「共同参画」2016年5月号

「共同参画」2016年5月号

特集1

第60回国連女性の地位委員会、女子差別撤廃条約第7回・第8回政府報告審査
内閣府男女共同参画局総務課

本年3月14日~24日に開催された第60回国連女性の地位委員会及び2月16日に行われた女子差別撤廃条約第7回・第8回政府報告審査の概要をご紹介します。

第60回国連女性の地位委員会(3月14日~24日 ニューヨーク国連本部)

第60回国連女性の地位委員会(CSW)が、2016年3月14日から24日まで国連本部(ニューヨーク)において「女性のエンパワーメントと持続可能な開発の関連性」を優先テーマに、「女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力の撤廃及び防止」をレビューテーマとして開催されました。

我が国からは、武藤容治政府代表(外務副大臣)、橋本ヒロ子日本代表(十文字学園女子大学名誉教授)の下、外務省、内閣府、文部科学省、厚生労働省、独立行政法人国際協力機構(JICA)及び独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)の政府等関係者並びにNGO代表が出席しました。

CSWでは、各国代表や国連機関、NGO代表等によるステートメントの実施、優先テーマに関する閣僚級ラウンドテーブルや対話型専門家パネル、合意結論や決議についての協議等が行われました。


国連本部(ニューヨーク)


会場内の様子(開会式)

一般討論ステートメント及びボランタリープレゼンテーション

我が国は、開会2日目の15日(火)に武藤外務副大臣よりステートメントを実施しました。

ステートメントでは、国際社会の一員として「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成するため、2030アジェンダ*1の実現に向け責任を果たす旨強調しました。また、昨年閣議決定した「開発協力大綱」において、「女性の参画の促進」をODA実施上の原則の一つに掲げ、3年間で420億円以上のODAを実施することや、UN Womenをはじめとする国際機関や各国との緊密なパートナーシップの強化や支援の実施などについて述べました。

また、レビューテーマに関するボランタリープレゼンテーションにおいて、橋本代表より、女性・女児に対する暴力への対応や施策等について、日本における取組状況等を紹介しました。

*1 持続可能な開発のための2030アジェンダ

2015年9月の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標。

2030アジェンダは、貧困を撲滅し、持続可能な世界を実現するために、17のゴール・169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げています。発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、取組の過程で、地球上の誰一人として取り残さない(no one will be left behind)ことを誓っています。

17のゴールの一つにジェンダー平等が掲げられています。


武藤政府代表によるステートメント
写真提供:外務省

閣僚級ラウンドテーブル

優先テーマに関する閣僚級ラウンドテーブルは、(a)「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国組織・制度の強化」、(b)「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための規範的、法的かつ政策的な枠組みの強化」、(c)「2030アジェンダにおけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための資金」、(d)「ジェンダーに対応したデータ設計、収集及び分析の発展」の4つのテーマで開催されました。

我が国からは、武藤外務副大臣が(a)のラウンドテーブルにおいて議長を務め、男女共同参画・女性活躍を内閣の最重要課題の一つに据え、女性の活躍の障壁となる様々な問題の解決に、HeForShe*2チャンピオンである安倍総理のトップダウンの主導により、女性活躍推進法の施行等、国内省庁一丸となった取組を行っていること等を紹介しました。議論においては、政府における全てのレベル及びセクターの2030アジェンダ実施への関与を確実なものにするためのジェンダー主流化の強化等が共有されました。

*2 HeForSheキャンペーン

UN Womenによるジェンダー平等のために男性・男児の関与を呼びかけるキャンペーン。2014年9月20日にUN Womenの親善大使であるエマ・ワトソン氏(女優)よりニューヨークの国連にて発表された。

2015年6月18日に、上記キャンペーンを加速させるため、世界の10首脳、10企業、10大学がUN Womenにより選出され、安倍総理も10人の首脳の一人として選出された。

合意結論及び決議

今回のCSWの成果として、合意結論及び決議が4本採択されました。

「合意結論」では、ジェンダーに対応した2030アジェンダの推進へのアプローチについて、規範的・法的・政策的枠組みの強化、ジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメントのための資金環境の整備、持続可能な発展に関するあらゆる分野の政策決定における女性のリーダシップの強化と十分で平等な参画などが要請されています。

