「共同参画」2020年7月号

トピックス1

「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査(第5回)」の概要と結果
国立女性教育会館研究国際室

1. 調査の概要

「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」では、平成27年以降、毎年10月に追跡調査を行っており、令和元年に第5回目の調査(入社5年目時点)を実施しました。

この調査は、同一個人に同一質問を繰り返し尋ねる「パネル調査」であり、調査対象者の意識や行動の「変化」を精緻にとらえることが可能です。

■調査対象

第1回調査の対象は、協力企業17社に平成27年に入社した新規学卒者(大学・大学院卒)2,137人(女性836人、男性1,301人)。 企業17社は、正社員が3,000人以上(10社)、1,000人以上2,999人以下(4社)、800人以上999人以下(3社)の大企業で、金融業1社、建設業1社、コンサルタント業1社、サービス業7社、商社・卸業1社、通信・ソフト業2社、製造業4社(本社は東京15社、埼玉1社、大阪1社)。

■有効回答数・回答率

第5回調査(入社5年目):726人(女性269人、男性457人) 女性58.0%、男性46.7%

■調査方法

WEBアンケート調査

2. 主な結果

■女性の管理職志向と職場環境
(入社1~5年目の全調査の回答者)

  1. 管理職を「目指したい」もしくは「どちらかというと目指したい」と回答した人は、男性80.3%に対し、女性44.9%でした(図省略)。第一回調査から一貫して、女性の管理職志向は男性より顕著に低いことが確認されました。
  2. 一方、重要な点として、「男性の方がリーダーに向いている」と思う人は、男女ともに少数派です。
    「リーダーには男性の方が向いている」について
    「そう思わない」もしくは「どちらかというとそう思わない」と回答した人は、1年目で男女ともに7割程度、5年目にはさらに増えて8割です。
  3. つまり女性は、「男性の方がリーダーに向いている」と考えているわけではないものの、自分自身が管理職を目指すことには消極的といえます。男性の側も「男性の方が向いている」と思う傾向もなく、女性がリーダーになることを阻んでいるわけではありません。にもかかわらず、女性が管理職を目指そうとしない理由のひとつとして、いまだに女性が管理職を目指しにくい職場環境であることが推測されます。
    たとえば管理職志向がない女性は、管理職志向がある女性に比べて「上司はあなたの育成に熱心である」「職場では自分は期待されている」「将来のキャリアにつながる仕事をしている」と感じておらず、「自分からアイデアや企画を提案」している割合も低いことがわかりました(図省略)。また管理職志向がない女性がその理由として最も多くあげたのは、5回の調査を通じて「仕事と家庭の両立が困難になるから」でした。

【設問】リーダーには女性より男性の方が向いている
【設問】リーダーには女性より男性の方が向いている

■育児期の理想の働き方

育児期においても、女性の管理職志向は低い一方、育児期の理想の働き方については、男女ともに変化がみられました。

  • 「就学前の子どもがいるときの理想の働きかた」について女性の場合、1年目は「短時間勤務」が1番多い回答でしたが、5年目には「時間の融通がきくフルタイム」に変化しています。男性においても「急な残業もあるフルタイム」や「残業のないフルタイム」が減少し、「時間の融通がきくフルタイム」が全体の約6割へと大きく増加しました。
  • 「子どもが3歳くらいまでは、母親は仕事を持たずに育児に専念すべきだ」について、「そう思う」もしくは「どちらかというとそう思う」と回答した人は、第1回調査では女性44.6%、男性50.4%でした。しかし第5回調査では、女性26.8%、男性28.7%に減っています(図省略)。「家族を経済的に養うのは男性の役割だ」についてのそれも、女性36.3%、男性57.5%(第1回調査)から女性26.1%、男性34.5%(第5回調査)に減少しました(図省略)。ここから、「育児も仕事も夫婦一緒に」という意識が若手社員のなかで高まっていることが推測されます。
  • このような意識の変化が、男女ともに「時間の融通がきくフルタイム」で育児と仕事を両立したいと考えるようになった一因と考えられます。

【設問】「就学前の子どもがいるとき」の理想の働き方
【設問】「就学前の子どもがいるとき」の理想の働き方

※本稿の分析対象は、入社1~5年目のすべての調査に回答した女性209人、男性326人である。このため、本文にある第5回調査(入社5年目)の有効回答数(女性269人、男性457人)より少なくなっている。

※本調査の詳細については、https://www.nwec.jp/about/publish/2019/ecdat60000006v2p.htmlをご覧ください。

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