本編 > 第1部 > 第3章 > 第1節 大きな女性の潜在力
第1節 大きな女性の潜在力
(高齢人口の増加と生産年齢人口の減少)
我が国では,人口減少と少子高齢化が同時に進行しており,高齢人口(65歳以上の人口)が増加する一方で,生産年齢人口(15~64歳の人口)が減少することが見込まれている(第1-3-1図)。単純に高齢人口と生産年齢人口の割合を計算すると,平成23年には,1人の高齢者を2.73人の現役世代が支えているが,国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口」(死亡中位,出生中位)によれば,2055(平成67)年には1人の高齢者を約1.26人の現役世代で支える計算となる。
(OECD諸国の中でも低い日本の女性就業率)
我が国の女性の25~54歳の就業率を他のOECD諸国と比較すると,我が国は30か国中22位である(第1-3-2図)。また,第2章でも見たような女性労働力率のM字カーブは欧米諸国では既に見られない(第1-3-3図)。
(性別役割分担意識の動向)
「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方について,昭和54年調査では,賛成の割合(「賛成」+「どちらかといえば賛成」)が7割を超えていたが,平成16年調査で初めて反対(「反対」+「どちらかといえば反対」)が賛成を上回り,19年調査では反対が5割を超えた(第1-3-4図)。
第1-3-4図 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について(性別)
(M字カーブの解消による労働力人口の増加)
我が国の女性の労働力率を年齢階級別に見ると,35~39歳の年齢階級を底とするいわゆる「M字カーブ」を描いている。しかしながら,現在就業しておらず,求職活動はしていないものの就業を希望している女性の「就業希望者」は,25~49歳を中心として342万人に上っている。この数値は女性労働力人口2,767万人に対して12.4%,男性も加えた全労働力人口6,581万人に対しても5.2%の比率である。(第1-3-5図)。
第1-3-5図 M字カーブ解消による女性の労働力人口増加の試算
(国際的な動向)
国際的には女性の参画の拡大と経済成長とを積極的に関連付けて取り組もうとする動きがある。女性の経済への参画を促進し所得を増やすことは,財政や社会保障の担い手を増やすことに加え,可処分所得の拡大を通じた消費の活性化にもつながるとの考え方が背景にある。平成22年9月には我が国では初会合となる第15回APEC女性リーダーズネットワーク(WLN)会合が開催され,「女性による新たな経済活動の創造」をテーマとして議論が行われ,APEC首脳及び閣僚への提言がまとめられた(コラム1)。提言の内容は,APEC首脳宣言,成長戦略,閣僚会議共同声明,中小企業大臣会合共同声明にも取り入れられた。我が国においても,女性の参画促進を経済社会の活性化につなげていくという視点が重要である。