平成20年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 特集 > 第2節 女性が中心となって切り開く地域の可能性―実践的活動から進化する男女共同参画―

第2節 女性が中心となって切り開く地域の可能性―実践的活動から進化する男女共同参画―

本節では,地域において女性が主導し,中心となって活躍する具体的な活動事例を取り上げながら,これらの事例から共通して浮かび上がってくる特徴をまとめ,次に,女性が主導する地域活動が今後重要性を増してくる理由について考察する。

(原動力は身近なものを大切にし,育てていこうという気持ち)

女性が中心的な役割を果たす地域活動の原動力となり,活動継続の推進力となっているのは,自らが主体となって,身近なものや人々を支え,大切にし,育てていかなければならないという強い思いであることが多い。

第一に,地域に伝わる伝統や生活文化,或いは身近な環境を守り,継承していこうとする気持ちが活動の原動力となっている場合も多い。内閣府「社会意識に関する世論調査」(平成20年)によると,日本の国や国民について,誇りに思うことはどんなことかという問いに対し,「美しい自然」,「長い歴史と伝統」,「すぐれた文化や芸術」については,女性が男性を上回っている(第1-特-41図)。

例えば,特定非営利活動法人納川の会(事例1)の活動は,石見地域の生活資源の魅力や豊かさを地元の住民や外部の人々に伝えたいという強い思いがきっかけとなっている。

また,認定特定非営利活動法人緑と水の連絡会議(事例2)は,農薬の空中散布が地域の環境や地域に住む人々の健康に与える影響についての危機意識から活動を開始している。

第二に,身近な人々を支え,育てていこうという気持ちから,活動を展開している事例も多い。高齢者や障害者の福祉や子育てに対する支援に関する活動への参加意欲は女性の方が高い(第1-特-9図(前掲))。

例えば,(事例3)は,代表者が自らの出産の経験から,地域ぐるみで子育てを行う必要性を強く痛感したことが活動のきっかけになっている。

第1-特-41図 日本の誇り 別ウインドウで開きます
第1-特-41図 日本の誇り

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事例1

地域の生活文化づくりという夢の共有が結実(まちづくり・観光)

特定非営利活動法人 納川の会(島根県)

■活動内容

石見地域の生活文化の魅力を発信するため,女性のためのフォーラム「鄙のヒナまつり」開催,古民家の再生,地域の生活文化を活かした服飾ブランドや工芸品づくり,地域住民との触れ合い交流イベント等幅広い活動を実施。

■活動の経緯・特徴

平成元年,石見地域の生活資源の魅力や豊かさを地元住民や外部の人々に伝えたいという地域への想いから,女性が中心となり,石見銀山生活文化研究所・石見地域デザイン計画研究会として活動を開始。その後,夢を共有する人々が,異業種ネットワークを形成し,そこが核となって様々なイベントや取組がなされた。その後,平成15年に特定非営利活動法人となった。

「それぞれの夢を大切にし,個人が光り,その結果,町も光る」という発想からそれぞれの持つ「夢」を共有し,それに向けて人々が協力・協働していくことによって,個性豊かで魅力的な活動を作り出している。

さらに,地域の古くからある生活文化を素材として,石見銀山という土地に根付いたライフスタイルを発信することにより,資源を活かした地域活性化事業では,地元行政や外部の専門家集団,ボランティア等との協働による活動を行っており,他女性団体との連携や情報交換等も活発に行われている。

本地域は,近年世界遺産として登録され,観光客も増加しているが,流行に流されることなく,作り手の価値観や美意識を伝えたいという姿勢が利用者に評価されている。

■活動の効果

地域資源を活かしたユニークなビジネス展開や地元住民との一体的な生活文化づくりが定着した結果,外部からの認知度も向上し,口コミ等で広がった企画を目的にやってくる観光客も増えてきた。

また,このような取組を通じ,地元住民,特に女性や若者が,自分たちの地域の生活文化を見直す契機となり,それが町の活性化・ふるさと意識の向上につながった。

特定非営利活動法人 納川の会(島根県)の写真

事例2

地道な環境保護活動により女性に注目と期待(環境)

認定特定非営利活動法人 緑と水の連絡会議(島根県)

■活動内容

三瓶山に広がる草原を,牛の放牧を活用する等により,人と自然の共生の中で保全していく取組や,保全活動を通じて子どもたちへの環境教育体験などを実施。また,ドラム缶を利用した炭火焼による地域おこし,バイオマスエネルギー事業の実証研究等も実施。

■活動の経緯・特徴

平成4年,地域での農薬空中散布の実施計画に環境や健康上問題があるという問題意識から,地域の環境を保全するための活動を開始した。初期の活動は女性が中心であり,当初は,女性だからという偏見もあった。しかし,一方で草原の保全活動や森林の下草刈りなどを地道に実践してきた実績が徐々に理解され,代表は女性であるが,現在では男性のメンバーも多い。15年には特定非営利活動法人化,18年には中国四国地域では初めて認定特定非営利活動法人格も取得し,活動の領域も広がっている。

