定労働時間が正社員の4分の3未満(週30時間未満)の者は,被用者であっても社会保険(厚生年金・健康保険)の適用を受けていない。

被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者に社会保険を適用し,セーフティネット機能を強化するとともに,社会保険制度における,働かない方が有利になるような仕組みを見直すことで女性の就業意欲の促進を目指す,という観点から,「短時間労働者への社会保険の適用拡大」が年金機能強化法に盛り込まれている。適用拡大は,平成28年10月から施行されることとされており,その円滑な施行に向けて,必要な準備や周知に取り組んでいる。

具体的な適用基準は,(ア)週20時間以上(イ)月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)(ウ)勤務期間1年以上(エ)学生は適用除外(オ)従業員501人以上としており,法律施行後3年以内に,検討を行うこととしている。