「共同参画」2015年 10月号

「共同参画」2015年 10月号

特集

“WAW! 2015”(「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」)─今年のテーマは「WAW! for All」。様々な立場や世代の女性・男性が共に考え、共に社会を変革する─
外務省総合外交政策局女性参画推進室

8月28日・29日に東京で開催された“WAW! 2015”(「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」)について報告します。

World Assembly for Women (WAW!)とは

日本で、世界で「女性が輝く社会」の実現を更に推進するため、WAW!は昨年初めて開催されました。昨年は26か国6国際機関から約100名の方々にお越し頂きましたが、本年はそれを上回る41の国と地域、8国際機関から75名(日本人参加者は70名、全体で145名)の各界で活躍するリーダーたちにお集まりいただきました。同行者を含めればWAW!のために訪日した外国人は315名に上ります。また、2日間でのべ約2,000人の聴衆が参加しました。

WAW!は女性を巡る様々な課題について包括的に議論し、提言していくことが特徴です。政治、経済、社会の第一線で活躍する人々がテーブルを囲み、国や肩書きにとらわれず自分の言葉で率直に議論するシンポジウムです。

昨年WAW!では、経営トップがコミットする、異次元の働き方改革を実行する、女性のエンパワーメントに向けた戦略的な投資を行う等の革新的な提言が出されました。日本では、女性の活躍を推進する法案の成立、ワークライフバランスを推進する「ゆう活」の実施、女性の参画促進の規定を盛り込んだ開発協力大綱の策定など、改革は着実に進んでいます。

テーマは「WAW! for All」

今回のテーマは「WAW! for All」。様々な立場や世代の女性・男性が共に考え、共に社会を変革していこうというメッセージです。本年WAW!では、女性の社会進出を阻む働き方や男女の役割分担意識の変革を訴えました。若者や、困難を抱える女性の声に耳を傾け、防災、起業、教育、平和構築など女性を取り巻く世界的な議題について議論しました。

また、本年のWAW!は昨年以上に、若者や男性にも参加者として、聴衆として、WAW!に参加頂きました。29日のスペシャル・セッション「ユース・テーブル」では15名の国内外で活躍する若者が集まり、「若者が作りたい社会を実現するために、どう行動していくか」について活発な議論が行われ、若者らしい意見が出されました。ユース・テーブル以外のセッションでも聴衆に学生の姿が見られ、世代を超えて、女性活躍推進への関心が高いことが伺えました。28日の公開フォーラム、29日のハイレベル・ラウンドテーブルともに女児の教育に関するセッションがあり、その他のセッションでも、「価値観を形成する初等教育から、従来の男女の役割分担意識を変えるための教育をすべき」「理系女子を増やすためには、高等教育だけでなく、それ以前の教育が重要」等の意見が出ており、「教育」への関心の高まりが現れました。

男性の参加者は、昨年より2.5倍増え、27名となりました。女性にとって働きやすい環境は、男性にとっても働きやすい環境であり、男性・女性共に、働き方や意識を変えていこうとする動きが加速しています。


スペシャル・セッション「ユース・テーブル」


8月28日:公開フォーラム

8月28日(金)に公開フォーラムは開催されました。グランドプリンスホテル新高輪の飛天のステージは鮮やかな装花で彩られ、約1,500名の傍聴者が詰めかけました。

オープニングで安倍総理は、もはや「なぜ女性の活躍推進か」ではなく、「どのように実現するのか」を具体的に議論する段階にきていることを強調し、女性活躍推進のための新たな法案の成立等を紹介しつつ、国際協力の分野においては、人権侵害のない社会の実現のために、UN Women等との協力につき言及しました。また、女児と教育分野に今後3年間で420億円以上の支援を実施することや、来年のG7サミット議長国の日本としては、女性の分野も重視していきたいとの見解も述べました。

オープニングでスピーチする安倍総理


8月28日オープニング 総理スピーチ


アフリカ初の民選による女性大統領であるサーリーフ・リベリア大統領、経済界で「ガラスの天井」を突き破り生え抜きCEOとなったマリリン・ヒューソン・ロッキードマーチンCEOによる基調講演が行われました。世界で活躍する女性リーダーの力強いメッセージが発信されました。


基調講演を実施するサーリーフ・リベリア大統領


「女児の教育」「女性と経済」の2種類のパネル・ディスカッションが実施され、活発な議論が行われました。

また、プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長、榊原定征経団連会長からの挨拶、クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事、ニコール・キッドマンUN Women親善大使、ミシェル・オバマ米大統領夫人からのビデオメッセージの紹介もあり、各界を代表する方々の登場とその言葉に、会場が魅了されました。


