「共同参画」2017年3・4月号

連載 その3 女性首長から

女性が自由に選択できる社会へ
大津市長 越 直美

大津市市章

私は、2012年、最年少女性市長として大津市長に就任し、「女性が自由に選択できる」ための施策に取り組んできました。

私が、そもそも、市長に立候補した動機は、日本において、まだまだ女性が子育てか仕事かの二者択一をせまられていると感じたからです。市長になる前は、弁護士として働いていましたが、保育園がみつからずに苦労している女性弁護士をみてきました。また、子どもを持って仕事をやめた友人が、再度、就職先を探そうとしてもなかなか見つからない現状もありました。

そこで、まず、取り組んだことが待機児童の解消でした。市長に就任した際、4月時点の待機児童が約150人いましたが、その後4年間で、保育所定員を2000人弱増やし、2015年4月時点で待機児童がゼロとなりました。その過程で、私が感じたことは、保育園に子どもを預けたいという潜在的ニーズが非常に多いということでした。約150人の待機児童を解消するのに、約2000人の定員増が必要だったのですから、潜在的ニーズは、実際の待機児童の10倍以上あったということになります。そのためには、当然お金も必要です。現在、国全体でも待機児童の解消が叫ばれますが、待機児童の解消には、保育士や保育園用地の確保とともに、他の予算を子育てに振り分けるというような首長の覚悟が必要だと感じました。

保育園が増えた結果、0歳から5歳の子どもを持ってフルタイムで働く女性の数は50%増えました。また、合計特殊出生率も2012年から2015年の間に1.41から1.50に上昇しました。人口減少社会の中で、子どもを持てる環境をつくり、人口の自然増と社会増を目指していきます。

また、子育ては、女性だけの問題ではなく、男性の問題でもあります。市役所で若い男性職員に聞いてみると「子育てにかかわりたい」という声が多いです。しかし、過去に男性で育児休業をとる職員は5年間でたった2人でした。そこで、男性職員も全員、出産などにあわせて短期の休暇(合計8日間)を必ず取得することにしました。そのために、育児参画計画書を提出し、予め、休暇中の仕事を調整できるようにしました。その結果、短期の休暇だけでなく、長期の育児休業を取得する男性も、年間6人に増えました。これは、男性が育休をとることに対する周囲の抵抗感がなくなったからではないかと思います。

市役所は、市民の子育てに直接かかわる仕事です。男性職員が育休をとることは、市民の子育てにも資すると考えています。そのために育休だけでなく、徹底した働き方改革、働き方の効率化も必要です。大津市では2年間で約15%の残業の削減を図ってきましたが、現在は、残業時間の上限を設けるなどの取り組みを始めました。

また、市全体で力を入れていきたいことが女性の起業支援です。これまで、起業したい女性に集まっていただく移動Cafeや女性起業家の経営スクールに取り組み、女性向けコワーキングスペースも開設しました。今後は、女性起業家のビジネスコンテストなど、大津を女性の起業家が集まる「女性の起業の聖地」にしたいと考えています。

執筆者写真
こし・なおみ/元弁護士/1975年生まれ/北海道大学法学部/北海道大学大学院法学研究科修士課程修了/西村あさひ法律事務所勤務/ハーバード大学ロースクール終了/コロンビア大学ビジネススクール客員研究員/2012年1月最年少女性市長(当時36歳)として大津市長に就任/2016年1月大津市長就任(2期目)
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