「共同参画」2017年3・4月号

行政施策トピックス1

平成28年度「自治体・企業・NPOによる『子育て支援連携事業』全国会議」開催報告
内閣府子ども・子育て本部

内閣府では、「少子化社会対策大綱」(平成27年3月20日閣議決定)において、NPO、企業等が自治体や学校など公的セクターと連携して取り組んでいる子供や子育て家庭を応援する事業の促進を図るとされていることを受け、一層の機運の醸成を図るため、平成29年2月7日、イイノカンファレンスセンター(東京)において、「自治体・企業・NPOによる『子育て支援連携事業』全国会議」を開催し、会場いっぱいの約160名の参加がありました。主な内容は以下の通りです。

基調講演「繋がりが生み出す新しい子育てのカタチ」(松田恵示氏)

子供を取り巻く「家庭」「学校」「社会(地域・職域)」という環境が変化し、子育ての「孤立化」が課題となっている。子供の「育ち」には、「他者」との「出会い」が必要であり、そのためには、「つながり」を創り出す「ガイド」としての大人の役割が必要である。「孤立する子育て」から、子供を総がかり(家庭+学校+地域社会)で育てる、「育て合う社会」に向かうことが重要だ。

同じ図柄が人によって違う見え方をする「だまし絵」があることでわかるように、人にはそれぞれものの見方の癖がある。他者を理解するにはものの見方を柔軟にすることが必要だ。子供は大人とは違う目線で物を見ている。子供に接する際には、向かい合うのではなく、同じ目線に立ち、共感して理解しようとする「共視」という考え方が大切である。

自治体・企業・NPOという「それぞれの見方をする人達」が共通の「目標」を持ち、「一緒にやっていく=繋がる」ことで、チームワークやネットワークが生まれる。「子育て支援」というと、CSRや福利・厚生、ボランティアの例が多いが、「それぞれの見方」の多様性を認め、収益性のある企業活動としての領域でもまだまだ可能性がある。

最後に、「大人にとっての子育ての意味」だが、大人も、子育てを通して様々な「つながり」を持つことができる。子育てが新しい出会いを創り出すことで自分自身の「成長」や「生きがい」にもなるし、「子育て」を通じて、地域のコミュニティや社会が活性化し、住みやすい環境を自分たちで整備することに繋がるだろう。

「子育て支援連携事業」事例報告

(1)「練馬区立 こどもの森」(練馬区×JV PLAY TANK)

こどもの森は、民有地のみどりの保全が課題である練馬区が、子供たちに、自然体験、冒険体験、交流体験という原体験空間を提供しようと平成27年度に開園した緑地である。自然の中で、子供たちが思いっきり遊び、冒険することができる。

あそびっこネットワークは、構想の段階から区に協力し、運営事業者の募集に際して、志を同じくし、長期間関わり続ける意思を持つパートナー企業を探し、JVとして受託することができた。このように冒険遊び場の運営をJVが担うことは珍しく、視察が相次いでいる。

「自然の中で冒険遊び」というテーマに沿って自治体・企業・NPOがそれぞれの強みを生かして協働で運営している。今後も区民のニーズをくみ取りながら、各々が知恵を絞り、魅力を高められるよう事業に取り組んでいく。


練馬区環境部みどり推進課 稲田 扶氏、NPO法人あそびっこネットワーク代表理事 中川 奈緒美氏

(2)「子育て美容-eki」(NPO法人わははネット×香川県×美容院等)

香川県内において美容院は、コンビニよりも(うどん屋よりも!)店舗数が多く、生活動線上にあり、調べたところ、子育て中の人も美容院に数カ月に一度は通っており、実は多くの客が子育てのことや悩みを話している。本事業は、わははネットがその点に着目し、県に提案したのがきっかけで始まった。

香川県としても、核家族化や地域の繋がりの希薄化により子育ての不安や悩みが増しているという課題があり、官民一体となった子育て家庭支援のネットワークづくりを推進していきたいという思いが一致し、事業化を進めることとなった。

現在、美容師が子育て中の親に相談された際に、適切な情報提供や接し方ができるように研修し、県内の受講した美容院等285店舗を「子育て美容-eki」として認定している。

美容院等の立場としても、子育て中や孫育て中の顧客などとの会話の際に、単に悩みを聞き続けるのではなく、適切な情報提供ができるようになり、顧客の役に立てる、さらに広報効果も期待できると好評である。


NPO法人 わははネット 理事長 中橋 恵美子氏、香川県健康福祉部子育て支援課 伊与田 龍史氏

(3)「ママtomoパパtomoカレッジ」(立教大学×ベネッセコーポレーション×豊島区)

立教大学・ベネッセ・豊島区共催のワークショップにおいて、子育て中のママ達から出たアイデアを、ママ達も参画しながら形にしたのが本カレッジ。

女性の、子育てと仕事を両立させながら自己実現していきたい、パパや子供も一緒に参加したい、という声を受け、立教大学を会場に、1日かけて「学びの場」を提供し、ママの復帰後のキャリアアップ講座、パパ向けの子育て講座などを開いた。学生にも赤ちゃんをあやすボランティアとして参加してもらうなど、育休中・産休中のママとその夫、赤ちゃんも一緒に参加できる工夫をしている。

申込開始からすぐに満員になるなど、参加者の学ぶ意欲とニーズの高さには驚かされるものがあった。豊島区は現在後援だが、住民への子育て支援、男女共同参画事業へと繋がるというメリットがあり、立教大学としても大学院のアピール、地域へのオープン化に繋がっている。

今後の課題は、CSRとしてではなく事業化していくことである。


(株)ベネッセコーポレーション情報サービス開発部 荒川 悦子氏

ワークショップ

ワークショップは、松田氏の進行により、ワールドカフェ方式で行われ、自治体・企業・NPO等とさまざまな立場の参加者が、闊達で非常に熱気のあふれる雰囲気の中で、連携による子育て支援に関する検討テーマを設定し、意見を出し合い議論し、共有し合った。

参加者からは、「いろいろなアイデアを聞くことができ、実り多かった。」「たくさんの方と意見交換し、企業や自治体など違う立場の方の考え方を聞けて良かった。」といった感想が寄せられた。


ワークショップの様子

最後に

ときおり笑いの要素も交えながら軽やかにお話される松田先生の進行により、会場はフレンドリーでポジティブな雰囲気であふれていました。ワークショップの熱気のまま閉会後の交流会も大変盛り上がり、自治体・企業・NPOの枠を超えた交流が生まれました。

詳しい内容は、内閣府HPで公表予定です。内閣府としては、これからも子育て支援連携の推進に取り組んでいきます。


東京学芸大学 教授/副学長、NPO法人東京学芸大こども未来研究所理事 松田 恵示氏

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