第2節 高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備

本編 > 2 > 第1部 > II > 第6分野 > 第2節 高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備

第2節 高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備

ア 高齢者が安心して暮らせる環境の整備

○ 厚生労働省では、高齢期の女性の貧困について、「年金生活者支援給付金制度」2などを活用し、低年金・無年金者問題に対応している。また、高齢期に達する以前の女性が老後の生活の備えを十分にできるよう、男女共同参画の視点から施策の検討を行い、あらゆる分野で着実に推進している。【内閣府(男女共同参画局)、厚生労働省、関係府省】

○ 厚生労働省では、年齢に関わりなく働ける社会の実現に向けた、65歳までの高年齢者雇用確保措置・70歳までの高年齢者就業確保措置の着実・円滑な実施のため、継続雇用延長・定年引上げ等に係る助成金の支給等による事業主への支援を実施しているほか、全国300か所に設置されている生涯現役支援窓口における高年齢求職者の再就職支援、シルバー人材センターを通じた多様な就業機会の確保や、地域ニーズを踏まえた働く場を創出し、雇用を継続していくことが可能なモデルづくり及び他の地域への展開等を通じた多様な雇用・就業機会の提供等を行っている。こうした施策を通じ、高齢男女の就業を促進するとともに、能力開発のための支援を行っている。【厚生労働省】

○ 「健康寿命延伸プラン」(令和元年5月2040年を展望した社会保障・働き方改革本部策定)に基づき、男女共に健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の延伸を実現するため、次世代を含めた全ての人の健やかな生活習慣形成、疾病予防・重症化予防、介護予防・フレイル対策、認知症予防等を中心に取組を推進している【厚生労働省、経済産業省】

○ 厚生労働省では、医療・介護保険制度については、効率化・重点化に取り組みながら質の高いサービスの充実を図っている。【厚生労働省、関係府省】

○ 認知症や一人暮らしの高齢者が、社会から孤立することなく、住み慣れた地域の中で、自分らしく暮らし続けられるよう、「認知症施策推進大綱」(令和元年認知症施策推進関係閣僚会議とりまとめ)に基づく取組を進めるとともに、住民等を中心とした地域の支え合いの仕組みづくりを促進している。【厚生労働省、関係府省】

○ 厚生労働省では、高齢者が他の世代と共に社会の重要な一員として、生きがいを持って活躍できるよう、高齢者の多様な学習機会の提供及び社会参加の取組を促進している。【文部科学省、厚生労働省、関係府省】

○ 安定した住生活の確保、建築物、道路、公園、公共交通機関等のバリアフリー化や無電柱化等、高齢者を取り巻く環境の整備等を推進している。【内閣府、警察庁、国土交通省、関係府省】

○ 企業等による、高齢者のニーズや、事故防止や安全対策等の社会課題に合致した機器やサービス、その効果的な活用方法の開発等を支援している。経済産業省では、高齢者や障害者等の自立を支援し、介護者の負担軽減を図るため、福祉用具の開発及び実用化を支援した。【総務省、厚生労働省、経済産業省、関係府省】

○ 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)等を踏まえ、都道府県や市町村に対する支援等を通じ、虐待の未然防止、早期発見・迅速かつ適切な対応、再発防止が図られるよう取組を推進している。【厚生労働省、関係府省】

○ 消費者庁では、消費生活上特に配慮を要する消費者である高齢者や障害者の消費者被害の防止のため、消費者安全法(平成21年法律第50号)に基づく消費者安全確保地域協議会が構築されるよう、地方公共団体に対する働きかけ等を実施しているほか、高齢者団体、障害者団体及び行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」を開催し、消費者トラブルの情報共有や悪質商法の新たな手口及び対処の方法の情報提供等により、地域の実情に応じた実効性ある見守り活動の実施促進を図っている。また、令和3(2021)年10月1日、厚生労働省と消費者庁の連名で、地方公共団体への通知「重層的支援体制整備事業と消費者安全確保地域協議会制度との連携について」を送付し、地域における福祉部局と消費者部局とのさらなる連携の重要性を示した。さらに、独立行政法人国民生活センターでは、高齢者やその周りの人々に悪質商法の手口やワンポイントアドバイス等をメールマガジンや同センターホームページで伝える「見守り新鮮情報」を発行するとともに、高齢者の悪質商法被害や商品等に係る事故に関する注意情報及び相談機関の情報等を、報道機関への情報提供等の多様な手段を用いて周知を図っている。【消費者庁、関係府省】

