「共同参画」2016年8月号

「共同参画」2016年8月号

行政施策トピックス

女性の活躍推進のための開発戦略
外務省国際協力局地球規模課題総括課

はじめに

2015年9月、国連サミットにおいて、「持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)」が採択されました。2030アジェンダでは、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」が掲げられました。本年は、SDGsの実施元年になります。

SDGsでは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが貧困や飢餓を撲滅し、すべての女性及び女児の能力強化を行うことを目標の一つに掲げています。

2013年に安倍総理が国連総会で述べたとおり、日本は、女性が持つ力を最大限発揮できるようにすることは、社会全体に活力をもたらし、成長を支える上で不可欠との考えの下、「女性が輝く社会」の実現に向け、国際社会との協力を進めています。

開発協力大綱、G7伊勢志摩サミット

2015年2月に閣議決定した「開発協力大綱」は、人間の安全保障の考え方に基づき、「質の高い成長」とそれを通じた貧困削減等に重点的に取り組むこととしています。同大綱では、開発協力のあらゆる段階における女性の参画を促進し、女性が公正に開発の恩恵を受けられるよう一層積極的に取り組むことが明記されました。

本年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットでも、女性分野が大きく取り上げられました。女性の潜在力の開花と自然科学分野における女性の活躍促進が重要との認識の下、G7首脳は「女性の能力開花のためのG7行動指針」及び「女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ」(Women’s Initiative in Developing STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics) Career(WINDS))に合意しました。

また、日本はこの機会に、SDGsと開発協力大綱の重点分野を踏まえ、国際協力分野における女性活躍推進のための新たな戦略である「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表するとともに、今後3年間(2016年~2018年度)で約5千人の女性行政官等の人材育成、約5万人の女子の学習環境の改善を実施する旨を表明しました。

「女性の活躍推進のための開発戦略」

「女性の活躍推進のための開発戦略」では、女性の力は成長の源泉であるという認識の下、女性の権利の尊重、能力の発揮、リーダーシップの向上を重点分野としています。具体的には、女性にやさしいインフラ整備や女子教育(科学、テクノロジー、工学、数学(STEMを含む)支援、防災分野をはじめとする女性の指導的役割への参画推進等を通じ、女性が自らの人生に関する選択肢を広げ、主体的に自らの可能性を自由に追求できるような環境整備や制度構築を支援することを目指しています。写真で紹介している取組は、このような分野においてすでに実施している事業の一例です。

支援の実施にあたっては、市民社会を含む多様なステークホルダーと協力しながら、日本の強みである、開発途上国の人々の視点に根ざした対話と協働の姿勢を重視し、支援対象国の自助努力を後押しすることで、持続可能な開発に繋げていきます。

デリー高速輸送システム


写真提供:JICA
【支援例】 女性にやさしいインフラ
「デリー高速輸送システム建設事業」(インド)
女性専用車両用に加え、各車両に防犯カメラと非常通報装置を設置。安心で安全な公共交通機関の整備が、女性の社会進出に繋がる。


ナンプラ州中学校


写真提供:JICA
【支援例】女子の学習環境の改善
「ナンプラ州中学校改善計画」(モザンビーク共和国)
教室やトイレの整備をすることで、女子の中等教育就学率の向上に貢献。



写真提供:JICA
【支援例】 防災分野における女性のリーダーシップ発揮
「ジェンダー・多様性からの災害リスク削減」招へい事業
アジア7か国から、防災を扱う行政官や市民団体の代表を招へいし、
災害リスク削減・防災の取組にジェンダー・多様性の視点を入れこむための研修を実施。

WAW!2016

日本は、最重要課題の一つである「女性が輝く社会」を実現するための取組の一環として、2014年から国際女性会議WAW!(World Assembly for Women)を開催しています。本年12月13日及び14日、東京において、第3回目となる国際女性会議「WAW! 2016」を開催する予定です。

日本はこのような活動を通じて、全ての女性及び女児のエンパワーメントの実現、男女がともに支え合う社会及び制度の構築を目指し、多様化する開発課題に対応するため、各国と協力していきます。

「女性の活躍推進のための開発戦略」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000158136.pdf別ウインドウで開きます