「共同参画」2015年 9月号

「共同参画」2015年 9月号

特集1

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が成立しました
内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室

平成27年8月、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が成立しました。本号では同法の制定の背景や概要、今後のスケジュール等について紹介します。

1.女性の職業生活における活躍の推進の必要性

【背景】

我が国の15歳から64歳までの女性の就業率は、平成26年には63.6%(昭和50年48.8%)と増加する一方で、依然として根強い長時間労働を前提とした労働慣行等から、仕事と生活の両立ができずに就業継続やキャリアアップを諦める女性も多く、約6割の女性が第1子出産を機に離職しており、育児・介護等を理由に働いていないものの就業を希望している女性は約300万人に上ります。また、役員や管理職等の指導的地位にある女性の割合は諸外国と比べて低い水準にとどまるなど、働く場面における女性の活躍は不十分と言わざるを得ないのが現状です。

図表1 女性の年齢別労働力率と就業希望者


図表2 子どもの出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴


【経緯】

こうした中、平成24年12月に発足した第2次安倍内閣では、女性の力を「我が国最大の潜在力」として成長戦略の中核に位置付け、「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月閣議決定)に、女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築について盛り込みました。これを受け、政府は、働くことを希望する女性が、職業生活においてその個性と能力を十分に発揮して活躍できるよう、国や地方公共団体が必要な施策を策定・実施することに加え、事業主が女性の活躍推進に向けた取組を自ら実施することを促すための枠組みについて定めた「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を昨年秋の臨時国会に提出しました。その後、同法案は廃案になりましたが、本年の通常国会に再提出し、与野党による修正の上で、衆・参両議院において可決、成立しました。

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「本法」という。)は、現在働いていないが就業を希望する女性、責任ある立場で働きたいけれども家庭生活との両立が困難であるがゆえに昇進をあきらめている女性、正社員として働くことにチャレンジしたい女性など、働く場面で活躍したいという希望を持つすべての女性が、その個性と能力を十分に発揮できる社会を実現するために、極めて大事なエンジンとして機能することが期待されています。

女性が活躍できる場を充実させることにより、男女が共に仕事と生活を両立でき、全ての人にとって暮らしやすい、さらには持続可能な社会の実現につながるものと考えられます。

2.これまでの施策との関係

男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号。以下「基本法」という。)に基づく第3次男女共同参画基本計画(平成22年12月閣議決定)においては、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度とする目標の達成に向け、様々な積極的改善措置(ポジティブ・アクション)を講じることとしており、政府は、これまでも女性の継続就業や再就職支援等の取組に努めてきました。一方、各事業主におけるポジティブ・アクションは、あくまでも自主的取組として位置付けられてきました。

本法は、このように自主的取組に委ねられてきたポジティブ・アクションの実効性をさらに高めるため、女性の活躍の場の提供主体である事業主に対し、女性の活躍に関する状況の把握や課題の分析、行動計画の策定、情報公表の義務付け等を規定するものです。

図表3 就業者、管理的職業従事者に占める女性割合(国際比較)


図表4 長時間労働者の割合(国際比較)


3.本法の概要

【目的・基本原則】(第1条・第2条)

本法は、基本法の基本理念にのっとり、自らの意思によって働き又は働こうとするすべての女性の活躍を迅速かつ重点的に推進し、その結果として男女の人権が尊重され、豊かで活力ある社会を実現することを目的としており、基本原則を次のとおり規定しています。

  • (1) 女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供・活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行の影響への配慮が行われること
  • (2) 必要な環境整備により、職業生活と家庭生活の円滑かつ継続的な両立を可能にすること
  • (3) 本人の意思が尊重されること

なお、本法が対象とするのは、正規雇用、非正規雇用といった雇用形態や、一人親世帯、単身等の家族形態によって、その対象が限定されるものではなく、自らの希望によって働き又は働こうとするすべての女性となります。

【基本方針】(第5条)

政府は、上記の基本原則にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進に関する施策の基本的な方向等を示す「基本方針」を閣議決定により策定し、施策の総合的かつ一体的な実施を図ることとしています。

【都道府県推進計画等】(第6条)

都道府県及び市町村は基本方針(市町村にあっては、都道府県推進計画が定められているときは、基本方針及び同計画)を勘案して、その区域内における女性の職業生活の活躍についての計画を定めるよう努めることとしています。地方分権の観点からその策定は努力義務としていますが、地域の実情に応じた形で女性の活躍を円滑に推進するため、積極的な策定が期待されます。

【事業主行動計画・情報公表】(第7条・第8条・第15条~第17条)

雇用主としての民間企業等(一般事業主)及び国・地方公共団体(特定事業主)は、政府が別途定める事業主行動計画策定指針(以下「策定指針」という。)に即して、それぞれ一般事業主行動計画又は特定事業主行動計画(以下「行動計画」という。)を策定・公表すること等としています。

その策定に当たっては、各事業主の女性の採用比率や管理職比率、労働時間の状況、継続勤務年数の男女差等について把握・分析を行い、その結果を勘案して、数値目標や取組を行動計画に盛り込む必要があります。

また、各事業主は、上記のほか、女性の求職者の職業選択に資する情報についても定期的に公表することとしています。(義務・努力義務の対象等の詳細については図表5参照)

図表5 事業主行動計画の策定に関する規定


【優良一般事業主認定制度等】(第9条~第11条・第20条)

行動計画の策定・届出を行った一般事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な一般事業主は、都道府県労働局に申請することにより、厚生労働大臣の認定を受けることができるとしています。認定を受けた一般事業主は、厚生労働大臣が定める表示を商品等に付することができます。

また、認定一般事業主等を対象とした公共調達における受注機会の増大を規定しており、一般事業主の自主的なポジティブ・アクションの促進を図ります。

【協議会】(第23条~第25条)

地域において女性の職業生活における活躍を効果的かつ円滑に推進するための枠組みとして、地方公共団体等の関係機関により構成される協議会を組織することができるとしています。

地域の特性を踏まえた主体的な取組を効率的かつ円滑に進めるため、積極的な協議会の活用が期待されます。

また、協議会の具体的な構成員は各協議会においてそれぞれ判断することになりますが、その地域において女性の活躍推進に携わる多様な主体が参画できるよう配慮することが望まれます。

【本法の期限・見直し】(附則第2条・第4条)

働く場面における女性の活躍推進は焦眉の課題であり、期限を区切って迅速かつ重点的に取り組むことが適当であることを踏まえ、本法は10年間の時限法とし、平成38年3月31日限り失効することとしています。また、政府は、本法の施行から3年が経過した時点で、その施行状況等を勘案し、必要に応じ本法の規定を見直すこととしています。

4.今後のスケジュール

本法は公布と同時に施行されていますが、事業主行動計画の策定に関する規定は平成28年4月1日の施行としており、各事業主はそれまでに行動計画の策定・公表等を行う必要があります。政府においても、本法に基づく基本方針や府省令、策定指針の速やかな策定に努めるほか、説明会の開催や各地の労働局雇用均等室における相談対応、リーフレットの配布等を通じて、本法の周知や行動計画の策定に向けたサポートを進めていきます。

5.関係資料

本法の条文は内閣府男女共同参画局のホームページに掲載しています。また、今後、基本方針や策定指針に関する情報も随時お知らせしていきます。ぜひご覧ください。

<内閣府 男女共同参画局>
http://www.gender.go.jp/about_danjo/law/index.html

<厚生労働省>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html