「共同参画」2018年8月号

行政施策トピックス1

「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」(第三回調査)の概要と結果
国立女性教育会館研究国際室

1.調査の目的と特色

国立女性教育会館では、「生涯を見据えた早期からのキャリア形成支援を、男女共同参画の視点に立って行うための方策を探ること」を目的として、平成27年に民間企業の正規職についた男女(大学・大学院卒)を5年間追跡する「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」を行っています。平成27年の第一回調査(入社1年目時点)、平成28年の第二回目調査(入社2年目時点)に引き続き、平成29年に第三回目の調査(入社3年目時点)を実施しました。

この調査は、同一個人に同一質問を繰り返し尋ねる「パネル調査」です。このため調査対象者の意識や行動の「変化」を精緻にとらえることが可能です。

第三回調査結果について、第一回・第二回調査結果と比較しつつ検証することで、「入社1年目から3年目にかけての初期キャリア期」に生じた変化についていくつかご紹介します。

2.第三回調査の概要

本調査の概要は、以下のとおりです。

1) 調査対象:調査協力企業17社に、平成27年に入社した新規学卒者(大学・大学院卒)のうち、第三回調査時点での退職者などを除く1825人(女性690人、男性1135人)。この17社は、正社員が3000人以上(10社)、1000人以上2999人以下(4社)、800人以上999人以下(3社)の大企業で、金融業1社、建設業1社、コンサルタント業1社、サービス業7社、商社・卸業1社、通信・ソフト業2社、製造業4社(本社所在地は、東京15社、埼玉1社、大阪1社)。

2) 調査方法:WEBアンケート調査

3) 回答数:1092人(回答率59.8%)、うち有効回答数1090人

4) 有効回答者の内訳:女性409人、男性681人

5) 調査実施期間:平成29年10月2日~平成29年10月21日

3.主な結果

1) 成長実感と仕事の将来性

男女ともに、「担当業務を遂行するための知識・技能」が「ある」(=「十分にある」+「ある程度ある」)と思う人が増えています。1年目は女性25.6%、男性24.2%でしたが、3年目には女性48.7%、男性50.6%となりました。仕事ができるようになってきた、という実感が年々高まっています(図1)。

図1 担当業務を遂行するために必要な知識・技能の自己評価


しかし今の仕事に将来性を感じる人は減っています。「将来のキャリアにつながる仕事をしている」について、「あてはまる」もしくは「どちらかというとあてはまる」と回答した人は、1年目は女性84.2%、男性87.6%です。しかし3年目には、女性61.4%、男性71.6%に下がりました。なお毎年、女性の方が「あてはまる」割合が少ないことから、女性は男性ほど将来性を感じていないといえます(図2)。

図2 将来のキャリアにつながる仕事をしている


2) 職場環境と仕事の将来性

では、将来性を感じられる仕事であるか否かは、どのような要因に影響されるのでしょうか。「将来性あり」群(=「将来のキャリアにつながる仕事をしている」について「あてはまる」もしくは「どちらかというとあてはまる」と回答)と「将来性なし」群(=「将来のキャリアにつながる仕事をしている」について「どちらかというとあてはまらない」もしくは「あてはまらない」と回答)を比較すると、「将来性あり」の方が「職場では、仕事に必要な教育・訓練の機会が充実している」「仕事について不安や悩みなどがあったら、相談できる同僚・仲間が職場にいる」「上司はあなたの育成に熱心である」「自分からアイデアや企画を提案している」といった質問に肯定的です(紙幅の都合上、図は省略)。例えば「職場では、仕事に必要な教育・訓練の機会が充実している」について「あてはまる」もしくは「どちらかというとあてはまる」と回答した割合(第三回調査、男女計1089人)は、「将来性あり」79.7%、「将来性なし」54.7%でした。

しかし職場環境に対する評価は、年々下がっています。男女ともに、「教育・訓練の機会が充実している」「相談できる同僚・仲間がいる」「上司が自分の育成に熱心」と思う人は減少傾向です(紙幅の都合上、図は省略)。たとえば「職場では、仕事に必要な教育・訓練の機会が充実している」について「あてはまる」もしくは「どちらかというとあてはまる」と回答した割合は、第一回調査(女性474人、男性781人)では女性87.6%、男性85.9%でした。しかし第三回調査(女性409人、男性680人)では、女性73.1%、男性70.7%と15%減です。

「自分からアイデアや企画を提案している」についてのみ、男女ともに増加します。しかし女性は、男性ほど多くありません(図3)。

図3 自分からアイデアや企画を提案している


以上のように第一回調査~第三回調査の結果から、仕事に将来性を感じる人は男女ともに減少傾向であり、女性の方が将来性を感じていないことがわかりました。将来性ある仕事を得るために必要な職場環境に対する評価は、男女ともに年々低下しているようです。特に女性に対して、アイデアや企画を提案する機会がより開かれることが望まれます。

本調査の詳細については、https://www.nwec.jp/research/carrier/copy_of_2016.htmlをご覧ください。

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