第1節 働く女性の活躍の現状と課題

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第1節 働く女性の活躍の現状と課題

(高まる女性の就業率)

我が国の15歳以上人口は平成22年(2010年)にピークを迎え,それ以降緩やかに減少しているが,15歳から64歳までの生産年齢人口は7年(1995年)をピークに減少している。生産年齢人口の減少に伴い,就業者数は20年以降減少してきたが,25年から再び緩やかに増加に転じている。この背景には,人口構成の約3割を占める65歳以上の就業者が男女ともに増加していることとともに,65歳未満の女性の就業率が上昇していることがある。24年から28年の4年間に,就業者数は170万人増加し,女性が147万人増(うち15~64歳が71万人増,65歳以上が77万人増),男性が23万人増(うち15~64歳が73万人減,65歳以上が96万人増)となっている。

生産年齢人口(15~64歳)の就業率は,近年,男女とも上昇しているが,特に女性の上昇が著しい(I-特-1図)。生産年齢人口における女性の就業率の推移を見ると,男女雇用機会均等法が施行された昭和61年(1986年)は53.1%であったが,平成28年は66.0%と,最近30年の間に約13%ポイント上昇した。なかでも,18年から28年の10年間では7.2%ポイントの上昇,24年から28年の4年間に5.3%ポイントの上昇と,この数年の上昇幅が著しい。子育て期の25~44歳の女性の就業率については,昭和61年に57.1%,平成28年に72.7%と,この30年間に15.6%ポイント上昇したが,30年間の上昇幅(15.6%ポイント)の半分の7.8%ポイントは18年から28年までの最近10年間の上昇によるもの,また,15.6%ポイントのうち3割程度にあたる5.0%ポイントは24年から28年までの最近4年間の上昇によるものである。

I-特-1図 就業率の推移別ウインドウで開きます
I-特-1図 就業率の推移

I-特-1図[CSV形式:5KB]CSVファイル

女性の就業率を年齢階級別にみると,いわゆるМ字カーブになっているが,最近30年間にМ字カーブの底は大幅に上昇し,窪みが浅くなるとともに,全体的に大きく上方にシフトしている(I-特-2図⒝)。就業率が大きく上昇した最近10年間の女性の年齢階級別の就業率の変化について,年齢階級別に見ると,全ての年齢階級で上昇しているが,「30~34歳」「55~59歳」「60~64歳」においては10%ポイント超の上昇となっている(I-特-2図⒜)。この10年間を平成18年から24年の6年間と,就業率の上昇が高まった24年から28年の4年間に分けて変化を見ると,「25~29歳」「35~39歳」「45~49歳」「50~54歳」「55~59歳」「60~64歳」「65歳以上」においては,18~24年,24~28年の両期間において就業率が上昇するとともに,上昇幅は18~24年から24~28年にかけて拡大した。24~28年において,「55~59歳」「60~64歳」は6%ポイント超の上昇であり,20代~40代前半の全ての年齢階級においても上昇幅は5%ポイント前後となっている。

I-特-2図 女性の年齢階級別就業率の変化及び推移別ウインドウで開きます
I-特-2図 女性の年齢階級別就業率の変化及び推移

I-特-2図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(全ての都道府県で上昇する女性の就業率)

 都道府県別の生産年齢人口(15~64歳)における女性の就業率について,平成12年(2000年)からの15年間の推移をみると,12年から17年にかけての始めの5年間では,多くの地域での上昇が緩やかであったため,全国は55.7%から56.7%への1.0%ポイントの上昇にとどまった(I-特-3図)。この5年間には,東京都では54.7%から53.0%に1.7%ポイント低下し,福島県,長野県,鳥取県,高知県の4県を含めて5都県で低下した。

I-特-3図 都道府県別 女性の就業率(15~64歳)の推移別ウインドウで開きます
I-特-3図 都道府県別 女性の就業率(15~64歳)の推移

I-特-3図[CSV形式:2KB]CSVファイル

平成17年以降は,全ての都道府県で就業率が上昇している。17年から27年の10年間の就業率の変化について,沖縄県,東京都,大阪府の3都府県の上昇幅は,それぞれ12.8%ポイント,12.6%ポイント,10.2%ポイントと,10%ポイントを上回る大幅な伸びとなった。この3都府県は17年には全国を下回る低い水準であったが,27年には,東京都が全国を1%ポイント程度上回り,沖縄県は全国並み,大阪府については27年においても全国を下回っているが,17年と比べ全国との差を縮小させている。10年間の変化を17年から22年の前半5年間と,22年から27年の後半5年間に分けてみると,35の都道府県においては,後半5年間の上昇幅が前半5年間の上昇幅を上回っている。就業率の水準が低い地域だけではない。福井県や富山県は従来から女性の就業率が高い地域であるが,後半5年間の上昇幅は前半5年間の上昇幅と比べて大きく,福井県は3倍超,富山県は2倍超となっている。