○ 上記のほか、「高齢社会対策大綱」(平成30年閣議決定)に基づき必要な取組を推進している。【内閣府、関係府省】

2令和元(2019)年10月施行。

イ 障害者が安心して暮らせる環境の整備

○ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)等を踏まえ、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けた取組を推進している。また、事業者に対し合理的配慮の提供を義務付けること等を内容とする改正法が、令和3(2021)年6月に公布された。【内閣府、関係府省】

○ 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号)等を踏まえ障害者虐待防止の取組を進めている。【厚生労働省、関係府省】

○ 消費者庁では、消費生活上特に配慮を要する消費者である高齢者や障害者の消費者被害の防止のため、消費者安全法に基づく消費者安全確保地域協議会が構築されるよう、地方公共団体に対する働きかけ等を実施しているほか、高齢者団体、障害者団体及び行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」を開催し、消費者トラブルの情報共有や悪質商法の新たな手口及び対処の方法の情報提供等により、地域の実情に応じた実効性ある見守り活動の実施促進を図っている。また、令和3(2021)年10月1日、厚生労働省と消費者庁の連名で、地方公共団体への通知「重層的支援体制整備事業と消費者安全確保地域協議会制度との連携について」を送付し、地域における福祉部局と消費者部局とのさらなる連携の重要性を示した。(再掲)さらに、独立行政法人国民生活センターでは、障害のある人やその周りの人々に悪質商法の手口等の情報提供を行っている。また、最新の消費生活情報をコンパクトにまとめた「くらしの豆知識」の発行に当たってはカラーユニバーサルデザイン認証を取得し、デイジー版(デジタル録音図書)を作成し、全国の消費生活センター、消費者団体及び全国の点字図書館等に配布しているほか、国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービスにも登録している。【消費者庁、関係府省】

○ 国土交通省では、障害者が安心して生活できる住宅の確保、建築物、道路、公園、公共交通機関等のバリアフリー化や無電柱化を推進するとともに、障害者に配慮したまちづくりを推進している。

高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)に基づき、高齢者、障害者等が道路を安全に横断できるよう、音響により信号表示の状況を知らせる音響信号機、視覚障害者等の安全な交差点の横断を支援する歩行者等支援情報通信システム(高度化PICSを含む。)、信号表示面に青時間までの待ち時間及び青時間の残り時間を表示する経過時間表示機能付き歩行者用灯器、歩行者・自転車と車両が通行する時間を分離して交通事故を防止する歩車分離式信号等のバリアフリー対応型信号機の整備を推進した。また、標示板を大きくする、自動車の前照灯の光に反射しやすい素材を用いるなどして見やすく分かりやすい道路標識・道路標示の整備や横断歩道上における視覚障害者の安全性及び利便性を向上させるエスコートゾーンの整備を推進している。【内閣府、警察庁、国土交通省、関係府省】

○ 厚生労働省では、障害者が個人としての尊厳にふさわしい生活を営むことができるよう、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に基づき、自立生活援助、就労定着支援などの障害福祉サービス等の充実を図り、障害者の地域における生活を総合的に支援している。【厚生労働省】

○ 厚生労働省では、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)や障害者雇用対策基本方針(令和元年厚生労働省告示第197号)等を踏まえた就労支援を行っている。【厚生労働省】

○ 上記のほか、障害のある女性は、それぞれの障害の種別ごとの特性、状態により様々な支援が必要であることに加えて、女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることに留意し、「障害者基本計画(第4次)」(平成30年閣議決定)に基づき、防災・防犯等の推進、自立した生活の支援・意思決定支援の推進、保健・医療の推進等の分野における施策を総合的に推進している。また、「障害者の権利に関する条約」第31条等の趣旨を踏まえ、障害者の実態調査等を通じて、障害者の状況等に関する情報・データの収集・分析を行うとともに、障害者の性別等の観点に留意しつつ、その充実を図っている。【内閣府、外務省、関係府省】