決議としては、今後3年間のCSWの優先テーマ、レビューテーマに関する「複数年計画」及び「パレスチナ女性の状況及びその支援」、「紛争下における女性及び児童の人質解放」、「女性、女児とHIV及びAIDS」が採択されました。

サイドイベント

会期中、各国、国連機関、NGO等により様々なサイドイベントなどが開催されました。

今回のCSWでは、国連日本代表部が日本のNGOと共催して「経済分野での男女格差解消のための私たちの挑戦」(共催:日本女性監視機構(JAWW)、国連NGO国内女性委員会、国際女性年連絡会)と題するサイドイベントを開催したほか、「SDG5の実行:規範的法律・政策的枠組みの強化」(共催:スイス連邦、国際連合人権高等弁務官事務所)など複数のサイドイベントを開催しました。

NGOと共催したサイドイベントでは経済分野での男女格差解消に向けて、労働市場から見た格差の現状についてドイツから、女性が多く働く中小企業の場合について日本から、男性の協力姿勢についてデンマークから発言したほか、JICAによる格差解消に向けての国際協力が紹介され、最後に林陽子氏が、格差解消に向けてCEDAWが果たす役割を強調してパネルを締めくくりました。この後、会場では、国による男女の関わり方の違いなど興味深い議論が交わされました。


NGOサイドイベントの様子

来年の第61回CSWは、「Women’s empowerment in the changing world of work(変わりゆく仕事の世界での女性の経済的エンパワーメント)」をテーマに開催される予定です。

第60回CSWホームページ:
http://www.unwomen.org/en/csw/csw60-2016

女子差別撤廃条約第7回・第8回政府報告審査(2月16日 ジュネーブ)

本年、2月16日、スイス・ジュネーブにおいて、女子差別撤廃条約第7回・第8回政府報告審査が行われました。


国連欧州本部(ジュネーブ)

女子差別撤廃条約とは

女子差別撤廃条約は、女性・女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃することを基本理念として1979年に国連において採択され、我が国は1985年に批准し、2015年には批准30周年を迎えています。条約の締約国は、条約の実施のためにとった立法、司法、行政その他の措置等について、定期的に報告書を国連事務総長に提出し、女子差別撤廃委員会からの審査を受けることとなっています。委員会は、弁護士、政府関係者、学者、女性団体・NGO代表など23名の委員で構成され、委員は個人の資格で審査に参加しています。現在、日本の林陽子弁護士が2015~16年の任期で委員長を務めています。なお、委員は、出身国の審査に関わることはできないとされています。

第7回・第8回政府報告審査

我が国は、2009年に第6回審査を受け、今回は、委員会の要請に基づき第7回・第8回をまとめて行いました。

2014年9月に政府報告書を提出した後、2015年8月に委員会より日本政府に対する質問事項が届き、その回答を2016年1月に提出しました。このようなプロセスを経た上で、本年2月、ジュネーブで委員との対話の場が設けられました。

日本政府の代表団は、外務省の杉山晋輔外務審議官を団長とし、内閣府、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、警察庁によって構成され、午前・午後合せて5時間にわたり、委員と対話を行いました。冒頭、杉山外務審議官から、女性活躍推進法や第4次男女共同参画基本計画の策定、WAW!の開催等を含めた日本政府の取組について発言を行った後、委員からの個別の質問を受け、日本政府の取組に対し、真摯に説明を行いました。対話の様子はインターネット上で生中継されたほか、日本から、政府代表団以外にも、100名を超すNGOや国会議員がジュネーブを訪れ、対話を見守りました。

最終見解

上記対話の後、3月7日には委員会からの最終見解が公表されました。これは、政府報告審査の一連のプロセスを経て、委員会が評価する点や日本政府の政策等に対する見解をまとめたものです。また、次回の報告書の提出期限が2020年3月であることも明記されています。なお、最終見解の原文(英語)及び仮訳については、男女共同参画局ホームページに掲載予定です。

我が国政府は、これからも男女共同参画社会の実現に向け、引き続き取組を進めてまいります。

女子差別撤廃条約第63回期ホームページ
http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/TreatyBodyExternal/SessionDetails1.aspx?SessionID=1007〈=En