仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会

  1. 日時 平成13年3月16日(金) 10:00 ~12:30
  2. 場所 内閣府3階特別会議室
  3. 出席者
    樋口会長、島田会長代理、猪口委員、岩男委員、河野委員、櫻井委員、佐々木委員、島田(祐)委員、田尻委員、八代委員
  4. 議事
  5. 議事内容
    樋口局長
    ただいまから男女共同参画会議仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会の第3回目を開催いたします。本当に皆様お忙しいところを御出席いただきましてありがとうございます。
     本日の議題は大きく分けて2つございまして、前回に引き続き最初に仕事と子育ての両立についてヒアリングを行います。前回から引き続いてということで、本日は企業側からのお話を伺うこととして、株式会社リコーの浜田広取締役会長にお越しいただいております。皆様御承知のように、多くの日本企業においては必ずしも仕事と子育ての両立支援に関する取り組みが進んでいるとは言えない状況でございます。その中にございまして、リコーは仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組んでおられる企業の一つとしてよく知られております。本日は浜田会長にリコーの会長としてよりは、むしろ日経連の副会長というお立場から、リコーでは取り組んでいるけれども、なぜ日本の企業が仕事と子育ての両立支援にいま一つ積極的に取り組めずその成果を示せないでいるのかという理由や、経営サイドから見てどのような障害や問題点があるのかということについて忌憚のないところをお話いただきたいと思います。あえて本日浜田会長には私どもの会で悪役を演じていただきまして、どうぞ本当に忌憚のないところで、そしてリコーがお進めになっているのはその中でどうすれば進めることができたのか、私どもは企業の方の御意見を是非伺いたいと思っておりましたのでよろしくお願いいたします。
     浜田会長が終わりましたら、この専門委員の中で河野委員から御説明を伺うという順序で進め、その後は中間報告の自由討議と、これが今日の議題でございますのでよろしくお願いいたします。
     それでは浜田会長、約20分くらいで、今、私どもの期待するところをお話いただけませんでしょうか。
    浜田説明者
    ただいま樋口会長から大変御懇切な御紹介をいただきました浜田でございます。
     いろいろ御要望をちょうだいしましたけれども、実は事務局からは、企業の現状を踏まえてあなたの考え方を聞かせてくれと、これだけの要求でしたので、御期待にこたえられるかどうかとは思います。
     それから、樋口会長の御紹介の中で1つだけ間違いがありましたので訂正させていただければと思いますが、非常にこのテーマで進んだ事例としてというお言葉がありましたが、実は恥ずかしながら先行事例にはなかなかなりにくい、日本の企業のいわゆる平均像といいますか、大体普通の会社はこんなものですという辺りの実例としてお聞きいただければと存じますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
     レジュメを1枚だけ付けさせていただきました。私どもの会社の中でいわゆる育児支援制度というものはほとんど育児休職制度が代表しておるような状況でありますので、ここでは育児休職制度という表現にさせていただきましたが、それの利用状況の数字を最初に見ていただこうと思います。現在育児休職中の方が102名、うち女性が101名、男性が1名でございます。それから、完全休職ではなくて短時間勤務をなさっている方が38名、合計しまして140名いらっしゃるということです。女性従業員の総数が、これはリコー本体だけの数字でありますけれども1,660名、そのうち140名ですから11人に1人か12人に1人は育児休職中という勘定になるんでしょうか。
     それから、この制度がスタートしましたのが1990年の4月1日、ちょうど10年ぐらい前になります。それ以降の利用者の延べ数はこの140名を含めて634名です。その中で1年なり2年なり、一応2年までということに現在はなっておりますけれども、その期間内で休職のみを利用された方が312名、それからある期間は完全休職だけれどもある期間以降は本人の希望もあって短時間勤務を途中から加えるという併用型が292名で、ほぼ同数です。それから、6週間の産前休暇、8週間の産後休暇、有給休暇を休んだ後に続けて短時間勤務という方が30名、少数ですけれどもいらっしゃるということであります。
     それから、休んでいる間は代替要員が必要になるわけですね。つい最近、ある雑誌をめくっていましたら1ページ広告で21世紀職業財団の広告が出ておりまして、代替要員を用意する企業に15万円補助すると出ておりました。そんなことまで補助金を出してくれるところがあるのかと思って、改めてこの代替要員というのを考えさせられたんですけれども、当社の人事部の人たちに代替要員はどうしているのかといろいろ聞きましたところ、3つ方法があるとのことでした。1つ目はその方が休業なさっている間、会社では人派と呼んでおりますけれども、人材派遣会社にお願いをして、同じ仕事が勤められそうな人を契約社員として所定の期間だけ代替要員で仕事をしていただく。2つ目が、1,660名もいるわけですからどこかに余裕のある部署はないかと。そこでこなせそうな女性の方がいらっしゃったら人事異動で後をカバーするという方法。それから3つ目の方法が、一切人の異動はしないでその女性がやっておられた仕事を全部残りでカバーしてしまう。その期間は残った人たちでやってしまおうという方法です。
     今までの事例として人材派遣で補ったのはほぼゼロ、ほとんどないんだそうです。そして、6割から現在7割の方に向かっておりますのが最後の残った人でカバーするというやり方ですね。といいますのは、会社も1990年代に入りましてからは人をどちらかというと減らしぎみできておりますので、どこからか人を回すということがなくなってきた。だから、もうしようがない、後の残った人たちでカバーしようというのが7割ぐらいになってきている。残りの異動で何とかカバーするというのが4割から3割になりつつあるという状況のようであります。
     さて、2年終わりまして、復職したいとなります。当然復職を受け入れるというシステムですから、今までのところ希望があった方の受入率は当社の場合は100%であります。約束だったけれども、休んでいる間にあなたの仕事はほかの人ができるようになって、今、急にはほかに仕事はないよということはありません。約束はきちんと守るということでやっておりまして、復職後の状況として休職開始前の職場に100%復職できるようにしてありますが、仕事の内容と量が全く同じかというと、半分未満が本人の希望もあってより軽い仕事にしばらくは就かせてほしいとなります。特に大詰めにきますと残業、残業という部も結構ありますので、そこはできれば遠慮したいということで、出産前よりは軽い仕事を希望される方が半分はいらっしゃって、そのように対応しているということであります。前半は会社の状況ということです。
     それから2番目に私の個人的な感想、考え方等を若干ここに加えさせていただきました。育児と仕事の両立ということなんですけれども、大変難しいテーマで、簡単であればこのような委員会はないだろうと思います。ただ、その両立というときに、誰のための両立か、軸足をどちらに置いた両立議論かというのは大変重要ではないかと会社で私はしょっちゅう言っているんです。会社は仕事をする集団ですから、仕事に軸足を置いて両立と考えがちなんですけれども、私はこのケースだけはいわゆる育児というお子様、ゼロ歳から数歳までの間の乳幼児が主役でありますので、乳幼児を育てるのを100点としたら100点から減らさないで、完全に休んでしまえば100:0なのを100:10、20、50、と、育児の100を減らさないで仕事をプラスする方法はないのかというのをこれでもかこれでもかと考えるのを両立と言うんだ。育児の方を50%手を抜いて仕事の方に50%回せた。50:50で両立しました。こんなものは私は両立とは言わないというような感覚で、育児という方に絶対必要条件と、加えられたらなおいいという十分条件という置き方をしておりまして、前から3歳までは母親の手で母親が身近にいて育てるというのを大前提にしたいし、してほしいということを言い続けております。
     そして、母親が近くにいて3歳ぐらいまではスキンシップで育てるということをフルに維持しながら、なるべく早く仕事が始められる方法ということで、私ども業界用語でSOHO、スモールオフィス・ホームオフィスの後ろの方のホームオフィスがあります。従来会社でやっていた仕事の100%とはいかないけれども5~7割は家でできる職種というのがあるだろうということで、家でできないかというのを前から言っておりますが、まだ今までのところ実例は難しゅうございましてないんです。
     ただ、私どもにソフト研究所というのがありまして、そこは女性の社員でフルに能力を発揮いただいている方が結構いらっしゃるんですけれども、ソフトウェアプログラミング、コンピュータ関係のソフトの関連の仕事をやっている集団とか、それから総合デザインセンターという商品の最終的なデザインや何かをやっている集団があるんですが、そこの方々は家でもかなり仕事が可能かなということでテストをしているというレベルであります。だけど、これができる職種をどれだけ会社として広げられるかということにトライしていくべきかなと思っております。
     それから、よく言われておりますし、私も東京経営者協会の会長という立場もありまして、都に過去2年要望書を出した中に、東京都は保育所、託児所が足りない、増やす方向でやってくれというのをずっと出し続けております。島田会長代理の最近の『インテリジェンス』も昨日たまたま拝読しましたけれども、地方はむしろ余りぎみなのに大都市部は絶対的に足りないという状況のようでありますが、これは是非増設をお願いしたい。ただ、このときやはり保育所というのは自宅に近い、自宅から電車で通勤するときの最初に乗る駅の近くというのが私は絶対条件なのではないかなと思っておりますので、そういう意味では、私どもが会社として仕事と子育てを両立していただくための第2番目ですけれども、実態上は住宅地の駅の近くに公的または民間の信頼できる保育所が多いのが第1番目の絶対必要条件かなと思います。
     それから、その次にちょっと変なことが書いてありますが、3歳までは母親の手でと言うが、どうして父親の手じゃだめなんだという反論があるんですけれども、子どもの立場に立って考えれば、私だったら3歳までは父親でなく母親でなければだめだと、こういうような感覚で物を言わせていただいておるわけです。最近いろいろな新聞、テレビ、報道その他の社会状況を拝見しますと、産むことはできたけれども育てることがだめというレベルの親、あえて母親とは言いませんけれども、私の感覚からいきますと主として母親がかなり増えているようです。そうしますと、子どもの立場で考えたときにそのレベルの家庭で産まれたお子さんはどうするんだと。ここから先は私のテーマじゃありませんので難し過ぎて大変なんですけれども、そういうところのお子さんはなるべく早く親元から離してあげる方がお子さんのためにいいのではないか。こういう家庭はゼロだという前提で私はずっと物を言い続けてきたんですけれども、どうもゼロではなさそうだ、仮に今わずか3%か5%とはいえどうも増えていく方向にありそうだなと。産んだけれども、子育て自体が面倒臭くて我慢できなくて嫌だというような親が多そうですので、私はこれに関しては3歳までは絶対母親という自説を曲げて、産まれたらなるべく早く専門の使命感に燃えた優しいお兄さんお姉さんに手をかけていただく方がいいのではないかということであります。
     それからまた、もっと変なことがその次に書いてありますけれども、実は数年前に選挙権を20歳から18歳まで下げたらどうかという議論がありましたときに、私はそれはナンセンスじゃないかと。最近の18歳は昔の15歳なので、そんなことは意味がない。下げるのならばゼロ歳児まで下げていただきたいということで、今まじめに提案をしております。最初からそんなのナンセンスだ、そんなことはできっこないというのはやる気のない人の言うことで、やればできることなのです。今の政治の状況は、あれは選挙民の選挙意識が低い表れだ、悪いのは選挙民の我々なんだと、最後の答えはこうなるんです。すると、選挙民の選挙意識をどうやって高めるかとなりますが、そこから先は何も提案がないんです。私のこれは一つの提案だと思うんです。
     今日のテーマにも極めて関係のある提案だなと思ってここに加えたんですけれども、子どもを持っているお父さんお母さんが19歳までは子どもの分まで投票するということなんです。そうしますと、自分の投票、選挙権ではないですから責任意識が倍加します。この子たちの将来の日本のためにどの政治家が一番考えて動いてくれているかという目で見るんです。今の自分の選挙権を行使するのと違う目で見るため、今、余りにも政治が短期思考になっていますので、少々長期で物を考える政治家に投票するようになる。それが選挙民の目覚めというのではないかという意味でこれは提案しております。世界に例がないそうでありますけれども、日本の現在の少子化状況とか、その他のもろもろの状況は世界に例のない、憂うべきレベルです。ですから、世界がびっくりするような、世界に先駆けたこういう着手、提案があってもいいのではないかと思います。
     政と官に言いますと、これを提案した途端に、ナンセンスだ、そんなものは世界に例がないと言われたんです。これは自民党の当時の選挙改革委員会委員長をなさっていた方ですけれども、ちょっと待ってください、こういう意味なんですと言ったら、その方は偉いですね。なるほど、そういうことならば一考の価値はあるなと言って前言を変えられました。大した期待はしていませんけれども、そうしますと3,000万票増えます。3,000万票は子どもを育てるために責任意識が旺盛なる父親、母親が投票しますから、ほかの残りの9,000万票より質のいい票数が増えるということになるのではないかと思います。
     それから最後の3番目に、企業として日本として大変重要なこのテーマにどれだけのことができるのか、やらなきゃいかぬのかということで、従業員に対してはこういうことをやっているわけですが、実はつい1か月ぐらい前、「よい会社とは」というシンポジウムに私が出席しましたときに、アメリカから選ばれた代表がジョンソン・アンド・ジョンソンで、企業内託児所をもうかなり前、何十年も前からやっているというような御発言がありました。さすがだなと、アメリカでもやはりいい会社と言われているところはそこまでやっているんだなと思いましたけれども、これが当社の中でできるかというのを議論しますと、これは誠に難しいですね。本体だけで1万2,000人いるとはいえ、日本じゅうに散らばっているわけですね。そして、一事業所というのはそう数は多くない。そこに女性の方々と言ったら本当に数えるほどしかいらっしゃらない。そこの方がたまたま1人出産、そこで育児所をやると言ってもなかなかそれは難しい。大きな工場とか何とかならば、あるいは可能かなと思いますけれども。
