「共同参画」2016年9月号

「共同参画」2016年9月号

特集

地方公共団体における女性活躍推進の取組
総務省自治行政局公務員部公務員課女性活躍・人材活用推進室
総務省消防庁消防・救急課
総務省消防庁国民保護・防災部防災課地域防災室

女性地方公務員、女性消防吏員・団員の活躍推進に向けた取組を紹介します。

1 はじめに

地方公共団体では、多様化・高度化する行政ニーズに対応するために、多様な人材がその能力を十分に発揮し活躍することが求められています。特に、子育て・教育、介護・医療、まちづくり等、住民生活に密着した行政を担っている地方公共団体において、女性職員の活躍は、その柔軟な発想を活かした住民サービスの展開が自治体経営力の充実につながることから、経営戦略上の重要課題となっています。

このため、総務省では、女性地方公務員の活躍推進及び消防・防災分野における女性の活躍推進に向けた取組を進めています。

2 女性地方公務員の活躍推進

1 女性地方公務員の採用・登用の状況

女性地方公務員の採用・登用については、各地方公共団体の着実な取組に加え、総務省においても、これまで

  • (1) 育児休業制度など各種制度の活用や、ワーク・ライフ・バランスの推進などの働きかけ
  • (2) テレワークの活用など、地方公共団体における先進的な取組事例の紹介

などを通じ、女性職員が働きやすい環境の整備を進めてきたところです。

平成27年度の都道府県の本庁課長相当職以上に占める女性の割合は7.7%(指定都市は11.9%)となっており、地方公共団体における女性職員の登用も着実に進んできています。

昨年は、こうした女性地方公務員の活躍の取組を加速させる上で重要な動きが2つありました。


管理職(本庁課長相当職以上)に占める女性の割合

(1)女性活躍推進法

一つは、昨年8月に成立し、本年4月に本格施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)です。

同法に基づき、全ての地方公共団体が女性職員の活躍に関する定量的目標や取組内容等を定めた「特定事業主行動計画」を策定することとされ、今年度から、同計画に沿った取組を本格的に実施する段階に入りました。


女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要


(2)第4次男女共同参画基本計画

もう一つは、今後5年間の国としての施策推進の基盤となる「第4次男女共同参画基本計画」が昨年12月に閣議決定されたことです。

同計画における地方公共団体の成果目標については、

  • (1) あらゆる努力を行えば達成し得る高い水準の目標とする
  • (2) 女性活躍推進法において、市町村を含めすべての地方公共団体が行動計画を策定することが義務付けられていることから、市町村における成果目標を新たに設ける
  • (3) 将来指導的職員に成長していく人材プールである係長、課長補佐に関する女性の登用目標を新たに設ける

という考え方に基づいて設定されました。具体的には、平成32年度末までに、都道府県の採用者に占める女性の割合を40%、都道府県(市町村)の各役職段階に占める女性の割合について、本庁係長相当職30%(35%)、本庁課長補佐相当職25%(30%)、本庁課長相当職15%(20%)、本庁部局長・次長相当職10%程度(10%程度)とするとともに、男性の育児休業取得率を13%としています。


第4次男女共同参画基本計画(地方公務員関連部分抜粋)


2 女性地方公務員の活躍推進に向けた課題

女性地方公務員の活躍を推進していくためには、これまでの男性職員を中心とした人事管理や働き方の改革が不可欠です。より具体的には、女性職員が出産・子育てを行いつつ、キャリアアップを図り、管理職として活躍できるための「人事管理面での変革」と、男性が育児や介護等の家庭での責任を果たすことができるような「柔軟な働き方改革」を車の両輪とした取組が求められています。

各地方公共団体が策定した特定事業主行動計画においても、多くの団体が以下の取組を特に進める必要があることを課題に挙げています。

  • (1) トップ・管理職や人事当局の意識改革
  • (2) 女性職員のキャリアアップ支援及び登用の拡大
  • (3) 長時間勤務是正等の働き方改革
  • (4) 男性職員の育児休業取得促進

3 総務省における地方公共団体の取組支援-女性活躍・人材活用推進室の設置-

上に述べた課題はいずれも、各地方公共団体において今までにない人事の仕組みや職場環境を作り上げるものであり、組織全体の価値観や意識の改革が不可欠な、困難を伴う取組であると考えています。

総務省としては、この取組を推進するため、今年度から、公務員部公務員課に「女性活躍・人材活用推進室」を新たに設置し、地方公共団体に対する支援をこれまで以上に充実・強化することとしました。

今後、各地方公共団体が特定事業主行動計画の策定過程で把握した課題や計画に盛り込んだ取組内容等を基に、先進的な取組事例の紹介、女性活躍に取り組む職員のネットワークづくりや意見交換の促進など、戦略的な広報・情報発信を行ってまいります。

また、今年度から既にスタートしていますが、自治大学校において、女性向け幹部登用研修を行うほか、各研修課程で「女性活躍・働き方改革」に関する講義を実施するなど、女性地方公務員の人材育成を推進してまいります。

3 女性消防吏員の活躍推進

消防庁では、消防本部における女性消防吏員の活躍推進とより一層の増員を図るため、女性活躍推進施策について、積極的な広報を展開し、より多くの女性に消防を目指していただけるよう取り組みます。

