「共同参画」2018年6月号

特集1

「男性の育児休業取得促進事業(イクメンプロジェクト)」の取組について
厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課

1 男性の育児休業取得の実情

男性の育児休業取得率は長期的には上昇傾向にあるものの、現状では5.14%(厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査」)にとどまっており、育児休業をはじめとする両立支援制度を利用する男性は少ない状況です。

しかし一方で、3歳未満の子どもを持つ20~40歳代の男性正社員のうち、育児休業を利用したかったが利用できなかった人の割合は3割にものぼり、実際の育児休業取得率5.14%との乖離が生じています。また、育児休業を利用しない理由として、業務が繁忙で職場の人手が不足していた、育児休業を取得しづらい雰囲気だった、など職場の要因が理由の上位に多く挙げられています(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査」)。

勤労者世帯の過半数が共働き世帯となっている中で、男性も子育てができる環境づくりが求められており、政府目標である2020年の男性の育児休業取得率13%の達成を目指し、男性の育児休業取得促進に取り組む企業等を支援する必要があります。

男性の育児の促進は、「育児をしたい」という男性の希望の実現だけでなく、配偶者である女性の継続就業や第2子以降の出産意欲にも良い影響があるという点で、大変重要です。

 また、企業にとっても、ワーク・ライフ・バランスの実現は、優秀な人材の確保・定着につながる重要な経営戦略の一つといえます。男性の育児休業の取得や育児短時間勤務の利用等を契機に、職場内で業務の改善や働き方の見直しが行われることで、生産性の向上等も期待できます。

図表1 育児休業取得率の推移


図表2 育児休業制度等の取得状況


図表3 育児休業を利用しなかった理由(複数回答)


2 イクメンプロジェクトとは

男性の育児休業取得を進めるに当たっては、職場において、育児休業を取得しやすい環境を整えることが必要です。また、配偶者出産休暇等の育児目的で利用できる休暇制度など、育児休業以外の制度を利用した男性の育児の促進も重要です。

厚生労働省では、育児を積極的に行う男性「イクメン」を応援し、男性の育児と仕事の両立を推進する「イクメンプロジェクト」を平成22年度から実施しています。プロジェクトでは、男性の育児休業取得、仕事と家庭の両立、育児への参画を促すため、積極的に育児をしている・これからしたい男性や、企業・自治体、学生等に向けた様々な事業を実施しています。

その主な事業である「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」の実施、企業向けセミナーの開催、参加型の公式サイトについて、ご紹介します。

図表4 イクメンプロジェクトロゴ


3 「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」の実施

【これまでの取組】

「イクメンプロジェクト」では、平成25年度より「イクメン企業アワード」を、平成26年度より「イクボスアワード」を実施しています。

「イクメン企業アワード」は、男性の育児と仕事の両立を推進している企業を表彰するものです。5回目の平成29年度は、グランプリに2社、特別奨励賞に2社が選ばれました。いずれの企業も男性が育児しやすい職場環境づくりに積極的に取り組み、育児休業の取得実績も高いことが評価されました。

「イクボスアワード」は、部下の育児と仕事の両立を推進するために配慮し、部下の育児休業取得や育児短時間勤務の利用などを奨励するとともに、部署全体の働き方の見直しや工夫をし、また自らも仕事と生活を充実させている管理職=「イクボス」(男女不問)を表彰するものです。4回目の平成29年度は、グランプリ2名、特別奨励賞2名が表彰されました。受賞された管理職の方々は、部下の仕事と育児の両立を支援する取組を行いながら、自ら率先して定時退社や年次有給休暇の取得を実践し、ワーク・ライフ・バランスの大切さを示しながら職場環境づくりを行っていることが評価されました。