人の手が加わってこそ守られる草原・里山等の二次的自然の環境保全は,人と自然の双方からアプローチすることが必要であり,本事例においては,農林水産業を通じた環境保全,人々の環境意識の向上や,農村部と受益者である都市部との交流といった幅広い取組に広がりをもっている。

■活動の効果

ボランティアや行政を巻き込んだ活動により,環境のみならず,農業や教育とその活動の幅が広がってきている。人と自然が共生しつつ自然景観を活用する取組は,環境活動のみならず,農業関係者からも注目されるようになっている。各種表彰も数多い。

また,活動実績を示すことで,地域住民の女性に対する意識が変化し,女性の活動に対して期待されるようになった。

認定特定非営利活動法人 緑と水の連絡会議(島根県)の写真

事例3

地域ぐるみで子育て支援(子育て)

特定非営利活動法人 わははネット(香川県)

■活動内容

地域ぐるみの子育てを実現するため,日曜パパひろば,子連れ父ちゃんはじめてのおつかいプロジェクト等,父親の育児への意識啓発のイベントや,結婚前の若者たちを対象に,小さな子どものいる家庭へホームステイ事業等を実施するなど,新しい子育て支援企画を多数実施。

■活動の経緯・特徴

代表者が出産した際,親同士が同じ悩みを話し合う場を持つことの必要性や地元に密着した育児情報の収集の難しさを痛感し,平成10年に育児サークルから発展させる形で会を発足させた。

翌年に香川県内初の育児情報誌「おやこDEわはは」を母親達の手で作成,販売したところ,好評となり,発行部数を大幅に増やしてフリーペーパー化した。

平成14年に, 特定非営利活動法人わははネットとして香川県より認証を受け,その後,坂出市,高松市の委託により地元の商店街に,親子の憩いの広場「わははひろば」を開設,様々な事業を展開している。

平成15年には,携帯電話を活用した子育て情報配信サービス「わははメール」事業を開始した他,子育て当事者の目線で「子育て応援タクシー」事業を企画,実施している。

さらに,平成17年には,地元企業と子育てに優しいマンションの在り方について検討し,「子育て応援マンション」建築の企画に携わっている。

■活動の効果

情報発信を通じて地域の子育て支援に大きく貢献しているほか,様々な主体と協働した事業を展開することにより,企業等を含め,地域全体の育児支援への関心が向上するなどの効果がみられている。

特定非営利活動法人 わははネット(香川県)の写真

(身近な地域や生活に密着した視点と柔軟な発想に基づく活動)

女性が中心的役割を果たす地域活動は,身近なものに根ざし地域や生活に密着した生活者・消費者の視点,そして,既成概念やこれまでのやり方を変える柔軟な発想に優れているものが多い。こうした地域や生活に密着した視点と柔軟な発想が基礎となって,地域の身近な課題の解決につながったり,地域のニーズに合った活動が展開されている。

例えば,豊見城市ウージ染め協同組合(事例4)の活動は,サトウキビを利用した染物という斬新なアイディアから発した活動である。

からり農産物直売所(事例5)は,地域の資源である農産物を,消費者に直接販売することでそのニーズを汲み取ることができ,それを更に生産面に活かすなど,生産者にも消費者にも有益となっている。

東京コミュニティパワーバンク(事例6)の活動は,女性の視点を大事にし,地域社会を活性化する働き手を市民の側から応援しようという,他の金融機関とは異なるユニークなコンセプトが活動の基礎となっている。

特定非営利活動法人トイボックススマイルファクトリー(事例7)の活動は,「いい大学に入って,いい会社に入る」ための教育の在り方に疑問を感じたことに端を発し,特定非営利活動法人と行政との連携・協働の下,緊急相談は365日24時間対応,施設内での活動や出席日数は在籍校での出席日数に反映するなど,新しい発想による教育活動の展開につながっている。

事例4

自立した女性たちの職業意識が地域ブランドを確立(まちづくり・観光)

豊見城市ウージ染め協同組合(沖縄県豊見城市)

■活動内容

沖縄特産サトウキビの茎や葉,穂を原料として抽出された色素を染料(ウージ染め)として利用し,服地や工芸品など各種の商品開発を実施。

■活動の経緯・特徴

活動は,平成元年の豊見城商工会による地域小規模事業活性化推進事業のアイディア募集に数人の地元女性が参加したことをきっかけに始まった。その後,メンバーが,地元自治体や関係機関の応援を受け,先染め,後染め等の講習会の開催によって技術者を育成し,6年に協同組合を設立し,現在ではウージ染めの技術を通して職業として安定した収入を確保したいという意識を持った女性達の団体となっている。

