第5分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶

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第2節 性犯罪・性暴力への対策の推進

1 政府では、性犯罪・性暴力対策について、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」(令和2年6月11日性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議決定)に基づき、令和2(2020)年度から令和4(2022)年度までの3年間を「集中強化期間」として、取組を進めてきた。その取組を継続・強化するため、令和5(2023)年3月30日に、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議を開催し、「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」を決定した。これに基づき、令和5(2023)年度から令和7(2025)年度までの3年間を「更なる集中強化期間」として、性犯罪・性暴力の根絶のための取組や被害者支援を強化していくこととしている。【内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、関係府省】

2 法務省では、近年における性犯罪の実情等に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行う必要があると考え、令和3(2021)年9月、法制審議会に対し、性犯罪に対処するための法整備に関する諮問を行ったところ、令和5(2023)年2月、答申を得た。同答申を踏まえ、暴行・脅迫、心神喪失・抗拒不能要件の改正、いわゆる性交同意年齢の引上げ、公訴時効の見直し等を内容とする、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪の新設等を内容とする、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案の立案作業を行い、同年3月、それぞれ閣議決定の上、第211回国会(令和5(2023)年)に提出している。【法務省、関係府省】

3 監護者による性犯罪・性暴力や障害者に対する性犯罪・性暴力等の実態把握に努めるとともに、厳正かつ適切な対処に努めるなど、必要な措置を講じている。【法務省、文部科学省、厚生労働省、関係府省】

4 内閣府では、男女間の取り巻く環境の変化に応じた被害傾向の変化等に対応する施策の検討に必要な基礎資料を得ることを目的に平成11(1999)年度から実施している「男女間における暴力に関する調査」について、令和5(2023)年度に行う次回の調査に向けて、必要な準備等を行った。(再掲)【内閣府、関係府省】

5 各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103(ハートさん)」について国民への更なる周知や性犯罪捜査担当係への女性警察官の配置推進等、性犯罪被害に遭った女性が安心して警察に届出ができる環境づくりのための施策を推進し、性犯罪被害の潜在化防止に努めている。【警察庁】

6 性犯罪に関して被害の届出がなされた場合には、被害者の立場に立ち、明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除いて、即時に受理することを更に徹底している。また、被害届受理時の説明によって、被害者に警察が被害届の受理を拒んでいるとの誤解を生じさせることがないよう、必要な指導を行っている。告訴についても、被害者の立場に立って、迅速・的確に対応することとしている。【警察庁】

7 性犯罪等の被害者は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)等の精神的な疾患に苦しむケースが少なくない現状を踏まえ、捜査関係者を含む関係者において、被害者の精神面の被害についても的確に把握し、事案に応じた適切な対応を図っている。【警察庁、関係府省】

8 電車内等における痴漢に対する徹底した取締りを行うとともに、鉄道事業者等と連携した車内放送やポスター掲示等による痴漢防止の広報・啓発活動を行うことで、国民の痴漢撲滅意識の向上を図ることなど痴漢防止対策を推進している。

さらに、令和5(2023)年3月、関係府省が一体となって痴漢撲滅に向けた取組を実施するため、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」(令和4年6月3日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定)に基づき、「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」(令和5年3月30日内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、国土交通省取りまとめ)を取りまとめた。【内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、国土交通省】

9 ワンストップ支援センターについて、内閣府では、24時間365日対応化や拠点となる病院における環境整備等の促進、コーディネーターの配置・常勤化などの地域連携体制の確立、専門性を高めるなどの人材の育成や運営体制確保、支援員の適切な処遇など運営の安定化及び質の向上を図っている。

また、全国共通番号「#8891(はやくワンストップ)」を周知するとともに、令和4(2022)年11月から、ワンストップ支援センターの通話料の無料化を実施している。夜間・休日においても相談を受け付けるコールセンターの運営及び地域での緊急事案への対応体制の整備等、相談につながりやすい体制整備を図っている。さらに、若年層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、SNS相談「Cure time(キュアタイム)」を実施している。

令和4(2022)年度上半期にワンストップ支援センターに寄せられた相談件数は、3万2,367件となっている。(再掲)

厚生労働省では、若年層を始めとした困難を抱えた女性が支援に円滑につながるよう、都道府県に対し、SNSを活用した相談窓口の開設準備、運用に関する支援を行っている。(再掲)【内閣府、厚生労働省、関係府省】

10 ワンストップ支援センターと婦人相談所・婦人相談員などとの連携を強化し、機動的な被害者支援の展開を図っている。また、被害者の要望に応じた支援をコーディネートできるよう、性犯罪被害者支援に係る関係部局と民間支援団体間の連携を促進している。さらに、障害者や男性等を含め、様々な被害者への適切な対応や支援を行えるよう、研修を実施した。【内閣府、警察庁、厚生労働省、関係府省】

11 若年層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、SNS相談「Cure time(キュアタイム)」を実施している。(再掲)【内閣府】

12 被害者からの事情聴取に当たっては、その精神状態等に十分に配意するとともに、被害者が安心して事情聴取に応じられるよう、女性警察官等の配置を推進しているほか、全ての警察署に被害者用事情聴取室を整備している。被害者の事情聴取の在り方等について、精神に障害がある性犯罪被害者に配慮した聴取(代表者聴取)の取組の試行を行うほか、より一層適切なものとなるような取組を検討し、適切に対処している。また、被告人の弁護人は、被害者に対する尋問に際しては、十分に被害者の人権に対する配慮が求められることにつき、啓発に努めている。【警察庁、法務省、厚生労働省(こども家庭庁)、国土交通省】

