「共同参画」2015年 11月号

「共同参画」2015年 11月号

行政施策トピックス1

持続可能な開発のための2030アジェンダ
外務省国際協力局地球規模課題総括課

はじめに

本年は、3月の第3回国連防災世界会議、7月の第3回開発資金国際会議、そして9月の国連サミット、11月末の国連気候変動パリ会議(COP21)が開催されるなど、国際社会による地球規模課題への取組にとり非常に重要な年です。

本年9月、潘基文国連事務総長の主催による「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択する国連サミットがニューヨーク・国連本部で開催され、日本からは安倍総理大臣が出席し、今後のアジェンダ実施に向けた日本の考えや貢献策等を発信しました。


写真提供:内閣広報室


写真提供:内閣広報室


2030アジェンダとは

持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)の後継として国連で定められた、2016年から2030年までの国際目標です。MDGsの残された課題(例:保健、教育)や、新たに顕在化した課題(例:環境、格差拡大)に対応すべく、本年1月から7回に及ぶ政府間交渉を経て、新たに17ゴール・169ターゲットからなる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)を含む持続可能な開発のための2030アジェンダが策定されました。

国連サミットで安倍総理大臣は、日本が重視してきた要素を中核に据えた新アジェンダの採択を歓迎するとともに、アジェンダの実施には、あらゆるステークホルダーが役割を果たすグローバル・パートナーシップが不可欠であるとして、日本自身がその一員としてアジェンダ実施に最大限努力していく旨を述べました。その上で、具体的な貢献策として、包摂的、持続可能かつ強靱な「質の高い成長」の追求、脆弱な人々の保護と能力強化(保健、教育支援分野の新政策を含む)、持続可能な環境・社会づくりの実現に向けた努力といった取組を行うことについて表明しました。

2030アジェンダの特徴と日本の評価

今回採択された2030アジェンダの最大の特徴は、持続可能な環境や社会を実現するため、先進国を含む全ての国が取り組むという「ユニバーサリティ」にあります。また、この15年間で、一部の途上国の発展、民間企業や市民社会の役割の拡大など、開発をめぐる国際的な環境が大きく変化していることも踏まえ、あらゆるステークホルダーが役割を果たす「グローバル・パートナーシップ」の重要性が盛り込まれています。長年の交渉の結果、こうした野心的なアジェンダが採択されたことは、国際社会が2030年までに貧困を撲滅し、持続可能な開発を実現するという共通課題に取り組んでいくための重要な指針を提供するものであり、日本としても評価しています。

多くの国や国際機関が様々な課題を取り上げ、アジェンダに取り入れようとした結果、今回のアジェンダではMDGsと比べてゴール・ターゲットが増えることとなりましたが、これは、様々な開発課題が互いに連動しており、特定の課題に絞るよりも、俯瞰的な視点の下でこれらを統合的に扱うことがより望ましいとの考えが反映された結果でもあり、こうした姿勢は、むしろ開発をめぐる現在の状況に合致するものと評価されます。

日本は、国際社会の議論が本格化する前から、MDGsフォローアップ会合の開催や非公式な政策対話(コンタクト・グループ)の主催、国連総会サイドイベントの開催、また、本年3月の第3回国連防災世界会議の開催等を通じて、真に効果的な新しいアジェンダの策定を主導し、1月からの政府間交渉にも積極的にも参加してきました。その結果、今回採択されたアジェンダには、人間中心(people-centered)、誰一人取り残されない(no one will be left behind)など、人間の安全保障の理念を反映した考え方や、グローバル・パートナーシップ、女性・保健・教育・防災・質の高い成長等、我が国が重視してきた要素や取組が盛り込まれました。今回のサミットやサイドイベントの機会を通じ、これまでの日本の貢献、また、今後のアジェンダの実施に向けた考えや貢献策について、国際社会に発信することができました。

国連におけるジェンダー分野の取組

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは、開発目標を達成するために不可欠な課題かつ手段であり、国連においても、これまで開発途上国の女性を取り巻く環境の改善のために様々な取組が行われてきました。その結果、教育や保健、経済分野など、様々な分野で男女間の格差は小さくなる方向にありますが、就業機会や財産に対するアクセスと権利、公私にわたる意思決定等、依然としてジェンダー格差が顕著な分野も残っています。このような状況を受け、2030アジェンダでは、前文に「すべての人の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す」と明記し、ジェンダー平等と女性及び女児のエンパワーメント(ゴール5)を17ゴールの一つとしてしっかり掲げました。

日本は、2013年より「すべての女性が輝く社会」づくりを提唱し、国内で成長の最大の潜在力として「女性の力」を活かしていくことはもちろん、「女性の輝く社会」をつくることは世界に大きな活力をもたらすとの考えに立って、国際社会との協力を一層強化していく取組を積極的に進めていきます。


持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)出展:国連広報センター