平成22年版男女共同参画白書

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コラム7

【女性の起業】農村における女性の起業(食品加工,販売所,観葉植物生産卸,等)


○パートナーシップ農業の実現で食肉加工で独自のブランドを確立(Hさん)

千葉県で農事組合法人Oを経営するHさんは,「本当に美味しいものを安心して食べてもらいたい」との思いから,養豚場と消費者との直接の接点である「食肉加工」に取り組み,独自ブランドとして,全国への発送を行っている。法人を設立する前は,家族を中心とする経営の段階であったが,既に昭和40年ごろから業務の役割分担や報酬の支払いについての取決めを行った。その後,家事の分担,生活費の支出,介護負担等について夫婦及び子ども夫婦とも家族経営協定を結ぶなど,家族間で相互に責任を果たし貢献を尊重し合う中で,養豚場の拡大と加工部門の立ち上げ・拡大を実現してきた。法人設立に当たっては夫も妻も出資をしている。


○自分をいかした農業,業種を超えた“食と農”ネットワーク・地域づくり(Iさん)

一方,リンゴの剪定作業に自らかかわることによる新技術の導入,女性農業者としての地歩を固める努力を重ねつつ,志を同じくする女性たちの技術習得の場づくり,その交流の中からリンゴ加工品の開発,直売活動,食育へと活動を広げてきたIさんの取組がある(秋田県横手市)。この活動の特徴は,売上額以上に地域活性化に対する農業者の役割の在り方を追求している点にある。農業に従事しながらグリーン・ツーリズムへの可能性を探りつつ,地元商店街や温泉・観光施設など農業分野以外との連携,また協働による食育活動,さらには都会の女性たちとのネットワークづくりを進め,多くの女性の潜在能力を引き出しながら地域の魅力を高めるなど,地域振興に大きく貢献している。


○自社の経営が地域の活性化につながる経営を目指して(Nさん)

また,農業経営を株式会社として法人化し,社長として会社経営に取り組むNさん(静岡県浜松市)は,企業としての売上高目標の達成に加え,地域振興,後継者育成など,地域の活性化につながる経営を目指して様々な工夫を重ねている。Nさんにとって最初の転機となったのは,一人でナシの直販を始めた後,専業農家の女性9名で結成した生活改善グループで,特産品であるフルーツの加工とともに,伝票の切り方から記帳に至るまで経理について学んだこと。それが農家の自立について考えるきっかけとなり,その後フルーツ加工品を利用した商品の開発,地域のグリーン・ツーリズム関連施設と連携しての集客などに取り組んだ。更なる転機となったのが景気の影響で経営難に直面したこと。危機感を抱いて県の農林事務所主催のセミナーで経営のノウハウを学び,それを契機として業者の下請けから独立し,多肉植物・サボテンの生産卸を事業の中心とする法人を自ら設立した。現在は会社経営,後継者育成に取り組みながら,地域活性化について農業経営者の立場から様々な提言を行っている。