「共同参画」2017年9月号

行政施策トピックス3

男女共同参画の視点からの防災に関する取組
内閣府男女共同参画局総務課

災害は、地震、津波等の自然現象とそれを受け止める側の社会のあり方により、被害の大きさが決まってくると考えられています。性別、年齢等、様々な社会的立場によって災害から受ける影響は異なるため、こうした災害時の困難を最小限にすることが重要です。内閣府男女共同参画局で実施している、防災における男女共同参画を推進するための取組について紹介いたします。

1.男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(平成25年5月)

東日本大震災等、過去の災害から男女共同参画に係る課題が表出しました。

[主な課題]

  • 防災や復興の政策・方針を決める過程に女性が参画していない。
  • 災害対応において男女のニーズの違い等に配慮がない(衛生用品等の不足、授乳・着替えスペースがないなど)。
  • 災害が起きてから急に男女共同参画の視点から対応しようとしてもできない。

これらの課題に対応するため、過去の災害対応における経験を基に、男女共同参画の視点から必要な対策・対応について地方公共団体が取り組む際の指針となる基本的事項を示しています。本指針においては、男女共同参画の視点を考える上で重要な7つの「基本的な考え方」を明示するとともに、予防、応急、復旧・復興の各段階において必要とされる取組等を記載しました。併せて作成した「解説・事例集」には、過去の事例や熊本地震等でも有効に活用された使いやすいチェックシートも示しています。

男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(概要)

2.男女共同参画の視点からの防災研修プログラム(平成28年6月)

男女共同参画の視点からの災害対応について関係者が理解し、男女共同参画の視点を防災施策に反映していくためには、平時から防災施策に関わる方が、研修等を実施することが重要です。

そこで、災害対応における男女共同参画の視点を学ぶ研修教材を作成しました。

本プログラムでは、「なぜ、男女共同参画の視点が防災に必要か」ということを座学で学んだ上で、グループワークにおいて具体的な災害シチュエーションを想定して対策を考えることにより、参加型の実践的な研修が実施できます。内容をアレンジすることもできるため、地域の実情に応じた研修が可能です。

男女共同参画の視点からの防災研修プログラム(平成28年6月)


3.男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査(平成29年3月)

平成28年に発生した熊本地震における、被災地や、被災地支援を行った地方公共団体、民間団体等の対応状況、各種事例について調査を行い、男女共同参画の視点について分析・検討を行うとともに、今後の災害対応に向けた提言を取りまとめました。

調査の結果、約半数の地方公共団体において、授乳室や男女別トイレ、更衣室の設置といった男女共同参画の視点からの取組が実施されたり、女性の視点を生かした住民主体の避難所運営がなされた事例など、東日本大震災と比べると早期に実施できていた一方、1.の取組指針等の活用が十分にされていないことや、女性、乳幼児等への配慮が十分でない避難所や、多様なニーズを十分把握できなかったなどの課題も認められました。

男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査


(参考)乳児用液体ミルクの普及に向けた取組

政府では、乳児用液体ミルクの普及に向けた取組を進めています。乳児用液体ミルクは、人工乳が液状で容器に密封された調乳不要の乳児用食品です。現在、我が国では流通していませんが、海外では一般的に普及している国もあります。

乳児用液体ミルクには、様々な利点があります。防災では、ライフライン断絶時でも、水、燃料を使用せずに授乳できるため、災害時の備えとして活用することが可能です。実際に活用するためには、国内の流通体制の整備や使用方法等の啓発が必要ですが、東日本大震災や熊本地震の際、支援物資として被災地に届けられ、非常に重宝されたという声もあり、普及が求められているところです。

政府では、平成28年11月から翌3月まで設置された、男女共同参画会議「男性の暮らし方・意識の変革に関する専門調査会」において、普及方策が調査検討されました。平成29年2月には、関係府省庁、地方公共団体、民間団体が参加して意見交換を行った、「液体ミルクに関する関係者会合」を開催しました。

今後も、製品化の後押しとなる取組を継続的に進めていくこととしています。

【参考URL】

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019