コラム5 「妊娠期からの切れ目のない支援の充実と産婦健診等の取組」(横浜市)

本編 > コラム5 「妊娠期からの切れ目のない支援の充実と産婦健診等の取組」(横浜市)

コラム5

「妊娠期からの切れ目のない支援の充実と産婦健診等の取組」(横浜市)


横浜市は,日本の市区町村で最大の人口を有し(平成29年3月末現在),年間出生数も市区町村で最大の約3万人に上る(27年)1

これまで,母子ともに安心して出産・育児ができるよう,18区の区福祉保健センターにおいて,母子健康手帳の交付や乳幼児健康診査等の母子保健事業を実施してきた。平成29年度からは,妊娠期からの相談支援の充実を図るため,看護職の「母子保健コーディネーター」を順次配置するモデル事業を開始。母子保健コーディネーターが,妊娠届出時に妊婦の面接を実施し,身体のことだけでなく,家族の状況,出産前後の支援の有無,育児の不安等を丁寧に聞き取って,個別の不安や相談に対応するとともに,「妊娠・出産・子育てマイカレンダー」2を使い,出産・子育てに向けての生活のイメージを妊婦とともに作っている。妊娠中から相談しやすい関係をつくり,これまで以上に予防的な支援を強化している。

また,18区に設置されている地域子育て支援拠点では,プレママ・プレパパ講座を開催するなど,地域の中で安心して子育てができるよう,当事者性を活かした支援を行うとともに,横浜子育てパートナーが,個々の子育て家庭のニーズに応じたきめ細かい相談支援を行っている。

区福祉保健センターと地域子育て支援拠点3が,それぞれの特徴を活かしてより一層,連携・協働することにより,「横浜市版子育て世代包括支援センター」として,すべての妊産婦が,安心して出産・子育てに向かえるよう,妊娠期からの切れ目のない支援の充実を目指している。

また,市では,産後うつの早期発見・早期支援の取組にも力を入れる。平成29年6月からは,国の補助事業であるエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)4を取り入れた,産婦健康診査事業を,全国に先駆けて開始した(29年度は市内の契約医療機関のみ,30年度は市外の契約医療機関にも拡大)。産後2週間及び産後1か月の健診5において,産後うつスクリーニングを行い,母親の心の健康を確認している。産後うつのリスクが高いと判断された場合は,引き続き,産科医療機関が経過観察をするほか,必要に応じて区福祉保健センターに情報が提供され,保健師が訪問し,母親の状況を確認する。その後は,産後母子ケア事業6やヘルパー派遣事業等の利用,状況によっては精神科の治療につなげるなど,継続的に支援する。今後も,関係機関の連携により,産後うつフォロー体制の強化を目指す。

「妊娠期からの切れ目のない支援の充実と産婦健診等の取組」(横浜市)

1「統計でみる市区町村のすがた2017」(総務省統計局)

2妊婦が母子保健コーディネーターと相談しながら,妊婦健診,母親(両親)教室,出産予定日,産婦健診,乳幼児健診など,各自の妊娠・出産に関する予定を書き込むもの地域の子育て情報のほか,赤ちゃんとの生活に向けて各家庭で準備する項目等も掲載

3主に就学前の子どもとその保護者(妊娠期を含む)が気軽につどい,親子同士の交流や,子育てに関する相談等ができる施設

4英国で開発され,現在,世界の多くの国で使用されている産後うつのスクリーニング・ツール(横浜市記者発表資料「産婦健康診査事業を開始します!」,平成29年5月25日)

5健診費用のうち,5千円まで助成産後2週間健診は医師が必要と認めた方のみ

6育児不安等を抱える産後4か月未満の母子を対象に,市内の助産所等で,母体のケア(健康管理や乳房ケア等),赤ちゃんのケア(発育や発達のチェック等),授乳や沐浴などの育児指導等を行う事業