     それから、最後にこれは時代逆流だと言って人事部から抵抗を受けているんですけれども家族手当です。日本の給与体系はいわゆる永年勤続、終身雇用ということも前提にした構成手当がいっぱいいろいろな種類がある。それを全部まとめて、役員というのは報酬一本ですからあとは何の手当もございませんが、社員もその仕事の職種に応じて、その人の能力に応じて報酬一本という方へどんどん今なだれをうって進みつつあります。その中で私は、ちょっと待て、せっかくそういう大変革をするのならば、ほかは全部削ってもいいから家族手当だけは増額してくれということを言っているんです。家族手当も当社の場合は結婚しますと配偶者に対して月に2万2千円です。そして第1子9千円、第2子も9千円、あとは減らしているケースもあるようですけれども、私どもはずっと9千円でやっております。
     それを、例えば極端に言えば配偶者手当をゼロにしろと。第1子に対して3万円、第2子4万円、第3子5万円、合計十数万円という家族手当はないのかというのを検討させているんです。時代逆行だという抵抗を受けながらも、日本の状況を見てみろ。結婚して配偶者ができた。共働きをしているけれども、子どもなんかつくらない。それに2万2千円ずつ毎月なぜ金を差し上げなければいけないんだ。結婚して人もうらやむような生活をしている。勝手にしろ、金なんか出すな、ということです。今まで出しているのを削るというのは大変ですから、私が今言ったようにはなかなか改正はできないと思いますけれども、結婚によって家族手当を出すのではなくて出産と同時に家族手当のかなりの額を出すという方法はないのかというのを真剣に私は提案しております。
     ちょっと時間をオーバーしましたけれども、以上御参考になったかどうかわかりませんが、御説明を終わらせていただきます。
    樋口会長
    本当に的確な御説明をありがとうございました。会長さんは冒頭に平均的とおっしゃいましたけれども、やはり進んでいるんじゃないでしょうかというのが伺っての感想でございますが、10分ほど質疑をいたしたいと思います。
    岩男委員
    非常に興味深いお話をありがとうございました。幾つか御質問と、それからお考えを伺いたいと思います。
     第1点は休職中、2年が限度とおっしゃいましたけれども、その間に、その職種にもよると思うんですが、会社の方から情報を提供するなり何なり、コンタクトを取りながら、休んでいる間に職業人としての能力がさびつかないように何らかの方法を講じておられるかということです。
     2番目に、復帰後、本人の希望で半分ぐらいの方がより軽い仕事を選ばれるということでしたけれども、その場合残業はもちろんないということだと思いますが、ペイ自体が下がるのかということです。
     3番目には、代替要員として結局3番目の方法ということで残りの同僚が分担するというお話が6、7割ということでしたけれども、別の言い方をすると結局残りの人にしわ寄せがいくということになるんだと思うんです。それを何らかの形でしわ寄せを受ける側にコンペンセートするようなことがあるのかどうか。
     4番目に、リコーさんの場合にも男性はまだ1名しか育児休業を取っておられないんですが、もし育児休業を取らせることに非常に熱心になられたときに、例えば法人税を軽減するというようなことがインセンティブになるかどうか。
     それから最後に、今、樋口会長が言われたようにリコーさんはやはり進んでいると思うんですけれども、その結果として、実感として優秀な女性が採れているとお思いかどうか。つまり、こういうできるだけ先進的なことをなさることが優秀な女性を、しかも長くキープすることにつながっていると感じておられるかどうか。あるいは、それはどうもまだ今の段階では関係ないと思っておられるか。その辺りを教えていただきたいと思います。
    樋口会長
    5つほど出ましたけれども、よろしくお願いいたします。
    浜田説明者
    休職中の会社との連携というのは、私のかすかな記憶ですけれども、この制度が始まりますときの議論の中に結構出ておりました。といいますのは、休職ですからあくまでも社員の資格を持って、その期間の給料は出ませんけれども若干の昇給はするようですし、それから後の資格の昇格には2年休職したというのは抜かないそうです。継続して通算してやるそうですから、休職期間中にこの人の感覚や何かが元に戻ったり、落ちたりすると本人も困るけれども会社も困るという両者の関係ということで、もちろん社内の機関紙その他ありますが、職場からのそういう連絡というのは可能な限りやり、本人も希望するというような議論をかなりしましたので、それは可能な限りやっていると思います。今、細かくは調べておりませんが。
     それからもう一つは、軽い仕事だとペイが下がるのかということですけれども、どの程度の軽さ、どの程度の重さだから時給幾らというテーブルがきちんとできているわけではありませんので、その辺はもうちょっと日本型といいますか、おおらかですので、前のまま、しかも休んでいる間じゅうフルには昇給しなくても若干のベースアップはしながらそれで払う。だから、残業代こそないけれどもフルに給料は出ていますから下がっていないと思います。
     それから、代替要員のしわ寄せというのは、会社というのはその程度でやれるのかと言われるとちょっと困るんですけれども、仕事の量をどんなやり方でどれだけの量をこなすかというのが単純作業じゃない部署ほど結構伸縮自在でございます。それからもう一つは、少数精鋭というのを常に求めている、希望しているわけですが、それが精鋭を少数選んできて集団をつくって少数精鋭かというと決してそうじゃないんです。普通の人を集めてだんだん減らしていくと精鋭になっていくんです。だから、残った人たちに一時的にしわ寄せがいきますけれども、彼らもそんなに長時間残業したくない。それから、もう一つは仕事の見直しというもので、何のためにこれをやっているのかというのが結構あるんです。だから、1人減った機会に恐らく手を抜いて何の影響もない、だれにも迷惑をかけないものがどんどん発見されて、いわゆる本当の意味の正しいリストラが行われたりして、残った方に最初の時期は幾らかしわ寄せがあろうかと思いますけれども、それも会社の方から言われてオーバーワークじゃなくて、かわいい何とかちゃんが休んでいる間おれたちが、私たちがということで気持ちも乗っていますから、それほどのしわ寄せとは思わないでみんなでこなせる。
     本当を言いますと、理屈から言えば抜けた後、要らなくなっている状態と言っては悪いですけれども、そうなればなるほど戻りにくくなってしまうんです。ですけれどもここがまた会社の不思議なところで、1人その方が戻ってきますとまた産出が少し増えるような仕事というのを皆でやりくりして10人が9人になっていたのが10人になったことによって、前の10人のときよりもアウトプットが増えるという方へ伸縮しながらいっていると御理解いただければということです。ですから、マニュアルとか何かでがんじがらめで、この人がここまででおれがここまでだから、この仕事はこうだときちんとできているよりも、幾らかあいまいで意欲の高い、意識の高い集団、幾らか自由度が高いあいまいな集団にしておく方がこの辺も伸縮自在でいいのではないか。
     それから、優秀な女性が採用できているかという御質問に対しては恥ずかしながら、朝日新聞の下村満子さんが始められた社会貢献の角度から企業を評価するという、あれがちょうど10周年であったんです。あれで私ども、昨年の初めにいわゆるグランプリ、大賞をもらったわけです。そこに項目が10項目ばかりあります。その中に女性に優しいという項目がありまして、そこだけまだ大人の鳥になっていないんです。まだちょっと小鳥なんです。そういう意味では、このメンバーにもいらっしゃるベネッセさんとかIBMさんとか資生堂さんとか、その他代表的なところから比べられるとまだまだ女性は補助作業、補助職の方が、総合職、一般職で分けると一般職希望の女性が非常に多い企業と言えるかと思います。
     ですけれども、先ほど1,660名の中に、これは恥ずかしいから外で言うなと人事部の連中に言われているんですが、課長以上が今9名ですか、役員クラスが1人というような状況で、これは増える方向には間違いなくあると思いますし、大分女性の方からの評価も5合目から6合目、7合目ぐらいまでは上がりつつあるのではないかという認識をしております。
    樋口会長
    ありがとうございます。それでは、島田会長代理どうぞ。
    島田会長代理
    2点お伺いしたいのです。1つは感想ですけれども、私は先ほどの子どもの分まで投票というのはすばらしい考えではないか、この専門調査会でひとつ掲げてもいいのではないかと思うんです。世界諸国に例がないというのは、新しい歴史を踏み出しているのですから当たり前のことであって、福沢諭吉が昔言った言葉で、「自らいにしえをなす」というんです。自分はクラシックになるということですから、自分が始めるということですね。これは国民の皆さんに子育てがいかに重要な意味を持つかということを考えてもらう意味では皆さんに問いかけたいのですけれども。
     それで御質問なのですが、1つはこれはリコーの会長のお立場よりもむしろ日経連副会長あるいは東京経営者協会の会長のお立場で伺うかもしれませんが、先ほど企業内に保育所をつくってもいろいろなところに分散しているから大変だというお話があって、それは個々の企業から見ると全くそうです。それを産業界としてこういうことは考えられるかを伺いたいんですけれども、例えば産業界で数百社の子育て貢献企業と評価されたいような志の高い企業があったとして、それらの企業は経団連で今でもやっていると思いますが1%クラブ、利益の1%を寄附するというお考えがありますけれども、そのようなお気持ちがあれば住宅に近接した駅などの拠点に費用を投下していただいて数百社が1社で1か所ぐらいどこかにつくっていただく。それで共通使用権みたいなものを出していただくと、リコーさんは吉祥寺につくっているかもしれないけれども、鎌倉につくっている別の企業のところへ鎌倉の方は行けるというようなことで、多分大都市の問題はかなりの程度解消されていくんじゃないか。そういうことについて、私は税制の優遇というよりも、これは経費で落としていい、十分可能なんじゃないかと思うんです。あるいはもうちょっと色を付けてもいいかもしれないというようなことがあったとしたら、産業界としてはやれますか。
    浜田説明者
    やれますかという質問は、諸条件があって、この条件を一つひとつ考えながらやれるかやれないかを答えなければいけないんですけれども、検討する価値があると思うかという御質問であれば、私は価値があると思います。今、何でもやれる人が手を出して取り組まなきゃいけないテーマがたくさんありますね。その中の一つだと思います。企業にいろいろな要求がありまして、赤字会社はなかなか手が出せないけれども、黒字を出している会社はやるべきじゃないかというような意味でです。
    島田会長代理
    子育て貢献企業クラブみたいなものですね。
    浜田説明者
    それから、公立と民営の託児所では民営の方が、例えば公営だと6時までだとか、入園は何月と決まっているとかというようなことですが。
    樋口会長
    それを変えようと今この会でも一生懸命になっているんですけれども、でもやはりそういう傾向はございますね。
    浜田説明者
    そうですか。民営の方はその辺は弾力性があるというか、自由度が高いというか、そういう自由度が高くてかつ本当に信頼できるというところの代表例をつくっていくぐらいのことはするべきかと思います。
     だけど、私はこの子どもの数も大事だけれども、産まれた子どもが少なくなってくると、少数精鋭かというと逆になりつつある。子どもが減れば減るほど一人ひとりの子どもがどんどん心配で、逆に大勢産んでいたときの方がしっかりした子どもが育っていたという感じがあるものですから、私は今、産まれた子どもの教育テーマというのに一番真剣に取り組まさせていただいておりまして、個別な企業で教育の場、あるいは御存じかもしれませんけれども、中学生30人が農業をしながら預かろうというのを2か所、今、準備中なんです。そういう流れの一つとしてこれも大事だという意味では肯定でありますけれども、ほかにもいっぱいしなければいけないものが目白押しであると御理解いただきたいと思います。
    樋口会長
    ありがとうございます。まだ質問がたくさんございます。坂井副大臣どうぞ。
    坂井副大臣
    政府側は質問してはいけないと思ったんですが、いいということだったので3点。
     1つは今、先生のお話にも絡むんですが、もともと私は坂東局長にも今、指示しているんですけれども、法定福祉費の在り方についてです。法定福祉費で今まで企業は保養所をつくったりテニスコートを持ったりしていたけれども、だんだん終身雇用制が崩れてきているからそういう囲い込みの必要がないわけですね。だから、法定福祉費みたいなところはまさに企業内託児所とか、そういうところに私は集中すべきじゃないかと思うんです。だから、ちょっと坂東局長に調べるように言っているんですが、企業内託児所は確かにつくりにくい面はあるかもしれませんが、そういう税制の仕組みを全部認めるばかりじゃなくて、どこを切り込んでどこを増やしていくか。その点をやはり日経連の副会長としても御検討いただきたい。
     2つ目にホームオフィスがどこまで可能かに絡むんですが、私は平成8年に労働政務次官をしているときに家内労働というものの定義をどうするかという議論がILOであって、結局家内労働法は昔の工場で働く女性のようなイメージになっちゃっているので、当時はホームオフィスみたいな議論が余りなかったんですけれども、これは少しやろうと思ったんです。ところが、やはり1つは家の中で働く場合の労災の問題、そういう非常に難しい問題が出てきていますので、こういうものについて日経連としてもどう考えていくのか。
     3つ目に、さっき評価の話が出ましたけれども、私は栄典の方で叙勲の方もやっていて、あちらとは全然関係ないと言えばない、あると言えばあるんですが、日本の評価システムで、例えば経済産業省あるいはそれぞれの表彰システムの中に、こういう面で表彰するというのは余りないんです。だから、私はもっと本当に社会貢献している人に対する評価というものをきちんとしていくことによって、コマーシャルをしているから評判がよくなるのではなくて、テレビでコマーシャルをしなくてもそういうものがきちんと認知されていく社会をつくっていければなと思っています。栄典で提案したんだけれども、栄典の会議では余り私もしゃべる機会がなかったものですから言えなかったんですが、そういうようなものをどう提言をしていけばいいかと思っています。以上、3点の御意見です。