特産品としてサトウキビを使ったアイディアは秀逸であり,現代的な色合いと伝統的な色合いが調和した色彩は人気が高い。技術的には勉強段階であることを意識しながらも,現在,市場のニーズを取り入れ,仲間同士が厳しく評価しデザイン開発や商品開発,後継者育成を進めており,技術を磨き合っている。

サトウキビ生産業者や染色業,デザインや商品開発の専門家との勉強会を中心とした交流活動,地元行政や商工会やJA等関係団体とのネットワークを強化している。これまでに国内の多くの都市で商品展示販売会も開催されている。

ウージ染めが単なる趣味の集まりではなく,職業意識を持った女性達の強い結束によって自主的に運営されていること,そうした活動に行政など他の主体が賛同し,応援していることが活動を継続している一つの背景である。

■活動の効果

サトウキビを利用した染め物というアイディアが,様々な工夫を経て,沖縄ブランドとして認知されるまでになった。

また,サトウキビを使った染め物という斬新なアイディアは,サトウキビを利用した多くの特産品が生み出されるきっかけとなっている。

さらに,ウージ染めに携わることが,自立する女性の新たな職業として意識された。

豊見城市ウージ染め協同組合(沖縄県豊見城市)の写真

事例5

地元の生産物を活かした「食」と「農」との交流による農村の活性化(農林水産)

からり農産物直売所(愛媛県内子町)

■活動内容

第三セクター「内子フレッシュパークからり」の中の直売所(からり農産物直売所)において,会員が自ら栽培した農作物を直接,消費者に販売。

■活動の経緯・特徴

地域の主要産業である農業は,葉タバコや果樹が中心であったが,消費者ニーズの変化,国内外の産地の競合等や高齢化と様々な課題を抱えており,農地や集落の存続自体が危うい状況であった。

このような背景の下,平成6年,内子町の支援により,前身となる特産物直売所がオープンし,さらに,8年には,農産物直売所,レストラン,農産加工場,情報センター,農村公園が一体となった複合施設である内子フレッシュパークからりの中核施設として,からり特産物直売所が誕生した。現在,同直売所の会員は,6割以上が女性である。

直接消費者に販売することは,農家にとっても,消費者のニーズの把握が可能になること,農家の工夫がそのまま消費者に認められ成果につながることが,会員の意欲を引き出す要因となっている。

■活動の効果

従来の単作経営から消費者のニーズにあわせた少量多品目栽培や有機農業などの高付加価値化を行うなどにより,売上げが増加した。さらに,地域の農産物という身近な資源を活かした内子町の本事例は,全国からの関心も高く多くの視察者が訪れるようになった。また,知名度も向上し,客数は50万人を超え,近年では県外からの利用客が増加しているなど,地域の経済に大きな影響を与えている。

また,農家の女性が販売に携わることによって,女性が自ら管理する金銭ができ,家族に気兼ねなく旅行にいくことができるようになるなど女性の経済的な自立にも効果があった。

からり農産物直売所(愛媛県内子町)の写真

事例6

生活機能づくりのための市民事業融資により地域社会を改善(市民活動支援)

東京コミュニティパワーバンク(東京都)

■活動内容

市民による事業を応援し,新しい市民社会を創るために,市民自身が出資し,低金利・無担保で,自分たちの住む地域の福祉や環境保全といった社会的な事業への融資を実施。

■活動の経緯・特徴

平成15年に生活クラブ生協の組合員が中心となって,市民の多様な発意を地域づくりに活かそうとしたことがきっかけとなった。

40年前,生活クラブ生協を設立した当初は食を重視した社会変革の活動が中心であったが,水の安全性等環境についても関心を持ち,さらには男性中心の地域づくりへ疑問を持ったことから,女性の視点から地域社会を改善していこうとする活動に拡大していった。

さらに,そうした事業を通じ,地域社会づくりを進めるためには,事業を進める人達を経済的にバックアップすることが必要であると考え,「出資する人と融資を受ける人が共同で作り上げる」,出資する人も融資する人も「まちの作り手」として地域社会に貢献するための機能として,会員制による市民事業融資団体「東京コミュニティパワーバンク」の設立に至った。なお,代表者は女性である。

現在会員数は約570人(個人会員及び団体会員)で,平成16年から融資を開始し,これまでに12の事業に融資してきた。

会員制を採用しているのは,会員同士の助け合いという協同組合の考えに基づいている。地域社会への貢献という活動の方向性が確立され,課題解決に向けて地域の人々と認識を共有している。

