「共同参画」2016年9月号

「共同参画」2016年9月号

行政施策トピックス3

「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」(第一回調査)の概要と結果
国立女性教育会館研究国際室

1.調査の目的と背景

国立女性教育会館では、「生涯を見据えた早期からのキャリア形成支援を、男女共同参画の視点に立って行うための方策を探ること」を目的として、平成27年に民間企業の正規職についた男女(大学・大学院卒)を5年間追跡する「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」を行っています。平成27年10月に、一回目の調査を実施しました。

新規学卒者が直面する職場環境は、その後のキャリア形成を左右するとして、「初期キャリア期(就職後まもない時期)」の重要性が注目されています。特に女性のキャリア意識を高めるためには、出産・育児による制約を受ける前の20代に、成長と経験を先取りさせる必要があると指摘されています。しかし「初期キャリア期」の男女の意識・行動については、必ずしも十分な調査がなされていません。また人々のキャリア意識はどのような要因と関連して変化するのか、そもそも、人々のキャリア意識はどの程度変化するものであるのか明らかにするためには、「同一人物を複数時点で追跡する」パネル調査を実施し、個人の意識・行動の変化を適切に捉えることが求められます。

そこで「初期キャリア期を通じたキャリア意識の変化」と「変化をもたらす要因」について検証するため、新規学卒者の追跡調査を実施することとなりました。

2.調査の概要

本調査の概要は、以下のとおりです。

  • 1)調査対象:調査協力企業17社に、平成27年に入社した新規学卒者(大学・大学院卒)2137人(女性836人、男性1301人)。この17社は、正社員が3000人以上(10社)、1000人以上2999人以下(4社)、800人以上999人以下(3社)の大企業で、金融業1社、建設業1社、コンサルタント業1社、サービス業7社、商社・卸業1社、通信・ソフト業2社、製造業4社(本社は、東京15社、埼玉1社、大阪1社)。
  • 2)調査方法:WEBアンケート調査
  • 3)回答数:1258人(回答率 58.9%:女性56.8%、男性60.2%)
  • 4)回答者の属性:女性475人(37.8%)、男性783人(62.2%)
  • 5)調査実施期間:平成27年10月1日~平成27年10月20日

3.主な結果

1)ワークライフバランス

今回の調査によると、男女ともにワークライフバランスを重視しています。女性は83.4%、男性は54.7%が、会社を選ぶ基準として「家庭と仕事を両立するための制度が充実していること」を「重視した」(=重視した+どちらかというと重視した)と回答しました。また女性は96.0%、男性は92.9%が「仕事だけでなく、仕事以外の時間」も「大切にしている」(=あてはまる+どちらかというとあてはまる)ことが示されました。

ワークライフバランス重視の姿勢は、ライフステージ別の「理想の働き方」にもあらわれています。「未婚のとき」には、女性60.0%、男性69.6%が「急な残業もあるフルタイム」を「理想」としています。しかし「就学前の子どもがいるとき」となると、女性は46.7%が「短時間勤務」を選択しました。男性でも「急な残業もあるフルタイム」は23.8%に下がり、「残業のないフルタイム」が30.4%、「時間の融通がきくフルタイム」が41.0%を占めます(図1)。


図1 理想の働き方

2)「女性の活躍」に関する意識

女性の活躍を推進するためには、男女の均等な機会と待遇の確保が求められます。今回の調査によると、女性は31.1%、男性は33.3%が、現在の仕事では「男性の方が、昇進・昇格に結びつく仕事」を「任される」(=「あてはまる+どちらかというとあてはまる」)と回答しました。

そして「男性の方が、昇進・昇格に結びつく仕事を任される」職場では、男女ともに、「現在の仕事内容と待遇が釣り合わない」「機会があれば、別の会社に転職したい」「自分の能力で今の仕事を続けていけるか不安」な傾向にあり、「仕事の満足度」もより低くなっています(図2)。こうした結果から、女性が活躍しやすい職場環境を整えることは、女性のみならず男性の意欲を高めるうえでも重要であると考えられます。

本調査の詳細については、http://www.nwec.jp/jp/publish/をご覧ください。


図2 「男性の方が、昇進・昇格に結びつく仕事を任される」と仕事への満足度との関係