    樋口会長
    いかがでしょうか。
    浜田説明者
    最初の2つは御要望というふうに承りまして、家内労働、今SOHOのホームオフィスで念頭に置く職種で労災というのがちょっとイメージしにくいのですが。
    坂井副大臣
    家の中で事故が起こったときに、非常にそこの認定が難しいんです。仕事中の家庭内での事故です。もし事故が起こったとき、そういうものが労働災害かどうかという問題とか、認定しにくい面があってですね。
    島田会長代理
    パソコンをやり過ぎておかしくなっちゃったというのはあり得ますよ。
    坂井副大臣
    だからSOHOを考えていく場合、労災とか何かの議論も一方でしていかないと難しい面が出てくると思います。
    浜田説明者
    それは事務レベルで細かくもんでいただくほかにはございませんので、私みたいなおおまかな人間がそういう対応はちょっとできませんが、よろしいでしょうか。すみません。御要望として一応承らせていただきます。
     最後の評価は今、企業のこういう社会貢献的な取り組みに対してマスコミの方が熱心にやっていただいています。本当にそれで評価になっているのか、中身を見せてくれと言いたくなるぐらいいろいろな角度から、環境問題にしろ教育問題その他やり始まってはおりますね。最近私どもは省エネルギー複写機で通産大臣賞というのをもらいました。ですから、そういう意味では役所もやってくれておりますよ。
    樋口会長
    ありがとうございました。御質問したい方がたくさんいらっしゃいますので、猪口委員、それから島田委員という順でどうぞ。
    猪口委員
    本当にすばらしいお話をありがとうございました。また、お取り組みにつきましても心から敬意を表するんですけれども、ちょっと一言。ゼロ歳児からの選挙権の提案はすばらしいですし、また島田先生も賛同されましたが、私は政治学の専門ですから議事録に残さなければいけないのでどうしても発言しなければならないんです。言わずもがなですけれども、民主主義の制度の下ですべての人間は1人1票で平等で性別及び年齢とか所得とか出身とか、どのようなことによってもこれは揺るがない原則があります。ですから、やはり子どもがいる人は2票で、いない人は1票ということになると民主主義の原理そのものの問題ということにもなります。これは私の発言としてどうしてもしなければならなかったのですみません。
     それともう一つお伺いを是非したいのは、日経連の副会長様として広く企業をご覧になっていて、リコーの方でそうできたことが実際に多くの企業ではできていないと思うんです。それで、一体どういうレベルのリーダーシップがリコーの方でこれを実現するのに効果的であって、そういうものがほかの企業には欠けていると言えるのか、ちょっと教えていただきたいんです。それは、例えば会長さんとか社長さんのリーダーシップが重要だったのか。それとも、中間管理職のレベルでだれかその突破力を持った人がいたのか。それとも、たたき上げた女性の方、長年勤めたような女性の方で、次の世代は苦労をさせたくないと思うような人のリーダーシップが重要だったのか。一体何の力があってリコーではこれができて、ほかの企業のところでできていないのか、ちょっと教えていただきたいんです。
    浜田説明者
    いろいろ御発言をお聞きしていて、このレベルでリコーはかなりやれている企業と御評価いただいたんだなと思って大変光栄でございますけれども、私どもはこれで十分やれているというよりも、まだまだというぐらいの気持ちでおります。ただいまの猪口委員の御質問に対しては、企業というのは本当に数多くありますけれども、私どもの今、単体で申しましたが、グループ企業は世界じゅうで300社ぐらいありまして、社長と言ったら自分のことだと思って振り返る人間が300人もいるんです。それで、1つの会社という責任意識を持って集団をつくってやっているわけですね。
     それで、300もありますと全部が黒字で健全な状態とは言えないんです。3社や5社や10社赤字の状態があるんです。会社というのは状況がいいときと悪いときとで別人ですから、別人意識のないリーダーがいるところはどんどんおかしくなっちゃうんです。ですから、私は赤字を出している状態の企業は病気療養中なんだと。病気療養中で退院してきて荷物を運べとはおれは言わない。病気を治すのに専念しろ。治療に専念して1年でも早く、1か月でも早く病室から出て来い、出てきてみんなと一緒に荷物を担げる状態になれと言って多くを期待しないわけです。
     そうしますと、日本の状態がこんなに厳しい中で、企業に求められるものがいろいろある。それに対してどれだけ手を出せたかというのを赤字企業に求めても、本業をおろそかにして、私はこれもやっています、これもやっていますというのは民間企業の場合は漫画になっちゃうんです。健全なる経営が維持できておるというのが大前提なんです。私どもの場合も、過去何十年の間に大変大きな船が沈没しそうな目に3回ぐらい遭っていますけれども、総じて何とか利益を出しながらきている中で、集団対個人という関係を私どもなりに相当末端まで考えています。末端という言葉、ボトムアップという言葉もいけない、現場で働いている人たちをボトムと、そんな言い方はないだろう。会社の価値というのは現場からしか生み出されないんだ、現場様なんだと思っているのですが、この代わりの言葉がなかなかないんです。
     ですけれども、会社の中の仕事に取り組むときの意欲というんでしょうか、イニシアチブというんでしょうか、要するに現場の状況がわからない上司の指示には従う必要はないということを言い続けております。ですから、私どもが環境経営の一位を日経さんで3年間連続、私は2年連続だったときに、3年連続はまず絶対ないと会社の中で言っていたんですが3年いただいたのですけれども、これはほとんど中堅管理職を含む現場の社員からの動き、それをトップマネージメントが大事にして、いいことだとしていったからだと思っています。
     今ほとんどの工場はごみゼロになりましたからびっくりします。社長命令じゃあんなことはとてもできません。私はむしろ逆なことを言って、社員たちから怒られているんです。社長が督励して社員をしかりつけながら引っ張っていったんじゃないんです。逆なんです。社員たちから私がむしろたしなめられながら、私は驚嘆しながらやってきている。普通のトップダウンの方向とは逆な文化でやってきましたから。
    樋口会長
    そうしますと、育児休業をこんなに取る人が多いなどというのも、ボトムと言ってはいけないかもしれませんけれども、上が認めたというよりも女性の希望者が多かったということでしょうか。
    浜田説明者
    はい。制度として人事部がどんどん進めるのを、それは正しい方向だと一言私は言えばいいだけですから、私は何もしなくていいんです。
    樋口会長
    トップが正しい方向だと言うということですね。
    浜田説明者
    正しい方向だと言い、それを進めろということで、これは成功も不成功も私は現場だと思います。会社があんな制度をつくったけれども、社長はああ言っているけれども、見てみろ、とっても帰れる雰囲気じゃないと現場は言っている、こういうところだと有名無実になりますね。会社としてはやっておりますと胸を張っているけれども、現場へ行ったら全然雰囲気が違う。それをどこの現場でも同じような考え方で本当に行動できる職場に会社全体を持っていくのがトップマネージメントの務めなのかなと思っています。ちょっときれいごとみたいになってしまって申し訳ありませんが。
    樋口会長
    それでは島田委員どうぞ。
    島田(祐)委員
    浜田さんのようなチャーミングな経営者の下で働いているリコーの社員は大変幸福な方たちだと思いますが、1つだけ異存があります。先ほど、3歳までのスキンシップで父親のスキンシップはノーサンキューだとおっしゃいましたけれども、きっとすてきなお母様だったからそういうふうに浜田さん御自身が思っていらっしゃるのかもしれませんが、私の主人の場合は随分手伝ってくれまして、いいスキンシップ、いい親子関係というのがそのころ始まって今もずっと続いているなという気がしているんです。それで、例えば育児休職が102人のうち男性が1人いらっしゃいますね。100分の1もいらっしゃいます。ほかでは1000分の1いればいい方です。というと、浜田さんのお考えでは男性の育児休職者は要らないと聞こえてしまうんですけれど。
    浜田説明者
    実はこの件はちょっと微妙な問題で、実は2年ぐらい前に21世紀職業財団の年次大会みたいなところで講演をしろと言われてやったことがあるんです。それで、講演というのは言いっ放しで帰りますから反響はわかりませんで、たまたまこれは後で主催者の中堅幹部の方からお聞きしたんですが、浜田さんの話を聞いている方々はおおむね同感賛成、1点を除いてだったそうです、ということでした。3歳までは母親でなければだめと私が言い切ったと、この1点だけ大変異論が出ていたという御指摘かと思います。
     これは幾ら議論しても平行線になりそうな議論かもしれませんけれども、私は個人的にはそう思っています。父親はそれでは子どもが産まれた後何をすべきか。当然母親が安心して育児をやれるだけの経済力を家族にもたらし続けなければならない。そういう意味の分業ですね。それから、私も子どもが3人おりますし、今、娘と嫁が2人ずつ子育て中でありますので、育児がどんなに大変かというのは私も経験しております。ですから、なるべく早く帰る。たくさん稼げというのと早く帰れというのは矛盾しているようですけれども、そこをうまく早く帰って、例えばお風呂に入れる。お風呂に入れるというのはなかなか大変で力仕事です。あれはなるべく父親がやるとか、そういう分業、手伝い体制でいって、主役は母親というのが正しいのではないかと思っております。
    樋口会長
    その点に関しましては、恐らくここにいる委員の少なくとも女性、男性も含めて今、非常に異論の出てきているところでございますが、時代とともにだと思うんですけれども、だめ母親までは譲歩してくださいましたから、会長様にもまたお考えをいただきまして。さきほど島田会長代理もおっしゃいましたが、これは私の個人的お願いでございますけれども、両立支援のための企業の中でのネットワークをつくって、そしてそれで例えば共同の保育所であろうと何であろうと、そういう貢献を下村満子さんたちもいろいろやっていますけれども、それがもっと広がりまして是非会長さんのお肝いりでそのような動きが財界に広がりますように、それから財界の本音をまた私どもに伺わせていただきたいと思います。今日は本当にいい勉強をさせていただきました。ありがとうございました。
    浜田説明者
    私の方からもお願いを一言よろしいでしょうか。
     両立というときに、先ほど申し上げましたけれども、育児の方を100%満たして、それにプラスどれだけ仕事を両立させるかというふうに是非御検討を進めていただきたい。50:50で両立しましたというのはナンセンスと申し上げて今日は引き取らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
    樋口会長
    本当に貴重な時間をありがとうございました。

    (浜田説明者退室)

    樋口会長
    それでは、引き続きまして河野専門委員によろしくお願いします。
    河野委員
    私が今日お話させていただくのは、全体像というよりも私の仕事の中で知り得ていることで、特に企業で働いている20代、30代男女について、両立するときにどういうことが必要かということに限定されてしまうと思います。ですので、それを改めて踏まえていただいて全体の議論の題材にしていただければと思っています。
     まず弊社でやらせていただいていることは、基本的には先ほど浜田会長がおっしゃっていたような、企業の発展のために人材育成や能力開発をするというのが大前提でした。それがなぜ、今日お配りしているような女性向けのものまで平成2年辺りからやることになったかというのをちょっとお話させていただきます。
     大前提としてマネージメント等の教育をしていたわけですが、昭和58年から61、62年までの女性たちの課題、または辞める課題と言ってもいいのですが、上司との人間関係等で辞める方が多かったのです。その後、昭和62、63年から雇用機会均等法が設立された平成2年辺りまでは、制度の上でうまく運用されていないこともあって、せっかく職場に配属されたのにやりがいのある仕事が回ってこないという、業務上のことで辞める女性が多かったのです。それが平成2、3年辺りから女性たちの課題が大きく変わりまして、仕事もこんなものだし、会社もこんなものと納得した上で、長く働きたいと思ったけれども自分自身とライフプランとの闘いで辞めざるを得ない。具体的には結婚後の夫の転勤とか、子どもを育てることや出産の課題というような形ですが、そのようにライフプラン上の課題で非常に優秀な人が辞め始めました。
     中堅社員研修というのをやっている中、もちろん男女混合のクラスですが、頑張ってきた女性たちが辞めてしまうのを目の当たりにしました。なぜだろうということで考えた結果、ライフ・アンド・キャリアデザインじゃないかということになりました。これは企業がやるものではないんです。やはり個人の視点になりますので、組合主催ということでライフ・アンド・キャリアデザインセミナーというのを単独で平成2年辺りからスタートしました。このときはまだ結婚との両立ですとか、1人目を産むこととの両立だったのですが、女性たちも力を付けてきますと子どもを1人、2人は欲しいということで、その後出できましたのが産休、育休も組み入れたライフ・アンド・キャリアデザインというようなセミナーになりました。
     私たちの立場としては、浜田会長のように大きく提言するという立場ではないので、今在る法律の下、具体的には育児休業ですが、それから在る制度、設備の下、保育園もそうだと思いますが、そういうものを社員がいかにうまく使っていくかということを考えた運用面での仕事の展開だと御理解ください。レジュメに従って簡単に10分くらいでと思いますが、パート1のベースがあってパート3にいくということもありましてあえてたくさん書きました。目でレジュメだけ追っていただきポイントのみお話ししたいと思います。
     浜田会長からは、かなり育児休業についてのお話がありましたが、その大前提を是非押さえておきたいと思います。というのが、このレジュメのパート1の1番になりますが、企業のリストラ状況をみた時に″人材ビジョン″という問題があります。今、正社員に求められるものと非正社員に求められるもの、たとえば過去において正社員の女性がやっていた職種や仕事の中身は今どういう雇用形態で、年収幾らでやらせたらいいのかというような具体的なビジョン化が始まっています。先ほども育休を取った後、戻れないのがちょうどいい棚卸しになるような話が出ましたけれども、今この部門はだれがどのくらい必要なのかということは見直しがされていまして、その中で女性たちは戻って復帰するときに、どういう職場、どういう仕事をすべきかということを、改めて考えるべきなのです。