融資制度としては海外の事例を参考に,資金を提供する側が資金の使われ方や金利までも自由に選択できる仕組みづくりと,社会貢献への市民意識の向上を目指そうとしている。

こうした活動が期待されている背景としては,地域社会を活性化する働き手を市民の側から応援しようとする理念,地域社会を大事にしたいという女性たちの働きに周囲が賛同し,様々な面で応援していることが大きい。

■活動の効果

従来,融資の受けづらい財政基盤の弱いNPO等の地域コミュニティの活性化等の取組に対し,資金的な援助が可能となるといった直接的な効果の他,営利的活動を行っている一般金融機関との差別化を明確にすることで,行政や市民に対して新たな市民金融の在り方を問題提起するきっかけとなっている。

東京コミュニティパワーバンク(東京都)の写真

事例7

新しい発想による「がっこう」作り(教育)

特定非営利活動法人 トイボックススマイルファクトリー(大阪府)

■活動内容

池田市の委託を受け,「池田市立山の家」という施設において,不登校・いじめ・ひきこもり・発達障害等様々な困難な状況を抱えた子どものための新しい「がっこう」を開設し,サポート活動を行っている。

■活動の経緯・特徴

代表者(女性)が,「いい大学に入って,いい会社に入る」ための教育の在り方に疑問を感じたことに端を発し,特定非営利活動法人を設立した。

市からの委託という全国でも珍しい形で,既存の教育の枠におさまらない子ども達のための新しい「がっこう」作りをスタートし,不登校,ひきこもり,LD(学習障害),ADHD(注意欠陥・多動性障害)等の発達障害等,子どもを取り巻く様々な困難な状況に関する相談活動を行っている。

緊急相談は365日24時間対応し,施設内(「がっこう」)での活動や出席日数を在籍校での出席日数に反映させる等の連携により,新しい発想による教育活動を展開している。

また,私立高校と提携してスマイルファクトリーハイスクールを開校し,高校卒業資格取得を可能にするなど,様々な主体との連携・協働の下,活動の幅を広げている。

■活動の効果

「子どもだけでなく,親も笑顔にするためのサポート活動」が評判を呼び,「池田市立山の家」においては,年間5,000件以上の相談やスクーリングが行われており,その件数は年々増加している。代表者は,その教育理念や活動内容により,各種講演会や雑誌,マスコミ等で取り上げられており,教育者としてだけでなく,社会起業家としても評価されている。

特定非営利活動法人 トイボックススマイルファクトリー(大阪府)の写真

(緩やかなつながりによる柔軟な活動の展開と調整能力の優れた「連携・協働型」リーダーシップ)

女性が中心となって活躍する地域活動においては,女性がネットワークの核となって地域の多様な主体と連携・協働しながら活動を展開していることが多い。例えば,行政,地域団体やNPO等の団体,異なる世代の個人を緩やかにつなぎ,それぞれの得意分野を活かしつつ,多様な視点を取り入れながら活動を展開していることが多い(第1-特-42図)。

このような緩やかなつながりを活かし,多様な主体と効果的,効率的に連携・協働するためには,一般的な組織におけるリーダーシップとは異なり,対等な主体間をつなぐリーダーシップが求められる。具体的には,多様な主体が活動の目的や意義などについて意識を共有し,その下に結束できるよう,活動の理念を明確に打ち出すリーダーシップときめ細かなコミュニケーション能力が必要とされる。加えて,それぞれの得意分野を活かす活動を展開するためには,その時々のニーズに応じることができるような,高い調整能力と的確で柔軟な対応能力が求められる。

緩やかなつながりは,一つの課題の解決にとどまらず,様々な課題の解決に応用可能であり,活動の幅もそれに応じて広がってくる(第1-特-43図)。

桑折町女性団体連絡協議会(事例8)の活動は,町や県等行政,商工会,自治会などと連携・協働することにより,まちづくりに関する様々な活動を展開している。

特定非営利活動法人納川の会(事例1(前掲))は,地元の行政,女性団体,外部の専門家,学生などのボランティア等をつなぐネットワークを基盤とし,それぞれの役割分担を明確にしながら,活動を継続している。

綾の自然と文化を考える会(事例9)の活動は,代表者が活動の核となって,町や県,森林管理局等の行政,地域の自然保護団体等市民団体,地域に住む人々と連携・協働して,照葉樹林を保護し,生活文化を育むためのプロジェクトを推進している。

八島おかみさん会(事例10)の活動は,様々な分野で活動する28団体や地域に住む人々と連携しながら,地元の特徴を活かしたお土産の開発や空き店舗を利用した事業等を実施し,商店街の活性化を図っている。

防火活動から発した大利根町婦人防火クラブ(事例11)の活動は,行政や地域内の住民との世代を超えた交流,他地域との交流を通じ,防火活動以外の美化活動等に発展している。

