第1節 仕事と生活の調和の実現

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第6章 男女の仕事と生活の調和

第1節 仕事と生活の調和の実現

1 仕事と生活の調和に関する意識啓発の推進

経済界,労働界,地方公共団体の代表者,有識者,関係閣僚により構成される仕事と生活の調和推進官民トップ会議において,政労使の合意の下,平成19年12月に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(以下「行動指針」という。)が策定され,これに基づき,官民一体となり,仕事と生活の調和実現に向けた取組が行われている。「行動指針」には,平成32(2020)年に向けた数値目標が設定されているほか,点検・評価を行うこととされている。

仕事と生活の調和推進官民トップ会議の下に設置されている仕事と生活の調和連携推進・評価部会は,毎年,「憲章」及び「行動指針」に基づく取組の点検・評価を行っており,平成26年度の点検・評価結果として,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2014」を27年2月に公表した。同レポートでは,「行動指針」において設定されている数値目標の目標年である32年に向けて,長時間労働の抑制,年次有給休暇の取得の促進,女性の継続就業の促進,男性の家事・育児参画の促進,仕事と介護の両立の推進等について,実態を把握・分析した上で,労使等の各主体が仕事と生活の調和の実現に向けた取組を加速していくとしている。

内閣府では,社会全体の気運醸成に向けた取組として,「カエル!ジャパン」キャンペーンを推進しているほか,月に1回,ワーク・ライフ・バランスに関する国の施策や関連行事等の情報を分かりやすく紹介する「カエル!ジャパン通信」をインターネットで配信している。また,平成26年度は,企業におけるワーク・ライフ・バランスの取組を促進するため,関係団体と連携し,経営者及び管理職を対象としたセミナーを開催した。さらに,地方自治体の担当者を対象としたセミナーを開催し,各地域の企業に対するワーク・ライフ・バランスの取組強化を図った。

加えて,企業における仕事と生活の調和推進のため,経営者・管理職等による社内啓発の在り方について調査・研究し,その結果の周知を行った。

厚生労働省では,「憲章」及び「行動指針」を踏まえつつ,あらゆる機会を捉え,職業生活と家庭生活の両立を図りやすくするための雇用環境の整備に関する周知啓発活動を積極的に行っている。

特に父親の子育てについては,育児を積極的に行う男性「イクメン」及び「イクメン企業」を周知・広報し,社会的な気運醸成を図ることを目的とした「イクメンプロジェクト」において,参加型の公式サイト9の運営やハンドブックの配布等を行っている。男性の育児を積極的に促進しつつ,業務改善を図る企業を表彰する「イクメン企業アワード」等により,企業において男性の仕事と育児の両立支援の取組が進むよう,好事例の普及を図っている。また,イクメン本人だけでなく,周りの人や企業等広く社会に活動を広げていくために,公式サイトではイクメンを応援するイクメンサポーターを募集している。さらに,イクメンサポーター企業が従業員向けに行っている両立支援の取組を紹介するなど,企業の自発的な取組を促進している。

所定外労働時間の削減及び年次有給休暇の取得促進等を推進するために,厚生労働省幹部及び都道府県労働局長が日本各地のリーディングカンパニーのトップに働き方改革の実現に向けた取組の実施を働きかけるとともに,こうした企業の先進的な取組事例を広く普及させるために「働き方・休み方改善ポータルサイト」を活用して情報発信を強化するなど,企業の自主的な働き方の見直しを促進した。

また,10月を「年次有給休暇取得促進期間」として集中的な広報を行うとともに,地域の行事と連携して年次有給休暇の取組を促す「地域の特性を活かした休暇取得促進のための環境整備事業」を実施し,地域における休暇取得促進の気運を醸成した。

9厚生労働省委託事業 イクメンプロジェクト http://ikumen-project.jp/index.html

2 育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備

(1)働き方の見直し

依然として週60時間以上就業する労働者の割合が高水準で推移し,年次有給休暇の取得率が5割を下回る状況にあり,労働者の意識や抱える事情の多様化等の課題に対応するために,厚生労働省では,労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)及び「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針(平成18年厚生労働省告示第197号))に基づき,所定外労働時間の削減及び年次有給休暇の取得促進を始めとした労使の自主的な取組を促進している。

(2)父親の子育てへの参画や子育て期間中の働き方の見直し

文部科学省では,就学時健診等の多くの親が集まる機会を活用した家庭教育に関する学習機会の提供を支援している。

また,父親の家庭教育への参加を促進するため,父親の家庭教育を考える集いや,企業に出向いた学習講座の実施等を支援している。

(3)企業における仕事と子育て・介護の両立支援の取組の促進,評価

平成25年4月に安倍総理大臣が経済界に対し,子供が3歳になるまで育児休業や短時間勤務を取得したい男女が取得しやすいように職場環境を整備することを要請した。これを踏まえ,厚生労働省では,企業における仕事と家庭の両立支援について,引き続き育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)及び次世代法の履行確保に取り組んでいる。また,次の世代を担う子供たちが健やかに生まれ育つ環境をつくるために,次世代法に基づき,国,地方公共団体,事業主,国民がそれぞれの立場で次世代育成支援を進めている。

