平成22年版男女共同参画白書

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コラム5

【企業事例】女性社員の起用による女性向け商品の開発と新たな顧客層の獲得(E社)


照明,理・美容器具,健康器具,システムキッチンなど,電材・電器・住設建材等を主力商品とするメーカーE社では“ながら美容”をコンセプトとする時間節約型の家庭用エステ商品を開発し,ヒット商品となった。女性の「美容」や「身だしなみ」に対する関心,消費意向,時間をもっとかけたいという思いなどは一般的に高い傾向にあるが,同社が導きだした商品コンセプトは「(更に)身だしなみに時間をかける商品の開発」ではなく,「家事をしながら,睡眠をとりながら,仕事しながら美容に時間をかけられる商品の開発」というものであった。多くの女性に支持されることとなったこのコンセプトの構築には「もっと身だしなみ・美容にお金も時間もかけたいのに,『忙しくて時間がない』」,「女性は男性が思っているよりも案外面倒くさがり屋」という同社の女性社員の生活実感が大きく貢献した。

商品デザインでは,同社の美容器具としてはそれまで技術的に開発が困難と考えられてきた「球形」を初めて実現。この斬新さ,可愛らしさも女性からの高い支持につながっている。形へのこだわりも,商品企画だけでなく同社内の複数の事業分野で職務経験を積んだ女性社員の業務上の経験によって生み出された。単なる“思い付き”で終わらせることなく,商品化のプロセスや開発上の課題,それを乗り越えるための仕事上の知識や経験,それまでに築いた人的ネットワークによる支援などがその実現を可能にした。

利用者(需要側)の立場に立った働く女性ならではの生活者視点と,企業内部で経験を積むことによって蓄積された製品化過程(供給側)のノウハウ,女性が利用者であり開発者であるという二面性がうまく結実したこのヒット商品は,同社の女性顧客層を増やすという効果を生んだ。

今後「環境配慮」と「快適生活」の両立を経営戦略とし,生活密着分野で付加価値の高い商品の提供を目指すE社では,生活者の多様な視点を社内に取り込むための戦略としても,女性従業員の採用・育成・登用に取り組んでいる。