これまでの受賞企業・受賞者の取組をまとめた事例集は、イクメンプロジェクト公式サイトからダウンロードできます。

https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company/case/

【平成30年度の取組】

今年度も、「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」の募集をしています。今回、「イクメン企業アワード」に部門を新設します。「両立支援部門」では、これまでと同様、男性従業員の育児と仕事の両立を積極的に促進する企業を表彰します。育児休業だけでなく、配偶者出産休暇など育児目的休暇制度に関する取組も積極的に評価します。また、「理解促進部門」では、新たに、男性が家事・育児に積極的・日常的に参画することを促す企業の対外的な活動を表彰します。

https://ikumen-project.mhlw.go.jp/

イクメン企業アワード2017受賞者
イクメンアワード2017ロゴ


加藤勝信厚生労働大臣(前列右から2番目)、宮川晃雇用環境・均等局長(後列中央)、駒崎弘樹イクメンプロジェクト推進委員会座長(前列左から2番目)と受賞企業の皆さん

イクメン企業アワード2017(五十音順)
■グランプリ(2社)
ソニー株式会社(東京都)
ヒューリック株式会社(東京都)
■特別奨励賞(2社)
アクサ生命保険株式会社(東京都)
株式会社あわしま堂(愛媛県)

イクボスアワード2017受賞者
イクボスアワード2017ロゴ


宮川局長、駒崎座長、小室淑恵イクメン推進委員会委員(前列左端)と受賞者の皆さん

イクボスアワード2017(五十音順)
■グランプリ(2名)
オイシックスドット大地株式会社
販売企画室 週次企画セクションマネージャー
上野 綾子 氏
社会福祉法人あいの土山福祉会エーデル土山
法人事務局 施設長
廣岡 隆之 氏
■特別奨励賞(2名)
株式会社ストライプインターナショナル
取締役兼CHO 人事本部長
神田 充教 氏
大和リース株式会社
長野営業所 流通建築リース営業所 営業所長
髙金 智久 氏

4 企業向けセミナーの実施

イクメンプロジェクトでは、企業における仕事と育児の両立支援への理解を促進するため、企業が職場内研修で活用できる資料を公開しています。研修資料は「従業員向け」「管理職向け」「中小企業向け」の3種類を作成し、それぞれパワーポイント資料と動画資料があります。

「従業員向け」のパワーポイント資料は、男性が仕事と育児を両立しやすい職場風土の醸成や働き方等について、従業員自身の具体的な工夫を促す内容です。「管理職向け」は、時間等に制約のある部下でも成果を出せるマネジメントについて具体的な取組を促す内容です。昨年度作成した「中小企業向け」は、男性社員の育児休業取得に向けて、育児休業取得の現状、中小企業における課題、取組のポイントなどを分かりやすく解説する内容となっています。

動画資料は、いずれも男性従業員、家族、同僚や管理職が課題に直面し解決していく姿を描くドラマ仕立てで描いています。併せて、有識者、従業員や経営者のインタビューも収録し、従業員、管理職それぞれの立場で取組を考えるきっかけとなることを目的としています。

これらの資料を活用し、経営者や人事労務担当者等を対象に、男性の育児休業取得促進のメリットを解説し、地域の企業の取組事例を紹介するセミナーを全国で開催しています。

昨年度は、北海道から九州まで全国8か所でセミナーを実施しました。

今年度も順次全国各地でのセミナー開催を予定しております。日程が決まり次第、イクメンプロジェクト公式サイトでお知らせします。

5 イクメンプロジェクト公式サイト

イクメンプロジェクトでは、厚生労働省HP内にある公式サイトを通じて、企業、自治体、イクメン本人等、様々な方に役立つ最新の情報を発信しています。

https://ikumen-project.mhlw.go.jp

公式サイトでは、イクメン本人が育児休業を取得する際に有益な情報や、企業や地方自治体の仕事と育児の両立支援に関する情報を掲載しているほか、男性の育児休業等に関する各種データ、プロジェクトで作成した広報物等の閲覧・ダウンロードが可能です。

QRコードによる公式サイトへのアクセス QRコードによる公式サイトへのアクセス

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019