第2節 男女共同参画に関する分野における国際的なリーダーシップの発揮

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第2節 男女共同参画に関する分野における国際的なリーダーシップの発揮

1 開発協力大綱に基づく開発協力の推進

政府は,平成27(2015)年2月に閣議決定した「開発協力大綱」及びそれに基づく「女性の活躍推進のための開発戦略」に則り,開発協力のあらゆる段階における女性の参画を促進し,また,女性が公正に開発の恩恵を受けられるよう,男女共同参画の推進及び女性のエンパワーメントに積極的に取り組んでいる。

また,ジェンダー主流化の観点から,あらゆる分野や課題の支援に当たって,社会における男女双方の多様な役割や責任,男女で異なる課題・ニーズを把握して取り組むなど,ジェンダーの視点に立った事業実施を推進した。特に,新型コロナ拡大を踏まえ,ジェンダー平等の視点に立った各種対応策を含む様々な支援において,UN Women等との連携・協力に努めている。

さらに,我が国は人間の安全保障に直結する地球規模の課題として,保健分野における取組を重視している。我が国が平成27(2015)年12月に発表した「平和と健康のための基本方針」を踏まえ,全ての人が生涯を通じて必要な時に基礎的な保健サービスを負担可能な費用で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の実現を目指して,女性の医療アクセスの改善,栄養改善,母子健康手帳の普及等の母子継続ケアの支援,医師や看護師,助産師等の保健人材の育成,国際機関等を通じた性と生殖の健康サービスの提供等を行っている。

2 女性の平和等への貢献

我が国は,平和構築の観点から,女性を被害者の側面で捉えるだけでなく,国連安保理決議第1325号女性・平和・安全保障(Women, Peace andSecurity:WPS)及び関連決議履行を目的とした,平成27(2015)年に策定し,平成31(2019)年3月に改訂した第二版の「女性・平和・安全保障に関する行動計画」に基づき,紛争の予防・管理・解決を含む政策・方針決定過程への女性の積極的な参画を促進した。平成30(2018)年4月のG7プロセスにてG7女性・平和・安全保障(WPS)パートナーシップ・イニシアティブが発表されたことを踏まえ,日本がスリランカをパートナー国とし,令和元(2019)年度から開始したスリランカのWPS行動計画の策定及び紛争寡婦世帯のエンパワーメントを含めたWPSアジェンダ推進を,引き続き支援した。さらに,平成29(2017)年7月のG20ハンブルク・サミットで立ち上げが発表された女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)に対しても,トップドナーの一つとして積極的に貢献した。

内閣府国際平和協力本部事務局では,国際平和協力隊の隊員派遣前研修を実施しており,安保理決議第1325号の要請を反映し,ジェンダーに関する講義を行っている。一般的なジェンダーに関する知識の付与だけでなく,派遣先国のジェンダー特性への理解の促進を含めた現地でのより効果的な活動に結び付くような教育を実施している。

3 国際機関等との連携・協力推進

我が国は,国連女性機関(UN Women)や,紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表(SRSGSVC)事務所を始め,国連を中心として展開する世界の女性のエンパワーメント及び紛争下の性的暴力の防止・対応のための諸活動に対する積極的な協力に努めた。加えて,紛争関連の性的暴力生存者のためのグローバル基金への拠出を通じて,生存者に対する償いや救済へのアクセスの促進を支援した。

また,男女共同参画の視点に立った国際交流・協力の推進のため,NGO等との効果的な交流・連携・協力を強化している。

4 国際分野における政策・方針決定過程への女性の参画拡大

我が国は,国際会議への政府代表団への女性メンバーの参加を積極的に進めるとともに,国際機関への就職支援を強化している。また,令和2(2020)年度も「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」として,平和構築・開発の分野で文民専門家として活躍できる人材の育成に取り組むとともに,国際機関等でのキャリア構築に向けた支援を実施した。現在,国連は女性職員の採用に力を入れていることなどから,当該事業の実施が国連機関における邦人女性職員の増強につながることも期待される。

令和元(2019)年9月,国連UHCハイレベル会合を受けて採択されたUHC政治宣言にも,母子保健や女性・女児に対する保健のみならず,女性のエンパワーメント及びジェンダー平等に関する文言が取り入れられており,令和2(2020)年は,開発途上国における母子保健,リプロダクティブ・ヘルス分野における活動に対し,国連人口基金(UNFPA)や国際家族計画連盟(IPPF)を通じた支援を行うとともに,新型コロナ対策においても,ジェンダー,水・衛生,栄養・食料,教育等,分野横断的な支援を通じ,感染症に強い環境整備を行った。

教育分野では,平成27(2015)年9月に発表した,我が国の教育協力政策である「平和と成長のための学びの戦略」に基づき,女性・女児のエンパワーメントとジェンダー平等に配慮した教育協力を実施している。

