「共同参画」2015年 12月号

「共同参画」2015年 12月号

特集2

女性活躍推進法に基づく事業主行動計画策定指針が策定されました
内閣府男女共同参画局推進課

女性活躍推進法に基づき、国や地方公共団体、企業等の各事業主が、来年3月末までに策定を義務付けられている事業主行動計画の具体的な策定手順や考え方等について定めた事業主行動計画策定指針の概要について紹介します。

1.はじめに

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「法」という。)が成立し、民間企業等(一般事業主)並びに国及び地方公共団体の機関(特定事業主)に、事業主行動計画の策定・公表等が義務付けられました(常時雇用する労働者の数が300人以下の一般事業主については努力義務)。これからの女性の職業生活における活躍に、各事業主が事業主行動計画で定める数値目標や取組の内容、その実効性等が大きく影響を与えることとなります。各事業主が実効性のある事業主行動計画を来年3月末までに円滑に策定し、取組を着実に実施できるよう、法第7条の規定に基づき策定した「事業主行動計画策定指針」(平成27年11月20日告示)の概要について、第2部の「一般事業主行動計画」を中心に紹介します。

2.一般事業主行動計画(民間部門)

(1)女性の活躍の意義

女性の活躍は、非正規雇用を含めたあらゆる雇用形態等で働く女性が、その個性と能力を十分に発揮できることを目指して推進する必要があります。

(2)女性の活躍に向けた課題

男女雇用機会均等法の制定から30年が経ちますが、依然として、我が国には、採用から登用に至るあらゆる段階において、男女間の事実上の格差が残っています。その背景には、固定的な性別役割分担意識と、それと結びついた長時間労働等の働き方があります。各段階で求められることは、次のとおりです。

<採用>性別にかかわらず、意欲と能力本位の採用に改めていくこと。

<配置・育成・教育訓練>性別にかかわらない配置・育成・教育訓練に切り替えていくこと。

<継続就業>継続就業の障壁となっている事情(労働時間、職場の雰囲気、仕事のやりがい等)を早期に改善すること。

<長時間労働の是正等の働き方改革>男女を通じて長時間労働を是正し、限られた時間の中で集中的・効率的に業務を行う方向へ職場環境を見直していくこと。

<評価・登用>男女区別のない評価・昇進が徹底されるよう、早期に評価・登用の透明性を高めること。

<性別役割分担意識等の職場風土>男女ともに育児等の家庭責任を果たしながら職場でも貢献していくという方向へ、社会・職場双方で意識改革を進めていくこと。

<再チャレンジが可能な職場>妊娠・出産等を機に退職した女性の再雇用・中途採用や、意欲と能力を有する女性の職種又は雇用形態の転換を早期に進めていくこと。

(3)女性の活躍推進及び行動計画策定に向けた手順

<体制整備>組織のトップ自らが、経営戦略としても女性の活躍が重要であるという問題意識を持ち、組織全体で対応する考え方を明確にして、主導的に取り組んでいくことが重要です。専任の担当者の配置など、継続的な実務体制を設けることも効果的です。また、業界固有の課題等については、業界団体等を通じた事業主間の連携により、効果的な課題解決策を模索していくことも有効です。
 行動計画の策定に当たっては、委員会等の体制を設けることが効果的です。また、状況把握した数字以外の定性的な事項も含めた職場の実情の的確な把握も重要です。

<状況把握・課題分析>状況把握・課題分析の意義は、自らの組織が解決すべき女性の活躍に向けた課題を明らかにし、行動計画の策定の基礎とすることにあります。まず、課題の有無の指標となる4つの把握項目(表1第一欄)について、状況把握・課題分析を行うことが求められます。その結果、事業主にとって課題であると判断された事項については、把握項目(表1第二欄)を活用して課題分析を行い、検討を深めることが有効です。

表1 一般事業主の状況把握項目


<行動計画の策定>行動計画においては、(1)計画期間、(2)数値目標、(3)取組内容及び実施時期を定めるものとされています。
 状況把握・課題分析の結果、各事業主にとって最も大きな課題と考えられるものを優先的に行動計画の対象とし、数値目標を設定して、目標達成に向けた取組の検討を行うとともに、できる限り積極的に複数の課題に対処することが効果的です。
 計画期間については、平成28年度から法の時限である平成37年度までの10年間を、各事業主の実情に応じておおむね2年間から5年間に区切るとともに、定期的に行動計画の進捗を検証しながら、その改定を行うことが望まれます。
 また、職場風土改革に関する取組や長時間労働の是正は、職場単位で行うことも重要であることから、派遣先事業主は、派遣労働者も含めて全ての労働者に対して取組を進めていくことが求められます。

<行動計画の推進>行動計画の推進に当たっては、委員会等の体制を活用することが効果的です。また、定期的に、数値目標の達成状況や、行動計画に基づく取組の実施状況の点検・評価を実施し、その結果をその後の取組や計画に反映させるPDCAサイクルを確立することが重要です。

<情報の公表>情報の公表の意義は、求職者の企業選択を通じ、市場を通じた社会全体の女性の活躍推進を図ることにあります。
 情報公表項目については、行動計画策定の際に状況把握・課題分析した項目から選択することが基本であると考えられ、公表範囲そのものが事業主の女性活躍推進に対する姿勢を表すものとして、求職者の企業選択の要素となることに留意が必要です。
 公表に際しては、より求職者の企業選択に資するよう、情報公表項目と併せて、行動計画を一体的に閲覧できるようにすることが望まれます。

<認定>一般事業主は、厚生労働省令で定める基準を満たすことにより、女性が活躍できる事業主としての認定を受けることができます。
 認定を受けた事業主であることを幅広く積極的に周知・広報することにより、優秀な人材の確保や企業イメージの向上等のメリットにつながることから、認定に向けて積極的な取組が期待されます。

3.特定事業主行動計画(公務部門)

国・地方公共団体が作成する特定事業主行動計画については、公務部門の率先垂範や各種取組の進捗状況、公務員法制の特性(平等取扱の原則・成績主義の原則等)などを踏まえた指針となっています。率先垂範の観点から、一般事業主行動計画と異なっている主な箇所は次のとおりです。

○特定事業主がまず把握を行う項目は、表2のとおり、一般事業主の4項目を含め7項目を設定しています。

○各府省等においては、(1)女性職員の採用・登用、(2)男性職員の育児休業、(3)配偶者出産休暇・育児参加休暇について数値目標を設定し、積極的に取り組むこととしています。

○特定事業主は、毎年少なくとも1回、行動計画に基づく取組の実施状況の公表が求められており、その際、数値目標を設定した項目については、その進捗状況も明らかにすることが望まれます。

表2 事業主がまず把握を行う項目

4.関係資料

事業主行動計画策定指針全文は内閣府男女共同参画局等のウェブサイトに掲載しています。

<内閣府 男女共同参画局>
http://www.gender.go.jp/policy/suishin_law/index.html

<厚生労働省>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html