「共同参画」2017年9月号

特集

民間企業における調達を活用したワーク・ライフ・バランス等推進の加速に関する調査研究報告書
内閣府男女共同参画局推進課

国等においては、公共調達においてワーク・ライフ・バランス等推進企業を加点評価する取組を平成28年度から開始しています。今後、民間企業における各種調達においても同様の取組が進むよう、働きかけを行います。

政府においては、すべての女性が、自らの希望に応じ、個性と能力を十分に発揮できる社会の実現に向け、様々な女性活躍の取組を推進しています。

女性活躍の前提となるワーク・ライフ・バランスの取組を進めることで、一般に、業務の改善・見直しなどによる業務の効率化、女性など多様な人材の確保・定着による企画力の高度化や市場の変化への対応力の向上等を通じ、生産性の向上が図られ、これにより、価格競争力の向上だけでなく、事業の品質の確保・向上につながることも考えられます。

そのような中で、平成28年度から「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下「女性活躍推進法」という。)第20条に基づき、国の調達のうち、総合評価落札方式及び企画競争方式によるものにおいて、ワーク・ライフ・バランス等を推進する企業(以下「ワーク・ライフ・バランス等推進企業」(注)という。)を加点評価する取組を開始しています。

(注)「ワーク・ライフ・バランス等推進企業」とは、女性活躍の前提となるワーク・ライフ・バランスを推進する企業として、女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」、次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん・プラチナくるみん認定」及び青少年の雇用の促進等に関する法律に基づく「ユースエール認定」を取得した企業並びに女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定した中小企業のことです。
 えるぼし認定等については、いずれもワーク・ライフ・バランスの取組のうち重要な長時間労働の抑制に関する基準を設けています。

えるぼし くるみん ユースエール


民間企業の調達においても、長時間労働の抑制など働き方の見直しを通じて、ワーク・ライフ・バランス等推進企業を評価する取組が進むことは、社会全体でワーク・ライフ・バランス等を推進することにつながると考えらえます。

また、国際的にも、企業も対象とした持続可能性を目指す国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)の取組や、サプライチェーンを通じた持続可能性を求めるISO20400(持続可能な調達に関する国際規格)の策定などが進んでいます。

そのため、本調査研究においては、民間企業においてワーク・ライフ・バランス等の取組を推進するための参考情報を提供することを目的として、CSR調達などに取り組む企業・業界団体等へのアンケート調査とともに、先進的な取組を行っている企業等に対するヒアリング調査を実施し、報告書及び推進事例集としてまとめました。

民間企業における調達の現状

アンケート回答企業126社のうち、調達基本方針や調達基準の策定、CSR調達等の取組を行っている企業は80社でした。

80社において、取引先企業に求める項目は、大きく3グループに分かれ、「品質」、「価格」、「納期」、「安定的な提供・アフターサービス対応」、「環境への配慮」、「法令遵守・腐敗防止対策」などはほとんどの企業が求めており、次に、「人権・労働慣行」、「児童労働の排除」、「非人道的な扱いの排除」、「差別の禁止」、「強制労働の排除」などを半数強の企業が求めています。一方、「長時間労働の抑制」や「ワーク・ライフ・バランスの推進」等に関する項目を求める企業はまだ少ない状況にあります。【図1参照】

CSR調達等の取組を行っている企業に上記取組(図1における「取引先に求める事項」)を実施したことによる効果について聞いたところ、「外部ステークホルダーからの自社評価の向上」、「外部評価機関による評点の改善」、「社内の意識向上」、「品質向上」等が挙げられました。【図2参照】

図1 取組先に求める事項


図2 取組を実施したことによる効果(クロス集計)


民間企業の調達におけるワーク・ライフ・バランス等の評価導入に当たっての課題

ワーク・ライフ・バランスの推進等を調達で考慮していく予定については、回答企業126社のうち、約5割が「同業他社、業界団体の動向を踏まえ検討する」としています。【図3参照】

また、取引先に対して、ワーク・ライフ・バランスの推進等を求める場合、導入に当たりどのような課題があるか聞いたところ、「具体的な導入・評価の手法がわからない」、「取引先の取組を評価するための事務負担が増大するおそれ」、「コストがかかりすぎるおそれ」等が多くなっています。【図4参照】

図3 今後の予定


図4 導入に当たっての課題


民間企業の調達における「ワーク・ライフ・バランス等推進企業を評価する仕組み」導入の方向性

1.導入方策の方向性

(1)国際的取組との対応関係

調達において、ワーク・ライフ・バランス等を評価することは、取引先企業が長時間労働を行っていないことなどを評価するものです。こうした観点での評価が、SDGs、WEPsなどの国際的な取組で求められる事項を満たすことになるといった対応関係が明らかになることで、国際的な取組を進めようという企業も調達でのワーク・ライフ・バランス等を評価する取組がしやすくなると考えられます。

(2)社会からの評価

アンケート調査の結果、ワーク・ライフ・バランス等を評価する取組の導入に当たっての課題として、「取引先の理解が得られない」、「導入のメリットが不明」、「導入の意義・必要性が不明」といった回答もあり、ワーク・ライフ・バランス等を調達において評価する取組を行う企業の社会的評価が高まることも重要です。

2.具体的な評価の導入手法等

(1)民間企業における取組

民間企業の調達においてワーク・ライフ・バランス等を評価する取組として、えるぼし認定等の活用が考えられます。これらの認定等は長時間労働の状況を基準にしており、その他の基準と併せて、認定の有無が一定の水準を達成している企業を示す情報となっています。

また、調達の際に取引先企業に求める事項についてのモニタリングも容易となり、事務負担軽減などの面からも有効と考えられます。

(2)業界団体における取組

アンケート調査の結果、同業他社や業界団体の動向を踏まえて検討する企業が多数あることから、企業への影響力が大きい業界団体が取組を推進するよう要請することも有効と考えられます。

また、中小企業向けに業界独自にCSR認定を設ける事例(全日本印刷工業組合連合会)もあることから、業界団体が策定したCSR推進に関するガイドブックやチェック項目にワーク・ライフ・バランスに関する項目を追加し、活用することも有効と考えられます。

(3)国等における取組

国においては、調達で取引先企業の取組を評価するような先進的な企業を表彰するなど、こうした取組を行う企業の価値が社会的に認められるようにすることが重要です。

また、えるぼし認定等を活用することを推奨するに当たり、現在個別に公表・管理されている認定企業を一括して検索可能とする等、容易に確認できるようなデータベース等の充実も重要です。

地方公共団体の調達も地元企業に与える影響が大きいと考えられることから、地方公共団体においても国に準じた取組が推進されるよう、国においては情報提供や周知、働きかけが必要です。

報告書の全文及びワーク・ライフ・バランス等の推進やCSR調達に取り組んでいる企業における取組事例等をまとめた「調達を活用したワーク・ライフ・バランス等推進事例集」は、内閣府男女共同参画局のホームページで御覧いただけます。
http://www.gender.go.jp/policy/positive_act/work/research.html

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
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