ウ 外国人が安心して暮らせる環境の整備

○ 外国人女性が、言語の違い、文化・価値観の違い、地域における孤立等の困難に加えて、女性であることにより更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることに留意し、以下の取組を含めた多文化共生施策を総合的に推進している。【総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省、関係府省】

  • 日本で生活する外国人への教育、住宅、就労支援、各種の手続・法令・制度等についての多言語での情報提供や、よりきめ細かな対応を可能とする相談体制の整備、外国人の子供への支援等を進めている。
     また、我が国に居住する外国人が安心・安全に生活するために必要な日本語能力を習得し、日本社会の一員として円滑に生活を送ることができるよう、日本語教育の先進的取組に対する支援、日本語教室空白地域解消の推進、日本語教育人材の養成及び現職者研修カリキュラムの開発・活用や、都道府県・政令指定都市が、関係機関等と有機的に連携しつつ行う、日本語教育環境を強化するための総合的な体制づくりの推進を実施している。
  • 外国人が抱える様々な課題を的確に把握するために、専門家の意見等を踏まえつつ、在留外国人に対する基礎調査を実施するとともに、地方公共団体や外国人支援団体等幅広い関係者から意見を聴取し、共生施策の企画・立案に当たって活用することにより、日本人と外国人が安全に安心して暮らせる環境整備を進めている。
  • 法務省の人権擁護機関では、外国人に対する偏見や差別の解消を目指して、「外国人の人権を尊重しよう」を啓発活動強調事項の一つとして掲げ、講演会等の開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を行っている。
  • 外国人居住の実情を踏まえつつ、行政情報や相談窓口の周知など、外国人が行政情報を適切に把握できるような環境整備を進めている。また、国の行政機関における相談窓口と地方公共団体等が運営する相談窓口の更なる連携を強化している。
  • 外国人受入環境整備交付金等により、地方公共団体による多言語での情報提供及び相談を行う一元的な相談窓口の設置・運営の取組を支援する。また、特に通訳人材の確保が難しい言語を中心として、一部の地方公共団体の行政窓口に対する通訳支援事案を試行的に実施している。

○ 厚生労働省では、配偶者等からの暴力の被害者である在留外国人女性への支援について、人身取引及び配偶者からの暴力に関する専門的知識を持った母国語通訳者の養成等を含め、適切に支援している。【厚生労働省】

○ 内閣官房では、「人身取引対策行動計画2014」(平成26年犯罪対策閣僚会議決定)に基づき、政府一体となってより強力に、総合的かつ包括的な人身取引対策に取り組んでいる。【内閣官房、関係府省】

○ 法務省の人権擁護機関では、日本語を自由に話すことの困難な外国人等からの人権相談については、全国の法務局に「外国人のための人権相談所」を設け、英語・中国語・韓国語・フィリピノ語・ポルトガル語・ベトナム語・ネパール語・スペイン語・インドネシア語・タイ語の10言語による人権相談に対応している。

また、「外国語人権相談ダイヤル」及び「外国語インターネット人権相談受付窓口」を設けており、電話・インターネットでも上記と同様の10言語による人権相談を受け付けている。【法務省】

エ 女性であることで更に複合的に困難な状況に置かれている人々への対応

○ 性的指向・性自認(性同一性)に関すること、障害があること、外国人やルーツが外国であること、アイヌの人々であること、同和問題(部落差別)に関すること等に加え、女性であることで更に複合的に困難な状況に置かれている場合等について、可能なものについては実態の把握に努め、人権教育・啓発活動の促進や、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合の調査救済活動の取組を進めている。

また、学校教育において、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)や同法に基づき定められた「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月閣議決定、平成23年4月一部変更)に沿って、その教育活動全体を通じ、人権尊重の意識を高めるための指導を進めており、一人一人を大切にする教育の推進を図った。社会教育では、社会教育主事の養成講習等において、人権問題等の現代的課題を取り上げ、指導者の育成及び資質の向上を図っている。法務省の人権擁護機関では、全国の法務局に、専用相談電話「女性の人権ホットライン」を設置して相談体制の一層の強化を図っている。【内閣官房、法務省、文部科学省、厚生労働省、関係府省】