コラム6 「県,市町村,民間が連携した民立民営の宿泊型施設で産後ケアをサポート」(山梨県)

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コラム6

「県,市町村,民間が連携した民立民営の宿泊型施設で産後ケアをサポート」(山梨県)


平成28年1月,山梨県に出産前後の母親を支援する「産前産後ケアセンター」が開設した。施設は民立民営で,育児への不安や負担感を抱える産後間もない母親に産後ケアを提供している。県はこの施設に対し,県内全市町村との協働で,宿泊型の産後ケア事業を委託しているのが特徴である1。産後4か月までの母子を対象とし,宿泊しながら,助産師等による母体のケア,育児に関する相談,沐浴や授乳などの育児指導を受けることができる。

山梨県の母子保健事業は,各市町村の規模が小さいこともあり,従来,地域の保健師が丁寧な対応をしてきた。一方,県の少子化対策の検討の中で,出産した母親の多くは,産後3~4か月までの間に不安を抱えがちであるという実態と,この時期の母子への支援が不十分であるという課題が明らかになったという。そこで,県では,産前産後の切れ目のないサポートを目指し,県内全市町村の協力を得て,市町村との協働による,産後ケア事業を立ち上げた。これにより,宿泊型産後ケアを事業者に委託し,利用者の自己負担額が軽減され,子育てに不安を抱える母親が,産後ケアを利用しやすい環境が整備された。

産前産後ケアセンターは,県内全域からアクセスしやすい県央の石和温泉(笛吹市)に位置し,施設の設置運営は県内の学校法人健康科学大学が行った。施設は,母子が宿泊できる部屋を6室備え,県有の源泉から施設内の浴室に温泉を引く。施設利用料として,基本料金3万3,900円(1泊2食)のうち,利用者の住む市町村と県が概ね4割ずつを補助し,利用者の負担額は約2割にあたる6,100円となっている(平成30年3月現在)。さらに独自に利用者の負担額を補助する市町村もある。

宿泊型ケアの利用者数は,平成30年3月末までの約2年間で延べ482組(滞在数は計1,192泊)となり,年度を追うごとに増加している。利用者は子育て経験の浅い,1人目を出産した30代が多い。利用の窓口となる県内各市町村では,妊娠届出時の面接で,支援を必要とする妊婦を把握し,産前産後ケアセンターでの事業を紹介するなど,県と一体となって切れ目のない支援体制の整備に努める。また,県と市町村で構成する山梨県産後ケア事業推進委員会において,母子保健行政に係る様々な課題検討,情報共有が進められている。今後も,支援を必要とする母親が,より一層産前産後ケアセンターを活用できるように,継続的な周知活動を行っていく。

「県,市町村,民間が連携した民立民営の宿泊型施設で産後ケアをサポート」(山梨県)1 「県,市町村,民間が連携した民立民営の宿泊型施設で産後ケアをサポート」(山梨県)2

1産前産後ケアセンターでは,産後の宿泊型ケアのほか,妊婦向けの健康教室や個別相談,プレパパママ教室,産前産後の日帰り型ケアや24時間年中無休の電話相談等も実施している。