このほか,「アジア・太平洋,アフリカの女性交流事業」は,日本,アジア・太平洋諸国及びアフリカの行政官や女性支援団体等の交流プログラムを行う予定であったが,新型コロナの影響により,令和2(2020)年度は,アフリカの基礎情報や現地のニーズ調査,オンラインによる情報共有・意見交換会を実施,令和3(2021)年度に向けた交流プログラム案の検討を行った。

5 国際会議等における日本の貢献と取組の発信

令和2(2020)年は,世界女性会議において「北京宣言・行動綱領」が採択されてから25周年を迎えた記念の年であったことから,当初多くの関連行事が予定されていたが,新型コロナの拡大により,その多くが開催日程や形態の変更を余儀なくされた。その一方で,オンラインによる会議開催が活発化した。

国連の枠組みでは,令和2(2020)年10月に第75回国連総会「第4回世界女性会議25周年記念ハイレベル会合」がニューヨークの国連本部で開催され,内閣府特命担当大臣(男女共同参画)からビデオメッセージ形式でステートメントを述べた。

また,令和2(2020)年は国際的な平和と安全保障の文脈に「女性」を関連づけた国連安保理決議第1325号が採択されてから20周年であることから,安保理の非常任理事国のメンバーであるベトナムが国連と共に「女性・平和・安全保障(WPS)国際会議」を開催し,外務副大臣が日本のWPS分野の取組をビデオメッセージ形式で発表した。

このほか,様々な国際会議がオンラインで開催され,ジェンダーの視点に立った新型コロナ対応策の重要性について議論が活発に行われたが,日本も共通の課題を抱える立場から,ポスト・コロナ時代のより良い社会づくりに向けて積極的に参加した。具体的には,令和2(2020)年6月に国連女性機関(UN Women)主催の「新型コロナウイルス感染症対応に関するアジア・太平洋地域の男女共同参画担当大臣オンライン会合」において,我が国の取組やDV対策の強化の成果と展望について発信した。

また,同年9月にUN Womenとアジア開発銀行(ADB)によるハイレベルオンライン円卓会議「新型コロナウイルス感染症の応急対応と回復におけるジェンダー平等の推進」が開催され,内閣府審議官が出席した。

多国間の枠組みでは,日米韓の間で行われたSTEM分野における女性のエンパワーメントについての議論に参加したほか,G20の枠組みで行われている「女性のエンパワーメントと経済参画促進のための民間セクターアライアンス(EMPOWER)」の各種活動に日本民間代表と共に参加した。

また,G20のエンゲージメント・グループの1つであるW20(Women 20)の「G20の政策:女性の経済的エンパワーメントの促進」をテーマにしたハイレベルセッションに内閣府男女共同参画局長が参加したほか,「ジェンダーに対応した経済回復,ポスト・コロナ時代:UN WomenとW20によるハイレベル・セッション」に外務省参与・女性担当大使が参加した。G7及びG20においては,新型コロナの拡大により経済的・社会的に影響を受けた女性・女児の状況を踏まえ,より良い社会作りに向けた議論が行われた。

地域の枠組みにおいては,令和2(2020)年9月に「新型コロナウイルス感染症の女性への影響と取組」をテーマに女性と経済フォーラムが開催され,APEC域内の対応策について議論が行われた。フォーラムの成果として「APEC女性と経済フォーラム2020声明」が採択されるとともに,「女性と経済フォーラム」として,女性を新型コロナウイルス対応の取組の中心に置くことが宣言された。我が国からは,内閣府特命担当大臣(男女共同参画)が参加し,我が国の方針,DV対策,雇用への取組について発言を行った。

同年12月に「女性に関するASEAN+3委員会」第12回会合が開催された。「女性のリーダーシップと政治参画の促進」をテーマに意見交換が行われ,内閣府から我が国の取組等について報告を行った。

OECDにおいては,令和2(2020)年4月にジェンダー主流化作業部会第2回会合が「新型コロナウイルス感染症危機への応急対応」をテーマにオンラインで開催され,参加各国のジェンダーに配慮した取組が共有された。また,同年9月に行われた第3回会合では,ジェンダーに配慮した新型コロナからの回復策の政策概要に関する議論が行われた。同年10月には,OECD閣僚理事会が開催され,新型コロナの影響から回復するためにジェンダー平等の重要性を認識し経済回復の主要な推進力として女性のエンパワーメントに取り組むことが打ち出され,成果文書として閣僚声明が採択された。また,その背景資料においてOECDの分析基盤を増強することが明記された。

こうした議論に加えて,令和3(2021)年3月8日の「国際女性の日」に当たって,内閣府特命担当大臣(男女共同参画)からメッセージを発出した。また,同月末,外務省は国内外からの有識者の参加を得てウェビナー「国際女性記念の年に寄せて」を開催し,女性のエンパワーメントと社会・経済・政治,女性とスポーツ,女性の平和・安全保障への参画に関する議論を深めた。