「共同参画」2017年6月号

特集

「男性の育児休業取得促進事業(イクメンプロジェクト)」の取組について
厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課

男性の育児参画や育児休業取得の促進については、「日本再興戦略2016」(平成28年6月閣議決定)等にも盛り込まれ、男性の育児休業取得率を2020年までに13%とする目標が掲げられています。このため、厚生労働省では、男性の育児休業取得促進事業を通じて、企業における男性の仕事と育児の両立支援の取組を後押ししています。

1 男性の育児休業取得の実情

男性の育児休業取得率は長期的には上昇傾向にあるものの、現状では2.65%(厚生労働省「平成27年度雇用均等基本調査」)にとどまっており、育児休業をはじめとする両立支援制度を利用する男性は少ない状況です。(図表1)

図表1 育児休業取得率の推移


しかし一方で、3歳未満の子どもを持つ20~40歳代の男性正社員のうち、育児休業を利用したかったが利用できなかった人の割合は3割にものぼり、実際の育児休業取得率2.65%との乖離が生じています。また、育児休業を取得しない理由として、「職場の雰囲気」によって育児休業が取得できないとする男性が多くなっています。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成27年度仕事と家庭の両立支援に関する実態把握のための調査」)(図表2、図表3)

図表2 育児休業制度の取得状況


図表3 育児休業を取得しなかった理由(複数回答)


勤労者世帯の過半数が共働き世帯となっている中で、男性も子育てができる環境づくりが求められており、政府目標である2020年の男性の育児休業取得率13%の達成を目指し、男性の育児休業取得促進に取り組む企業等を支援する必要があります。

男性の育児への参画促進は、「育児をしたい」という男性の希望の実現だけでなく、配偶者である女性の継続就業や第2子以降の出産意欲にも良い影響があるという点で、大変重要です。

また、企業にとっても、ワーク・ライフ・バランスの実現は、優秀な人材の確保・定着につながる重要な経営戦略の一つといえます。男性の育児休業の取得や育児短時間勤務の利用等を契機に、職場内で業務の改善や働き方の見直しが行われることで、生産性の向上等も期待できます。

2 イクメンプロジェクトとは

男性の育児休業取得を進めるに当たっては、「職場の雰囲気」によって育児休業が取得できないとする男性が多いことを踏まえ、職場において、育児休業取得を言い出しやすい環境を整えることが重要です。

厚生労働省では、育児を積極的に行う男性「イクメン」を応援し、男性の育児と仕事の両立を推進する「イクメンプロジェクト」を平成22年度から実施しています。プロジェクトでは、男性の育児休業取得、仕事と家庭の両立、育児への参画を促すため、積極的に育児をしている・これからしたい男性や、企業・自治体、学生等に向けた様々な事業を実施しています。

その主な事業である「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」の実施、企業向けセミナーの開催、参加型の公式サイトについて、ご紹介します。(図表4)

図表4 イクメンプロジェクトロゴ


3 「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」の実施

イクメンプロジェクトでは、平成25年度より「イクメン企業アワード」を、平成26年度より「イクボスアワード」を実施しています。

「イクメン企業アワード」は、男性の育児と仕事の両立支援を推進し、働き方の見直しなどにより業務改善を図っている企業を表彰するものです。4回目の平成28年度は、グランプリに2社、特別奨励賞に2社が選ばれました。いずれの企業も男性が育児しやすい職場環境づくりに積極的に取り組み、育児休業の取得実績も高いことが評価されました。

「イクボスアワード」は、部下の育児と仕事の両立を推進するために配慮し、部下の育児休業取得や育児短時間勤務の利用などを奨励するとともに、部署全体の働き方の見直しや工夫をし、また自らも仕事と生活を充実させている管理職=「イクボス」(男女不問)を表彰するものです。3回目の平成28年度は、グランプリ3名、特別奨励賞4名が表彰されました。受賞された管理職の方々は、部下の仕事と育児の両立を支援する取組を行いながら、自ら率先して定時退社や年次有給休暇の取得を実践し、ワーク・ライフ・バランスの大切さを示しながら職場環境づくりを行っていることが評価されました。

これまでの受賞企業・受賞者の取組をまとめた事例集は、イクメンプロジェクト公式サイトからダウンロードできます。(https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company/case/

今年度も、「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」の募集をしています。(https://ikumen-project.mhlw.go.jp


イクメン企業アワード2016受賞者
イクメンアワード2016ロゴ


吉田学雇用均等・児童家庭局長(前列中央)、関係者と受賞企業の皆さん

〈イクメン企業アワード2016〉(五十音順)
■グランプリ(2社)
株式会社丸井グループ(東京都中野区)
リコーリース株式会社(東京都江東区)
■特別奨励賞(2社)
大成建設株式会社(東京都新宿区)
大和証券株式会社(東京都千代田区)

イクボスアワード2016受賞者
イクボスアワード2016ロゴ


吉田局長、関係者と受賞者の皆さん


〈イクボスアワード2016〉(五十音順)
■グランプリ(3名)
青森県警察
齊藤 重光 氏
P&Gジャパン株式会社
鷲田 淳一 氏
■特別奨励賞(4名)
株式会社セプテーニ
井上 祥子 氏
日本オーチス・エレベータ株式会社
日比野 寿実 氏
株式会社JSOL
三尾 幸司 氏
コネクシオ株式会社
森下 大二郎 氏

4 企業向けセミナーの実施

昨年度、イクメンプロジェクトでは、企業における仕事と育児の両立支援への理解を促進するため、企業が職場内研修で活用できる資料を作成しました。

研修資料は「従業員向け」「管理職向け」の2種類を作成し、それぞれに動画資料とパワーポイント資料があります。「従業員向け」は、従業員に対し、仕事と育児の両立が職場にもたらすメリットを伝え、男性が仕事と育児を両立しやすい職場風土の醸成や働き方等について、従業員自身の具体的な工夫を促す内容です。「管理職向け」は、管理職に対して、自身がイクボスになることのメリットを伝え、時間等に制約のある部下でも成果を出せるマネジメントについて具体的な取組を促す内容です。

これらの資料を活用し、経営者や人事労務担当者等を対象に、研修のポイント等を伝えるセミナーを全国で開催しています。

今年度も順次各地でのセミナー開催を予定しており、第1回として、6月16日(金)に「ファザーリング全国フォーラム in おおいた」の中で、研修資料を活用した企業向けセミナーを実施します。(http://www.fj-zenkoku.net/oita/

また、今年度は新たに中小企業が職場内研修で活用できる資料を作成し、広く普及を図ることで、中小企業における男性の仕事と育児の両立支援を後押ししていきます。

5 イクメンプロジェクト公式サイト

イクメンプロジェクトでは、厚生労働省HP内にある公式サイトを通じて、企業、自治体、イクメン本人等、様々な方に役立つ最新の情報を発信しています。(https://ikumen-project.mhlw.go.jp

公式サイトでは、イクメン本人が育児休業を取得する際に有益な情報や、企業や地方自治体の仕事と育児の両立支援に関する情報を掲載しているほか、男性の育児休業等に関する各種データ、プロジェクトで作成した広報物等の閲覧・ダウンロードが可能です。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019