6.国際機関等への日本の女性の参画状況

4 『男女共同参画ビジョン-21世紀の新たな価値の創造-』(抜粋)

第1部 男女共同参画社会への展望

1.男女共同参画社会の基本的な考え方

(2) 男女共同参画社会の理念と目標

政策・方針決定過程への参画による民主主義の成熟
 社会の構成員が等しく政策・方針決定過程に参画し、その利益を享受するとともに責任を負うことが民主主義の基本である。政策・方針決定過程における男女共同参画は、社会の構成をより正確に反映し、民主主義の成熟を促すことによって、バランスのとれた社会の形成に寄与する。

第2部 男女共同参画社会への取組

2.職場・家庭・地域における男女共同参画の確立

(2) 農林水産業、商工業等の自営業における男女共同参画の促進

〔具体的な取組〕

<5> 農林水産業、商工業等の自営業において女性の果たしている役割の重要性にてらして、地域の生産・生活に関するあらゆる方針決定の場において、今後、女性の参画を飛躍的に高めていくことが必要である。

農林漁業者、商工業者が組織する農業協同組合、漁業協同組合、商工組合等に、女性が正組合員として加入することを一層促進すべきである。また、女性の意思を組合の運営に反映させるため、女性の役員への登用や方針決定過程への女性の参画などについて具体的な実現方法を組合ごとに検討し、早急に取り入れることが望ましい。農業委員、土地改良区の役員等にも女性を積極的に登用することが望ましい。さらに、農山漁村の地域開発事業等の計画策定についても、女性が委員として関与し得るような方策を積極的に検討する必要がある。

3.政策・方針決定過程への男女共同参画の促進

(1) 政策・方針決定過程への女性の参画の促進

〔取組の視点〕

政策・方針決定過程において女性が男性と平等に参画することは、民主主義の要請であるとともに、女性の関心事項が考慮され、政策に反映されるための必要条件でもある。このため、国際社会においては、1990年(平成2年)5月、国連経済社会理事会で採択されたナイロビ将来戦略勧告が「意思決定レベルの地位における女性比率を1995年までに30%にする」ことを目標とし、北欧諸国などは既にこの水準を上回る女性の参画を実現している。我が国では、女性の社会参画が急速に進んでいるにもかかわらず、政策・方針決定過程への女性の参画は、公的分野・私的分野を問わず、遅れた状況にある。

国や地方公共団体においては、施策の対象の半数を女性が占め、また、同様に施策の影響も受けることから、特に政策・方針決定過程に女性が積極的に参画する必要がある。このような観点から、国は、1977年(昭和52年)以来、目標を定めて審議会等委員への女性の積極的参画を図り、1995年(平成7年)度末には、新国内行動計画(第1次改定)の目標である15%を達成し、新たな目標を設定したところである。しかし、ナイロビ将来戦略勧告の目標達成期限は既に経過していることなどを考慮すれば、更なる努力が求められる

また、民間の企業や団体においては、方針決定過程へ女性を差別することなく登用することが要請される。その際、方針決定過程に多様な背景をもった人が参画することによってもたらされる新たな発想や価値観を通じて、組織全体に有形・無形のメリットが及ぶことに積極的に目を向けるべきである。

政策・方針決定過程への女性の参画の促進に当たっては、公的分野・私的分野を問わず現状や改善すべき点について定期的に把握・分析しながら計画的な取組を進めることが重要である。今後、飛躍的な女性の参画を促すためには、女性の参画が進んでいる諸外国の例も参考としつつ、各機関や団体が、分野に応じた適切なポジティブ・アクションに自主的に取り組むことが効果的と考えられる。同時に、女性のエンパワーメントや人材に関する情報の重要性も忘れてはならない。

男女共同参画社会の実現に向けて、政策・方針決定過程への女性の参画の促進は格段の努力が必要とされる分野であることを念頭に、今後とも社会のあらゆる分野で取組が行われなければならない。

