「共同参画」2016年10月号

「共同参画」2016年10月号

行政施策トピックス4

『多様な視点』で考える復興と男女共同参画
復興庁男女共同参画班

復興庁男女共同参画班では、復興に男女共同参画の視点が必要であることを理解していただくための活動を行っています。今回は、岩手県男女共同参画サポーター養成講座の1つとして行った「ワークショップ」の様子を御紹介します。

【はじめに】

岩手県では、岩手県及び県内の各地域における男女共同参画の意識の向上と活動の促進を図るために、男女共同参画に興味・関心があり、男女共同参画の推進活動に意欲がある方を「男女共同参画サポーター」として養成する男女共同参画サポーター養成講座を行っています。

今回は、講座の1つを復興庁男女共同参画班が担当し、平成28年9月3日(土)岩手県男女共同参画センターにてワークショップを開催しました。当日は、当班のワークショップには、台風の後の状況にも関わらず、県内各地から39名の方に御参加頂き、5グループに分かれて実施しました。

【実施地域の課題抽出】

企画内容は、岩手県のおかれている状況を踏まえて検討しました。その結果、岩手県は、内陸部と、津波被害地域である沿岸部とでは、発災より6年目を迎えた現在、大きく課題が異なっていることから、それぞれの地域において、男女共同参画の視点が入った団体・活動が多く存在することを、広く地域の住民に知ってもらい、自身の活動に生かしてもらうことが必要と考えました。このため、当班において、自治体や各地で活躍する方々の参考となるよう、主に女性が活躍している事例や被災地の女性を支援している事例等を収集し作成している「男女共同参画の視点からの復興~参考事例集~」(以下事例集)を活用した内容としました。


事例について紹介

【当日の全体の進行】

発災後、3年目及び5年目の復興支援のフェーズについて、一連の流れを通して考え、情報と思考過程を整理し、問題解決を導くことができるよう、フェーズごとに複雑な現状を記した文章を用意し、(1)現状から課題を抽出する、(2)課題を分類する、(3)どのような取組ができるか判断する、という3段階を経る手法を用いることとしました。3年目はデモンストレーションとして進め、5年目は、思考の整理と課題の分類、具体的な取組について話し合いました。さらに、多様な視点を取り入れた復興の在り方をグループで共有した後、最後には、個人一人ひとりが10年後「できる」「している」「してみたい」というアクションを紙に書き、全体で記念撮影もしつつ、共有を行いました。


班内で取組を相談

【震災3年目(ワークショップの説明)】

震災から3年目について考える部分では、各グループに入っているファシリテーターが中心となってワークショップの流れの説明を進め、

  • ・仮設住宅の入居者が減少していること
  • ・一人暮らしのお年寄りが引きこもっていること
  • ・子育て世代が子供を預けられず困っていること

などの課題を含む現状について、課題を分類の上、どのような取組が考えられるかなど、手法のやり方と併せて震災から3年目の状況について共有しました。

また、ワークの最後には、「事例集」から、仮設住宅の住民を対象に、仮設住宅周辺の休耕地を活用して、仮設住宅農園を開園した、岩手県立高田農園の「はまらっせん農園プロジェクト」を紹介し、さらに補足として、

  • ・復興においては、復旧が一段落し、変化が目に見えにくい時期こそ支援が必要であること
  • ・仮設住宅においては、リスクが高いのは孤立しやすい「男性」であること
  • ・仮設住宅の集会所等は、若い世代と男性の利用頻度が低いため、多様な人が参加できるプログラムが必要であること

などを、図を用いて説明しました。

【震災5年目(ワークショップの演習)】

震災から5年目については、参加者が中心となってワークショップを進め、

  • ・災害公営住宅の入居者が伸びないこと
  • ・託児サービスの利用者は増えているのに、助成金が打ち切られ経営が厳しいこと
  • ・海の廃材を利用したアクセサリー等を販売していたが、売り上げが落ち継続が危機的状況であること

などの課題を含む現状について、課題を分類の上、災害公営住宅や子育て、仕事など多様な分野について取組を検討しました。また、参加者同士が自由に各グループでの結果を見て回り、自分のグループ以外ではどのような話が出たのかを共有しました。

その後、「事例集」から、地域生活応援システムで高齢男性の孤立を防ぐ取組を行っている釜石市市民生活部地域づくり推進課の取組を紹介し、補足として、

  • ・地域では、人がいない・提案が反映されない・お金がないという「3つのカベ」をどう解決するかがこれからの課題であること
  • ・東日本大震災では、阪神淡路大震災と比べて住宅復興に約2倍時間がかかっているため、まだまだ支援が必要な状況であること

などの話をしました。

【震災から10年後(今後の取組等)】

最後に、震災から10年後に、自分がどのような姿になっていたいか、どのようなことがしたいかなどを、個人でリンゴの形の紙に書いてもらい、書いたものを「ハッピーツリー」に貼って全体で共有しました。


最後に集合写真

【終わりに】

参加者からは、「課題を含む現状や、課題を解決するための取組について、多様な視点から考えることができた」といった感想が見られました。

このワークショップに参加された皆さんが、ここで学んだことを、岩手県内の男女共同参画サポーターとして活躍する際に役立てていただくことで、「より良い復興の実現」につながるものと期待します。

また、本ワークショップで紹介した「事例集」は、復興庁のHPで公開しています。是非ご覧ください。
※URL:http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-16/20130626164021.html

復興庁男女共同参画班では、本件のように、男女共同参画の視点を復興に生かすことの必要性について、浸透活動を通して理解していただくことで復興に貢献できるよう、被災地域における課題やニーズに寄り添った浸透活動を進めて参ります。お問合せお待ちいたしております。復興庁男女共同参画班 03-6328-0275