1 目的

全国の消防吏員に占める女性の割合は、平成28年4月1日現在で2.5%と、昨年度に比べて0.1ポイント増加しましたが、他の分野と比べても低い水準となっています。

消防庁では、全国の消防吏員に占める女性消防吏員の比率を平成38年度当初までに5%に引き上げることを共通目標とし、様々な施策に取り組んでいます。

今年度は、より一層の女性消防吏員の活躍を推進し、各消防本部における計画的な女性消防吏員の増員を図るために、これから社会人となる年齢層の女性を対象とした広報等の施策について、積極的に展開していきます。

2 具体的な取組

(1)女子学生等を対象とした職業説明会(ワンデイ・インターンシップ)の開催

消防を目指す女性を増やすために、これから社会人となる年齢層の女性に、消防の仕事の魅力と消防分野での女性活躍の可能性を知ってもらい、興味をもってもらうきっかけとなるよう、消防本部と連携しながら、現役の女性消防吏員との懇談会等のほか、消防署の施設見学などのプログラムで、全国8か所の会場で実施します。

開催日程及び開催都市等のイベント情報は下記URLを参照してください。

http://www.fdma.go.jp/josei_shokuin/event/index.html


ワンデイ・インターンシップ 広報用チラシ

(2)ポスター・リーフレットの作成

消防吏員という職業について、女性を対象として広報を展開し、職業説明会(ワンデイ・インターンシップ)の開催を周知するためのポスターと、消火、救急、火災予防など、消防の仕事の様々な役割の理解が深まるリーフレットを作成し、全国の各消防本部等に配布しています。


現役の女性消防吏員がモデルのリーフレット


現役の女性消防吏員がモデルのポスター

(3)ポータルサイト等の開設

各消防本部での女性活躍事例や具体的な取組も含めて、消防の業務や消防における女性活躍等に関する情報を発信するためのポータルサイトを運用しています。

3 今後に向けて

今年度は、各消防本部において女性消防吏員の活躍推進に向けた諸施策を加速すべき重要な時期であり、各消防本部が、新たな人材の獲得に向け、様々な広報等を加速化していくことで、女性の受験者数の増加が期待されます。今後、女性消防吏員の数が増えていけば、必ずや職場に変革をもたらし、消防・防災体制の向上につながっていくものと確信します。消防庁としても、消防分野における女性の活躍推進について、これからも強力に取り組んでいきます。

4 消防団における女性消防団員の活躍推進

1 女性消防団員を取り巻く現状

女性消防団員数は、平成28年4月1日現在(速報値)、2万3,894人となっており、消防団員の総数が減少する中、その数は年々増加しているところです(図)。しかしながら、女性消防団員がいる消防団は全消防団の66.9%にとどまっています。

(図)女性消防団員の推移


近年、地域の安心・安全の確保に対する住民の関心の高まりなどを背景に消防団活動も多様化しており、実災害での消火活動や後方支援活動などはもちろん、住宅用火災警報器の設置促進、火災予防の普及啓発、住民に対する防災教育及び応急手当指導等、女性消防団員の活躍が多岐にわたって期待されています。

例えば、平成26年8月豪雨による広島市で発生した土砂災害においても、広島市の女性消防団員が避難所の運営支援活動等に従事し、高い評価を受けました。女性消防団員のいない消防団では、入団に向けた積極的な取組が必要です。

2 女性消防団員の活躍推進に向けた取組

(1)消防団への加入促進

ア 総務大臣書簡の発出

これまでに3回、総務大臣からすべての都道府県知事及び市区町村長あてに書簡を送付し、女性の消防団への加入促進に向けた積極的な取組について依頼を行いました。

加えて、日本経済団体連合会などの経済団体あてにも書簡を送付し、女性従業員の消防団加入に対する事業者の理解と協力を呼びかけました。

イ 総務大臣からの感謝状の授与

平成27年7月、同年4月1日現在の消防団員数の速報値に基づき、女性消防団員数が相当数増加した団体等22の消防団に対して総務大臣から感謝状を授与しました。

ウ 加入促進のための先進的な取組の支援等

女性消防団員を更に増加させるため、消防庁では、消防団加入促進支援事業など女性の入団促進につながる施策を実施するとともに、女性消防団員のいない市町村に対しては、入団に向けた積極的な取組を求めています。

(2)全国女性消防操法大会の開催

平成27年10月、女性消防団員等の消防技術の向上と士気の高揚を図るため、横浜市消防訓練センターにおいて「第22回全国女性消防操法大会」を開催しました。

なお、次回は、平成29年に秋田市で開催する予定です。


全国女性消防操法大会

(3)全国女性消防団員活性化大会の開催

全国の女性消防団員が一堂に集い、日頃の活動やその成果を紹介するとともに、意見交換を通じて連携を深めることにより、女性消防団員の活動をより一層、活性化させることを目的として、平成6年から「全国女性消防団員活性化大会」を開催しています。

平成28年6月、北海道札幌市において「第22回全国女性消防団員活性化北海道大会」を開催しました。

なお、次回は、平成29年11月に広島市で開催する予定です。


全国女性消防団員活性化大会

(4)消防女性活躍推進本部の設置

平成28年6月、総務大臣の指示により、消防機関における女性の活躍推進に係る検討及び実施並びに都道府県及び市町村における女性活躍推進の取組の支援を行うことを目的として、消防庁に「消防女性活躍推進本部」(本部長:消防庁長官)を設置しました。

また、これに先立つ同年5月、消防機関における女性の活躍に関する消防庁公式Facebookを開設し、全国各地で活躍する女性消防団員の姿や消防団の女性活躍推進の取組、 消防の魅力を伝える各種イベントの開催情報等を発信しています。