第1-特-42図 協働事業の分野 別ウインドウで開きます
第1-特-42図 協働事業の分野

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第1-特-43図 協働事業実施の意義 別ウインドウで開きます
第1-特-43図 協働事業実施の意義

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事例8

女性のネットワークが住みよいまちづくりに貢献(まちづくり・観光)

桑折町女性団体連絡協議会(福島県桑折町)

■活動内容

女性が議員や町長の役を務める町議会を模擬的に行う女性模擬議会の開催や男女共同参画センターと連携・協働した各種男女共同参画に関する取組のほか,イベント等の地域おこしに関する取組についても行政や商工会等各種団体と連携して実施。

■活動の経緯・特徴

平成9年,連合婦人会が発起人となり,桑折町の女性団体(10団体)が一堂に会し,主体的に学び実践に移すこと,ひいては町振興・活性化につながり,より安心して暮らせる住みよいまちづくりを行うことをねらいとして結成された。

協議会の構成員が主体となって,有限責任事業組合「元気こおり本舗」を設立し,使われなくなった蔵を「桑折御蔵」として再生し,そこで郷土食の販売等を実施している。また,協議会で養われた人的ネットワークを活かし,行政や商工会,自治会等の団体・組織と実質的に協力・協働することで,「桑折宿旅人気分ウォーク」「街道を活かしたまちづくりフォーラム」の実施などまちづくりや地域の活性化のための各種事業に結びついている。

協議会が行うこのような活動が,地域の男女共同参画意識の醸成に貢献している。

■活動の効果

桑折町の持つ「蔵」などの観光資源に着目することにより,「蔵を活かしたまちづくり」「街道を活かしたまちづくり」といったテーマでの様々な動きが生み出され,町が活性化している。こういった取組は,各種マスメディア等の注目を集めるようになってきた。

また,このような活動を行政や商工会等と協働する中で住民の男女共同参画意識が高まったほか,活動メンバーの中から2人が町議会議員に当選するなど,女性の政策・方針決定過程への参画が進んだ。

桑折町女性団体連絡協議会(福島県桑折町)の写真

事例9

照葉樹林と有機農業の里づくり(環境)

綾の自然と文化を考える会・オーガニックごうだ(宮崎県綾町)

■活動内容

代表は,食育に関する強い思いから,有機農業により栽培された野菜を利用したレストラン経営を行う一方,環境保全型農業を活かしたまちづくりへの取組や地元の照葉樹林を守り世界遺産とするための諸活動を実施。

■活動の経緯・特徴

会の代表(女性)が,平成5年に農業を開始,9年には,有機農業による野菜づくりを食育に活かすべく自作の野菜によるレストラン経営(オーガニックごうだ)を開始。また,自然に対する関心から,巨大鉄塔から樹林を守る運動を通じて,現在の,世界遺産とするための活動に発展していった。

このような食育や環境保全に関する代表の活動を核として,これに共感する人々が様々な活動を行うようになった。こういった活動が,行政,地域の自然保護団体や人々と連携して,照葉樹林と有機農業を核としたまちづくりに関する様々な取組(照葉樹林文化シンポジウム,九州地産地消推進シンポジウムの開催,綾川流域照葉樹林帯保護・復元プロジェクトなど)が生まれている基盤となっている。

■活動の効果

代表者のオーガニックへのこだわりや自然保護活動が町全体に波及し,それが照葉樹林と有機農業による里づくりとして実を結んでいる。こういった取組は,住民だけでなく全国からも支持されており,自然を活かしたまちづくりの成功事例として多くのメディアからも注目されるとともに観光客数も増加している。

綾の自然と文化を考える会・オーガニックごうだ(宮崎県綾町)の写真

事例10

交流と連携によって動き始めた商店街(まちおこし・観光)

八島おかみさん会(京都府舞鶴市)

■活動内容

八島商店街活性化のため,閉店時間の延長,ベンチの設置など消費者の声に応える取組や,地元の特徴を活かした「赤れんが倉庫群キーホルダー」等の開発,また,空き店舗を利用した事業などを実施。

■活動の経緯・特徴

八島商店街は,東舞鶴の中心商店街の一つであるが,大型店の出店やショッピングセンターの郊外出店等が相次ぎ,客足が遠のき,空き店舗が増えていった。

そのような中,平成3年に浅草おかみさん会の活動に触発され,「ダメでもともと,とりあえずやってみよう。お金は後からついてくる」の精神で創設した。

上記活動内容に掲げたもの以外にも,舞鶴市内の商店,施設等を掲載したタウンガイドの作成(3回)や,イベントなどでの舞鶴PR活動,地元の商店街事業への協力など,まちの賑わいづくりを積極的に実施しているが,特に,平成17年に開設した「八島いっぷく亭」は,空き店舗を活用し,素人のシェフが,日替わりでランチを提供するというユニークなものである。

