第5分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶

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第3節 子供、若年層に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

1 生命の尊さを学び生命を大切にする教育、自分や相手、一人一人を尊重する教育を更に推進するとともに、性犯罪・性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、幼児期から子供の発達段階に配慮した教育の充実を図っている。

文部科学省では、内閣府と共同で作成した「生命(いのち)の安全教育」の教材等を活用したモデル事業を55校で実施した。また、教員向け研修動画の公開及び児童生徒向け動画教材の活用等を周知するとともに、全国の指導事例を取りまとめるなどの取組を進めている。【文部科学省、関係府省】

2 学校、児童福祉施設等の子供と直接接する業務を行う施設において、子供が相談しやすい環境を整備し、性的虐待の兆候を把握して児童相談所等と的確に連携するための研修・広報啓発を実施している。あわせて、二次被害の防止及び円滑な専門機関への相談のために、最初に性的虐待の被害を打ち明けられる可能性がある保護者、保育士、教師など子供に関わる大人に対して、初動対応に関する啓発を推進している。【法務省、文部科学省、厚生労働省(こども家庭庁)】

3 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者の児童相談所等への通告義務を周知徹底するとともに、児童相談所、警察等においては、性的虐待の認知・把握に努め、被害児童の保護、被害児童に配慮した聴取(代表者聴取)、加害者の検挙と適切な処罰等に向けた必要な施策を実施している。【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省(こども家庭庁)】

4 若年女性を対象に、NPO等の民間団体が公的機関等と密接に連携し実施する、夜間の見回り・声かけ、インターネット上での相談などのアウトリーチ支援や居場所の確保、自立支援等について、相談対応職員の相談技能の向上や、特に配慮を要する若年女性への個別対応の強化など、支援体制の強化を図っている。また、これらの支援の全国普及に向けて地方公共団体による民間団体の育成等を支援している。【厚生労働省】

5 児童相談所やワンストップ支援センター等において、性的な暴力被害を受けた子供に対する被害直後及びその後の継続的な専門的ケアや支援が実施されるよう取組を進めている。あわせて、専門的知識を備えた人材の育成を推進している。

内閣府では、性的な暴力被害を受けた子供に対する被害直後及びその後の継続的な専門的ケアや支援が実施されるよう、ワンストップ支援センターの相談員等を対象としたオンライン研修教材を提供した。【内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

6 内閣府では、被害児童の負担を軽減しつつ、適正な診断・治療等ができるよう、医療関係者等を対象としたオンライン研修教材を提供するとともに、研修を実施した。【内閣府、厚生労働省(こども家庭庁)】

7 被害児童の学習や通学など社会生活が妨げられないよう学校で教職員が相談に乗ったり、関係機関と連携するなどの適切な措置を講じている。【文部科学省】

8 通学路や公園等における防犯・安全対策を強化し、性犯罪の前兆となり得るつきまとい等の行為に対する捜査・警告を的確に実施している。【警察庁】

9 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和3年法律第57号)の適切な運用がなされるよう、法の規定や立法趣旨、法の基本指針等について、各教育委員会等に対して周知徹底を行っている。また、児童生徒への性暴力等により教員免許状が失効・取上げ処分となった者に関する情報を記録し、こうした者が再び教職に就くことを防ぐデータベースの構築を行った。加えて、各教育委員会に対して、児童生徒に対して性暴力等に及んだ教員については原則として懲戒免職とすることや告発を遺漏なく行うことの徹底、直近40年間分の懲戒免職処分歴等の情報が検索可能な「官報情報検索ツール5」の更なる活用の促進等の取組を実施した。また、児童生徒等に対してわいせつ行為を行った保育士についても資格管理の厳格化を行うこととし、令和4(2022)年に児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正を行った。【文部科学省、厚生労働省(こども家庭庁)】

