平成24年版男女共同参画白書

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第4節 東日本大震災の教訓を未来へ

1 中央防災会議等の動き

中央防災会議では,平成23年12月に「防災基本計画」を修正し,避難場所の運営における女性の参画を推進するとともに,女性や子育て家庭のニーズに配慮した避難場所の運営に努めること,仮設住宅の運営管理において女性の参画を推進し,女性を始めとする生活者の意見を反映できるよう配慮することといった内容をより具体的に盛り込んだ。

中央防災会議は27人中2人,同会議の下に置かれた防災対策推進検討会議は20人中5人が女性委員となっている。

東日本大震災の発生とその後の対応の教訓を踏まえて,地方公共団体においても,地域防災計画を修正する動きが出ている。平成23年度中に,27道府県が地域防災計画を修正した。

災害対策基本法に基づき,地方公共団体が設置する地方防災会議における女性委員の割合は,平成24年4月現在で,都道府県では4.5%(前年3.5%)となっている。前年の状況と比べると,女性委員がゼロの都道府県は,12都府県から6都県に減少した(第12表)。

第12表 地方防災会議の委員に占める女性の割合

このような取組をより一層推進していくため,内閣府及び消防庁は,平成24年5月に,防災対策の見直しに係る男女共同参画の推進について,各都道府県宛てに通知した。

さらに,第180回国会に提出された「災害対策基本法の一部を改正する法律案」においては,地域防災計画に多様な主体の意見を反映させる観点から,地方防災会議の委員について自主防災組織を構成する者又は学識経験のある者のうちから知事等が任命できるものとされている。

2 多様な主体の連携による支援

今回の震災では,国・地方公共団体,男女共同参画センター,大学,NPO,NGO,地縁団体,企業等の多様な主体が連携した支援が顕著な特徴として挙げられる。

地域における男女共同参画推進の重要な拠点である男女共同参画センターは,日頃から情報提供,広報・啓発事業,相談事業等を通じて,地域に根ざした活動を行う様々な団体との連携体制が整っている利点をいかして,災害時においても,これらの団体が行う支援活動の中核や結節点となった。女性向け支援情報の提供や支援物資の提供等,全国の男女共同参画センター同士のネットワークを活用し被災者支援を行ったほか,これまでの知見をいかして,女性や子育て家庭に配慮した男女共同参画の視点による避難所・仮設住宅での支援を行うなど,大きな役割を果たした。

また,多様な団体が被災者への支援を行ったことにより,様々な課題も見えてきた。前出の内閣府の調査では,病気の子を持つ親,外見では分かりにくい発達障害や内部障害のある者,アレルギー等で特別な対応が必要な者,性同一性障害を有する者,配偶者からの暴力の被害者,日本語が十分に理解できない外国人等が,避難所等において困難を抱えていたことが報告されている。

3 男女共同参画社会の実現と防災・復興

これまで見てきたとおり,女性は,男性に比べて,総じて災害の影響を受けやすいことが見て取れる。復興に関しては,被災地での女性の雇用情勢が特に厳しいものとなっており,女性の就業先の確保は大きな課題である。女性の就業を支援するとの観点からも,女性も含む被災地での起業を支援することが必要であり,資金の提供やノウハウ面のサポート等の拡充が求められる。

一方,仮設住宅における孤立化についての懸念は,日頃から地域社会との関わりが少ない男性に目立ち,震災後に飲酒量が増加した者も,女性に比べて男性の方が多くなっている。

避難生活やその後の復旧・復興プロセスにおいて,男女のニーズの違いに配慮が必要であった。

他方で,東日本大震災の災害対応の現場において,救出・救助,被災者支援,復旧・復興,防災の担い手として,多くの女性が活躍していた。しかしながら,国を始めとして防災や復興に係る意思決定の場での女性の参画割合は低い。防災・復興の担い手として,女性は一層の活躍が期待され,防災基本計画や東日本大震災からの復興の基本方針にもあるように,女性の参画拡大を促していくことは今後の課題でもある。

東日本大震災の教訓からは,災害対応における男女共同参画の視点が重要であること,多様な主体による円滑な災害対応のためには,国・地方公共団体,男女共同参画センター,大学,NPO,NGO,地縁団体,企業等の日頃からの連携が重要であること,また,防災・復興における政策・方針決定過程への女性の参画が必要不可欠であることが改めて明らかとなった。

声を出しにくい人々,あるいは声を出してもその声が届きにくい人々に配慮し,誰をも排除しない包摂型の社会づくりを行っていくことは,災害による影響を受けやすい脆弱な人々の社会的排除(地域社会で人間関係を保てずに孤立したり,必要なサービスを享受できなかったりする状態)のリスクを低減することにつながる。この視点は,被災地あるいは災害発生時に限られることではなく,社会全体の在り方に関わることとして日頃から必要とされるものである。男女共同参画社会の実現は,災害に強い社会づくりでもある。