■活動の効果

おかみさん会の活動により商店街の一体感が生まれ,商店街が活気付いた。特にいっぷく亭は,各種マスメディアに取り上げられ,市外からの客も増加し,通りが活気付いた。

また,シェフ同士,シェフと客,シェフと商店主,客と商店主などの新たな人と人との交流なども活発になり地域によい影響を与えている。

八島おかみさん会(京都府舞鶴市)の写真

事例11

多様な主体との連携により火災ゼロを維持(防災)

大利根町婦人防火クラブ(埼玉県大利根町)

■活動内容

防災・防火活動については,防火訓練だけでなく,防災の面で子どもへの防災教育,火の用心のパンフレットを家庭に配布するなどのきめ細かな防火活動等を行う他,家庭訪問と併せて一人暮らし高齢者のケアなども実施。

■活動の経緯・特徴

防災・防火活動は昭和22年のキャサリン台風以後,地域の防災意識が高まったのがきっかけとなり,農村地域の女性達が中心となって,スタートした。

活動の初期段階では女性は話合いにもあまり参加できなかったが,地域内の男性の働き手も少なくなり,従来から家事等で火を扱うことが多かった女性を中心に防火意識が高まり,女性中心の防火活動を行うようになった。

現在では,女性約90人の組織となっており,参加している世代構成は20歳代の若手から70歳代までと幅広い。

特色の一つは,防災・防火活動にとどまらず,地域に密着したメリットを生かし,地域の福祉活動や美化活動を併せて実施している点である。また,行政や他地区との交流も活発である。

■活動の効果

地域全体の防火への意識が高まっているほか,防火という同一目的による地域間の交流や世代間も含めた住民同士の触れ合いができており,地区内の火災件数は,活動開始以来ゼロを維持している。

また,地区内在住の世代を超えた女性同士の交流として,防火活動以外にも,美化活動やその他の活動を展開している。

大利根町婦人防火クラブ(埼玉県大利根町)の写真

(意識を変える,行動を変える,人を育てる活動)

女性が主導する地域に密着した活動は,人々の意識を変え,行動を変え,そうした過程を通じて人々を育成する。地域に根ざした地道な活動を継続することによって,男女共同参画に関する意識,地域の伝統や環境を守る意識,子育てに関する意識等が地域に浸透していく。そうした意識の変革は,人々の行動に変化をもたらす。

例えば,男女共同参画意識の浸透は,家族等を含め,周囲に活動の意義を認めさせ,それに携わる人々を支援するという行動を生み,それが更なる活動を生み出す。特に,身近な地域で世代間の交流が深まることにより,異なる世代間の相互理解が進み,幅広い影響をもたらす。加えて,実践的活動を通じて女性が力をつけ,政策・方針決定過程への参画が拡大されるという人材育成機能は重要である。前述したように,ボランティア活動の目的を「自分自身の成長のため」と考える女性は多い(第1-特-5図(前掲))。実践的活動に携わった人々の中の一部は,地方議会議員や審議会委員,農業委員等,地域における政策・方針決定過程に参画している。

例えば,女性農業機械オペレーターグループ「グリーンズ」(事例12)の活動は,「男性が機械に乗って女性はその横で補助的な作業を行う」という従来の農業のイメージを変え,新たな農業の可能性を引き出した。

絵本コミュニティKURABU(事例13)は,保育園,保健センター,小学校,高齢者施設,病院等,多くの地元の施設と連携し,活動を展開することによって,世代を超えて,地域における子育てや文化活動の重要性についての認識を深め,地域に住む人々の子育てや文化活動に対する姿勢を積極的にするという効果をもたらしている。

特定非営利活動法人スペースふう(事例14)の活動は,イベントの際に大量に出る使い捨て食器のごみの山に対する問題意識から端を発し,使い捨て食器の代わりとなるレンタル食器の提供等を通じ,地元住民の環境意識や文化意識の向上に役立っている。

桑折町女性団体連絡協議会(事例8(前掲))や特定非営利活動法人スペースふう(事例14(前掲))は,町議会議長や議員を輩出している。

事例12

女性の活躍が地域の農業のイメージを一変(農林水産・食育)

女性農業機械オペレーターグループ「グリーンズ」(福岡県苅田町)

■活動内容

女性8名が,農耕用大型特殊免許や農業機械士の資格を取得し,農作業の受託や各種農産物の栽培を実施している。また保育園児への農業体験(野菜づくり)や小学生への食育活動や地域のイベント活動への参加なども実施。

■活動の経緯・特徴

苅田町は,農業や漁業が近代工業化の中で大きく地位を後退させた地域である。高度経済成長期以後,農業就業人口や農地が減少する中,第2種兼業農家が増加し,男性が農業を行うのは休日のみとなった。

