先輩からのメッセージ

- 西岡 幸子さん
- 一般社団法人AWESOME 代表理事
自己紹介
神戸大学農学部生物機能化学科(現在の生命機能科学科)を卒業し、卒業研究ではシミや衣服の黒ずみの原因になるメラニン色素を分解する微生物について調べていました。2000年にP&Gに技術系総合職として入社し、結婚・2度の出産と育休を経験しながら、グループリーダーとして紙おむつ「パンパース」の新商品開発やアジア地域の素材戦略に携わりました。これまで20カ国以上の人たちと協働し、15以上の製品開発に関わってきました。2019年に退職後は「モノづくり」から「人を育てる」ことに軸を移し、社外メンターや組織支援の仕事をスタート。理系女性の活躍を応援したいという思いから、2022年に「AWESOME」を立ち上げ、2024年に法人化。中高生から社会人まで、理系のキャリア支援を一貫して行っています。
【主な開発製品】
パンパース やわらかコットンケアパンツ(2009年~2018年)
パンパースの肌へのいちばん パンツタイプ(2017年~2018年)
農学系分野を選択した時期・理由
理系を意識したのは高校1年生の頃、当時飼っていた愛犬の病気をきっかけに「獣医師になりたい」と思ったことが始まりでした。そのために理系に進もうと決めましたが、理科や数学が特別得意だったからというよりは、「国語以外の教科はどれも好き」という気持ちの延長でした。高校2年生になって改めて自分の進路を考えたとき、「動物の命を預かるのは、自分には少し荷が重いかもしれない」と感じ、方向転換を考え始めました。そんな時、理科の先生の「興味のある本を読んでみたら?」という一言から出会ったのが『飲み水を考える』という一冊でした。通学路にあった貯水池の水質やアオコの発生に疑問を持っていたこともあり、水質汚染や微生物の働きに関心が芽生えました。ちょうどバイオテクノロジーが話題になっていた時期で、「微生物の力をもっと学びたい」と思い、農学部を志望しました。
現在の仕事(研究)の魅力やおもしろさ
P&Gで原材料エンジニアとして働いていた頃は、大学での研究とは分野こそ異なりましたが、農学部で学んだ化学の知識を、不織布・接着剤・ゴムといった素材開発に活かすことができました。新しい原材料を設計し、製造ラインで試作品をつくるプロセスは、まさにスケールの大きな実験です。理系の仕事は、社会や消費者が抱えるニーズやアイディアをカタチにできることが大きな魅力です。仮説を立て、検証し、改善を重ねながら、消費者の役に立つ製品をつくる――技術を通じて社会に大きな影響を与える実感がありました。私は海外製品の開発にも携わっていたため、現地の仲間と協力しながらものづくりに取り組み、店頭に自分の関わった製品が並んでいるのを見たときの感動は、今も忘れられません。
女子中高生・女子学生の皆さんへのメッセージ
「理系に進む=専門分野の研究や開発を極める」というイメージを持っている方も多いかもしれません。でも実際には、理系のスキルを活かして多彩なキャリアを歩んでいる人がたくさんいます。
理系出身の女性たちは、研究職・技術職だけでなく、商品企画やマーケティング、教育、起業など、さまざまな分野で理系的な考え方を活かして活躍しています。
もっと多くの女の子たちが理系に進み、多様な視点から社会に新しい価値を生み出すことで、男女問わず誰もが活躍できる未来が広がると信じています。
AWESOMEでは、そんなリケジョたちのリアルな姿に出会えるロールモデル集やイベントを発信中です。ぜひ気軽にのぞいてみてください。あなたの「ちょっと気になる」が、未来の可能性につながるかもしれません。