     特にこの下の“人材像の変化"ですが、正社員に求められる能力が非常に高度化しています。正社員に対して長期雇用の視点で見ていきますので、逆に言うと育児休業というものは長期に活躍してくれる正社員に対しての制度としか企業は見ていないのです。統計的に育休を取った人数は調べられますが、その後、子育てのために辞めた人数は調べることができません。リコーさんでは復帰の後どのくらい辞められたか分かりませんが、昨今、現場で見ていますと、戻ってきて2、3年で辞める人が多かったり、2人目を産むときには、やはり辞めたりですとか、さまざまな現状があります。将来本当に原職復帰をしてくれるのであれば、企業も2人産もうが3人産もうが手助けをしようとなるのですが、逆に先が読めない非正社員的な働き方で復帰する場合は、できればそこで選択をして、育児休業を取って正社員として両立をしようとするのではなく、パートや派遣で両立をする方法をとるのも立派な生き方だと思っています。ですので、雇用形態多様化時代の生き方というのは女性たちもちゃんと知るべきで、派遣と子育ての両立だって立派な働き方だと思いますし、そういう意味では労働市場全体での問題だと思っています。
     次に労働市場についてですが、ここはもう皆さん釈迦に説法ですので少子高齢化というお話はしませんが、これから共働き世代になる理由は、経済面と生きがいの面と両方あります。特に経済面では30代、40代の場合年収の手取りのほとんど、100%に近いものが生活の経費として出ていく現状です。となると、最低限1人目までは共働きでというのが今、精神的には一般になっていますが、あとひと押しモデルケースがなくて実現できないという現状もあります。
     意識的に生涯において職業を持っていきたい、いかなければ生活できないというような視点は男女ともに夫婦で持っています。ただ、それをどういうバランスでいこうかというのは別の課題になります。 今度は企業と個人の関係についてですが1990年半ばから大きく変わりました。終身雇用が崩れてきた中で、ちょうどこのテーマが出てきたというのは逆に非常に厳しいことです。特に個人は生活面についてもキャリア形成についても自己責任だ、エンプロイアビリティを高めようというように厳しくなってきています。これは男性管理職であろうと何であろうと皆そうです。当然女性もそうなります。そうなると、これから先個人が正社員として生き残るには、能力開発と生活環境の整備という2つのテーマを持たなければいけない。逆にここで「個を読む」と書いたんですが、企業側から見ますとこれから個を読むというのは能力だけではなくて本人のこれからのキャリアビジョン、もう一つはライブビジョン、生活環境、家庭事情ですが、この辺りも読まなければ使いこなせない。ここの指導もあと5年は必要だろうと思われます。同時に、個人の自律と、企業の支援ということで、キャリアサポートという発想とライフサポートという発想を、やはり企業がこれから持っていくべきではないかと思います。
     そうなると、その次の視点になります。今キャリアについてのサポートとライフについてのサポートと申し上げましたが、弊社の言葉でキャリア開発というのはキャリアサポート、キャリア支援というのはライフサポートです。弊社の場合はこれから働きたい、働き続けて頑張りたいという人のみに企業経由でライフサポートをしており、だれにでもしているわけではないという現状がありますので、ここのところではキャリア支援という言葉を使わせていただいています。
     ここで順番に見ていきますと、先ほど会長から100%育児を維持した上でというお話がありました。それで、皆さんの意識も同じですが、ライフプラン、キャリアプランの考え方の中には、それこそ同じ何々大学を出て、同じ企画部にいたとしても、一人ひとりライフとキャリアのバランスは違います。夫の職業、それから自分の家を持つかどうかなどということも含めて、キャリアとライフのバランスを自分自身で見極めるという作業が20代の半ばから後半に必要だと思います。そのライフプランをベースにこれからキャリア形成をしていかなければいけないからです。それが少子高齢、核家族時代のテーマだと思います。
     特に産休、育休も組み入れて考えた場合は、個人がこれからこの企業に長く勤めよう、お世話になろうと、そのくらい思った上でなければ企業にとっては正直迷惑なのです。というよりも、回りで支えている女性や男性が迷惑でして、先ほど会長のお言葉から6割、7割が代替要員なしで支えているとおっしゃっていましたが、中小企業ですと100%ですね。いたたまれずに辞めている現状もありますので、代替要員がいない、支える人がいない、その中で休みをいただいているのであればこそ、やはり戻って逆にその恩返しは仕事でしてほしい、または仕事でするべきだということを回りも本人も思わないと、継続して2人目、3人目は産めないんだと思います。
     あとはキャリアサポート、ライフサポートですが、具体的には別添に付けさせていただきました資料をご覧ください。育児休業も入りました人事に関係する項目を列挙しまして、1990年代までの日本の企業の在り方、それからそれ以降の日本の在り方、そして今後の検討課題としてあります。これは両立支援のためにつくったものではなく能力開発のためにつくっているものです。検討課題は私が考えている課題ですが、男性、女性のテーマが一緒になってきつつある昨今、ここに現状の法律の下、または制度の下で手を加えたり、運用方法をお教えするだけでかなりうまく進むこともあるのではないかと思い、あえて今後の課題と書かせていただきました。
     まず具体的に今回のテーマと直結するところだけ話しますと、例えば過去において男性の高齢者の採用にあたって、労働省の方から、何か月分かの月給について補填されたことがあります。すると一気に高齢者の採用が増えました。それと同じように、例えば子育て後の方々の再就職について、半年間、その給与を国が見るなどということになれば、やはり企業はメリットがあれば動くということもありますので、意外と子育て後の人を再就職することを企業も認めるかもしれない。育児休職をし続けて社員で居続けることだけでなく、1回辞めても力さえあれば、そしてニーズがあれば戻れるというような再就職、再雇用できる市場にするのも一つの手ではないかと思います。
     それからその下に進みまして、本当は浜田会長がいらっしゃるときにお話ししたかったのですが、“人材ビジョンの明確化"ということを書きました。本来企業はこれをすべきで、どこの部門はどういう人が必要でどういうことを求めているかということを、それこそコンピテンシーまで入れて明確化すると、それを目指す女性たちも増やせると思います。今ここが不明確であるというのも、企業のもつ一つの課題だと思います。
     それから、この中では配置や異動ということもが大きいテーマといえます。弊社のクライアントで、夫の転勤のとき、自分自身も地方に転勤させてもらえる制度をつくった企業があります。働く場所と時間というのは、企業で働く個人にとって非常に重要なことです。これは女性のためではなく、これからの少子高齢化、核家族世代では場所、それから働く職種、この辺りを選ぶ責任と、また選ぶときにお互いにアセスメントをし合うことも含め、それぞれを複線型にしていくことが非常に重要だと思います。
     ただ、それに見合った給与にすること。働く場所をインターナショナル、ナショナル、エリア、ブロックと4段階にした場合、給与は違っていいと思います。給与を下げてでもやはりこれから働き続けたいという人が多いのであれば、給与の抜本的見直しも必要だと思います。
     それから、その下の代替要員については先ほどお話がありましたが、今、代替要員はほとんどいません。その中で育休を取る人がいかにつらいかということもわかっていただきたいと思います。
     それから、通信を使った、または在宅勤務の件です。私も労災の話をしようと思ったのですが、それ以上に難しいのは評価です。これは現場で上司が見ていませんので、アウトプットにすれば裁量労働制になってしまうか、または請負契約になってしまうんです。これも大きい課題だと思います。ただ、在宅勤務は、働く個人にとっては非常にありがたいことだと思います。そうなると、裁量労働制との関係も出てくると思います。
     時間がなくなってきましたので、その次のペーパーにこのようなものを入れさせていただきました。これは、これからキャリア面、ライフ面で企業がどんなことを支えていくべきかということを書かせていただいたもので、上が人事、下が組合と思って見てください。キャリア開発については男女とも必要なのですが、もっと重要なのがライフプラン、キャリアプランを考える場をつくることです。男女ともに20代後半から30代前半頃が適当と思われますが特に女性の場合は20代で、よく育児休業から復帰するときの女性は考えるのですが、本来は育児休業を取る前、産む前にやはりいろいろな教育をすることが重要で、そこのところできっちりビジョン化できた人たちは、復帰して頑張ってきます。そういうところが結果的にファミリーフレンドリー企業になっているのだと思います。この時点でライフプランを考えるセミナーをし、セミナーでなくても情報提供でもいいですが、その後、本当に産んで両立しようと思った方には産休、育休も組み入れるセミナーというのが重要だと思います。今日は資料を持ってまいりましたので回覧させていただきながらお話しします。
     そのセミナーについて、こちらの方に情報を出させていただきました。ワーキングウーマンのライフ・アンド・キャリアデザインというのが20代の女性向けにおこなっているものです。それで、産休、育休も組み入れると書いてありますものが、結婚した後、子どもを産んで続けようと思った方向けのものです。実は2つ同じようなものが入っているのですが、2枚目の方は個別アドバイスが入っている別のコースになっております。同じ両立、同じ共働きと言っても一人ひとり全然テーマが違うので、この10年間で個別にアドバイスが必要な現状にきてしまい、こちらにシフトしてしまいました。人数が少なくて、対人でアドバイスをというのはこちらも赤字になってしまいますので、今後ということでカラーの資料をご覧ください。これはビジネスモデルで出しているものですが、1対1で守秘義務をきっちり守れ、そしてアドバイザーと本人が双方で書き込み可能なネット上のキャリアアドバイス制度というのを今、法人向けに始めました。特に両立支援では有効と思われまして、お客様のニーズから逆につくらなければならなくなってしまったものです。
     セミナーの中でライフとキャリアを一律に見ていくためにつくっている資料を今、回覧させていただいていますが、マニュアルがよいとは思いませんが、モデルがいないときはまずマニュアルということもあります。ですので、それも含めて勇気づけて送り出すと、やはり戻ってくるときにはやるべきことがわかっているという現状もあります。
     最後のところで、これは手前のもので大変申し訳ないのですが、今、考え方として企業にはキャリア開発という人材育成がまず1つあります。その右側にやはりキャリア支援という考え方がありますが、これはよくライフアップとかライフサポートと言われているものです。それで、キャリア支援については企業の現場を持っている安藤が今日一緒に来ておりますので、もしこの後御議論で御質問等をいただくのであれば私と安藤とで受けさせていただきたいと思います。一応以上です。
    樋口会長
    本当にせっかくの御報告を、ちょっと前から時間が押してきたので急がせてすみませんでした。大変すばらしい御活動と、現代の若い人たち、企業の動きを踏まえた御発表だと思います。では、八代委員どうぞ。
    八代委員
    これは先ほど浜田さんがおられたときに聞くべきことだったと思いますが、それをむしろ河野さんにお聞きしたいのですが、1つのポイントとして今、御発表の中で大事なのは選択肢ということだと思うんです。先ほど3歳まで母親の手で育てるか、父親もやるべきかというのは、私はそれは個人が自由に選択できるようにするというのがベストであって、どちらかが望ましいということを決めるのは本当はおかしい。例えば、育児休職だって半分父親が取って半分母親が取るというような、そんな選択肢ができるというのが1つだろうと思いますが、そういう選択肢を自由にするというときに何が障害になっているかというのが大きなポイントだと思うんです。
     それで今、河野さんの正社員を前提とした育児休業だけではなくて派遣とかパートにも対応しなければいけないというのはまさにそのポイントだと思いますが、そのときに例えば先ほど浜田さんがおっしゃった育児休業中も個人の資格上昇の期間に入れるとか、復帰後軽い仕事でもペイが下がらないというようなことが本当に本人にとっていいことなのかどうか。これは実は以前、有識者会議で岩男先生と一緒に私がやったときも、むしろ女性の方からそれは下げてもらった方がありがたい。その方が逆に回りへの迷惑に対してある程度自分も納得できるし、逆に他の人にしわ寄せされたときはほかの人がその分給料をアップしてもらう。いわばこれは究極の能力主義なんです。ですから、私は単に一方的な補助をするだけではなくて、本当の意味の能力主義を徹底することが逆にこういう多様な働き方というものを促進することになるのではないかということなんです。
     その点について実は今、河野さんがちょっと再就職の促進のときに政府が補助金を出したらどうかとおっしゃったんですが、私はこの考え方はほかの河野さんのポイントと相入れないんじゃないかと思います。逆に言えば、なぜ再就職が促進されないかというと年功賃金体系だからなんです。完全にフラットな年齢に依存しないような賃金体系ならば、企業は別に年を取っていようが取っていまいが喜んで雇うわけで、一方で今の年功賃金、終身雇用を維持しながら、例えば働く場所とか職種を選べるようにすべきだというのは無理なことであって、私はやはり再就職の促進のためにはフラット賃金、働く場所、職種を選ぶのであれば過度の雇用保障は要求しないというか、そういう何を犠牲にして何を取るかということが今、働くことと育児を両立するということのポイントだと思うんです。
     ですから、そこを明確にするということをどうお考えか是非お伺いしたい。逆に言えば、それがあるからいつまでたってもこういうことは進まないんじゃないかということで、ほかにもいろいろ聞きたかったんですが、まずそこのポイントについて是非、何を犠牲にして何を得るかという戦略ですね。
    樋口会長
    浜田会長の分も含めて、経営者のお立場でどうぞ。
    河野委員
