「共同参画」2015年 12月号

「共同参画」2015年 12月号

行政施策トピックス2

海上保安庁における女性職員の活躍推進への取組と女性職員の活躍
海上保安庁総務部人事課

海上保安庁における女性職員の現状

海上保安庁では、昭和54年10月、海上保安学校に初の女性を採用しました。このときの海上保安学校の採用者数は130人で、そのうち9人が女性でした。その後、女性の採用数は20人~30人、女性職員の割合は3%前後で推移してきましたが、平成23年に採用者に占める女性の割合を20%程度とする目標を掲げ、女性職員による学生募集活動や女子高・女子大への学生募集活動を積極的に進めたことで、女性の採用数が増加しました。現在、女性職員は、海上保安庁の職員約13,400人のうち、約6%にあたる約800人となっています。


女性職員数の推移


海上保安庁は、海上の安全及び治安の確保を図るため、24時間365日休むことなく日本中の海や陸で日夜業務にあたっています。しかし、このような勤務環境は、女性職員をはじめとした育児・介護等の事情を抱える職員には非常に厳しいものです。このため、海上保安庁では昨年、海上保安庁次長を本部長とする「海上保安庁女性職員活躍・ワークライフバランス推進本部」を設置し、当庁の業務執行体制を維持しつつ、女性職員が活躍できる職場環境の整備を進めています。

女性職員活躍推進のための施策

海上保安庁は、東京に本庁があり、全国を11の管区に分け、それぞれ地方支分部局である管区海上保安本部を設置しています。また、管区海上保安本部の下に、都市部から離島まで、全国に約150の海上保安部、海上保安署、航空基地等の事務所を配置し、巡視船艇366隻、航空機74機を配備しています。

このように、全国に広範かつ多数の勤務地を有する海上保安庁では、育児や介護等の事情を抱える職員が安心して働けるよう、例えば、夫婦が同居できる配置や、職員の両親等から支援を受けられる配置等、職員一人一人が抱える事情に応じた人事運営を積極的に行っています。

また、海上保安庁では、巡視船艇はもちろん、海上保安部、航空基地等においても24時間体制で業務にあたるため、夜間、休日の当直業務が欠かせません。このため、女性職員も当直業務等に対応できるよう、女性用仮眠室等、陸上事務所における女性用施設の整備を進めています。

特に、巡視船艇の建造に当たっては、新しい取組みとして、女性用施設の実物大模型を使った審議を始めました。この審議は、従来操舵室のみ行っていたものですが、今般、女性用施設も対象に含めるとともに、女性職員も審議に参加してもらい、女性目線からの意見を反映させることで、実際に女性が利用しやすい施設整備を進めています。


実物大模型審議に参加する女性職員


各分野で活躍する女性職員

厳しい勤務環境にある海上保安庁ですが、育児中の職員に対する夫婦の同居等の人事上の配慮、女性用施設の整備、新しい分野への女性職員の積極的な登用等により、近年、女性活躍の場も大きく広がっています。

本年4月には、女性初の海上保安署長が誕生しました。同署長は、平成3年に当庁幹部を養成する海上保安大学校を卒業し、4回の巡視船勤務をはじめ、本庁での広報業務、管区本部での航行安全業務など幅広い場面で活躍する女性海上保安官の先駆者となっています。


訓示を行う女性署長


管区海上保安本部や海上保安部の課長等、女性管理職も増えてきています。海上保安部で管理課長を務める女性職員は「地域の方々や上司、部下、船艇、各課とのパイプ役として、気配りをしながら調整する、なくてはならない業務と心してやっています。」と海上保安部の窓口として、また、中間管理職としてのやりがいを語っています。


取材を受ける女性課長


巡視船艇の船長・機関長、航空機の機長といった、現場第一線の責任ある立場で活躍している女性もいます。巡視艇船長として活躍する女性職員は「業務管理や若手の育成など船長として仕切ることに仕事の醍醐味を感じる。」と忙しい日々の中でも充実感を感じています。また、ヘリコプターの機長として活躍する女性職員は「夜間の発動では、徹夜で運航することもあるため、安全運航と心身の管理は特に気をつけている。」と機長としての責任の重さと苦労を語っています。


操船中の女性船長


ブリーフィング中の女性機長


外国語を駆使して犯罪捜査に当たる国際捜査官、東京湾や瀬戸内海等の船舶交通がふくそうする海域において、航行船舶に対し指導を行う運用管制官等、特別な技能を持って活躍している女性もいます。国際捜査官として活躍する女性職員は「女性海上保安官だからこそ、被疑船舶の女性船員の部屋にも入っていける。」と女性であることのメリットがあると言い「今後も、この仕事を続けていきたい。」と充実した日々を送っています。また、海上交通センターで運用管制官として勤務する女性職員は「見えない相手と無線で交信するため、明瞭・端的な情報提供を心がけています。私達の情報提供により、船舶が危険を避けられる場合もあり、やりがいのある仕事です。」と管制業務の難しさとやりがいを語っています。


外国船へ立入検査中の女性国際捜査官


管制業務にあたる女性運用管制官


こうした現場第一線で活躍する職員を、補給・調達や福利厚生といった分野でしっかりと支える女性職員がいます。海上保安部で渉外係長として勤務する女性職員は「自分の業務が間接的に現場の業務達成に繋がっている。当庁の船艇、航空機を動かすために私がいる。」と自負して業務に取り組んでいます。

また、子育てをしながら勤務している女性職員も約150人と増えてきています。2人の子供を育てながら、管区海上保安本部の課長を務める女性職員は、家庭と仕事の両立に悩み、退職してしまう女性が多い中「子供がいても、普通にキャリアアップして働けることを証明したい。」と定年退職まで働き続けることが目標と語っています。

最後に

海上保安庁では、女性職員が働きやすい職場というのは、男性職員も働きやすい職場であると考えています。

これからも、女性職員が活躍できる職場環境づくりを推進するとともに、全職員が仕事も私生活も充実した人生を送ることが出来るような職場環境づくりを推進していきます。