「共同参画」2016年3・4月号

「共同参画」2016年3・4月号

特集

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2015(概要)
仕事と生活~家事・育児・介護…~両立の鍵は男女の働き方改革!
内閣府男女共同参画局仕事と生活の調和推進室

ワーク・ライフ・バランスに関する最新の情報についてご紹介します。

仕事と生活の調和が実現した社会に向けては、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(平成19年12月策定、平成22年6月改定)に基づき、官民一体となって、様々な取組が進められていますが、「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」では、「行動指針」の数値目標に向けての取組の進捗状況について点検・評価し、政策への反映を図っています。その成果は、毎年「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート」にまとめ公表しています。

以下、最新の情報と今後の課題についてご紹介します。

1.就業率について

就業率は、20~64歳、20~34歳、60~64歳及び25~44歳女性のそれぞれの年齢区分において、おおむね上昇傾向にあります(図表1)。

図表1 就業率


2.長時間労働の現状について

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、2011年から連続で低下しています(図表2)。これを業種別に見ると、2015年では「運輸業、郵便業」、「建設業」が高くなっています(図表3)。

図表2 週労働時間60時間以上の雇用者の割合


図表3 業種別の週労働時間60時間以上の雇用者の割合


3.年次有給休暇取得の現状について

年次有給休暇取得率を見ると、2000年以降は、50%を下回る水準で推移しています(図表4)。これを企業規模別に見ると、企業規模が大きいほど取得率が高くなっています(図表5)。

図表4 年次有給休暇取得率


図表5 企業規模別の年次有給休暇取得率


4.女性の就業継続の現状について

第1子出産前後の女性の継続就業率は4割弱で推移し、長期的にほぼ横ばいで推移しています(図表6)。これを職員とパート・派遣等に分けて見ると、正規の職員は就業を継続している者の割合が5割を超えていますが、パート・派遣は就業を継続する者の割合が2割に達していません(図表7)。

図表6 第1子出産前後の女性の継続就業率


図表7 出産前有識者の就業継続率(就業形態別)


5.男性の家事・育児参画の現状について

男性の育児休業取得率は、増加傾向にあるものの約2%(2014年)と非常に低い水準で推移しています(図表8)。また、6歳未満の子どもをもつ夫の育児・家事関連時間は、67分(2011年)と数値目標に対し低水準で推移しています(図表9)。

図表8 男性の育児休業取得率


図表9 6歳未満の子どもをもつ夫の育児・家事関連時間


6.仕事と介護の両立の現状について

介護や看護を理由とした離職・転職者数は、1年間(2011年10月~2012年9月)で約10万人であり、女性が80.3%を占めています(図表10)。企業における仕事と介護の両立支援として重要と考えられるものについては、「従業員の仕事と介護の両立に関する実態・ニーズ把握を行うこと」、「介護休業制度や介護休暇等に関する法定の制度を整える」などが挙げられています(図表11)。


図表10 介護・看護を理由に離職・転職した者


図表11 企業における仕事と介護の両立支援として重要と考えられるもの(企業調査)


7.今後の課題

長時間労働の抑制や希望する方の年次有給休暇取得促進に向けて、労使において、意識の改革や職場の雰囲気づくりに取り組むことが必要です。また、経営者の主導の下、短時間で質の高い仕事を評価する仕組みの構築や仕事を代替できる体制づくりなどの雇用管理の改善が重要です。長時間労働の状況は業種によって違いが大きいため、業種に応じた重点的な取組とその支援が必要です。さらに、年次有給休暇取得率は、企業規模によって違いが大きいことや、計画的付与制度を有する企業の方が、取得率が高い傾向にあることから、企業規模に応じた取組や、年次有給休暇の「計画的付与制度」の一層の普及・促進を図ることが必要です。

男女が共に仕事と子育てを両立できる環境の整備に向けて、育児・介護休業法の周知・徹底を図ることや、テレワークやフレックスタイムなどの多様で柔軟な働き方を可能とする環境整備が必要です。また、増加傾向にある非正規雇用の労働者についても、多様で柔軟な働き方を可能とする制度の利用促進を図ることが重要です。

あわせて、男女が共に仕事と子育てを両立し、その責任を担うためには、子育ての社会基盤の整備が必要です。

女性が就業を継続していくためには、女性がキャリアを活かして様々な職域・職階で活躍できる環境整備も必要です。

男性が仕事と育児を両立するためには、育児を積極的にする男性「イクメン」の普及など職場や男性を取り巻く人たちを含め、男性の働き方や意識の改革を進めることが必要です。

さらに、子どもの頃からの男女共同参画の理解の促進に向けた取組や男女共同参画について国民的広がりを持った広報・啓発活動を展開することが重要です。

仕事と介護の両立に関しては、高齢化が一層進展することが見込まれる中、多様で柔軟な働き方を可能にしていくための環境整備を進めるとともに、社会全体で高齢者介護を支える仕組みやその周知が必要です。

2020年の目標数値に向けた進捗状況に遅れがみられる指標について、その改善を図るため、労使はもとより、各主体の取組を支援する国や地方公共団体においても、本レポートで明らかとなった課題への対応について検討し、仕事と生活の調和の実現に向けた取組をさらに加速していきます。

詳しくはこちら↓

http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/report.html

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「仕事と生活の調和連携推進・評価部会報告書~公共調達においてワーク・ライフ・バランス等を推進する企業をより幅広く評価する枠組みについて~」

仕事と生活の調和連携推進・評価部会では、ワーク・ライフ・バランスの重要性に鑑み、「女性活躍加速のための重点方針2015」や女性活躍推進法の成立等を踏まえ、公共調達においてワーク・ライフ・バランス等を推進する企業をより幅広く評価する枠組みについて検討を行い、2015年12月に、「仕事と生活の調和連携推進・評価部会報告書~公共調達においてワーク・ライフ・バランス等を推進する企業をより幅広く評価する枠組みについて~」を取りまとめました。

本報告書においては、

  • WLBの推進は、女性活躍の前提であり、企業の生産性等の向上、事業の品質の確保・向上といった観点はもちろん、少子高齢化、人口減少に直面する我が国社会全体の持続可能性を高めていく極めて重要な取組。
  • WLBの推進は、(1)従業員に仕事の充実感の向上、家庭・地域等での役割の確保、事業主に生産性の向上、人材の確保、定着度の向上、(2)顧客に財・サービスの質の確保・向上、(3)社会に活力や成長、長期的な持続可能性の向上をもたらす、三方よしとなるメリットのある取組。
  • 一般に、ワーク・ライフ・バランスの推進は事業の品質の確保・向上につながることも考えられることから、ワーク・ライフ・バランス等に取り組む企業を公共調達においてより幅広い事業で評価することは適当。
  • この評価する取組は女性活躍推進法第20条に基づく受注の機会の増大に関する施策であると位置付けられる。
  • 評価対象となる企業については、女性活躍推進法等に基づく認定制度を活用することが有効。
  • 評価の方法は、総合評価落札方式や企画競争における評価などが考えられる。
  • 導入は、平成28年度を目途に進めていくべきであるが、その際、導入時期、手法等を検討し、円滑に進むように十分な配慮が必要。

等の内容が盛り込まれています。

⇒報告書は、「http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/rp_work-life-balance.html」をご覧ください。