コラム<1>

災害派遣における女性自衛官等の活躍と託児支援の重要性


防衛省・自衛隊では,地震発生当日に陸上自衛隊の駐屯地において児童を一時的に預かる施設を開設して,延べ1,138人の子どもを一時的に預かった。これにより,延べ931人の隊員が災害派遣活動に従事することができた。

災害派遣における女性自衛官等の活躍と託児支援の重要性:画像

コラム<2>

「きずな隊」(生活安全特別派遣部隊)が深めた絆


警視庁の女性警察官を中心とする生活安全特別派遣部隊「きずな隊」は,特に被害が甚大だった宮城県内へ,発災直後から平成23年6 月までの長期間にわたり派遣され,支援活動を行った。

「きずな隊」(生活安全特別派遣部隊)が深めた絆:画像

コラム<3>

企業における支援物資にも工夫


企業等も発災直後からいち早く対応し,企業の社会的責任(CSR)に関する取組の一環として,大規模な支援が行われた。

被災者が必要とする物資には,水や食料のように全員に必要なものと,男女別にニーズの異なるものがある。後者のうち,例えば生理用品は,比較的早期から必要性が認識され,提供されたが,下着,ハンドクリーム,化粧品等は,女性のニーズが高かったが,発災直後は入手することが難しかった。

ある衣料メーカーは,サイズ別の下着に加えて,サイズが細かく分かれていない下着一体型のブラジャーを提供した。化粧品会社の支援により,避難所等で化粧品やクリーム等を使用したマッサージも行われ,化粧石鹸,化粧水,乳液,ハンドクリーム等を1 つの袋に詰めて女性に配布した。

コラム<4>

高齢者や子育て等の支援(雇用創出基金を活用した事例)


雇用創出基金を活用し,仮設住宅における買物支援や見守り支援等の取組がなされている。

高齢者や子育て等の支援(雇用創出基金を活用した事例):画像01
買物を代行する支援員
(特活)参画プランニング・いわて(盛岡市)

高齢者や子育て等の支援(雇用創出基金を活用した事例):画像02
仮設住宅を訪問する支援員
(一般社団)パーソナルサポートセンター(仙台市)

高齢者や子育て等の支援(雇用創出基金を活用した事例):画像03
集会所での親子の集い
宮城大学(東松島市)

コラム<5>

福島県における女性のための電話相談


「女性のための電話相談・ふくしま」に寄せられる相談には,県外避難や家族離散による二重生活の長期化によっての不安や,家族との関係についての訴えも多い。「慣れない土地で子育てを一身に背負っているが,そのつらさを単身で地元に残り仕事をしている夫に話すと,互いのストレスをぶつけあってけんかになってしまう」,「親世代と放射性物質に対する見解が異なりぶつかってしまう」などの相談が寄せられている。

電話相談の窓口は,「苦労が分かり合える福島の人と話したい」という県外避難者の相談の受け皿にもなっており,県外からの相談が全体の22.5%である。

コラム<6>

ボランティア活動から雇用の場、交流の場づくりへ


特定非営利活動法人亘理いちごっこは,避難所での炊き出しボランティアの経験から,町の集会所を無償で借り,支援物資を選んだり,食事ができるスペースの提供をスタートさせた。現在は,プレハブ店舗にてカフェをオープンし,仮設住宅以外に住む人たちへの傾聴活動や公民館でのイベント開催等にも取り組んでいる。

ボランティア活動から雇用の場、交流の場づくりへ:画像

コラム<7>

地方公共団体における男女共同参画の視点からの防災対応


財団法人とよなか男女共同参画推進財団では,内閣府「地域における男女共同参画連携支援事業」により,行政,民間団体,市民等が連携して,「とよなか女性防災ノート」を作成し,「とよなか女性防災キット」を提案した。

また,沖縄県西原町では,自治会及び女性団体等の連携の下,津波を想定した初めての避難訓練を行った。

  • 地方公共団体における男女共同参画の視点からの防災対応:画像01
  • 地方公共団体における男女共同参画の視点からの防災対応:画像02

コラム<8>

災害時に改めて認識された課題


配偶者からの暴力の被害者にとっては,避難所の名簿に記載・公表されることにより,加害者に居所が知られてしまうおそれがあることや,離婚が成立していないため,世帯主に対して支給される支援金が受け取れないなどの課題があった。

性同一性障害等を有する人にとっては,避難所のトイレやシャワーが男女2つのみに分けられていることにより困難があった。

コラム<9>

国際会議で再確認された「災害とジェンダー」の視点


第56回国連婦人の地位委員会において,「自然災害におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメント」決議案が2012年3月9日にコンセンサスで採択された。本決議は,日本の経験や教訓を各国と共有し国際社会の理解を深めるとともに,より女性に配慮した災害への取組を促進することを目指して,我が国として初めて同委員会に提案したものである。