平成27年の就業率については,高い順から,福井県(74.8%),富山県(72.2%),島根県(71.8%),低い順から奈良県(58.5%),兵庫県(60.6%),大阪府(61.4%)となる。この10年間,全ての都道府県において就業率が上昇を続けているが,最も就業率の高い福井県と最も低い奈良県との差は16.3%ポイントあるなど,女性の就業率について都道府県間のばらつきは依然大きい。

子育て世代にあたる25~44歳の女性の就業率についても,最近15年間の変化を見ると,平成12年から17年にかけては,東京都,福島県,山形県,宮城県,沖縄県,高知県,鳥取県では低下し,上昇しても僅かな上昇にとどまる都道府県が多かった(I-特-4図)。17年以降は,全ての都道府県で上昇し,17年から27年までの10年間に全国が62.1%から72.0%と9.9%ポイントの上昇となり,東京都(16.2%ポイントの上昇)や沖縄県(15.6%ポイントの上昇)をはじめとする9都府県においては10%ポイント以上の上昇となった。

I-特-4図 都道府県別 女性の就業率(25~44歳)の推移別ウインドウで開きます
I-特-4図 都道府県別 女性の就業率(25~44歳)の推移

I-特-4図[CSV形式:2KB]CSVファイル

平成27年の女性の就業率(25~44歳)については,高い順から,福井県(86.8%),山形県(84.1%),鳥取県(82.5%),低い順から神奈川県(67.6%),兵庫県(67.8%),奈良県(68.0%)である。最も就業率の高い福井県と最も低い神奈川県との差は19.2%ポイントである。27年の上位3県の平均値(84.5%)と下位3県の平均値(67.8%)との差は16.7%ポイントあるとともに,27年の下位3県の平均値は15年前(12年当時)の上位県の水準に達していない。さらに,生産年齢人口の女性の就業率の最上位と最下位との差が16.3%ポイントであるのに対して,25~44歳の女性の就業率の最上位と最下位との差は19.2%ポイントであり,子育て期の女性の就業拡大の状況は,地域差が大きい。地域間の違いを認識し,地域の実情に応じた的確な対策を講じる必要がある。

我が国における生産年齢人口の女性の就業率(15~64歳)を海外諸国と比べると,これまでの官民による各種取組もあり,我が国の就業率はOECD平均(58.6%)よりも6%ポイント程度高い(平成27年)(I-2-2図参照別ウインドウで開きます)。G7諸国の中では中位に位置する。女性の就業率について国内に大きな地域差があるため,全国に代わり,国内において就業率が最も高い福井県と,その次に高い富山県の2県を例として,いわゆるМ字カーブの窪みがないとされる欧州諸国(スウェーデン,ドイツ,フランス)と比較した。福井県においては,20代から40代前半にかけての就業率は,スウェーデンを上回っている。また,福井県,富山県ともに,全ての年齢階級の就業率で,すでにドイツ・フランスを上回っている(I-特-5図)。従来から我が国においては,子育て期の女性の就業率が諸外国と比べて低いという課題が指摘されてきたが,すでにこの課題を克服している地域もある。

I-特-5図 欧州各国と福井県・富山県との女性の年齢階級別就業率の比較(平成27年)別ウインドウで開きます
I-特-5図 欧州各国と福井県・富山県との女性の年齢階級別就業率の比較(平成27年)

I-特-5図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(女性が職業を持つことに対する意識の変化)

女性の就業拡大には,仕事と育児等との両立支援のため,保育所等の育児基盤や育児休業制度等の整備・充実が大きく働いたとみられるが,女性が職業を持つことに対する意識が女性自身だけでなく男性を含め,社会全体として変化してきたこともその背景にある。女性が職業を持つことに対する意識について,平成4年(1992年)からの変化を男女別に見ると,4年においては,「子供が大きくなったら再び職業をもつ方がよい」と答えた者の割合が,女性(45.4%),男性(39.2%)ともに最も高かった(I-特-6図)。その後の変化を見ると,「子供が大きくなったら再び職業をもつ方がよい」の割合は男女ともに減少する一方,「子供ができても,ずっと職業を続ける方がよい」の割合が増加した。14年においては,男性は,「女性は職業を持たない方がよい」の割合と「結婚するまでは職業を持つ方がよい」の割合について,いずれも女性を上回るものの,「子供ができても,ずっと職業を続ける方がよい」の割合(37.2%)が「子供が大きくなったら再び職業をもつ方がよい」(31.8%)を初めて上回った。続く16年では,女性において,「子供ができても,ずっと職業を続ける方がよい」(41.9%)が,「子供が大きくなったら再び職業をもつ方がよい」(37.0%)を初めて上回った。最新の調査となる28年では,「子供ができても,ずっと職業を続ける方がよい」と回答する割合が,男女ともに調査以来,初めて5割を上回り,25年程度の間に,女性が職業を持つことに対する意識が社会全体として大きく変化した。

