平成23年版男女共同参画白書

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第1節 ポジティブ・アクションの概念

1 ポジティブ・アクションに関連する条約,我が国が定める法律

(1) 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約における規定

女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第4条1では,「締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは,この条約に定義する差別と解してはならない。ただし,その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなつてはならず,これらの措置は,機会及び待遇の平等の目的が達成された時に廃止されなければならない」と暫定的特別措置について規定している。

(2) 我が国におけるポジティブ・アクションの関連規定

ア 男女共同参画社会基本法第2条第2号において,積極的改善措置につき「前号に規定する機会(男女が,社会の対等な構成員として,自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会)に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において,男女のいずれか一方に対し,当該機会を積極的に提供すること」と規定している。

イ 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第8条において,女性労働者に係る措置に関する特例として「前三条の規定(性別を理由とする差別の禁止,性別以外の事由を要件とする措置)は,事業主が,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。」としている。

2 本白書におけるポジティブ・アクションの整理

本白書においては,以下のパターンを全て包含した概念として,「ポジティブ・アクション」という文言を使用する。

(1) 当該措置の対象者

  • 「女性のみ」など男女のいずれか一方のみを対象とした措置
  • 男性と比較して女性を有利に取り扱う措置
  • 男女双方に同様に講じられる措置

(2) 当該措置の講じられる期間

  • 男女間の格差が解消されるまでの間の暫定的な措置
  • 当該措置の目的が必ずしも男女間の格差の解消にとどまるものではないため,男女間の格差が解消された後も継続されることも考えられる措置

ポジティブ・アクションの内容に着目すると,(ア)クオータ制(性別を基準に一定の人数や比率を割り当てる手法),(イ)ゴール・アンド・タイムテーブル方式(女性の参画拡大に関する一定目標と達成までの期間の目安を示してその実現に努力する手法),(ウ)女性を対象とした応募の奨励,研修,環境整備,(エ)仕事と家庭の両立支援,子育て支援等に分類できる。