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第1節 大きな女性の潜在力
(高齢者人口の増加と生産年齢人口の減少)
我が国では,人口減少と少子高齢化が同時に進行しており,高齢者人口(65歳以上の人口)が増加する一方で,生産年齢人口(15~64歳の人口)が減少することが見込まれている(第1-2-1図)。単純に高齢者人口と生産年齢人口の割合を計算すると,平成24年には,1人の高齢者を2.6人の現役世代が支えているが,国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(死亡中位,出生中位)によれば,2055(平成67)年には1人の高齢者を約1.3人の現役世代で支えることとなる。
(我が国の大きな女性の潜在力)
このような人口動態の変化が,社会保障制度の担い手の不足や経済力の低下をもたらすことが懸念されている。新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)の中で政府は,2020年の国全体の就業率を,2010年と同水準の57%に維持する目標を掲げている。中でも25歳から44歳の女性の就業率については,現在の66.6%から2020年までに73%へと急速に高めることを目標としている。
我が国の女性の年齢階級別労働力率は,いわゆる「M字カーブ」を描いているが(第1-2-2図)(第1部第3章第1節参照),現在就業しておらず,求職活動はしていないものの就業を希望している女性(「就業希望者」)は,25歳から49歳を中心に342万人に上っている。この数値は女性労働力人口2,768万人に対して12.4%,男性も加えた全労働力人口6,581万人に対しても5.2%と,非常に大きな潜在力となっている(第1-2-3図)。
第1-2-3図 M字カーブ解消による女性の労働力人口増加の試算
なお,女性の25~54歳の就業率を他のOECD諸国と比較すると,我が国は30か国中22位である(第1-2-4図)。また,女性労働力率のM字カーブは欧米諸国では既に見られない(第1-2-5図)。
第1-2-4図 OECD諸国の女性(25 ~ 54 歳)の就業率
(「経済活動における女性の活躍」をめぐる国際的な動向)
国際的には,女性の参画の拡大と経済成長とを積極的に関連付けて女性のエンパワーメントに取り組もうとする動きがある。この背景には,女性の経済への参画を促進し,所得を増やすことは,財政や社会保障の担い手を増やすことに加え,可処分所得の拡大を通じた消費の活性化にもつながるとの考え方がある。
例えば,2011(平成23)年5月には,OECD(経済協力開発機構)の閣僚理事会に,男女共同参画の進展は「公正」の観点だけでなく,「経済的必要性」の観点からも重要であると指摘する「ジェンダー・イニシアティブ・レポート」が報告された。同報告は,女性の経済活動への参画は生産性を高め,税・社会保障制度の支え手を増やし,多様性はイノベーションを生み競争力を高めると述べており,特に「教育(Education)」,「雇用(Employment)」,「起業(Entrepreneurship)」の「3つの“E”(“3Es”)」分野における加盟各国の男女間格差の比較を行うとともに,取り組むべき施策の方向性を示している。
また,2011(平成23)年9月には,米国サンフランシスコにてAPEC(アジア太平洋経済協力)女性と経済サミット(WES)が開催され,「サンフランシスコ宣言」が採択された(第2部 第16章第3節4コラム参照)。