I-特-6図 女性が職業を持つことに対する意識の変化別ウインドウで開きます
I-特-6図 女性が職業を持つことに対する意識の変化

I-特-6図[CSV形式:3KB]CSVファイル

(主要産業や多くの地域において依然少ない女性管理職)

我が国においては,女性の就業が拡大し,就業者に占める女性の割合は43.5%と欧米諸国とほぼ同水準である(I-2-14図参照別ウインドウで開きます)。他方,管理的職業従事者2における女性の割合は近年逓増傾向にあるものの,13.0%(平成28年)と低い水準にとどまり,欧米諸国のほか,シンガポールやフィリピンといったアジア諸国と比べてもかなり低い。国内の女性の登用状況を見るため,就業者に占める女性の割合と管理的職業従事者に占める女性の割合を産業別に比較した(I-特-7図)。就業者数が多い製造業,卸売業・小売業,医療・福祉の3業種の状況を見ると,医療・福祉においては,就業者に占める女性の割合が75.0%と全産業の中で最も高く,多くの女性が働く業種であるが,管理的職業従事者に占める女性の割合は28.6%と,就業者に占める女性の割合との差が46.4%ポイントと極めて大きい。卸売業・小売業においても,就業者に占める女性の割合が51.1%と高いが,管理的職業従事者に占める女性の割合は14.3%と,就業者に占める女性の割合との差が36.8%ポイントもある。製造業は,卸売業・小売業に次いで就業者数が多い産業であるが,就業者に占める女性の割合が30.1%と全産業平均を大きく下回ることもあり,管理的職業従事者に占める女性の割合(7.1%)も全産業平均(13.0%)を大きく下回る。女性の採用や登用に関する状況には業種ごとに違いがあり,業種の特性を踏まえた課題分析,課題解決が必要となる。

2管理的職業従事者とは,就業者のうち,会社役員,企業の課長相当職以上,管理的公務員等をさす。

I-特-7図 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(産業別)別ウインドウで開きます
I-特-7図 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(産業別)

I-特-7図[CSV形式:1KB]CSVファイル

女性の管理職への登用の状況を地域の視点から見るため,都道府県別に有業者に占める女性の割合と管理的職業従事者に占める女性の割合とを比較した(I-特-8図)。有業者に占める女性の割合については,近年,全国的に女性の就業率が上昇してきたこともあり,全ての都道府県で40%を上回っている。有業者に占める女性の割合については,最も高い高知県(46.7%)と,最も低い埼玉県(40.7%)の差が6%ポイントあるが,管理的職業従事者に占める女性の割合に比べると,都道府県間のばらつきは小さい。管理的職業従事者に占める女性の割合は,高知県(21.8%)や青森県(20.3%)では20%を超え,和歌山県(18.4%),岡山県(17.2%),広島県(17.2%)においても全国(13.4%)を大きく上回る一方,10%未満が6県あり,なかでも,石川県(8.0%),滋賀県(8.0%),静岡県(8.3%),秋田県(8.6%)は,8%台のかなり低い状況にある。生産年齢人口における女性の就業率(平成27年)の上位5県(福井県,富山県,島根県,鳥取県,石川県)においても,これら5県の全てで管理的職業従事者に占める女性の割合が全国を下回っている。就業率の高い地域では,すでに女性の就業は拡大していることから,働く女性がこれまで職業を通じて培ってきた能力や経験を活かし,管理的立場で活躍できる潜在力が大きいといえる。こうした潜在力を発揮するため,継続就労の支援に加え,女性の管理職への登用,能力開発,キャリア形成等の比重を高めた取組が一層重要となる。

I-特-8図 有業者と管理的職業従事者に占める女性の割合(都道府県別)別ウインドウで開きます
I-特-8図 有業者と管理的職業従事者に占める女性の割合(都道府県別)

