第2節 多様なライフスタイルに対応した子育てや介護の支援

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第2節 多様なライフスタイルに対応した子育てや介護の支援

1 全ての子育て家庭に向けた子育て支援策の充実

(1)総合的な子育て支援の推進

政府は,平成27年度から31年度までの5年間で目指すべき施策内容と数値目標を盛り込んだ「少子化社会対策大綱」(平成27年3月閣議決定)を策定し,結婚・妊娠・出産・子育ての各段階に対応した総合的な少子化対策を推進している。また,内閣府は,地域少子化対策強化交付金を活用し,地域の実情に応じた先駆的な少子化対策の取組を行う地方公共団体を支援した。

新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度の構築のため,平成24年に成立した子ども・子育て関連3法(子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号),就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第66号),子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成24年法律第67号))に基づく新たな子ども・子育て支援制度(以下「新制度」という。)では,「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に,幼児期の学校教育・保育及び地域の子供・子育て支援を総合的に推進することとしている。具体的には,(ア)認定こども園,幼稚園,保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設,(イ)認定こども園制度の改善及び(ウ)地域の実情に応じた子供・子育て支援の充実を図ることとしている。実施主体は基礎自治体である市町村であり,地域の実情等に応じて幼児期の学校教育・保育及び地域の子供・子育て支援に必要な給付・事業を計画的に実施していくこととしている。

新制度の平成27年4月からの本格施行に向けて,26年度は,有識者,地方公共団体,子育て当事者,子育て支援当事者等が子育て支援の政策プロセス等に参画・関与できる仕組みとして25年4月に内閣府に設置された「子ども・子育て会議」での審議を経て,子供・子育て支援の意義や施策に関する基本的事項等を定めた基本指針や各種施設・事業の基準等,各種政令・府省令等の制定を行った。

また,地方公共団体においては,子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て支援事業計画の策定が行われ,教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業の提供体制の確保等,取組の準備が進められた。

さらに,地方公共団体においては,次世代法に基づき,地域における子育て支援や母性,乳幼児の健康の確保・増進等を内容とする地域行動計画が策定され,これに基づく取組が進められている。地域行動計画は,5年を1期として全ての地方公共団体に策定が義務付けられており,都道府県及び市町村においては,平成21年度中に策定した「後期行動計画」に基づき,取組が進められた。

(2)経済的な子育て支援の充実

子育て世帯に対する現金給付については,平成24年3月に改正された児童手当法(昭和46年法律第73号)により,同年4月から新しい制度による児童手当が支給されている。所得制限額(例:夫婦・児童2人世帯の場合は年収960万円)未満の者に対して,3歳未満と,3歳から小学生の第3子以降については児童一人当たり月額1万5,000円,3歳から小学生の第1子・第2子と,中学生については児童一人当たり月額1万円の児童手当が支給されている。また,所得制限額以上の者に対しては,特例給付として,当分の間,児童一人当たり月額5,000円が支給されている。

(3)保育サービスの整備等

厚生労働省では,喫緊の課題である待機児童の解消に向け,平成25年4月に策定した「待機児童解消加速化プラン」により,待機児童解消に意欲的に取り組む地方自治体に対しては,その取組を全面的に支援することとしている。

平成26年度においては,保育所等の受入れ児童数の拡大を図るとともに,小規模保育,幼稚園における長時間預かり保育等新制度の先取り,認可を目指す認可外保育施設への支援を実施した結果,25年度及び26年度の2か年で約20万人分(児童の減少等による定員減少を加味すれば約19万人分)の新たな保育の受け皿の確保が見込まれている。

「待機児童解消加速化プラン」を推進するためには,保育を支える保育士の確保が重要である。平成24年度補正予算以降,自治体における保育士確保を支援するため,安心こども基金を活用し,処遇改善や潜在保育士の再就職支援等に取り組んでいる。