女性と経済をテーマにしたパネル・ディスカッション


8月29日:ハイレベル・ラウンドテーブル/スペシャル・セッション

29日のハイレベル・ラウンドテーブルにおいては、「女性と経済」及び「グローバルな課題」の2大テーマの下、活発な議論が行われ参加者より具体的な提案もなされました。各テーブルやセッションを訪問した安倍総理、安倍総理夫人を始め、メディア関係者、聴衆が、各テーブルやセッションにおいて、政府関係者、有識者、経営者、ジャーナリスト等20名で繰り広げられる知見や事例、アイディアの交流に熱心に聞き入りました。安倍総理は、各テーブルで発言し、議論に参加しました。フロアからの質問や意見を求めるセッションもあり、会場が一体となり、1つのテーマについて議論が行われました。


ハイレベル・ラウンドテーブルの様子(安倍総理も議論に参加)


提案するWAW!

「女性と経済」に関しては、女性の活躍を後押しするため、ワークライフ・マネジメントを可能にする方法、男性の関与を含めた改革の推進方法、制度及び意識の双方の面における課題について議論しました。ICTの有効な活用方法(トップマネージメントのICT利用を含む)、定時という概念にとらわれない柔軟な働き方、成果主義の導入、キャリアの前倒しなどの提案がなされ、さらにこれらに対するトップ・リーダーのコミットメントなどの提案がなされました。また、シングルマザーが抱える困難や、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い(いわゆる「マタニティ・ハラスメント」)、セクシャル・ハラスメントの被害女性の実態にも光を当て、国、地方自治体、企業、市民団体がとり得る具体的な支援策につき検討しました。

「グローバルな課題」に関しては、女性のエンパワーメントの鍵となる教育について、指導的地位に女性が就くためには初等教育のみならず中等教育の普及が重要であること、女児が教育を受けることを阻む社会的慣習の根絶や、家族、男性・男児の意識改革が必要であること等が指摘されました。更に、紛争における最大の被害者が女性であることを踏まえ、夫を亡くした女性の経済的自立を促すための法整備など、女性特有のニーズへの配慮の重要性が挙げられました。平和構築及び復興プロセスにおける女性の主体的参加の確保が重要であり、そのためのトレーニングの実施の提案がありました。また、過激主義の台頭など、国際社会が新しい課題に直面している中で、包括的なアプローチの下で、政府、国際機関、地方自治体、企業、市民社会等が連携しながら、女性の権利保護に努めるべきとの意見が支持されました。国際協力におけるマルチステークホルダー連携は世界の潮流になりつつあり、不可避であるとの認識が広がっています。どのようなルールの下で連携していくことが望ましいかについて、先進事例に関する発表を踏まえ、議論されました。

これらに加え、本年新たに設置したスペシャル・セッションにおいては、前述のユース・テーブルも含む6つのセッションが実施されました。安全・安心で快適なトイレ環境の整備が、女性の安全や地位向上、生活の質の向上に果たす役割に着目し、先進的取組も紹介されました。また、自然科学分野における女性研究者の活躍を促進すべく、大学で自然科学分野を学ぶ女性をさらに増やし、第一線で活躍する女性研究者を支援する必要性と課題が語られました。この他、アジアにおける女性起業家支援の取組や、本年3月の国連防災世界会議で策定された「仙台防災枠組2015-2030」において重要性が指摘された、防災における女性の参画とリーダーシップの発揮につき具体的方途が議論されました。

クロージング・セッションでは、各セッションのラポラトゥールから具体的提案を含む報告がなされ、ハイレベル・ラウンドテーブルでの議論において出された提案をとりまとめ、本年の提案集WAW! To Do 2015を策定することとなりました。


「トイレを通じたエンパワーメントの実現」登壇者による記念撮影


ムーブメントとしてのWAW!

本年のWAW!では、「WAW! for All」を体現する取組として、一般の方も含む様々な方より「女性が輝く社会」に向けたアイディアやメッセージを8月より収集し、YouTubeで公開しました。当日は、フォトブースを設け、参加者、聴衆がメッセージ・ボードを持ち、撮影を行いました。

フォトブースの撮影風景


フォトブースの様子


舞台としてのWAW!

会場のサイドでは、お茶やお花をはじめ多くの日本文化紹介のコーナーが設けられ、日本のソフトパワーを発信する舞台としての役割を果たしました。


サイドイベント、お茶席


本年のWAW!も、有識者で組織されたアドバイザーズ、協力団体、当日の誘導や受付を担当してくれた学生ボランティア等たくさんの方の協力を得て、「女性が輝く社会」のメッセージを世界に発信しました。