13 被害者に対する不適切な対応による更なる被害を防止する観点も含め、支援に従事する関係者に対して、啓発・研修を実施している。また、刑事司法に関係する検察官等に対し、性犯罪に直面した被害者の心理や障害のある性犯罪被害者の特性や対応についての研修を実施している。

内閣府では、性犯罪・性暴力被害者等が安心して必要な相談・支援を受けられる環境を整備するために、ワンストップ支援センターの相談員等を対象としたオンライン研修教材を作成し、提供するとともに、研修を実施した。(再掲)【内閣府、法務省、関係府省】

14 医療機関における性犯罪被害者の支援体制、被害者の受入れに係る啓発・研修を強化し、急性期における被害者に対する治療、緊急避妊等に係る支援を含む、医療機関における支援を充実させるとともに、支援に携わる人材の育成に資するよう、取り分け女性の産婦人科医を始めとする医療関係者に対する啓発・研修を強化している。【厚生労働省、関係府省】

15 性犯罪被害者に対する包括的・中長期的な支援を推進するとともに、警察庁においては、医療費・カウンセリング費用の公費負担制度の効果的な運用を図っている。

内閣府では、性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金により、ワンストップ支援センターを利用する被害者の医療費・カウンセリング費用の助成を行っており、急性期の医療的支援を必要とする被害者が、ワンストップ支援センターを通して医療機関を受診した場合には、被害者の居住地及び被害の発生地に関わらず、医療費支援が受けられるように都道府県等に依頼している。また、性犯罪に関する専門的知識・技能を備えた医師、看護師、医療関係者等や民間支援員の活用を促進している。【内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省】

16 性犯罪・性暴力事件及びその裁判に関する報道において、被害に関する詳細な描写や被害者が特定される情報が深刻な二次被害をもたらすことから、その取扱いの配慮について、メディアへの啓発に係る検討等を行った。【内閣府、関係府省】

17 医師や看護師を養成する教育の中で、性犯罪被害等に関する知識の普及に努めている。【文部科学省、厚生労働省】

18 被害者の心のケアを行う専門家の育成等相談体制の充実を図っている。【厚生労働省】

19 関係府省や都道府県警察において、13歳未満の子供を対象とした暴力的性犯罪受刑者の出所後の所在等の情報を共有し、その所在を確認するとともに、地方公共団体等において活用可能な、主に刑事司法手続終了後の性犯罪者を対象としたプログラムを開発し、各地方公共団体に提供した。【警察庁、法務省】

20 刑事施設及び保護観察所において性犯罪者に実施している専門的プログラムを改訂し、新たなプログラムを実施するとともに、指導担当者を対象とした研修を実施したほか、仮釈放中の性犯罪者等にGPS機器の装着を義務付けること等について、諸外国の法制度・運用や技術的な知見等に関する調査を実施した。【法務省】

(21) 二次被害防止の観点から被害者支援、捜査、刑事裁判手続における被害者のプライバシー保護を図るとともに、メディア等を通じた的確な情報発信により性犯罪に対する一般社会の理解を増進している。【内閣府、警察庁、法務省、関係府省】

(22) 「女性に対する暴力をなくす運動」において、「性暴力を、なくそう」をテーマとし、広報啓発を推進した。(再掲)

また、毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と定め、SNS等の若年層に届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を実施することとしている。令和4(2022)年度の月間においても、若年層の性暴力被害予防のため、誰もが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、啓発活動を展開した。【内閣府、関係府省】

(23) 政府では、アダルトビデオ出演被害に対して政府一体となって強力に取り組んでいくため、当該問題に関する関係府省対策会議(局長級)において取りまとめた「アダルトビデオ出演被害に係る緊急対策パッケージ」(令和4年3月31日決定)に基づき、被害の拡大を予防するための集中的な広報・啓発の実施や、学校教育の現場などで教育啓発を進めてきた。さらに、令和4(2022)年6月、アダルトビデオ出演被害の防止及び被害者の救済を図るため、性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和4年法律第78号。以下「AV出演被害防止・救済法」という。)が制定された。内閣府では、ウェブサイトに専用ページを設け、AV出演被害防止・救済法の趣旨や出演契約の特則等について周知するとともに、契約の解除や公表の差止請求等の通知の様式等を掲載している。また、出演被害の相談窓口となるワンストップ支援センターにおいて、被害者の心身の状態及び生活の状況等に配慮した適切な対応が行われるよう、相談対応や法的支援に係る取組等を交付金により支援するとともに、相談員等を対象とした説明会の開催、支援資料集の配布、研修等を実施した。さらに、出演契約について無条件で解除ができること等について、SNSの活用等による広報を集中的に実施した。

警察庁では、アダルトビデオ出演被害に対して、各種法令の適用を視野に入れた取締りを推進するよう通達し、各都道府県警察において、AV出演被害防止・救済法の罰則規定の適用も含め、厳正な取締りが推進されている。【内閣府、警察庁、関係府省】