〔具体的な取組〕

<1> 内閣は行政における最高の意思決定機関であり、女性が閣僚に積極的に登用されることを期待する。これにより、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の円滑かつ効果的な推進を図ることを目的とし全閣僚により構成される男女共同参画推進本部への女性の参画が確保できる。

また、国会及び地方議会における活動への女性の参画が進み、女性の議員が増加することが期待される。列国議会同盟(*)の行動計画や第4回世界女性会議で採択された行動綱領が求めているように、政党においても、政策・方針決定過程への女性の参画促進に鋭意努めることが望まれる。

<2> 国の審議会等委員への女性の参画に関して、新国内行動計画(第1次改定)の目標が達成されたことは、明確な目標を設定し絶えず現状を把握・分析しながら取組を進めることの有効性を示すものである。引き続き国の審議会等委員への女性の参画を促進し、政府の新たな目標(およそ10年程度の間に30%。2000年(平成12年)度末までのできるだけ早い時期に20%)について、期限の到来を待たずに達成するように努めるべきである。その際、定期的に各審議会の現状を調査・分析・公表しながら取組を進める必要がある。また、審議会等委員への女性の参画については、引き続き女性委員のいない審議会等の解消、団体推薦による委員への女性の参画促進、幅広い分野からの女性の参画などに留意すべきである。さらに、法律に基づいて任命・委嘱される委員、国が委嘱する各種のモニター等についても、女性の参画を促進するための具体的な取組が必要である。

ほとんどの都道府県・指定都市においても、審議会等委員への女性の参画について目標値と達成期限を設定して取組が進められているが、目標達成に向けて今後とも継続して取り組まれることが望ましい。さらに、このような取組が市区町村にも普及し強化されることが望ましく、そのための都道府県の支援と助言を期待したい。

<3> 国は、引き続き女性公務員の採用、登用、職域拡大及び能力開発に努めるべきである。その際、採用、昇進等の状況を定期的に調査、公表し、改善が必要とされた課題への取組を示した計画(公務員の採用・登用等に関する男女共同参画計画(仮称))を策定することを検討すべきである。また、地方公共団体においても、同様の取組が期待される特殊法人など政府関係機関や、大学を始めとする高等教育機関及び研究機関においても、女性の一層の参画が望まれる。

<4> 民間企業においても、女性の登用に積極的に配慮することが望まれる。また、経営者団体や労働組合を始めとする民間機関や団体においても、方針決定過程への女性の参画を促進することが切に望まれる。

<5> 政策・方針決定過程への女性の参画を一層促進するための環境整備として、女性の人材に関する幅広い情報を収集し、関係者が随時活用できるようなデータベースを構築すべきである。また、地方公共団体のデータベース整備を積極的に支援するとともに、そのネットワーク化についても検討すべきである。地方公共団体や民間団体等が行う女性リーダーの養成についても、積極的な支援を行うべきである。

(*) 列国議会同盟(IPU:Inter-Parliamentary Union):1889年設立の各国の国会議員による国際団体。1996年(平成8年)4月現在135か国が加盟。IPU日本議員団は衆参全議員で構成されている。1994年 (平成6年)3月、パリで開催された第154回評議員会で「政治活動における男女間の不均衡是正のため のIPU行動計画」を採択。

5.地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

(2) 「平等・開発・平和」の達成に向けた積極的貢献

〔具体的な取組〕

<2> 平和を推進するための国際機関や国際会議において、紛争の平和的解決・予防外交・平和維持のための活動等に、女性の積極的参画を促進すべきである。その際、特に意思決定過程への参画を重視すべきである。あわせて、これらの活動に当たる女性の人材の育成を図る必要がある。

また、難民の約8割が女性と子どもであるので、難民に対して国際的保護や援助を与え難民問題の恒久的解決を図っている国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や、児童の生存及び保護を図り長期的かつ持続可能な人間開発を目指している国連児童基金(UNICEF)などへの積極的貢献を行うべきである。