「共同参画」2016年10月号

「共同参画」2016年10月号

行政施策トピックス2

イノベーション・競争力向上に向けた女性リーダーの役割
~ハーバード・ビジネス・スクール教授による新しいリーダーシップ論~
男女共同参画局総務課

内閣府・福岡県は共催で、8月5日に福岡県においてシンポジウム「イノベーション・競争力向上に向けた女性リーダーの役割~ハーバード・ビジネス・スクール教授による新しいリーダーシップ論~」を開催しました。当日は、企業の女性管理職をはじめ、150名近い参加がありました。

1.主催者挨拶

(1) 武川恵子・内閣府男女共同参画局長

国内の女性の役員登用をめぐる動きとして、(1)全上場企業において役員に1人以上の女性の登用を要請した安倍総理のスピーチ、(2)日本の上場企業における女性役員の割合を、現状の2.8%から10%に引き上げる目標を定めた第4次男女共同参画基本計画、(3)女性活躍の経営効果について説明しました。「ヨーロッパ諸国は数年で女性役員比率を大幅に伸ばしていることから、日本においても不可能ではない」と述べ、「目標達成に向けて、今後もしっかりと取組を進めたい」と語りました。

(2) 森祐司・福岡県人づくり・県民生活部部長

「少子高齢化が進展する中、地域が活力を維持するためには女性の活躍が不可欠である」と述べ、福岡県における女性活躍推進の取組として、公立大学法人福岡女子大学の「企業、行政、NPOなどでリーダーを目指す女性を支援する研修、イノベーション創出力を持った女性リーダー育成プログラム」及び今年度より実施予定の企業の管理職女性を対象とした「女性トップリーダーとしての必要な素養を身につけるための研修プログラム」について紹介しました。

2.基調講演:「イノベーション・競争力向上に向けた女性リーダーの役割」

基調講演では、リンダ・A・ヒル氏(ハーバード・ビジネス・スクール教授)より、「イノベーション・競争力向上に向けた女性リーダーの役割」と題してお話をいただきました。

参加者からは、「人々が自主的に問題解決する組織を作る。リーダーとは、ステージを共有しながら、同じ方向を見て未来へ向かっていく存在」「多様な価値観で検討していく場を造ることの大切さを感じた。マイノリティの意見を聴くことができていなかったため改めて心がけたい」と、今までのリーダー像を考え直すきっかけとなったという感想が多数寄せられました。


リンダ・A・ヒル氏

3.パネルディスカッション

続いて、村上由美子氏(経済協力開発機構(OECD)東京センター所長)がモデレーターとなり、ヒル氏、北城恪太郎氏(日本アイ・ビー・エム(株)相談役)、岡島悦子氏((株)プロノバ代表取締役社長)、松田美幸氏((公財)福岡県女性財団常務理事兼福岡県男女共同参画センターあすばる館長)の4名によるパネルディスカッションが行われ、イノベーションを繰り返し起こす組織の在り方や女性のリーダーシップの在り方について議論が行われました。

ヒル氏は、「女性の周囲と協力し合う姿勢は、イノベーションをリードしていく上で非常に有利である」と述べ、「イノベーティブな企業として成功するためにはリーダーが正しい環境を整備することが重要である」と、リーダーに求められることについても話されました。

北城氏は、「同じ考え方の集団で議論するのではなく、違う考えの方を中に入れることが重要である」と多様性の重要性について述べ、「会社の取締役会など男性ばかりの中に女性を入れることで、男性と違う意見が出る可能性があり、価値がある」と女性役員登用の重要性について触れられました。


北城恪太郎氏

岡島氏は、「見た目は女性でも頭の中が男性ということだと、ダイバーシティに寄与せず、イノベーションは生まれない。女性がプロフェッショナルとして見られるためにはしなやかさが必要で、ビジネス上での話し声の高さに注意し、少し低めに喋る方が良い」と参加者にアドバイスを送られました。


岡島悦子氏

松田氏は、福岡県の企業の好事例を紹介し、「単にダイバーシティがあるだけではイノベーションは生まれず、その違いを受容して生かすインクルージョンが必要である」と述べられました。またご自身のご経験も踏まえながら「女性リーダーに必要な要素としては、しなやかさに加え、したたかさが必要」と話されました。


松田美幸氏

最後に会場からの質問に答える形で、若い女性リーダー候補に向けてモデレーターの村上氏と各パネリストからアドバイスを頂き、盛況のうちにシンポジウムは終了しました。


村上由美子氏