    実は鋭いところを突かれてしまいまして、通常の私を1点だけ曲げたところがそこなんです。実は私は子育て後の方々が一度退職した後企業に再就職するとき、申し訳ないですけれども、やはり意識だとか何かがどうしてもついてきていないんです。例えば、昔それこそワープロをやっていた人が今はパワーポイントですよね。これは相反するものとして国の方で再就職のセミナーをきっちりやってもらって、企業に行って今まで転職組と同じ土俵に乗れれば問題ないんです。でも、乗れないんです。これはやはり幾ら国にいいものをやってもらっても現場で少しずつ慣れていくですとか、そういうことが必要なんじゃないかという本当に末端の申し訳ない感覚でございます。昔は、新入社員をできもしないのに置いておいてくれたわけです。それと同じように、子育て後の方々を最初はある程度慣れていないけれども国の方からも半額もらっているしと言いながら3か月くらい置いてもらえば結構いい人がいるんです。そういうことをちょっと意味していまして、本当に人の顔が出てくるような状況でこのことは考えています。ですから、もしかすると国の方でこうして、あとは自己責任と、でもそれが他とのレベルでは八代委員のおっしゃるとおりです。
    島田会長代理
    今、人の顔が出てくるとおっしゃったんですけれども、多分人の顔が非常に出てくるからそういう御議論になっているんだと思うんですが、子どもを産んでから復帰するときに非常に強い意欲を持っている人と、自分の中で悩んで妥協してという方といろいろな人がいると思うんです。だから、八代委員の言われているのは非常に重要な点で、能力と意欲に率直に制度が対応すれば私は解ける問題で、今おっしゃっているのはこの人は頑張れば頑張れるのになぜこんなにうまくいかないんだろうというのを心配なさるからそういうことを言っているんだと思うけれども。
    河野委員
    私の中では短期的なものと、中長期とで一応分けて考えています。それで、まず基本的におっしゃってくださるとおりで、中長期で例えばこういうような考え方を学生時代からやっていれば全然要らないんです。ただ、今この1、2年で本当にお母さんたちが現場に出てきて企業でパートをするということを考えると、ほんの1年間でも、1年半でも何かちょっとそういうことがあるだけでも企業は今、手が足りなくなってきている現状がありますので動くのになといった、そんなお粗末な考えです。
    島田会長代理
    さっき浜田会長がおっしゃったのはよくわかるんです。例で言うと、クライアントを抱えて残業がばんばん出てくるような仕事は1歳児などを持っている場合、たまらないんです。だから、総務の方へ回してくださいと。総務は定時に帰れるんですね。それで、残業は変わるけれども給料はそんなに変わらないんです。それをおっしゃっているんだと思います。それで、それは本人のチョイスですから、そのときに賃金体系が能力主義になっていないかどうかという問題はありますけれども。
    河野委員
    それは前から私が有識者会議でもお話ししていることで、やはり質が落ちたら絶対にワークとペイメント、本当はパフォーマンスとペイメントなんですけれども、合わせるというのは大前提で、八代委員と全く一緒です。
    島田会長代理
    制度が能力と意欲をきちんと反映する形にするのは基本中の基本ですからね。
    河野委員
    基本です。それは八代委員も御存じで、それで多分ここだけ異論ですねという御指摘をいただいているんです。
     ただ、やはりお母さんたちがそれこそ今、企業に戻ってくるというのをあえて両立の一つのテーマとすればということです。私のテーマは継続性のところしか見ていないので、ここは私の専門外ですけれども、企業から見ると少しでもいただければ子持ちの人でもいいよというのはあるなというのはちょっと感じたりするんです。
    樋口会長
    これは提言をまとめるときにかかってくるんですけれども、基本的には働き続ける両立支援でよろしいと思うんです。ただ、御承知のとおり日本というのはM字の切れ込みの非常に大きいところでございますから、どこかで再就職の部分にも少しは触れざるを得ないんじゃないかという意味で、また御意見はいろいろ調整するとして、どうぞ。
    田尻委員
    先ほど浜田会長がおっしゃった母親が3歳までというのは、八代さんがおっしゃったように、私の体験も含めてこれじゃないといけないという子育てを限定するというのは非常に危険だと思うんです。ですから、いろいろなことがあっていいんだというような立場に私も立ちたいし、それを雇用形態とか保育所のことも含めてどんな選択肢を選んでも割と公平に比較的しんどくなくできるという、そういうのを組んでいくというふうに基本的にしたいと思うんです。
     それと、今おっしゃった河野委員ですけれども、私の会社で以前はOAの仕事は女性がやっておりまして、3人とか4人とか子どもが産まれて両立してやっていたんですけれども、今はどんどん正社員と非正社員と分けているんです。それで、会社の中にもまさしくそういうような形態で多くの女性の方が契約社員、パート社員になっておられて、そういう方が育児休業法が適用にならないということになりますと大変問題だと思うんです。それで、企業側としてもパートの雇い方をすれば育児休業法とかが免除できるとなるとますますそういうような形態を選ぶということになって、これは私も詳しくはわからないんですけれども、アメリカ型というか、そういうような雇用形態そのものに対してやはり国というか、我々の方で何か言うべきです。雇うときに余り期間の条件とか制限を設けて雇うということをしないで、パートとかではなくなるべく正社員等の形で雇っていくような形態にしていくということと、法律的にパートなどの方にも育児休業法を適用していくようにしないと、今、女性の労働者は半分ぐらいはそういう雇用形態になって、ますますそうなっていくことに対してどう手を打つかということは大事だと思うんです。回りを見ていても本当にパートの方たちが子どもを産むということは、自分が職を捨てるということと子どもとの選択なわけです。そういう選択を社会がさせるというのは間違いだと思います。
     それともう一つは八代委員もおっしゃっていたんですけれども、育児休業を取ったときの評価です。特に男性などから考えた場合、自分は評価が下がってもいいんだという前提に立つということは考えられない。休業に入る前の評価を、例えば1年休んだらその間は最低評価じゃなくてその前の本人の評価ということでやっていく。そういう不利益がないということにするべきで、回りの人の給料を上げるというか、能力主義ということとはちょっと私としては賛成できません。
    八代委員
    育児休暇をとったから賃金を下げるというのは問題で、不変はいいんです。先ほど浜田会長がおっしゃったみたいに、継続して働いている人と同じぐらい資格の期間を上げるとおっしゃっていました。全く不利がないようにというのはやり過ぎじゃないかということで、最低にする必要は全然ないと思います。
    田尻委員
    わかりました。以上です。
    樋口会長
    ありがとうございました。
    佐々木委員
    私も今の田尻委員と同じ意見で、子育ての仕方に関してだれが育てなければならないといった固定観念が問題の原因なので、いろいろな選択肢を認めるという制度と意識改革が必要だと思います。
     それから、先ほどの河野委員のおっしゃっていた復帰に関して、これは本当にたくさんディスカッションをこれからしていくべきことだと思いました。伺っていると、今までの御経験を踏まえての提言なので、私もそうだよね、そういうのがあればいいよねと賛成したい気持ちがある一方で、先ほど島田委員が1歳児がいたら残業をさせられないじゃないですか、とおっしゃったにかんしては、そうなんだけれども、私も1歳児がいますが夜中まで働くこともあることと考えると、やはりこれは仕事の生きがいや責任感やある程度の給料とが付いてくれば、いろいろな生き方を選択したい女性がいるはずだと思うんです。ですから、とても厳しいし長期的なことかもしれないんですが、何でもいいから戻ってきて、政府の支援を与えながら会社に何となくしようがないといわれながらいる何か月かがある。リハビリをしながら正社員で戻ってこられるという考え方が本当にこれからの企業の在り方や労働者の在り方と合っているのかと考えると、私もどちらともまだつかないんです。もう少し考えながら論議させていただきたいと思いました。
     もっと言えば、私も小さな会社ですけれども経営者として考えると、これから本当に企業側として全員が正社員である必要があるのか。では、正社員と契約社員と呼び名は違うけれども何が違うのか。会社の負担は何が違って、それこそ育児休業など制度がどうなのかとなる。でも、世の中のライフスタイルが随分変わってきて選択肢が増えてくると、人々の働き方や働きたい時間数や責任の重さやそれに対応する収入の希望が皆さん違うので、本当にここはよく検討する必要があると思います。
    樋口会長
    まだその部分については検討ということですね。
     では、まず議事進行についてお諮りいたします。今日は12時までに終わりますが、まだ議論がございまして、むしろ今日決めていかなきゃならない最大のテーマとしては今月中に一応中間報告をまとめて、恐らく来月早々になると思いますけれども、男女共同参画会議の方に御報告することになります。それについて若干の私案をつくってきておりますので、それで御意見をいただきたいというのが今日の後半のメインだったんです。だけど、このお話自身がその議論にも関わってきています。ただ、中間報告についてはこの辺で方向性を、もちろん今日御意見をいただいてということがあるので、ただいま11時半少し前でございますが、会議を15分か20分延ばしていいですか。
    島田会長代理
    事例報告が2つあるんですね。
    坂東局長
    事例報告は1分でやります。
    樋口会長
    あとはメモはあるわけですね。セイコーとベネッセさんですね。
     それで、今まだ言いたいことがある方が岩男委員と、河野委員はお答えですね。
    河野委員
    御意見をありがとうございます。再就職と再雇用と、それから復帰は別に考えてください。それで、今おっしゃってくださった復帰コースについては全く佐々木委員に賛成です。八代委員と私は一緒なんです。それで、私がここに書かせていただいたのは、復帰コースの多様化という形で全く現職で頑張っていく方がいて当然だと思います。それと同時に、これはそのままの言葉を使うと、今までより2割仕事をダウンさせてもらえば給与は半額でいいという表現を女性がし始めていまして、やはり今は子育てについて多くやりたいという価値観もあるのは事実です。それには応えてあげたいじゃないですか。決して給料を減らすとかではなくて生き方の問題なので、そういう意味では多様化ということで、復帰後のコースというのは私の一つの提言です。その代わり、給料は減るんですけれども、減らない人もいるんです。それで、あとは再雇用と再就職と別にと思います。
    岩男委員
    これも前にも申し上げたことなんですけれども、やはり大きな方向としてオランダ型というか、あれが一つの目指す方向であって、ただ今回のこの提言のときには研究に着手するとか、そこまでしか言えないとは思いますが。ですから、前々回でしたかに申し上げた、例えば有休も時間単位で取れるようにするというようなことも含めて、もっと時間に還元していくという一つの方向を基本的なものとして出すことによって、随分いろいろな問題が解決すると私は思います。
    島田会長代理
    フレキシブルで多様なということですね。
    岩男委員
    そういうことです。
    樋口会長
    働き方が多様になってくるのは当然のことで、ただどんな働き方を選ぼうと、だれがどこで保障するかは別として両立が保障されるという形を目指さなくてはいけないのではないかと承っております。
     それでは、すみません。あと事例が2つあったんですけれども、事務方が1分で済ませてくれるそうですからお願いします。
    坂東局長
    それでは資料の1-3、こちらがエプソンの資料です。それで、いろいろ細かくわかりやすい図入りのイラストがありますけれども、エッセンスは一番後ろの2ページです。育児、介護共通でこういったいろいろなことをやっておられます。そのほかにも女性に関する制度があります。その次のページ、一番最後はそれがどういう形で活用されているかというエプソンの事例です。大変復帰率は高いです。
     その次はベネッセです。ベネッセは資料1-4プラスこちらの印刷したもの、これは全部ベネッセの会社のいろいろな制度の紹介です。それで、ベネッセの場合も資料1-4の2ページがこういう制度がいろいろありますよということの一覧表です。それで、それがどういう気持ちでやっていらっしゃるかということがとてもわかりやすいイラスト入りの表であります。また、ベネッセの会社がどういうことかというのは、いろいろカフェテリアプランで選べる福祉はこれに載っておりますので、どうぞご覧ください。
    樋口会長
    ありがとうございました。それでは、後半の議題に移らせていただきます。先ほど申しましたように中間的な検討状況を取りまとめて男女共同参画会議に報告することになっているんですけれども、いろいろな御意見をいただきまして本当にどれもこれも取り入れたいようなすばらしい御意見をいただきましたが、それを踏まえて資料2として事務局に今までの議論を取りまとめてもらいました。その資料をつくってもらっております。それから、もう一つの資料として前回の会議の場で私の方から提案させていただきました仕事と子育ての両立支援策に関する意見募集、これが結構反響がございまして、その概要をまとめてもらっておりますので、これも事務局から資料説明をしてもらいます。
    坂東局長
    それでは、これも大変手短に急いで御説明をいたします。
     資料2は、今までの議論を取りまとめたものです。資料の2-2が今までにもお目にかけておりますけれども、今後の議論の参考のために事務局でテーマ別にまとめたものです。ただ、例えばこの中で保育に関する児童の中で病児保育で保育所の活用ができないのは児童保育法にそのような規定がされているためだとか、少し事実誤認のあるような意見も含めて今までの議論を全部書いてはありますけれども、そういう事実誤認や何かについてはもう一度後でチェックはいたしますが、一応テーマ別に事務局の方で整理をして、企業と働き方、地域社会が3つ、それからそれ以外の部分については基本的な考え方というようなことでまとめてあります。
     次に資料2-1ですが、こうした議論をベースとして4月の冒頭の男女共同参画会議に当専門調査会の検討状況の報告をするのですけれども、事務局側からのたたき台の案として出したものでございます。これは全くこういうふうに分けるのでしょうかということですが、何度も何度もお願いしておりますように、皆さんがとてもいい意見を言ってくださっていますけれども、そのすべてを出すと焦点がぼけてしまいます。要するに、あなたたちは何を言いたいのかと、何でもあるのは何も言っていないのと同じになりますので、その中から何をピックアップしていただくかというのをここでお願いしたいと思います。
