「共同参画」2017年5月号

行政施策トピックス2

女性に対する暴力に関する専門調査会報告書「若年層を対象とした性的な暴力の現状と課題」
内閣府男女共同参画局推進課暴力対策推進室

近年、いわゆる「JKビジネス」で働き、性的な暴力等の被害に遭う問題や、本人の意に反してアダルトビデオへの出演を強要される問題が発生するなど、若年層の女性を狙った性的な暴力の問題は、深刻な状況にあります。

政府では、「女性活躍促進のための重点方針2016」(平成28年5月すべての女性が輝く社会づくり本部決定)等において、若年層を対象とした性的な暴力の多様化を踏まえ、その実態を把握することとしました。

これを受け、男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会では、平成28年6月から、民間団体、有識者、地方公共団体及び関係省庁からヒアリングを実施し、この問題の現状と課題を整理した報告書を平成29年3月に取りまとめ、公表しました。

1 JKビジネス

「JKビジネス」問題とは

主として「JK」、すなわち「女子高校生」などの児童を雇い、表向きには性的サービスを行わない健全な営業を装いながら、「裏オプション」等と称し、性的なサービスを客に提供させるものです。繁華街を抱える大都市を中心に、「カフェ」や「散歩」など、様々な形が存在します。

「JKビジネス」の危険性

気軽に働き始めるケースも見られる「JKビジネス」ですが、次のような被害事例があったと報告されています。

【被害事例(1)】
「JK散歩店」で散歩中に客とカラオケに入ったところ、個室で無理やりキスや口淫をさせられた。

【被害事例(2)】
カフェの店長から「もっと稼げる仕事がある」と系列のリフレ店を紹介されたところ、その店長が1人目の客となって性行為の被害に遭った。

2 アダルトビデオへの出演強要

アダルトビデオへの出演強要問題とは

アダルトビデオに出演するという認識がないままプロダクションと契約をした若い女性が、その後アダルトビデオに出演することがわかり、断ろうとしても、「契約だから」「違約金が発生する」「親にばらす」などと脅されて、本人の意に反して出演を強要されるものです。

出演強要に至る経緯と危険性

スカウトやプロダクションとの契約の際には「モデル」「タレント」などと言われ、アダルトビデオへの出演の仕事があることを説明しない場合もあります。

【被害事例(1)】
アダルトビデオへの出演とわかり断ろうとしたが、複数の男性に囲まれて長時間説得され、断り切れなくなった。

【被害事例(2)】
撮影された映像が繰り返し使用・流通され、インターネット等にも掲載される二次被害に悩み、苦しみ続ける。

【被害事例(3)】
アダルトビデオへの出演が知られ、家族や友人との人間関係が壊れたり、職場に居辛くなって職を失った。

3 被害者を取り巻く環境

民間団体によると、「JKビジネス」については、家庭や学校に「居場所」がないと感じていたり、経済的困難を抱えている少女に対し、「女子高校生無料休憩コーナー新設」「携帯が充電できる」などと呼びかけ、無料で食事や宿泊場所を提供して取り込もうとするケースや、先に働いている少女に友人を誘わせることで、大人の目につきにくいところで働く児童を見つけているケースなどがあるとのことでした。

また、アダルトビデオへの出演強要については、若い女性がモデルやアイドル等への憧れや好奇心を利用され、勧誘の危険性に気づかなかったり、契約等に関する知識が未熟であるところに付け込まれるケースなどがあるとのことでした。

被害者は、恥ずかしさや誤解への恐怖等から「誰にも知られたくない」と家族や友人にも相談できなくなってしまうこともあり、孤立してしまうと支援に関する情報を入手することも難しく、公的支援などにも結び付きにくくなってしまいます。

スカウト


4 現在の取組

これらの問題について、行政機関では、法令に基づく厳正な取締り、補導活動等の推進や、児童・生徒、保護者等に対する教育・啓発、相談対応、インターネット上の違法・有害情報、人権侵害情報の削除等を行っています。

そのほか、民間団体の中には、SNS等で相談に応じたり、同行支援、食事・物品の提供等を行っている団体や、インターネット上の違法・有害情報の削除を支援している団体等があります。また、アダルトビデオに関連する業界団体では、自主規制や出演者の権利擁護のための取組を行っているとのことです。

相談

5 今後の課題

これらを受け、専門調査会では、

  • (1) 更なる実態把握
  • (2) 取締り等の強化
  • (3) 教育・啓発の強化
  • (4) 相談体制の充実
  • (5) 保護・自立支援の取組強化

を今後の課題として掲げ、政府に対して検討を求めました。

本報告書も踏まえ、政府では、平成29年3月に関係府省対策会議を設置し、4月を『AV出演強要・「JKビジネス」等被害防止月間』として、緊急かつ集中的な取組を実施する緊急対策を取りまとめました。

専門調査会としても、引き続き、この問題に注視するとともに、女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けて、調査・検討を行っていきます。

(参考)

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019