一方,農業機械を使った作業だけは男性中心となっていた。そのような地域性と背景の下,行政からの提案で女性の農業機械の免許に関する講習会が設けられたことがきっかけとなり,大型特殊免許等の資格を持つ女性たちが,「地域農業における女性の地位向上」を目的とした本組織を設立。

休耕田を利用して農作物を生産し,高齢農業者などが管理できなくなった圃場を中心に,農作業を受託するなど,自主財源を確保しながら,女性が主体となって農業を担う一つのモデルとして,また地域農業における女性の地位向上を通じての男女共同参画の推進に大きな役割を果たしている。

また,グリーンズで紫芋を栽培し,町内の和洋菓子店では提供された紫芋を原料に「きんつば」,「ようかん」等を製造し,好評を得ている。将来的には,グリーンズを主体とした農産物の加工所や,物産直売所の運営も視野に入れている。

JAや行政担当者との連携を行っており,特に行政の理解と支援は会にとっての支えとなっている。

■活動の効果

細やかな心遣いのある作業が好評となり,地域住民からの農作業受託も広がりをみせており,農業従事者が減少する中,農地の保全ひいては地域の農業振興に大きく貢献している。

また,食育活動により子どもたちが朝食をとるようになったという効果もあった。

さらに,農業は女性にも適した職業であるとの認識に立つ活動により,地元住民の意識変革が進み,「男性が機械に乗って女性はその横で補助的作業を行う」という従来の農業のイメージが変わってきている。

女性農業機械オペレーターグループ「グリーンズ」(福岡県苅田町)の写真

事例13

絵本を通じた子育てと世代間交流(子育て・介護)

絵本コミュニティKURABU(北海道)

■活動内容

保育園,保健センター,小学校,高齢者施設,障害者施設・フリースクール,家庭文庫などで絵本の読み聞かせを行うほか,読み聞かせボランティアのための勉強会を開催。また,一般の人たちも集めてフォーラムを開催したり,目が不自由な方たちのために絵本を点訳したり,絵本で語る平和のイベントや親子で絵本を作る講座を開催。

■活動の経緯・特徴

「絵本の読み聞かせに触れて育った子どもは人の話をきちんと聞ける子どもになり,また想像力も豊かになる」という信念の下,絵本の読み聞かせなど絵本に関する活動をしているボランティア同士の交流がきっかけとなり,平成15年に設立した。現在,会員数は80名以上となり,事務局のある札幌市以外にも活動範囲が広がっている。なお,会の代表及び会員の約8割は女性である。

保育園等の施設とは密接に連携を図っており,施設の側と読み聞かせのボランティアで情報の共有を図っている。また,活動参加者のそれぞれの興味のある分野ごと(点字,手作り絵本,紙芝居など)に意見交換のできる分科会(交流会)を行なっており,より深い自己研鑽が可能となっている。

■活動の効果

絵本の読み聞かせを通して親と子どもが向き合い,地域での読書活動が活発になった。

また,文化活動への関心,地域の世代間交流が深まるとともに,地域の子育てへの気運が高まっている。

絵本コミュニティKURABU(北海道)の写真

事例14

レンタル食器で住民の環境意識が向上(環境)

特定非営利活動法人 スペースふう(山梨県増穂町)

■活動内容

ごみを削減し,地域の環境保全を図るため,イベント等の飲食に使用される使い捨て食器の代わりとなるレンタル食器(リユース食器)を提供する環境コミュニティ・ビジネスを展開。

■活動の経緯・特徴

平成11年に環境問題に関心をもつ女性が集まって,古着や牛乳パックの回収などを行う任意団体「ふう」を設立。その後,イベントの際に大量に出る使い捨て食器のごみの山に問題意識を持ち,15年からレンタル食器の事業を開始した。

運営は,ボランティアに頼るだけでなく,活動に見合った報酬と経営の安定に注意をし,安定的に仕事を受注できる体制づくりに努めている。また,関係団体8団体による「ふうネット」を組織し,他地域での同事業の展開とノウハウの伝授も行っている。

サッカーの試合等各種イベント時におけるリユース食器のレンタル事業は,高く評価されており,マスコミ等にも取り上げられているほか,経済産業省の環境コミュニティ・ビジネス事業として採択されている。

■活動の効果

本団体は,リユース食器に関するネットワークの拠点として,他の市民団体に支援を行うことにより,その取組が,山梨県内のみならず他地域にも波及しつつある。

また,地元住民の環境意識の向上につながった。

なお,理事長,副理事長が町議会議長,町議会議員となった。

特定非営利活動法人 スペースふう(山梨県増穂町)の写真

(活動の成果や活動に対する積極的な評価による活動の持続性,発展性)