I-特-8図[CSV形式:2KB]CSVファイル

管理的職業従事者に占める女性の割合に都道府県間で大きな違いがあるのは,地域の大きな特性のひとつである産業構造によるところがあると考えられる。産業構造と女性管理職との関係について,都道府県別に,全産業の従業者数に占める製造業従業者の割合と管理的職業従事者に占める女性の割合との関連性から見てみると,製造業従業者の割合が高い地域では,相対的に管理的職業従事者に占める女性の割合が低い一方,製造業従業者の割合が低い地域では,管理的職業従事者に占める女性の割合が高いという両変数の間に負の相関関係がうかがえる(I-特-9図)。地方圏では,基幹産業が製造業である産業構造の地域も少なくない。一般に,製造業は管理的職業従事者に占める女性の割合が他産業に比べ低いが,製造業を基幹産業とする産業構造の地域では,管理的職業従事者に占める女性の割合が低い傾向にあると言える。地域全体として女性管理職を拡大させるには,地域の基幹産業における女性の登用の加速化の視点も重要になる。

I-特-9図 製造業の従業者の割合と管理的職業従事者に占める女性の割合(都道府県別)別ウインドウで開きます
I-特-9図 製造業の従業者の割合と管理的職業従事者に占める女性の割合(都道府県別)

I-特-9図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(多様で柔軟な働き方の推進)

この10年間の雇用者数について,男性は平成20年から22年,24年に減少したが,女性は増加が続くとともに,25年に大きく増加し,27,28年と2年連続で増加数が拡大した(I-特-10図)。大きく増加した25年以降の女性の雇用者について,正規雇用と非正規雇用に分けて変化を見ると,25,26年は,非正規雇用を中心とした増加であったが,27年以降は,正規雇用と非正規雇用がともに増加した。加えて,27年は正規雇用が3年ぶりに増加に転じるとともに,28年は2年連続で正規雇用の増加が非正規雇用の増加を上回っている。我が国では,企業等において意思決定層に登用される女性を増やす必要があるものの,母集団となり得る女性の層に厚みがないのが実情である。女性の管理職への登用を推進するためにも,このところの女性の正規職員としての採用拡大の流れを継続させ,管理職候補となる女性の増加につなげることが重要である。

I-特-10図 正規職員・非正規職員の推移(男女別,対前年増減数)別ウインドウで開きます
I-特-10図 正規職員・非正規職員の推移(男女別,対前年増減数)

I-特-10図[CSV形式:1KB]CSVファイル

少子高齢化により仕事と育児・介護等との両立のニーズが高まる中,女性がより活躍するためには,一人ひとりの事情に応じての就労が可能となるよう,多様で柔軟な働き方の選択肢を増やすことが必要である。非正規雇用者の現在の雇用形態についた主な理由(平成28年)を見てみると,男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」と回答した者が最も多い(I-特-11図)。さらに,それぞれの理由の回答割合を男女別に比べると,「自分の都合のよい時間に働きたいから」「家計の補助・学費等を得たいから」「家事・育児・介護等と両立しやすいから」「通勤時間が短いから」の4つの理由については,いずれの理由についても当該理由を回答した者の割合について,女性が男性を上回る。多くの女性は柔軟な働き方ができるため,非正規雇用を選択している。

「正規の職員・従業員の仕事がないから」と不本意に非正規の雇用形態についていることを主な理由として回答した者の割合を男女別に比べると,女性(11.5%)が男性(24.8%)を大きく下回るが,実数で見ると,非正規雇用で働く女性が男性よりも多いこともあり,女性149万人,男性147万人と,男性をやや上回る女性が不本意ながら,現在の非正規の雇用形態に就いている。さらに,不本意ながら現在の非正規の雇用形態に就く女性(149万人)について,年齢構成を見ると,多い順に45~54歳が41万人,35~44歳が35万人,25~34歳が31万人,55~64歳が23万人,15~24歳が12万人であり,30~50代を中心に不本意ながら現在の非正規の雇用形態に就く女性が多い実態がある(I-特-12図)。我が国では,女性は出産・育児等による離職後の再就職にあたって非正規雇用者となることが多いが,派遣社員やパートなどの非正規雇用から正規雇用に移行したいと考える女性が少なくない。また,男女間の賃金格差は,縮小傾向にあるものの,男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性一般労働者の給与水準は73.0と格差がある(平成28年)(I-2-9図参照別ウインドウで開きます)。女性の多様で柔軟な働き方の選択肢を広げるとともに,女性の能力を十分に発揮できる働き方を実現させるには,非正規雇用の女性の正社員転換・待遇改善が重要である。

I-特-11図 非正規の職員・従業員が現職の雇用形態についた主な理由(男女別)別ウインドウで開きます
I-特-11図 非正規の職員・従業員が現職の雇用形態についた主な理由(男女別)

I-特-11図[CSV形式:1KB]CSVファイル

I-特-12図 非正規の職員・従業員が現職の雇用形態についた主な理由(女性・年齢階級別)別ウインドウで開きます
I-特-12図 非正規の職員・従業員が現職の雇用形態についた主な理由(女性・年齢階級別)

I-特-12図[CSV形式:1KB]CSVファイル