     それから、資料3は今お手元にはエッセンスだけが配られております。516通来ていて、それぞれの項目について簡単にピックアップしたものですが、大体お1人4ないし5項目、御提案をしていらっしゃるので、提案という感じから見れば2,000以上の提案があったと言えるのではないかと思います。実物は、両側に置いてあります。是非ごらんいただければと思いますが、それは表には公表はしません。この資料までは公表を考えておりますが、たった2週間でこれだけの反響を、しかも全く何のお礼もしないのに、懸賞でもなければ宝くじでもないのにこれだけ応募してくださったというのには感動しております。
    佐々木委員
    私たちのサイトでも呼び掛けてくださいという御要望をいただいたので、120くらい今日持ってまいりました。
    樋口会長
    そうですか。これに加わるんですね。それでは六百幾つですね。
    坂東局長
    ありがとうございます。本当にいろいろな方にいろいろなサイトで協力をしていただきましたし、マスコミの方でも新聞に取り上げていただきましたし、本当にありがとうございました。
    樋口会長
    ということでございまして、とにかく中間的な検討状況の報告をどうまとめるかということが実は今日の後半のハイライトでございまして、今までのこうした事務方で整理してくれたことを踏まえまして、ということは皆さまの大変御熱心な議論を踏まえまして、時間がございませんでしたので簡単に私案を私の方でまとめてみました。島田会長代理とだけはちょっと御相談をして少し調整しながらつくったものがございますので、それをたたき台にして今日は御意見をいただきたいと思っております。

    (会長私案配布)

    樋口会長
    では、簡単に説明いたします。提言の柱立てを私は7本と本当は思ったんです。7つのレインボー作戦と思ったんですけれども、島田会長代理からむしろ多過ぎるという御意見で、では5つにするかと、7つあったものを5つにまとめました。
     それで、タイトルですが、「使い勝手の良い保育サービスを」、これは既存の保育サービスが今までなぜ使いにくかったのかということについていろいろな御意見を伺ったことの中で、このタイトルの中での目玉は黒ポツの2番目も3番目もそうですけれども、具体的な目玉の一つはやはり病児保育です。これは御意見の中でも非常に多かったし、実は私は東京家政大学の卒業生の調査を今やっているんですけれども、子どもの病気がきっかけで辞める人というのは結構多いんです。だから、病児保育は私は具体的にできることで目玉の一つになると思っています。
     それから2番目が「待機児童ゼロ作戦」であります。この待機児童ゼロ作戦は、結論としては絶対に成功しない作戦なのですけれども、今ある顕在的な待機児童と、それから実はこれは厚生労働省などの調査で見ましても、日本だって本当はM字型にならないんだという分析ができるわけです。潜在的に条件が整えば働きたいという人を入れると、それは厚生労働省の計算だと300万人だそうで、300万人分の保育所をつくるというの大変なことで、計算してみたら2兆円だとか何とか言っていましたけれども、それは別としても潜在的、顕在的保育需要を満たすために、これは皆さまからいろいろな形での経営主体を多様化するとか空き教室の利用、余りばかなお金をかけない形でいろいろな経営主体でやっていく待機児童ゼロ作戦、情報公開とかそういうこともみんな含まれます。
     そして、恐らく今回出す目玉の具体的なイメージの一つの柱になる。ということは、やはり学童保育をすべての学校、すべての学校というのは猪口委員の御要望でございましたけれども、これは「必要な」でいいと思うんです。山間僻地に要るかと言われるとどうかとも思いますが、でも、要るのかもしれないんですよね。いつか高知県で2人の学童が火を付けたりして、2人とも親は共働きであったなどと記事に出るとどきっとしてしまう。すべてかどうか知りませんけれども、そのときに地域の人材、老人クラブの人たちを大いに活用するとか、そういうことはいいと思うんです。
     これが一つの目玉になり、そしてやはり「職場が変われば両立できる」。企業に対するお願いといいましょうか、考え方で、今日の浜田会長みたいな方もいらっしゃいますけれども、でもまだまだ、もっと私は企業の封建おやじみたいな方に来ていただいてそういう方の御意見を是非伺ってみたいんですが、やはり企業の側にもこのくらいのことは言ってもいいんじゃないだろうか。それで、厚生労働省では前からファミリーフレンドリー企業の表彰などをやっていますけれども、なるべく片仮名を使わないようにという御要望もございましたし、せっかく仕事と子育ての両立支援に関する専門調査会でありますから、両立賞などという言葉をつくって新しい、これは男女共同参画会議の中にさまざまな影響評価とか、そういう委員会も立ち上がるようでございますから、そこできちんと御検討いただきまして企業の両立指標という手法を開発し、しかもそれを調査し、公表していくというようなことが一つの促進策になるのではないか。
     そして最後が地域そろっての子育てをということで、こんなことでまとめてみました。島田会長代理、何か補足はありますか。
    島田会長代理
    これは基本的に樋口会長私案なんです。ですから、今日は徹底的にこれを議論していただくということです。
    樋口会長
    それでは、どうぞ。
    八代委員
    いただいた「検討情報報告の構成イメージについて」というのと私案との間に私はかなりギャップがあるような感じがしまして、イメージの方は私は非常にそうだと思うんですが、私案の方が余りにも行政ベース的な感じになってしまっているという感じをひとつ受けました。
     まず1つ大きな点としますと、イメージの方につきまして、私は3と4を逆転させる必要があると思います。保育が先にきて、それで足らない部分を企業にお願いするというのではなくて、私はむしろ今の働き方が最大の問題なのです。母親、父親でもいいですけれども、毎日夜10時、11時まで働いて、それに応じて保育園の営業時間を延長しろといったら切りがないわけでして、たまに忙しいときには残業で遅くなるかもしれませんけれども、普通はそんなに遅くない時間に帰れるという働き方にして、それをサポートするような保育でなければ、保育の方がとてももたないと思いますから、重要度からすれば私はまず働き方の改革が非常に重要であると思います。
     そこでこの私案の方に戻るんですが、職場が変われば両立できるというタイトルはそのとおりなんですが、ここに書いてあることはかなりマイナーなチェンジであって、研修やパパの産休ももちろん大事なんですが、より基本的には、私がこの委員会で前から言っておりますが、なぜ今、両立できないかというと、今の日本的雇用慣行に基本的な問題があるというところが大事ではないかと思います。
     それから、やはり男女の働き方の違いを前提にした雇用慣行を変えろということではないのですが、これに問題があるという指摘ですね。それに基づいて人事制度の複線化も大事なんですが、先ほど河野委員の発言のときにもいろいろな方からコメントがありましたように、働き方の多様化をもっと促進する。少なくとも政府はそれに対して中立的な立場を取って、今の例えばいろいろな雇用保障、その問題は別ですけれども、多様な働き方ということがまさに両立の一番大きなポイントなんだということを是非強調していただくということです。
     それから、先ほど育児休業後の軽減業務のときに賃金を下げるということがありました。これは労働法では不利益処分ということで今は基本的にできないんです。例えば先ほどおっしゃった有給休暇を時間単位で取れるというのも多分何か制約があるんじゃないかと思いますけれども、労働法自体が非常に硬直的な形になって、そういう制度的な制約というものを政府はまず率先的に見直す必要があるんじゃないか。そこが大事だと思います。
     それから、保育に関して言えば待機児童ゼロ作戦というのは私は前から非常に厚生省ベースであって、待機児童をターゲットにするというのは限界があるんですね。その背後にあきらめている人がいっぱいいるわけです。待機児童にすらならない方です。これはやはり休日保育とか、そういうことが基本的にできないから今の認可保育所では無理だということであきらめている。ですから、たかだか待機児童4万人程度が目標なのではなくて、もっと大きな目標が大事だと思います。
     重点は働く方にまずウェートを上げていただきたいということと、待機児童すらあきらめている、いわばディスカレッジド保育需要みたいなものを是非重視するような形で、より大きな遠大な対策を考えていただく必要があるかと思います。
    樋口会長
    これは本当に潜在的とさっき申し上げましたことで、あえて言えば300万をターゲットにしているということをもうちょっと具体的に書きましょうか。
    八代委員
    それからもう一つ、ここにはないんですけれども、こちらの各委員の保育に関する議論の中に出てきましたが、公立保育園を主体にしてどんどん増やしていくのか、それともここに書いてあるようなより公設民営型など多様な形の保育所を増やしていくのかということは、かなり戦略的に大きなポイントなので、そこも含めて考えていただく必要があるかと思います。
    樋口会長
    これは中間報告では結論は出せないんじゃないでしょうか。公立をつぶせとはだれも言っていない。ただ、公立だけで増やせるとはだれも思っていない。だから、それこそ多様な在り方を認めてとにかく飛躍的に増やせというところまでだと思います。
    島田会長代理
    ここのところでもうちょっと議論した方がいいかなと思います。今、八代さんの意見を受け継ぐ感じではあるのですが、ここで樋口会長が潜在的待機児童と書かれていますね。これは八代委員が言われたことを万感込めて書いてあるんだと思うんですけれども、私はあえて言いたいのは一回調査すべきだという気がするんです。今の3万何千人というのは顕在的な待機児童数なんですね。だから、おっしゃるとおりあきらめている人がいるわけです。だけど、本当はいろいろなことが可能ならばやりたいんですがというのを、やはりこれは国家戦略ですから一回調査をする。そうすると、何十万人という数字が恐らく都市では出てくるだろうと思います。それが実態なんだと思うんです。そういう問題にどう応えるかということがひとつあるので、私は調査をしよう、実態を把握しようと、せっかくのチャンスですからそういうのをひとつ提案したい。
     それからもう一つは、私はこれまでの議論をずっと踏まえていて、公立の保育所は非常に均質的ないいサービスを提供して信頼できる。これはお金がかかっているからでしょうけれども、いいサービスを提供しているというのはコンセンサスだと思うんです。さて、今、潜在的な人たちにもサービスを提供するというようなことを急速に広めていくときにどういう資源を我々は持っているかということになるわけです。そうすると今、公立が1万3千、それから認可が九千何百ですが、恐らく大都市部にはいろいろな形でさらに数千のオーダーでそういうものができなければいけないんだろうと思うんです。さっき私がちょっと浜田会長に申し上げたのもそういうことなんですけれども、各住宅地の駅にはそんなものが本当はあってしかるべきだと思いますけれども、それを限られた資源で日本という国がどう構築していったらいいのかというのは大問題ですね。ここのところは私は公立の大きな役割を認めた上で、やはり緊急にどんどん増やすべきところは質を担保した民間を促進しなければいけない。
     そこで、私は「保育サービスの質を確保するため十分な情報開示を義務付ける」という1行がありますけれども、これはものすごく重要な文章だと思っています。今、情報公開というと官に情報公開をしろと言っていますけれども、民の情報公開は少し少ないです。今までの日本のやり方というのはエントリーは非常に厳しく、エントリーさせるときはお眼鏡にかなった団体しか入れない。それで、後のチェックがないんです。だからむしろ逆で、エントリーは一定の明確な基準でOKするけれども、その後のチェックを情報公開する。それで、業績が悪かったり問題があれば営業停止にするというように変えないとうまくいかない。この辺はちょっと議論をしてやはり書き込んだ方がいい。
     それからもう一つは、これまで何度も議論に出ていますけれどもそういう施設をつくっていくときに非常に大きいのは、国も自治体も基準を決めてやっていいと言っても、実は自治体が動けないんです。その理由は何かというと、周囲から文句が出る。文句の出る原因をたどっていって、誰が文句を出しているかというと実は既存の業者なんです。それが住民を巻き込んで文句を言っているので、これは暗黒型社会なので、私はここで一番必要なのは、国と役所が基準を決めたら、本当は基準に違反しない限りやっていいということです。しかし、やっていいと役所が言ったら、今度は役所が関係業者と住民に袋だたきに遭うんです。その役所を救わなければいけないです。
     何で救えるかというと、ノンアクションレターという制度で救えるんです。つまり、こういうことの基準をちゃんと満たしていて、チェックも全部済ませましたからいいですというノンアクションレターを役所が出してしまうと役所は救われます。あとは地元社会のやっかみですから、やっかみがこのお墨付きではじけちゃうんです。役所がやはり救ってやらないと、役所はたまらないです。
     ノンアクションレターというのは民間の新規参入を助けるという理解もされているけれども、本当は公明正大な行政プロセスで役所を救うことなんだろうと思うんです。つまり、役所が本来の役所の仕事をさせるためにノンアクションレターを書く。これは私はどこかに書いておかないといけないなと、そう思います。
    樋口会長
    ありがとうございました。全員の方に御意見を言っていただきたいと思います。
    田尻委員
    八代委員が指摘されたように、やはり企業、働き方に関する議論という部分を保育の前に出してやっていくということ。それと我々は育児休業制度の充実という部分でかなり前向きな議論をしてきたと思うんです。例えば、実際に取る育児休業を一方の性で独占しないで、ありていに言えば男性ももっと取れるようにということで、今の12か月を1か月延長して13か月にして、それは一方の性で独占しないと銘打って男性も入りやすくする。一回は育児休業というのを経験した男性が企業・職場をつくっていけば、5年、10年先は必ず変わっていきます。
     それと、あとは私自身の経験も含めてですけれども、育児は1歳で終わらないので、例えば1年育児休業制を取らないで半年ぐらいにして、あと半年ぐらいを復帰後3年に限り短時間勤務に振り替えられる制度。総トータルは1年だけれども、短時間でできるという育児休暇を時間で引き出せるという制度ですね。浜田会長の説明にもあったように、育児休業というのは単体で取る方と育児時間と併用して取るというのは、育児が小学校の前までは必ず保育園の送迎としてセットされている。それで、普通のサラリーマンの時間というのは非常に厳しいわけですから、30分なり1時間をやってあげるというのは非常に有効ではないか。