さらに,国全体で必要となる保育士数を明らかにした上で,数値目標と期限を明示し,人材育成や再就職支援等を強力に進めるための工程表として,平成27年1月に「保育士確保プラン」を策定した。「保育士確保プラン」においては,保育士試験の年2回実施の推進や処遇改善など保育士確保に向けた新たな施策を講じるほか,従来の保育士確保施策についても,引き続き確実に実施し,施策に関する普及啓発を積極的に行うなど,更なる保育士確保対策の推進を図ることとしている。

(4)放課後子ども総合プランの推進

放課後児童クラブの質を確保する観点から,平成24年に改正された児童福祉法(昭和22年法律第164号)により,放課後児童クラブの設備及び運営については,厚生労働省令で定める基準を踏まえ,市町村が条例で定めることとなった。このため,「社会保障審議会児童部会放課後児童クラブの基準に関する専門委員会」における議論等を踏まえ,26年4月30日に「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(平成26年厚生労働省令第63号)を策定・公布した。

また,共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに,次代を担う人材を育成するため,全ての児童が放課後等を安全・安心に過ごし,多様な体験・活動を行うことができるよう,文部科学省と厚生労働省が共同で平成26年7月に「放課後子ども総合プラン」を策定し,一体型を中心とした放課後児童クラブ及び放課後子供教室の計画的な整備等を進めることとしている。本プランにおいて,31年度末までに,放課後児童クラブについて,約30万人分を新たに整備するとともに,全小学校区(約2万か所)で放課後児童クラブ及び放課後子供教室を一体的に又は連携して実施し,うち1万か所以上を一体型で実施することを目指している。

平成26年度においては,文部科学省の「放課後子供教室」は全国1万1,991か所(26年11月現在)で,厚生労働省の「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」は全国2万2,084か所(26年5月現在)でそれぞれ実施している。

(5)地域における子育て支援の拠点等の整備

文部科学省では,「幼稚園教育要領」に基づき,幼稚園の標準の教育時間(4時間)の前後や長期休業期間中等に行われる,いわゆる「預かり保育」や,子育て相談や子育てに関する情報提供,保護者同士の交流の機会の提供等,幼稚園における子育て支援活動を推進している。

平成26年度においては,全国の幼稚園の教員等を対象に,幼稚園教育要領等の趣旨の理解を推進するための協議会を開催し,幼稚園における子育て支援の更なる推進を図っている。預かり保育や子育て支援活動については,私立幼稚園については私学助成により支援するとともに,公立幼稚園については,地方財政措置が講じられている。

また,幼児教育の振興を図る観点から,保護者の所得状況に応じた経済的負担の軽減等を図る「幼稚園就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,その所要経費の一部を幼稚園就園奨励費補助金により補助している。平成26年度は,保育所と同様に,生活保護世帯の保護者負担を無償にするとともに,第2子の保護者負担を半額にした上で所得制限を撤廃し,第3子以降についても所得制限を撤廃した。

就学前の教育・保育への多様なニーズに対応するため,平成18年10月から開始した認定こども園制度の普及促進のため,新制度においては,「幼保連携型認定こども園」を学校及び児童福祉施設としての法的位置づけを持つ単一の施設として認可・指導監督権限を一本化し,認定こども園・幼稚園・保育所に共通する給付(施設型給付)を創設して財政支援を一本化することなどにより,認定こども園制度の更なる普及促進を図ることとしている。認定こども園の認定件数は,27年4月1日現在,全国で2,836件となっている。

(6)地域住民等の力を活用した子育て環境の整備,交流の促進

厚生労働省では,身近な場所に子育て中の親子が気軽に集まって,相談や交流を行う地域子育て支援拠点の設置を推進しており,平成25年度は8,201か所で実施されている。また,保護者の通院や社会参加活動,又は育児に伴う心理的・身体的負担の軽減のため,保育所や駅前等利便性の高い場所で就学前の児童を一時的に預かる一時預かり事業の取組を推進しており,同年度は7,903か所で実施されている。

加えて,乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として,保育施設までの送迎や放課後の預かり,病児・病後児の預かり等の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進しており,平成25年度は738か所で実施された。26年度においては,国庫補助の会員数要件を,100人相当以上から50人以上に緩和し,センターの設置を促進した。

