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コラム5
女性にも選ばれる地域づくりに向けた取組の事例
DXを踏まえた女性活躍の推進 ─長野県塩尻市の事例(KADO)
デジタル技術の発達は、テレワークの推進等を通じ多様な働き方の可能性を拡大するものでもあり、その活用により、女性の就業・活躍が促進され地域の魅力向上が図られることが期待されている。地方公共団体においては、国の各種の支援も受けつつ、DXを踏まえた女性活躍推進のための様々な取組が積極的に推進されている(その内容を体系的に図示するとおおむね以下のとおり。)。

それらの取組の中から代表的なものとして長野県塩尻市の事例を紹介する。
〇 主な経緯・概要
塩尻市は、他地域に先駆けて平成12(2000)年には市内拠点に光ファイバーを設置するなどICT施策を以前から積極的に進めてきており、その経験や資源を活用し、平成22(2010)年に厚生労働省の「ひとり親家庭等の在宅就業支援事業」に応募し、ひとり親家庭を対象とした在宅就労支援事業として、公設クラウドソーシング(インターネットを通じて不特定多数に業務を発注する業務形態)・自営型テレワーク推進事業であるKADOを開始した。その後、対象を子育て中の女性、障害者、介護者等の“時短就労希望者”に順次拡大し、現在に至る。
なお、同市では、KADOで働くことを第1チャレンジとして経験や自信をつけてもらい、第2チャレンジとして就業や起業を目指してもらうことを期待している。
〇 公社による業務の受注、分割(委託)、スキルアップ

塩尻市の事業(KADO)は、外郭団体である塩尻市振興公社の主導により、企業や自治体の業務からアウトソーシング可能な業務を切り出して受注し、それを分割して登録者(テレワーカー)に委託して行われることに特徴がある。業務は公社の職員の業務管理の下でチームとして行われ、登録者は、自らの都合に合わせた時間と場所で働くことができ、行政のサポートの下で、業務の遂行等を通じながら、安心してスキルアップを図ることができる。
〇 育児施設を伴うコワーキング施設の設置
市街地の公共施設内に専用コワーキング施設を整備し、同施設内の子供広場、託児所、商業施設等や、隣接する複合施設(図書館、ハローワーク等)と併せ、安全安心かつ利便性の高い就業環境を整備している。専用コワーキング施設でのオフィスワーク型ワークと在宅ワークを組み合わせ、柔軟に働ける環境を構築している。
〇 現在の状況
クライアント企業や省庁と連携し、この仕組みを他の自治体にも展開している。受注額は令和5(2023)年度で約3億円である。
なお、KADOへの業務受注をきっかけとして企業とのパートナーシップを構築し、自動運転の社会実装に向けて令和2(2020)年1月に複数企業と包括連携協定を締結するなど、地域社会DXの実現と連携した取組も行われている。自動運転に必要な高精細3次元地図の製作に携わるなどKADOテレワーカーの新たな活躍の場の創出にもなっている。