平成26年4月に次世代法が改正され,法律の有効期限が10年間延長されるとともに,新たな認定(「プラチナくるみん」認定)制度が創設された。当該改正内容について周知を行うとともに,特に「一般事業主行動計画」(以下「行動計画」という。)の策定・届出等が義務とされている常時雇用する従業員数が101人以上の企業に対しては,27年4月以降においても,引き続き行動計画の策定・届出等を行うよう働きかけを行っている。また,適切な行動計画を策定・実施し,その目標を達成するなど一定の要件を満たした企業は厚生労働大臣の認定を受け,認定マーク(愛称:くるみん)を使用することができるとされている。この「くるみん」取得企業数については,「少子化社会対策大綱」(平成22年1月閣議決定)において,平成26年度までに2,000企業とする数値目標が定められていたが,26年11月末時点において,「くるみん」取得企業数が2,011社となり,当該数値目標を達成した。

また,育児や介護を行う労働者が働き続けやすい雇用環境の整備を行う事業主等を支援するため,両立支援等助成金の支給を行っている。

さらに,仕事と家庭の両立に向けた企業の自主的な取組を推進するため,インターネットで設問に答えると自社の「仕事と家庭の両立のしやすさ」を点検・評価することができる両立指標や両立支援を積極的に取り組んでいる企業の取組等を掲載したサイト「女性の活躍・両立支援総合サイト」10を運用するとともに,中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアルや介護離職を予防するための職場環境モデルの周知を行っている。

加えて,仕事と育児・介護等との両立支援のための取組を積極的に行っており,かつ,その成果が上がっている企業に対し,公募により「均等・両立推進企業表彰」を実施し,その取組をたたえ,広く周知することにより,労働者が仕事と家庭を両立しやすい職場環境の整備を促進している。

また,国及び地方公共団体においても,職員を雇用する「事業主」の立場から,職員の仕事と子育ての両立支援等に関する「特定事業主行動計画」を策定することとされており,実情を踏まえつつ,より一層職員の職業生活と家庭生活の両立を図っている。

10厚生労働省委託事業 「女性の活躍・両立支援総合サイト」http://www.positive-ryouritsu.jp/

(4)自営業者,農林水産業に携わる人々など多様な働き方における仕事と生活の調和の普及

内閣府では,ワーク・ライフ・バランスの取組を促進するため,関係団体と連携し,ダイバーシティマネジメントをテーマとして,自営業者を含む経営者や管理職等を対象としたセミナーを開催した。また,規模や業種,地域等を勘案して様々な企業等から取組の好事例を選定するなど,仕事と生活の調和の推進の在り方について調査・研究し,その結果の周知を行った。

農林水産省では,生産と育児や介護との両立を支援するため,家族経営協定の締結の促進を図った。

3 仕事と子育てや介護との両立のための制度等の普及,定着促進

育児・介護期は特に仕事と家庭の両立が難しいことから,労働者の継続就業を図るため,仕事と家庭の両立支援策を重点的に推進する必要がある。

内閣府では,介護休業や介護保険等の制度やサービス等,仕事と介護の両立に資する法制度や介護サービス等の情報を一元的に提供するための「『仕事』と『介護』の両立ポータルサイト」を開設した。

厚生労働省では,育児・介護休業法の内容について周知・徹底を図るとともに,法律に規定されている育児・介護休業や短時間勤務制度等の措置等の両立支援制度を安心して利用できる職場環境の整備を支援している。

都道府県労働局雇用均等室では,計画的に事業所を訪問し,就業規則等で必要な制度が設けられているかを確認するなど,育児・介護休業法に規定されている制度の普及・定着に向けた行政指導を実施している。また,育児休業等の申出や取得を理由とした不利益取扱いに対しては,相談者の意向に配慮しつつ,相談事案が生じている事業所に対する報告徴収を積極的に実施し,迅速かつ厳正に対応している。

また,育児休業を取得した労働者の雇用の継続を目的として,雇用保険を財源に,育児休業給付を支給しているが,平成26年4月より,男女ともに育児休業を取得することを更に促進するため,休業開始後6月について,給付割合を50%から67%に引き上げた。

4 仕事と生活の調和等に関する統計の整備

総務省では,平成23年度に「社会生活基本調査」を実施し,第3次基本計画の成果目標となっている「6歳未満の子どもを持つ夫の育児・家事関連時間」を始めとした生活時間の実態把握に資する基礎資料を提供している。なお,「公的統計の整備に関する基本的な計画」においては,ワーク・ライフ・バランスの推進状況をより的確に把握できるよう,社会生活や国民生活の基礎的事項を明らかにする統計の充実を図ることとしている。