活動やその成果が周囲から認められ,評価され,メディアに取り上げられ,行政等から表彰,後援等を受ける。このような活動に対する積極的な評価が活動を持続させ,活性化し,更なる活動の発展をもたらす。

例えば,銀山温泉の女将会(事例15)の活動によって,日本の伝統美を見直そうというリピーターも増え,観光客の増加という好影響を地域に与え,メディアで取り上げられる機会も増えた。これが,観光地としての魅力づくりにつながる更なる活動を生むという好循環をもたらしている。

綾の自然と文化を考える会(事例8(前掲))の活動は,全国から視察団が訪れたり,イベントが開催されたり,集客力を持った町へと変貌を遂げ,経済的にも好影響を与えており,更なる活動の展開につながっている。

杉並区馬橋地区ご近所付き合い広目隊(事例16)については,地域の空き巣やひったくりが大幅に減少し,そのことから他地域からも注目されるようになり,空き巣に狙われた町というイメージの払拭につながった。また,平成19年に警視総監賞を受賞したことも活動の推進力になったと考えられる。

事例15

外国出身者を中心とした女将達による日本の伝統美の追求(まちづくり・観光)

銀山温泉の女将会(山形県)

■活動内容

橋のごみ拾いや花を植えるなどの温泉街の美化活動や観光イベントへの参加,研修会等を行うほか,温泉組合等と連携し,銀山温泉のまちづくりに参画。

■活動の経緯・特徴

旅館同士のコミュニケーションを図ろうと,代表の外国出身の女将が,平成8年に他の女将を加え3人でスタートしたのが設立のきっかけである。現在は当該女将を含む旅館女将など女性約10名で活動している。

橋のごみ拾いや花を植えるなどの美化活動や観光マップづくりなど身近なところから魅力ある観光地づくりを実施してきた。

さらに,平成13年からは,温泉旅館関係者を主体とした「湯のまちづくり委員会」が発足。女将会は,同委員会や温泉組合等との連携・協働の下,「おもてなしの心で魅力的な温泉まち」「日本一浴衣の似合う温泉街」を目指し,ハード(車両乗り入れの制限や電線地中化など)・ソフト面(研修会など)からの取組に参画している。

女将会では,周辺地域の歴史や文化の勉強会を開催するなど,自らも伝統文化の良さの理解を深める自己研鑽をすることで,単にハードのみに頼らない銀山温泉ならではの魅力の発揮に貢献している。

また,女将会が,日々の業務の忙しさの傍らでこうした連携ができている要因として,一人ひとりの女将が楽しんで仕事をしていること,啓発し合っていることが挙げられる。

■活動の効果

日本の伝統を活かした温泉まちづくりは,観光客,特に銀山温泉ならではの伝統美,おもてなしの心に惹かれたリピーターや外国人観光客が増えるなど地域の活性化に好影響を与えている。

事例16

町ぐるみの防犯活動で空き巣が激減(防災・防犯)

杉並区馬橋地区ご近所付き合い広目隊(東京都杉並区)

■活動内容

蛍光色の目立つユニフォームであいさつをしながら練り歩く「あいさつパトロール」など毎日パトロールを行うほか,ごみ拾いなどの環境美化活動等を実施。

■活動の経緯・特徴

「東京でも有数の空き巣に狙われた町」の汚名を払拭するために立ち上がったボランティア団体である。平成15年,テレビ取材協力をきっかけに,住民の自主的な防犯パトロール活動を発足,「ご近所付き合い広目隊」が結成された。

毎日の防犯パトロールを継続することが一番の効果につながるとの認識の下,活動を行っている。

パトロールに参加するボランティアは,女性が多く,若い世代にも積極的に勧誘している。

特に,犯行の手口や対策などの情報をチラシにして狙われやすいアパートの住民に周知するなど警察や区との「三位一体」による連携により,最新の情報をもとにした効果的な活動を行っている。

また,もちつき大会,お花見会やバザー等の地域に根ざした行事等を積極的に開催・参加しているのも特色で,毎日実施するパトロールとあいまって,住民の参加・認知度は高い。

このような活動を継続して行うことが,「ご近所」同士の信頼関係の醸成につながり,それが町ぐるみで防犯意識を高めるという好循環を生み出している。

■活動の効果

本隊の活動により,馬橋地区の空き巣,ひったくりは激減し,ついに空き巣ゼロを記録した。その後も空き巣の数はごくわずかで,「空き巣に狙われた町」というイメージは払拭され,平成19年には「警視総監賞」を受賞した。

さらに,このような取組のユニークさと実績が,他地域における地域の防犯活動のモデルとして全国的に注目されている。

また,ご近所が顔見知りになったり,近所付き合いや世代間の交流が深まるなど住民同士のつながりの強化にも効果があった。

杉並区馬橋地区ご近所付き合い広目隊(東京都杉並区)の写真