特集 女性活躍推進法による女性活躍の加速・拡大に向けて

本編 > I > 特集 >  女性活躍推進法による女性活躍の加速・拡大に向けて

特集 女性活躍推進法による女性活躍の加速・拡大に向けて

我が国は,世界に先駆け,人口減少社会に突入し,いかにして労働力人口を維持し,また生産性やイノベーション力を引き上げていけるかどうかが,持続的成長の最大の課題である。この課題を解決するには,働くことを希望する女性が仕事を持つようになるだけでなく,働く女性がその希望に応じ能力を十分に発揮できる働き方を実現できるかが鍵となる。近年,我が国において,女性の就業率は上昇を続け,働く女性は大きく増加したものの,これに比して,企業等において管理的立場に就く女性の割合は低い状況にある等,女性の力が十分に活かされているとはいえない。こうした課題に早急に対処し,女性の活躍推進の取組を着実に前進させるため,平成28年4月,「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)が全面施行され,国及び地方公共団体,民間企業等に対し,女性の活躍の場の提供主体である事業主として,女性の活躍に関する状況の把握・課題分析・行動計画策定・情報公表を義務付けることになった。

本特集では,第1節において,働く女性の活躍の現状と課題を概観した上で,第2節において,女性活躍推進法の全面施行から1年が経過し,国及び地方公共団体,民間企業等の各主体において,女性活躍推進法に基づき進められている女性の活躍推進の取組等を整理する。

特集のポイント


第1節 働く女性の活躍の現状と課題

  • 生産年齢人口は減少しているが,平成24~28年の4年間に就業者数は170万人増加し,このうち女性が147万人,男性が23万人増加し,女性の就業が拡大した。
  • 女性の就業率(15~64歳)は,昭和61~平成28年の30年間に53.1%から66.0%と12.9%ポイント上昇したが,この上昇幅の過半は最近10年間の上昇によるもので,特に最近4年間の上昇(5.3%ポイント)が大きい。
  • 最近10年間に,女性の就業率は全ての年齢階級で上昇し,なかでも,「30~34歳」「55~59歳」「60~64歳」は10%ポイント超の上昇になった。
  • 平成17~27年の10年間に,女性の就業率は,全ての都道府県で上昇したが,その水準について,地域差が依然大きい。
  • いわゆるM字カーブの窪みがないとされる欧州諸国と,女性の就業率が国内で最も高い福井県とこれに次ぐ富山県を比べると,福井県の20代から40代前半にかけての就業率は既にスウェーデンを上回り,両県ともに,全ての年齢階級でドイツ・フランスを上回る。
  • 管理的職業従事者に占める女性の割合は,20%を上回る県がある一方,8%台の低い状況の県もある。女性の就業率の上位5県では,女性の就業は拡大したが,いずれの県も管理的職業従事者に占める女性の割合では全国平均を下回る。
  • 女性の雇用者数は,平成27,28年と2年連続で増加数が拡大するとともに,2年連続で正規雇用の増加が非正規雇用の増加を上回った。
  • 非正規雇用のうち,不本意ながら非正規の雇用形態を選択する者の割合については,女性は男性を大きく下回るが,実数では,女性149万人,男性147万人と女性がやや多い。

第2節 女性活躍推進法によって広がりつつある女性活躍推進の取組

  • 特定事業主の取組として,全ての府省等が,事業主行動計画において,「女性職員の採用」「女性職員の登用」「男性職員の育児休業取得」「男性職員の配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇取得」の4項目についての数値目標を設定するとともに,これら4項目の情報公表を行っている。情報公表の対象とされる13項目のうち,事業主行動計画の策定にあたり状況把握すべきとされる7項目は4機関が公表している。
  • 特定事業主としての都道府県の取組について,事業主行動計画において,「女性職員の管理職登用」の数値目標を設定するのは43団体である。女性職員の管理職への登用に都道府県間で大きなばらつきがある状況を反映し,数値目標の水準も都道府県間で大きなばらつきがある。
  • 都道府県推進計画や市町村推進計画において,中小企業における女性の活躍推進に対する支援を地域全体の優先課題と位置づけ,協議会も活用しつつ,積極的な取組を進める自治体が各地にある。
  • 301人以上の一般事業主行動計画の策定等が義務付けられる事業主の99.8%に相当する15,740事業主が行動計画の届出を行っている1。
  • 301人以上の一般事業主のうち,厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」上で「行動計画の公表」と「情報の公表」の両方を行う事業主について,1社あたりの情報公表は平均5.2項目で,企業規模が大きいほど,公表項目数が多くなる傾向にある1
  • 一般事業主行動計画の策定・届出等が努力義務とされる300人以下の事業主のうち,2,155事業主が自主的に行動計画の策定・届出を行っている1
  • 一般事業主行動計画の策定等が義務付けられる301人以上の事業主のうち,「女性の活躍推進企業データベース」上で,「行動計画の公表」と「情報の公表」の両方を行う事業主の割合は4分の1程度,「行動計画の公表」「情報の公表」のいずれかを行う事業主を含めても,データベースに登録する事業主の割合は5割程度であり,「見える化」の推進が重要となる。
  • 「えるぼし」の認定企業数は215社1であり,規模別では,1,001人以上の大企業が7割を超え,業種別では,金融業・保険業,卸売業・小売業,製造業の3業種で6割超を占める。「えるぼし」の認定企業でも,女性職員の継続就業,管理職への女性の登用等について,認定基準を満たすことは容易ではない。
  • 中小企業の中には,自主的に一般事業主行動計画の策定・届出等を行い,女性の採用拡大,女性の職域拡大や育成,正社員転換等を通じた女性の継続雇用,女性の管理職登用の拡大といった課題に対して,各社独自の知恵を出し,同業他社との連携等も活用しつつ,課題解決のため積極的に取組を進める企業がある。

1平成28年12月末現在。