10 「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針について」(令和3年12月閣議決定)を踏まえ、教育・保育施設等やこどもが活動する場(放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブ、部活動など)等において働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入に向けて必要な検討を行っているところであり、引き続きその検討を進めている。【内閣官房、法務省、文部科学省、厚生労働省(こども家庭庁)、経済産業省、関係府省】

11 「子供の性被害防止プラン20226」に基づき、政府全体で児童買春・児童ポルノ等の対策を推進している。【内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、観光庁】

12 アダルトビデオ出演被害について、AV出演被害防止・救済法が制定され、同法の趣旨や出演契約に係る特則等の周知、相談支援の充実、広報啓発の実施、厳正な取締り等が推進されている。(再掲)【内閣府、警察庁、関係府省】

13 毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と定め、SNS等の若年層に届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を実施することとしている。令和4(2022)年度の月間においても、若年層の性暴力被害予防のため、誰もが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、啓発活動を展開した。(再掲)【内閣府、関係府省】

14 子供に対する性的な暴力根絶に向けて教育・学習、積極的な広報啓発を実施している。特に、コミュニティサイトやSNS等を通じた性犯罪・性暴力の当事者にならないための教育・学習、啓発活動、子供及び保護者のメディア・リテラシーの向上等の充実を図っている。内閣府では、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)及び「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第5次)」(令和3年6月子ども・若者育成支援推進本部決定。以下「第5次青少年インターネット環境整備基本計画」という。)に基づき、子供がインターネットを上手に、安全に使うスキルを習得するため、乳幼児の子供を持つ保護者向けのリーフレットを作成し、都道府県等の関係機関に配布するとともに、内閣府ホームページに掲載するなど、子供及び保護者のメディア・リテラシーの向上に努めた。

警察庁と文部科学省の共同により、具体的な犯罪被害事例や犯罪手口を盛り込んだリーフレット「守りたい 大切な自分 大切な誰か~忘れないで!ネットには危険がいっぱい!~」を作成し、両省庁のウェブサイトにおいて公開した。また、教育委員会等と連携して児童生徒や保護者へ周知するとともに、各都道府県警察に対し各種広報啓発活動における活用を依頼した。

総務省では、関係省庁と連携の下、性や暴力に関するインターネット上の有害な情報から青少年を保護し、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、フィルタリングの普及促進やインターネットの適切な利用等に関する啓発活動等を行っている。

具体的には、子供たちのインターネットの安全な利用に係る普及啓発を目的に、児童・生徒、保護者・教職員等に対する学校等の現場での出前講座(e-ネットキャラバン)や保護者及び教職員向けの上位講座(e-ネットキャラバンplus)を、情報通信分野等の企業・団体や文部科学省と協力して全国で開催した(令和4(2022)年度は全国2,226か所で開催)。

また、専門家からのヒアリングを通じて、インターネットに係る実際に起きた最新のトラブル事例を踏まえ、その予防法等をまとめた「インターネットトラブル事例集」を平成21(2009)年度より毎年内容を更新して公表し、普及を図っている。

また、7月の「青少年の非行・被害防止全国強調月間」において、「ペアレンタルコントロールによるインターネット利用に係る子供の犯罪被害等の防止」を最重点課題に掲げ、関係省庁、地方公共団体、関係団体等の協力を得て、青少年の非行・被害防止のための国民運動を展開した。

文部科学省では、都道府県PTAと連携したネットモラルキャラバン隊を全国3か所で開催し、保護者を対象に情報モラルやネットとの関わり方、家庭でのルール作り等の啓発を行った。【内閣府(こども家庭庁)、警察庁、総務省、文部科学省、経済産業省】

15 法務省の人権擁護機関では、SNS(LINE)を活用した人権相談体制の整備を行った。【法務省】

5文部科学省が平成30(2018)年度から教員採用権者(都道府県・指定都市教育委員会、国立・私立学校の設置者等)に提供している、官報に公告された教員免許状の失効の事由、失効年月日等の失効情報を検索できるツール。

6「子供の性被害防止プラン(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)2022」(令和4年5月20日犯罪対策閣僚会議決定)。