     ただ、今、育児休業法が10年の見直しになっていますからこれはタイムリーなわけで、我々の方から言っていくことは非常に大事じゃないか。
     それともう一点ですけれども、先ほどから議論になっていて岩男委員がおっしゃったオランダモデルのように、きちんとそこら辺を出して、派遣、パート、こういう多様な弾力的な働き方を我々は促進していき、どんな働き方をとっても育児と両立できるという道をきちんとつけてあげなければ、これは言いっ放しになって、そういった仕事を選んでいる人に対して失礼なわけですから、そういったパートの方にも育休法を適用させる。片一方は取れる、片一方は取れないというのではなくて、それを是非入れたいと思います。以上です。
    佐々木委員
    いろいろありがとうございます。私は待機児童ゼロ作戦という名前はとてもよいと思いました。インパクトを与えるという意味で非常にわかりやすく、今そういう待遇にいる人たちが一番不満を持っているとすればとてもよいと思いました。もちろん八代委員がおっしゃったように、その先の潜在的な方々にも向けてですが、表現としてはこれはとてもいいと思いました。初めに申し上げたように、私は今までのすばらしい政策が女性たち、母親たち、家族に届いていないという理由の一つが、今現在困っている人たちにとっての満足度が足りないということだと思うんです。長期的過ぎてしまったり、全体的過ぎるものではなく、今日困っている人がすぐに解決するということがあれば満足度が高まると思うので、そこに焦点を是非当てていただきたいと思っていますので、待機児童ゼロ作戦はいいと思います。
     それから、公立については私は何度も言っているのですが、公立で私がいいと思う点の1つは安いということです。民間でも公立のように安くしていただければ、どういうサービスでもだれがやってくれてもいいと思います。ただ、その条件として、まず園庭がきちんとあること。運動場がないというのはすごく困ると思います。それから看護婦や栄養士も含めて大人の数がきちんと確保されていること。こうした保育園が増えていかないと困るわけで、ビルの1室を借りたような保育施設では、これは長期的に、ゼロ歳児から6歳児まで6年間の人間形成を行うには園庭がないようなところでは私はよくないと思うので、そういう意味で公立と言っておりますが、何かそのような表現が入るといいと思いました。
     それから、学童についても入れていただいてとてもうれしいと思います。私たちのところに集まった意見にも非常に多くありました。できれば7時までというのを入れていただきたい。学童保育が5時で終わっていることは多くの働く女性にとって、なぜ保育園より短いのと、本当に切実な思いがあったので入れていただければと思いました。 それから今、田尻委員から出た男女の育児休暇、これに関しては私の意見を言えば、今、同時に取ることが可能ではないですね。母親が休んでいるときは父親が働かなければならない。それを同時に取りたければ同時でも可能、両方足して何か月ではなくて1人としてそれだけ取れて同時にも取れるとすると、母と父が初めて子を前にして話し合ういい機会が持てると思います。
     あとは、小学校入学時とか中学校入学のときなどの短縮労働が認められる制度、これは今回の委員会に出て非常に切実に感じたので我が社の社則には入れようと思っております。私も今度上の子が小学校に行くので初めてわかったんですが、今まで保育園で5、6年安定していたのが、小学校に行く前と後は母親は学校に呼び出されたり、入学に伴って物を買ったり、つくったりいろいろあるんです。ですから、子どもが6歳になったら、12歳になったらもう問題はないというのではなくて、子どもにとってのライフステージの節目節目に親がつき合ってあげられるような短縮制度、時間短縮でも有給プラス有給が何日か増えるとか、そういうものがあればいいと思いました。
     最後に、今まで言ってこなかったんですけれども、ちょうど確定申告の時期ですね。ちらっと私も過去に言ったのが入っていたんですけれども、パソコン代は経費で落ちるのにベビーシッター代は落ちない。働く女性たちにとって、結局先ほどの公立、私立民営の話も同じですが、費用が幾らなのかというところが大きいので、ベビーシッター代、保育園代がサラリーウーマンにとっても別途確定申告をすると税金の控除対象になって経費扱いされる。国の姿勢がそう決まれば大きな企業一つひとつに呼び掛けをする時間をかけずしてかなり大きな変化ではないかと思っております。
    樋口会長
    税額控除はちょっと考えはしたのですけれども。
    佐々木委員
    一応提案だけ申し上げます。
    八代委員
    大事な点なので、一言だけ申し上げます。つまり、今一番困っているのが待機児童を持っている人だという認識は私は全く持ちません。一番困っているのは、今無認可保育所に預けている人です。
    佐々木委員
    待機児童の人が困っているというのではなくて、私が言っているのは、今、保育園に預けられなかった人、無認可に行っている人、学童の人という、要するに子どもを育てている母親が明日、今日よりよくなれば、非常にその満足度が高くなると思うということです。今までの政策はとてもいいんですけれども、5年後に保育園が増えますと言われても、そこでやはりターゲットとなる人が見えない。今日現在困っている、不満を持っている人の不満が1つでも解決されると、かなりの満足度が高まるということです。
    八代委員
    だけど、それは厚生労働省の定義による待機児童ではないのですね。そこが一番のポイントなのです。
    島田会長代理
    潜在待機児童を一回調査すべきだと思うんです。大規模調査を一回やるべきだと思います。
    八代委員
    潜在待機児童ゼロ作戦であれば私は賛成です。
    佐々木委員
    もちろんそれはそうです。
    樋口会長
    無認可に預けて高いお金を払っている人が一番困っている。それが今の御意見になっているわけですね。
    島田会長代理
    だから、これは是非調査をしようというのを一回入れましょうよ。一回の調査で相当推計できますから。そのときに無認可とか、もうあきらめているとか、いろいろな人が上手にサンプリングをしてやると推計できますよ。
    佐々木委員
    調査するとき、例えば保育料が月に1万円とか2万円で済むとしたら働きたいですかなども聞かなければいけないと思います。
    島田会長代理
    それで今、佐々木委員がおっしゃった費用の話なんですけれども、これはこういうことになっているわけですね。公立のところは実際には非常に多大な費用がかかっています。東京都の負担まで入れると1人当たりゼロ歳児、1歳児で60万円ぐらいかかっていると言われます。それを国は8万円まで請求していいと言っているのですが、東京都は最高所得者に対してでも5万5千円までしか請求しないんです。そこの補助があるからできるんです。
     これは私は考え方の問題で、それができるのはいいことだと思うんですけれども、民間は高いというのは当たり前で、民間は60万円かからないでやります。恐らく30万円ぐらいでやります。そうすると、民間に公立と同じサービスを提供させるためには、30万円に対して24万5,000 円ぐらいの補助を出さなければならなくなるんです。つまり、これは我々がどこかで考えなければならない。国民の限られた資源をどうするんだと。
     だから、国の資源をどう注力すべきなのかという話です。それでは公立と民間とどこに違いがあるのかというと、これはプラスマイナスありますけれども、公立の場合は国がバックですからずっと安定ということはあるでしょう。民間の場合は経済的に存立しなければリタイアするということもありますけれども、そのために逆に民間はお客さんが目の前にいるためにきめ細かく一生懸命対応しようとするんです。
     ですから、民間保育の場合に質のいいところと悪いところと分布が大きいというのは、一生懸命やるところは質がいいわけですね。公立の方は基本的に標準的な質のサービスをリライアブルにやるということがあると思うんですけれども、やはり民間のメリットは目の前にいるお客さんのためにできるだけのことをしよう、コストを削減しようという努力をするというメカニズムはありますね。その辺の問題の予算とインセンティブというのを我々は一回どこかで考えないと、統合性のあることにならないと思うんです。それを是非お願いしたいと思います。
    樋口会長
    岩男委員、御感想をどうぞ。
    岩男委員
    1つは、もう既にいろいろな提言がある中でそれがうまくいっていないから今議論をしているということなので、そこをはっきりさせる必要があるのではないかと思うんです。ですから、例えば一番最初の柱の3番目の「保育サービスの質を確保するための十分な情報開示」というところまでは既に有識者会議でも全く同じことを言っているのですが、要するに法制化というか、義務付けるという、ここが新しい点で、それがなかったから意見交換会による提言が生きなかったんですね。ですから、ここを強調する。
     それから「潜在的待機児童ゼロ作戦」ですけれども、要するに労働力不足が目に見えているわけで、そのときに女性、高齢者、外国人を活用というんですけれども、一番現実味のあるのが女性なんですね。ですから、そこを視野に入れて考えると、あきらめている人だけではなくて、更にいつでもだれでも必要なときに預けられれば仕事に参入してくるという、そこをもっと視野に入れて考えるということと、併せて私は専業主婦を選んだ人でも預けられるということにつながらないと、やはり働く母親とそうでない人の対立みたいな構図に持っていきたくないんです。虐待の問題なども専業主婦のストレスの結果というのを私はすごく感じるので、このキャッチフレーズはとてもいいんですけれども、何かうまくできればと思います。
     最後に1点、2枚目に「両立度の高い企業を優遇する」と書かれているんですけれども、私は前から法人税をまけるということにひどくこだわっていて、やはり現実的に目に見える形のメリットが入らないといけないと思うので、何かそういうものがあってもいいんじゃないか。いただいた御意見を見ても私だけが過激なわけではなくて随分法人税をというお声があるので私は大変力づけられました。
    島田会長代理
    法人税というより、租税特別措置の対応があり得るんです。その方が目的を明確にしてやれるんですね。
    樋口会長
    税金ということですね。ありがとうございました。それでは、ちょっと中断しましたけれども櫻井委員どうぞ。
    櫻井委員
    今、岩男委員が御指摘になった2枚目の4番目の企業の優遇というところが余りにも抽象的なので、やはり島田先生がおっしゃるように法人税の問題とか、租税特別措置とか、具体的にここに書いていただけると、よりよいと思います。
     それから、これらの対策は男女共同参画意識がもう既に人口に膾炙した状態が前提のように思いますけれども、私は学校現場にいますが、現場の教育を見ておりますと、それが全然進んでいないんです。いまだに性別のものは厳然として残っているし、意識改革も進んでいないんです。だから、そこのところをいわゆる根源対策として、これから生きる日本人は共同参画、しかも子育てと家庭を両立していく、そういうものを育てるんだというのがどこかで欲しいなと思うんです。
     それから、ちょっと細かくてすみませんが、先日土曜日に相模原市に参りましたら、神奈川県でこんないい資料を出しておられるんです。「どちらも大事 両立させよう 仕事と育児」ということで、神奈川県商工労働部労政福祉課が平成12年の3月に、もう既に1年たっているんですけれども出しておられまして、これをどういうところで配布されているんですかと聞くと、市役所の窓口に置いたりしておりますというんです。こういう意識づけやサービスがあるんですよということが意外と知られていないので、そのときも申し上げたんですけれども、例えば婚姻届を出しにいらしたとき、戸籍届、出生届を出しにいらしたとき、あるいは母子手帳を取りにきたときとか、ハローワークとか、そういうところに既にこういうサービスがあるんですよということをもっと浸透させていく必要があるのではないか。その点をお願いしたいと思います。
    樋口会長
    ありがとうございました。島田委員どうぞ。
    島田(祐)委員
    私は、今の意識を高めるというのは、ただ漠然とやっていてもだめだと思います。何か実際に行動が起こって、それで世の中があっと驚くような行動がないと、変わったなという感じはしないと思うんです。
     それと、私は3番目に保育がきて、4番目に企業でいいと思います。やはり保育所の充実、それからいろいろな機能を持っている保育所というのがまずあって、そうすると先ほど岩男委員のおっしゃったように普通の専業主婦でも働こうと思ったときにすぐいろいろ受入体制があるんですね。
     私たちの仕事は9時5時の物差しではなかなか計れないものが多いんです。霞ヶ関に10月に文部科学省が音頭を取って保育所がオープンするそうですけれども、それはとても理想的な形で、診療所、給食制度があって、そしてお値段も5万円以下で、しかも夜10時までという、それがものすごい魅力なのですけれども、例えば日本の文化を担っている音楽家ですとか女優さんですとか映画制作、テレビ制作、ジャーナリスト、デザイナー、そういう人たちは9時5時の枠内には入らないんですね。それと、演奏旅行とかいろいろありますし、泊まりということは欠かせないんです。子どもを泊まらせる施設がないと成り立たない職業です。そうかと言ってベビーホテルというのもありますけれども、5つ星、4つ星というランク付けもありませんし、基準がありません。ですから、そういう意味では情報公開というのは大変重要になってきて、安心して預けられる施設というのをたくさんつくっていただきたい。エントリーは簡単だけれども、あとのチェックが大変という機能は大変重要だと思います。
    樋口会長
    ありがとうございました。では、河野委員どうぞ。
    河野委員
    情報発信として、どなたに今回このテーマをぶつけるのかというので報告の組合せも変わるんだろうと思います。それで、私は日ごろ「子育て」を「個育て」と書いて、「個育ては21世紀の人材育成」というキーワードを使っているんですが、そこを経営者等にわかってもらうには、21世紀を支える人材を育てている親であって社員でもあるという発想をまず持ってもらった上で各論に下りてくることと、あとは基本的には個人の問題で、個人が自立した中で行政のサポートとか企業のサポートがあるという発想も必要だろうと思うんです。
     その中で各論なんですけれども、私は企業のところしかわからないんですが、何かやっていただくときに、例えば費用負担を少ししていただけるとか、読むときにそこがすごくネックになります。例えば管理職研修ですが、もちろん八代委員は小さいことだと言うのはよくわかるんですけれども、現実に管理職研修まではどこの企業にもあるんです。例えばその中に必ず両立支援に関する項目を入れるとか、その場合に一律例えば何十万とかということがあれば動くかもしれないというか、もう少し使い勝手を考えるとよいのではないか。