文部科学省では,身近な地域において,全ての親が家庭教育に関する学習や相談ができる体制が整うよう,家庭教育支援チームの組織化等による相談対応,保護者への学習機会や親子参加行事の企画・提供等の家庭教育を支援する活動を推進している。

また,地域住民,学校,行政,NPO,企業等の協働による社会全体での家庭教育支援の活性化を図るため,効果的な取組事例等を活用した全国的な研究協議を行っている。平成26年度においては,全国家庭教育支援研究協議会「これからの時代の家庭教育支援の在り方~つながりが創る豊かな家庭教育~」を27年1月に開催し,全国的な啓発を行った。そのほか,地域人材を活用した「家庭教育支援チーム」による支援を更に普及し,より効果的な取組を促進するため,ロゴマークの提供等を含む家庭教育支援チームの登録制度の見直しを行った。

さらに,家庭教育の基盤となる,食事や睡眠等を始めとする子供の基本的な生活習慣の定着を図るため,「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進するとともに,「中高生を中心とした子供の生活習慣が心身へ与える影響等に関する検討委員会」を開催し,25年度の議論を踏まえ,睡眠習慣をはじめとする生活習慣が子供の心身に与える影響などに関する科学的知見の整理と,その普及啓発の在り方について検討し,中高生や保護者などを対象として普及啓発資料及び指導者用資料を作成した。

(7)子育てのための生活環境の整備

国土交通省では,子育てに適したゆとりある住宅・居住環境を確保するため,良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進するとともに,住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを利用した融資等により,良質な持家の取得を支援している。

また,公的賃貸住宅における保育所等の子育て支援施設の一体的整備や,子育て世帯の居住の安定確保を図る民間事業者等による先導的な取組を支援したほか,地方公共団体においても,地域の実情を踏まえ,子育て世帯に対し当選倍率を優遇するなどの対応を行っている。さらに,職住近接で子育てしやすい都心居住,街なか居住を実現するため,良質な住宅供給や良好な住宅市街地等の環境整備を行っている。

加えて,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備,無電柱化,交通安全施設等の整備を実施しているほか,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS:スペシャル・トランスポート・サービス)の普及を推進している。また,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー法」という。)に基づく取組のほか,公共交通機関や公共施設等におけるベビーカー利用がしやすい環境づくりに向けた検討を行い,ベビーカー利用に関する統一的なマーク(ベビーカーマーク)及びベビーカー利用にあたっての「お願い」を決定し,普及・啓発を図るキャンペーン等を実施した(第9章第2節2参照)。

警察では,子供連れでも安心して歩くことができるよう,最高速度30キロメートル毎時の区域規制や通行禁止等の交通規制及び信号機等の交通安全施設等の整備により,生活道路における速度抑制や通過交通の抑制・排除を図るとともに,外周となっている幹線道路における交通流の円滑化対策を実施するなど,道路交通環境の整備に努めた。

また,子育て支援の効果をも有する交通安全対策として,幼稚園・保育所等と連携したチャイルドシートの正しい使用方法に関する講習会や幼児二人同乗用自転車の安全利用に関する自転車教室を開催したほか,地方公共団体等が実施している各種支援制度の活用を通じて,チャイルドシートや幼児二人同乗用自転車の普及促進に積極的に取り組んだ。

さらに,安全で快適な駐車環境の提供により,高齢運転者や妊娠中の運転者等を支援するため,高齢運転者等専用駐車区間の整備に努めた。

このほか,文部科学省,国土交通省及び警察庁では,平成24年度に実施した通学路の緊急合同点検の結果を踏まえ,学校,教育委員会,道路管理者,警察等の関係機関が連携して通学路の交通安全対策を実施するとともに,地域における定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等による継続的な取組を支援するなど,通学路における交通安全の確保に向けた取組を推進した。

2 多様なライフスタイルに対応した介護支援策の充実

厚生労働省では,介護支援策の充実を図るため,介護予防対策の推進や介護・福祉サービスの基盤整備,介護サービスの質の確保を図るとともに,介護従事者の処遇改善や人材の養成・確保対策を推進している(第9章第1節3参照)。