     あとは、私は企業の中がいいか、外がいいかわかりませんが、せっかくいい制度や保育園がもしあったとしても、それを使いこなせない個人がいますので、ライフプランやキャリアプランのメンター的な存在というのを置くべきだと思います。企業に置くのがいいのか、企業より外がいいのかわかりません。ただ、企業のことを一緒に考え、企業の中で働くことを考えてくれる、そういう諸先輩でもいいかもしれませんが、そういう人たちの配置というのも大きいテーマだと思います。これは親の生き方の問題だと思いますので、その辺も含めて個人に意識づけをする仕組みというのも重要ではないかと思います。ただ、企業が何かをやるとしても今はお金がない、組合もやっと今お金を出して個人からお金を1万、1万5千円と取ってやっている現状があるので、その辺をちょっと企業の方に振っていただくだけでも自己努力をする組合というのは出てくるのではないかと思います。とりあえず時間もないのでここまでにいたします。
    樋口会長
    ありがとうございました。
    島田会長代理
    この全体のまとめ方ですけれども、さっきおっしゃっていたようにもう一つ項目を入れてくくり直した方がわかりやすいのかなという感じがするんです。 第1に、今あるものをもっとフレキシブルに、これは一つの塊ですね。次に待機児童ゼロ、これも非常に重要だと思います。それで、その待機児童のところは随分たくさん書いてあるんですけれども、ここに実は多分もう一つ入っていて、公設民営だとか、それからさっき佐々木委員がおっしゃったように、いい質のものが安ければ民営だっていいんですよと、それは多くの人が抱いている希望ですね。官のものをいきなり何千か所とは増やせないと思うんですけれども、民は高いもの、あるいは質の悪いものはやっているわけですね。その中である基準というか、良質なものを支援をしていく。そして急速に増やすということがあっていいと思うんです。
     そうすると、民を増やしていく中で質をまず担保するにはどうしたらいいかということで情報公開とチェック、これを義務付けるという話ですね。もう一つは、佐々木委員がおっしゃるように、それでなおかつ安くさせるためにはどうするかというと、これはやはり補助しなければならないんです。官よりはうんと少ない予算でできると思いますけれども、この補助は例えば駅で保育所をやると、駅は地代を月に1坪3万円よこせと言うんです。3万円をコンビニなら払えるけれども、保育所は5千円ぐらいじゃないと無理です。その2万5千円を実は補助をすべきなのかという話は、我々の専門調査会で固めた方がいいと思います。それはさっきの所得税や租税特別措置の話もそうですけれども、この辺の一連の話は一度きちんとやった方がいいと思います。
    樋口会長
    そうですね。「待機児童ゼロ作戦」の一番下に今おっしゃっていた話で「駅などを活用するために適切な助成を行い、保育所の絶対数を増やす」と。
    島田会長代理
    会長、こうできませんか。ここに「民間の活用と質の確保」と、もっと言えば値段も入りますが、そういう1つ大きな項目を入れて、それで公設民営をやっても結構、駅型も結構、ただその質は確保します、チェックはします、必要な補助金は精査して入れますと書いた方がわかりやすくないですか。
    佐々木委員
    これは素人的かもしれませんけれども、私は補助金に関して、例えば保育園を運営するという企業、それを選んでビジネスとしている以上、私は政府が企業に補助金を出すのは余り賛成ではなくて、むしろ先ほどの免税じゃないですが、個人がそこを選択せざるを得なくなったときの経費がきちんと個人に還元された方がいい。企業に助成金がいってしまうことは私は危険だと思うんです。
    島田会長代理
    それもひとつ大いに議論する価値がありますね。どちらがいいのかですね。
    佐々木委員
    そうです。それは是非話し合いたいと思うのと、それから駅型という表現が私は結構際どいと思っています。私自身子どもを産む前は駅型とか夜中型とか24時間と言われるキーワードが、へえなかなか変わってきていいじゃないなどと思いましたけれども、産んでみるとやはり先ほどから言うように6歳までの人生の初めの基本をつくるときに駅の一室でいいのかと。窓もないところで、園庭もないところで人間がどうなってしまうのだろう。やはりこれは自分の子どもというすごく大切な宝物を預けるということで、人の子と違う、荷物とももちろん違う。そこで生活をして長い時間食べて、生きて、考えるという、それが駅型という表現が出た途端に、それでいいのかと。
    樋口会長
    「駅など」で、これはサテライトも考えていたんですけれども。
    佐々木委員
    そうなんですけれども、でも駅という言葉がとても強いインパクトを持っていますので。
    島田会長代理
    おっしゃることはよくわかります。シンボリックにですね。
     だけど、子どもが育っていくときに、1歳になると探索活動を始めますよね。それが知的な発達になりますでしょう。もうちょっといくと、やはり必ず庭が欲しいんですね。運動しなければならない。
    佐々木委員
    ゼロ歳でもやはり光に当たり、歩き回らないといけません。私は何度も言うんですけれども、保育園は必ずしも別にフルタイムの人のためのものではないので、駅があっていいんです。けれども、駅型保育という言葉が出てしまうとすごく怖いような気がします。
    樋口会長
    それが一つの象徴になってしまうと怖いということですね。だから、場合によっては両論併記というか、この部分についてはまだこれから検討するということで、もちろん中間報告ですからよろしいと思うんです。今日は御意見が少し分かれましたが、私などは全く個人的な見解を言えば、職場が変われば両立できるということが一番大事だと思っている一人です。一番大きいんです。だけど、なかなか日本の行政というのは言いにくいのかなと思いながら、私はもちろん柱立てはつくってあれでしたけれども、配列というのは難しいけれども、本当はそこが変わってくださらなかったら私はやはりまた変わらないだろうと思っています。
    河野委員
    そろそろ変わると思います。経営者のお嬢さんたちが活躍し始めているのが現実に一番いいことなんです。ただ、さっき浜田会長がおっしゃっていたように、利益を生んでいない企業では立場的に言えないんです。ですから、かえって言っていただいた方がいいんじゃないでしょうか。
    樋口会長
    それから企業経営者の中には、あれだけよくわかっていらっしゃる浜田会長でも3歳までは母の手でと。
    島田会長代理
    そこのところは考え方をここで大いにうたう必要があるんだけれども、今度は考え方を多様な選択に生かしていけるような政府として何ができるかという制度整備ですね。これは、我々国の機関ですからやるべきですね。
    樋口会長
    それから、浜田会長のおっしゃることを聞いてこの辺は気をつけなければいけないなと私も感じましたのは、子どもイニシアチブ、子ども最優先ということです。それはそれこそ子どもの権利条約だって何だって子どもイニシアチブなので、基本的に押さえなければいけないんですね。だけど子どもイニシアチブというのは子どもにだけ合わせるということでもまた全然なくて、子どもの幸福というものを最大限に前提として考えながらということです。それから浜田会長は100%の育児とおっしゃっていたのですけれど、その100%が果たして今100%なんだろうか。実は今あるイメージの子育ての方が50%になってしまったり40%になってしまっているんじゃないか。
     だから、ここで提言することはどうかと思うのですが、私は個人的には、今までは母が子育てをするということを前提とした育児論、教育論というのが長いこと支配してきたわけですけれども、やはり共働きの育児学というか教育学、家庭教育学というものをちゃんと、調査という以上にむしろ一つの学問として体系を立ち上げることが必要だと思います。これは何も働くことを促進するわけではないけれども、今まで共働きは非行の温床などと決め付けている人たちがいたわけです。私などはそう言われて育ててきたんですよ。そうじゃなくて、当たり前ですけれども共働きでもちゃんと育つ。共働きが少なくともさまざまな多様性を持ちながら半数を占める現在、半数が非行の温床になったらどうするんですか。
     それで、今度は在宅で主婦のいらっしゃるお宅も密室化して、むしろ共働きの方が父親の方がしようがなく手を出すものですから、100%だと思っていたものが今はどんどん風穴が空いたりしている。だから専業主婦にも開放せよというのは私は当然賛成だと思うんですけれども、そういうものを今ちゃんと研究して、どちらの側も安心できるような安心の育児学と、そういうことも言ってほしいと思うんです。
    坂東局長
    だんだん時間が迫っておりまして、もうそろそろかなと思うんですけれども、今までの先生方の御意見を聞いていますと、前に会長がおっしゃったように具体的で効果的で重点的で印象的なものをこの提言の形でやっていただく。その他に、日本型の雇用とか、企業全体の在り方とか、社会の価値観だとか、美意識だとか、そういったようなものも含めて変わらなければだめなんだというふうな企業の経営者だとか、政治家だとか、行政の責任者だとか、自治体経営者に対して訴えかけるようなアピールも必要ですね。
    樋口会長
    平成8年の国民生活白書が日本型雇用と言っています。あそこまでぴしっと言っているのを上回れないようじゃ私はいけないと思っているんです。
    坂東局長
    だから、これは具体的な提言で、具体的で印象的でやれることと。
    島田会長代理
    今、最後におっしゃったのは大きく打ち出すということですね。考え方でですね。
    坂東局長
    呼び掛けの部分です。それからもう一つは潜在的な待機児童の調査はとても大事だと思うんですけれども、我々公務員というのは調査しましょうで2、3年時間を稼ぐという反応をしてしまうので、これから潜在児童の調査をしましょうというとトーンが落ちたというイメージになるんですけれども、どうでしょうか。
    樋口会長
    だから、項目の中に入れればいいじゃないですか。
    櫻井委員
    例えば国勢調査の項目の中にそういうものは入れられないんですか。
    樋口会長
    国勢調査では急には入れられないと思うし、もう5年後になってしまうから、労働力の特別調査とか、それから国民生活基礎調査の中に入れられますね。
    島田会長代理
    そんな大掛かりな指定統計に入れなくてもある種のサンプリング調査は可能ですよ。今、調査というとやらないととられると公務員がおっしゃっているというのには私は愕然としています。調査しないで何をするんだ、データも知らないで何をするんだということが言えるので。
    八代委員
    そこなんですけれども、無認可保育所にどれだけ子どもがいるかなどというのは既に厚生省は押さえていますので、それで十分じゃないかと思うんですか。
    樋口会長
    とにかく今ある情報はばっと集めて、まだここに開示されていないと思うんです。
    島田会長代理
    八代委員がおっしゃることを言えば例えばこんなこともあるんです。このM字型サイクルがあるでしょう。M字型サイクルで、例えば配偶者控除が変わったらどうしますかみたいな調査を厚生労働省は既にたくさんやっています。それを解釈し直せばいいんです。
    樋口会長
    あるんです。厚生労働省はそれが満たされればM字が真っ直ぐになるんだと言うんだから、そのデータをちゃんと私たちに出してもらいましょう。
     それと、一つ皆さんに伺いたかったのは作戦なんだけれども、4月の頭に中間報告をしますね。それからいずれ4月の頭から5、6と2か月かけて、最終報告はいつですか。
    坂東局長
    5月の末か6月の初め、できるだけ5月末までにということです。
    樋口会長
    だから、6月の頭には最終報告をしなければならないわけですね。その間に一応事務的な手続をやった方が私は絶対いいと思うんですけれども、どこか地方へ出て公聴会というか、そういうことをする。それで、中間報告でどこまで言い切ってしまうのか。つまり、話題は中間報告で集めるのか、最終報告で集めるのか。これはかなり戦略的な問題でして、中間報告をぼんやりと言っておいて、本当の本報告でばっと言うのか、中間報告でほとんど出尽くして、あとは地方公聴会をやったり、その後の論議のまだ煮詰まっていない民間の活用をどのぐらい、どちらにどうウェートをかけるかなどというのもうちょっと議論した方が私はいいと思っているんですけれども、そういう部分の結論を出すのが最終報告になるのか。
     ただ、そこら辺は余り利用者にとっては、白いネコだろうと黒いネコだろうとネズミを捕ってくれればいいやというようなところで、そこら辺は余りぴんと来ないのかもしれないなという気がしているんです。
    島田会長代理
    今の問題はとても重要な問題です。我々が議論したことは全国から反響がありました。ですから、おっしゃるようにどこかでまた直接議論するということも必要でしょうし、それから今、幾つか出ている話題をもうちょっと詰めた議論をする必要がありますね。もうちょっとよく議論をして、この問題は八代委員など御専門ですから、きちんとこれは議論した方がいい。そのためには3月26日にはそこまで煮詰まらないだろうと思います。
    佐々木委員
    こういうことは可能なんでしょうか。例えば、こういうポイントを話し合っていますということを中間報告で言う。PR効果からすると最後だけというよりも、2回PRの機会があった方が世の中の人にも伝わりやすいし、これだけ意見を何百人もの方が出していると、すぐに結果を知りたい。そうすると、ちょっと書き方はあれですけれども、例えば公立保育園か民間か、待機児童の話、それから税の話、民間の話、あるいは学童の話、この柱で今、詰まっていますと書く。そうしたら、3月26日の発表後にまたもしかすると国民の声が出てくると思います。ですから、決定でなく、その辺で少し皆さんの話題をつくるような形の中間報告でやればいいのではないでしょうか。
    島田会長代理
    今、公立か民間かと言われましたけれども、対立する概念じゃなくて多様な選択を可能にするというアプローチの方がいいと思うんです。両方とも一長一短ありますから。
    樋口会長
    今のはまさに多様なというのがタイトルになればいいんですね。そうしたら、今日の御意見を集めましてまとめまして、この次までにまたもう一度私案をまとめますから、そこで26日にもう一度御議論をいただいて、できましたらここら辺でいくというところで御了承いただければと思います。何だったらA案、B案ぐらい持ってきましょうか。私が本当にやるとかなり過激になると思いますが、でも皆さん過激なことをおっしゃっていますし、世の中過激になっているんですよ。
     本日は大変実り多い討論をいろいろいただきましてありがとうございました。

(以上)